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2022.04.26

【激アツの女王決定戦特集①】大玉華鈴インタビュー「あこがれだからこそ上の2人に勝ちたい」
【激アツの女王決定戦特集①】大玉華鈴インタビュー「あこがれだからこそ上の2人に勝ちたい」

今シーズン、陸上界の『女王決定戦』がアツい! 昨年、17年ぶりに日本記録が更新されるなど、近年活況を呈しているのが女子七種競技。過去最高レベルの争いにより、日本人初の6000点超えへの期待が懸かる。

七種競技とは2日間にわたって走・跳・投の7種目を行い、得点化して順位を決する。1日目は100mハードル、走高跳、砲丸投、200m、2日目は走幅跳、やり投、800m。そのタフネスぶりから、海外では『クイーン・オブ・アスリート』として称される。

今季、日本の『女王』を目指す、日本記録(5975点)保持者の山﨑有紀(スズキ)、歴代3位の記録を持つヘンプヒル恵(アトレ)、インカレ3連覇を果たした大玉華鈴(日体大SMG横浜)というトップ3にインタビュー。今季に懸ける思い、そして七種競技の魅力について聞いた。

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1回目は社会人1年目の大玉華鈴。中学時代から混成(四種競技)に取り組み、全中で2位。山口・西京高時代にもインターハイ七種競技で2位と力をつけ、日体大1年時にはアジア・ジュニア選手権で金メダルを獲得した。

昨年まで日本インカレ3連覇、最終学年は日体大の主将としてチームを牽引し、自己ベストは日本歴代7位、学生歴代3位の5633点をマークした。常にポジティブで明るいキャラクターの大玉は、虎視眈々と“下克上”を狙っている。

昨年から土台がアップ

――社会人1年目になりました。心境の変化はありますか。

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現在は平日、午後2時過ぎまで勤務して練習しています。競技優先で考えてくださり、いろいろコミュニケーションを取りながら進めていただいています。環境が変わる1年目の大変さは大学進学時にも経験しているので、それを生かして1年目から結果を出したいです。

――先日の日本学生個人選手権で5547点を出し、ワールドユニバーシティゲームズの代表を決めました。おめでとうございます。

学生個人は初日が寒さと雨の悪条件で、1種目めの100mハードルでつまずいてしまいました。得意の走高跳では1m72を跳べたので何とかまとめられたと思います。納得はいきませんが、失敗種目がありながら5500点台というのは、アベレージが上がってきたのかなと思います。

――昨年から成長した部分はどのあたりでしょう。

冬季もケガなくできて、土台アップができたと思います。特にずっと課題である走力をメインに強化しました。練習でもベストが出ていたので、だいぶ良くなっていると思います。100mハードルでは、これまでは後半型でしたが、今はスタートも改善できて、前半から攻められるので、13秒5を切れるところまで目指せると思っています。苦手な800mではいつも差をつけられるのですが、こっちも今は少し楽しみです。

――砲丸投や51m51がベストのやり投も得意をされています。

もともと、得意だった投てきで最近伸び悩んでいましたが、最近は砲丸投でも練習ベストを投げています。やり投も肩の痛みがようやくなくなってきました。

――今、一番得意なのは1m78が自己記録の走高跳ですね。

どんな状況でも1m70以上を跳ばないといけないですね。走高跳で1m80近く跳べれば、他の選手と数百点変わってくることもあります。今年は跳躍で得点を上積みしたいです。走高跳で1m80、走幅跳で6m(自己ベストは5m85)を狙っています。最低でも1m75、5m80~90を跳べれば全体の記録も伸びてきます。

――課題についてはどう捉えていますか。

7種目全体をそろえることです。昨年の日本インカレでも、走高跳で1m66と失敗して結局5525点にとどまりました。立て直せているつもりでもカバーできず、中途半端に終わってしまいました。

ポジティブでいられるのは自分の強みで、気持ちのコントロールはできると思っているのですが、調整方法など見直していかないと、と感じています。

日本選手権で勝負

――山﨑有紀選手、ヘンプヒル恵選手という2人が上にいます。どんな存在ですか?

大学3年目に私が成長できて、「もしかして勝負できるかな」と思って日本選手権に臨みました。でも、いざ戦うとどこも勝てなかったんです。全然違いました。その時は「遠い存在」でしたが、今は「勝ちたい先輩」です。何度目の挑戦になるかわかりませんが、狙って勝ちにいきたいと思っています。

恵さんは中学時代からずっとあこがれの存在で、初めて一緒に戦った時は感動しました。正直「この人には絶対に勝てない」と初めて思った人です。2度も大ケガをして、それでも復活してくる。混成選手全員のあこがれであり、目標。でも、そういう存在だからこそ、恵さんのようになりたいし、この選手に「勝ちたい」という気持ちも強いです。

――4月30日、5月1日の木南記念にエントリーされなかったので、直接対決は6月の日本選手権ですね。

ワールドユニバーシティゲームズの代表を狙うには学生個人にしっかり調整する必要がありました。そこから2週間後に木南記念、そこから日本選手権と出て、勝負できるほど甘くありませんので見送りました。日本選手権でしっかり勝負したいです。

――戦うイメージは?

私は1日目に得点をしっかり取って差をつけて折り返したいです。特に走高跳で1m80近く跳んでプレッシャーを与えられればと思います。2日目は走幅跳とやり投で差をつけられないように食らいついて、800mで何とか…。そういう戦いかたになると思います。

昨年から感覚的には5800点以上を狙えると思っていますが、それだとまた3番。6000点は近いようで難しいというのはわかっていますが、そこを見据えて最低でも2位に食い込めるようにしたいです。

――七種競技の魅力について、あまり見たことがない人に伝えてください!

選手によって得意な種目が違って、得点の稼ぎ方が異なります。私は跳躍と投てきで稼いで、走りで粘る。だからこそ、お互いにリスペクトし合えるんです。見ている人としては、「前半あまり注目していなかったのに、急に上位に来たぞ」とか、順位変動もあるので“全員”に注目していただきたいです。

事前に、どの選手が何の種目が得意かなど知っておくと楽しめると思います。最終種目の800mの前には得点の計算として、順位の入れ替わりを予想するのも楽しめます! 世界大会に出ている男子十種競技に負けないように、私たちで盛り上げていきます!!

★プロフィール★
大玉華鈴(おおだま・かりん)/1999年10月21日生まれ。山口県萩市出身。明木中→西京高→日体大→日体大SMG横浜。
・自己ベスト
七種競技 5633点(日本歴代7位)
100mH 13秒66
走高跳 1m78
砲丸投 12m20
200m 25秒30
走幅跳 5m85
やり投 51m51
800m 2分23秒03
・主な実績
20年、21年日本選手権2位
19~21年日本インカレ3連覇
18年アジア・ジュニア選手権優勝
17年インターハイ2位
14年全中四種競技2位

構成/向永拓史

【関連記事】
激アツの女王決定戦特集
②山﨑有紀インタビュー「自分たち世代で世界へ引き上げたい」
③ヘンプヒル恵インタビュー「やれることをやれば結果が出ると信じている」

今シーズン、陸上界の『女王決定戦』がアツい! 昨年、17年ぶりに日本記録が更新されるなど、近年活況を呈しているのが女子七種競技。過去最高レベルの争いにより、日本人初の6000点超えへの期待が懸かる。 七種競技とは2日間にわたって走・跳・投の7種目を行い、得点化して順位を決する。1日目は100mハードル、走高跳、砲丸投、200m、2日目は走幅跳、やり投、800m。そのタフネスぶりから、海外では『クイーン・オブ・アスリート』として称される。 今季、日本の『女王』を目指す、日本記録(5975点)保持者の山﨑有紀(スズキ)、歴代3位の記録を持つヘンプヒル恵(アトレ)、インカレ3連覇を果たした大玉華鈴(日体大SMG横浜)というトップ3にインタビュー。今季に懸ける思い、そして七種競技の魅力について聞いた。 1回目は社会人1年目の大玉華鈴。中学時代から混成(四種競技)に取り組み、全中で2位。山口・西京高時代にもインターハイ七種競技で2位と力をつけ、日体大1年時にはアジア・ジュニア選手権で金メダルを獲得した。 昨年まで日本インカレ3連覇、最終学年は日体大の主将としてチームを牽引し、自己ベストは日本歴代7位、学生歴代3位の5633点をマークした。常にポジティブで明るいキャラクターの大玉は、虎視眈々と“下克上”を狙っている。

昨年から土台がアップ

――社会人1年目になりました。心境の変化はありますか。 現在は平日、午後2時過ぎまで勤務して練習しています。競技優先で考えてくださり、いろいろコミュニケーションを取りながら進めていただいています。環境が変わる1年目の大変さは大学進学時にも経験しているので、それを生かして1年目から結果を出したいです。 ――先日の日本学生個人選手権で5547点を出し、ワールドユニバーシティゲームズの代表を決めました。おめでとうございます。 学生個人は初日が寒さと雨の悪条件で、1種目めの100mハードルでつまずいてしまいました。得意の走高跳では1m72を跳べたので何とかまとめられたと思います。納得はいきませんが、失敗種目がありながら5500点台というのは、アベレージが上がってきたのかなと思います。 ――昨年から成長した部分はどのあたりでしょう。 冬季もケガなくできて、土台アップができたと思います。特にずっと課題である走力をメインに強化しました。練習でもベストが出ていたので、だいぶ良くなっていると思います。100mハードルでは、これまでは後半型でしたが、今はスタートも改善できて、前半から攻められるので、13秒5を切れるところまで目指せると思っています。苦手な800mではいつも差をつけられるのですが、こっちも今は少し楽しみです。 ――砲丸投や51m51がベストのやり投も得意をされています。 もともと、得意だった投てきで最近伸び悩んでいましたが、最近は砲丸投でも練習ベストを投げています。やり投も肩の痛みがようやくなくなってきました。 ――今、一番得意なのは1m78が自己記録の走高跳ですね。 どんな状況でも1m70以上を跳ばないといけないですね。走高跳で1m80近く跳べれば、他の選手と数百点変わってくることもあります。今年は跳躍で得点を上積みしたいです。走高跳で1m80、走幅跳で6m(自己ベストは5m85)を狙っています。最低でも1m75、5m80~90を跳べれば全体の記録も伸びてきます。 ――課題についてはどう捉えていますか。 7種目全体をそろえることです。昨年の日本インカレでも、走高跳で1m66と失敗して結局5525点にとどまりました。立て直せているつもりでもカバーできず、中途半端に終わってしまいました。 ポジティブでいられるのは自分の強みで、気持ちのコントロールはできると思っているのですが、調整方法など見直していかないと、と感じています。

日本選手権で勝負

――山﨑有紀選手、ヘンプヒル恵選手という2人が上にいます。どんな存在ですか? 大学3年目に私が成長できて、「もしかして勝負できるかな」と思って日本選手権に臨みました。でも、いざ戦うとどこも勝てなかったんです。全然違いました。その時は「遠い存在」でしたが、今は「勝ちたい先輩」です。何度目の挑戦になるかわかりませんが、狙って勝ちにいきたいと思っています。 恵さんは中学時代からずっとあこがれの存在で、初めて一緒に戦った時は感動しました。正直「この人には絶対に勝てない」と初めて思った人です。2度も大ケガをして、それでも復活してくる。混成選手全員のあこがれであり、目標。でも、そういう存在だからこそ、恵さんのようになりたいし、この選手に「勝ちたい」という気持ちも強いです。 ――4月30日、5月1日の木南記念にエントリーされなかったので、直接対決は6月の日本選手権ですね。 ワールドユニバーシティゲームズの代表を狙うには学生個人にしっかり調整する必要がありました。そこから2週間後に木南記念、そこから日本選手権と出て、勝負できるほど甘くありませんので見送りました。日本選手権でしっかり勝負したいです。 ――戦うイメージは? 私は1日目に得点をしっかり取って差をつけて折り返したいです。特に走高跳で1m80近く跳んでプレッシャーを与えられればと思います。2日目は走幅跳とやり投で差をつけられないように食らいついて、800mで何とか…。そういう戦いかたになると思います。 昨年から感覚的には5800点以上を狙えると思っていますが、それだとまた3番。6000点は近いようで難しいというのはわかっていますが、そこを見据えて最低でも2位に食い込めるようにしたいです。 ――七種競技の魅力について、あまり見たことがない人に伝えてください! 選手によって得意な種目が違って、得点の稼ぎ方が異なります。私は跳躍と投てきで稼いで、走りで粘る。だからこそ、お互いにリスペクトし合えるんです。見ている人としては、「前半あまり注目していなかったのに、急に上位に来たぞ」とか、順位変動もあるので“全員”に注目していただきたいです。 事前に、どの選手が何の種目が得意かなど知っておくと楽しめると思います。最終種目の800mの前には得点の計算として、順位の入れ替わりを予想するのも楽しめます! 世界大会に出ている男子十種競技に負けないように、私たちで盛り上げていきます!! ★プロフィール★ 大玉華鈴(おおだま・かりん)/1999年10月21日生まれ。山口県萩市出身。明木中→西京高→日体大→日体大SMG横浜。 ・自己ベスト 七種競技 5633点(日本歴代7位) 100mH 13秒66 走高跳 1m78 砲丸投 12m20 200m 25秒30 走幅跳 5m85 やり投 51m51 800m 2分23秒03 ・主な実績 20年、21年日本選手権2位 19~21年日本インカレ3連覇 18年アジア・ジュニア選手権優勝 17年インターハイ2位 14年全中四種競技2位 構成/向永拓史 【関連記事】 激アツの女王決定戦特集 ②山﨑有紀インタビュー「自分たち世代で世界へ引き上げたい」 ③ヘンプヒル恵インタビュー「やれることをやれば結果が出ると信じている」

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