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2019.12.13

【展望】第27回(2019年)全国中学校駅伝展望
【展望】第27回(2019年)全国中学校駅伝展望


 第27回全国中学校駅伝は12月15日、滋賀県の野洲市と湖南市にまたがる希望が丘文化公園で開催される。舞台が滋賀に戻って今回が4回目。例年と同じく男子が6区間18km、女子が5区間12kmのコースに各都道府県代表と開催地代表、オープン参加の地元選抜を加えた男女各49チームが出場し、中学駅伝日本一を目指す。
 前回大会では桂(京都)が史上初のアベック優勝。女子は5連覇という偉業を成し遂げたが、新元号「令和」最初の大会はどのようなドラマが展開されるだろうか。
●文/大久保雅文

男子

近畿王者の大池が初出場初Vなるか ~ 連覇目指す桂、経験豊富な曽根も有力

例年と比べて突出したチームはおらず、混戦模様の男子。その中で桂(京都)、大池(兵庫)、曽根(福岡)が優勝候補として名前が挙がる。

前回、3回目の出場にして初優勝を飾った。そのメンバーのうち1区5位の柴田大地と3区9位の宮村友也が残り、府大会では2位に1分以上の大差をつける圧勝で、全国に駒を進めてきた。

柴田は今季3000mで8分43秒40、1500mでも4分03秒70と全国トップクラスのタイムを出し、チームの勝負区間で起用されるだろう。前回、補欠選手によるオープンレースで1年生ながら4位タイと好走した高倉侃斗もおり、男子4校目の連覇を目指す。

12月1日に希望が丘公園で行われた近畿大会で、桂を抑えて優勝したのが大池だ。全国大会とは異なるコースで行われたものの、フィニッシュタイムの56分04秒は過去3回の全国大会優勝記録を上回る。

初出場だが、エースの熊井渓人は3000m8分34秒34のタイムを持ち、竹田優人と脇田幸輝も3000m8分台と実力者がそろう。県大会、近畿大会ともに竹田、脇田を1、2区に配して上位でタスキをつなぎ、4区の熊井で2位以下を突き放すレースを展開。全国大会でも台風の目になりそうだ。

過去2大会連続銅メダルの曽根は6年連続11回目の出場。前回のメンバーが3人残るのが強みだ。荒尾波瑠は過去2回とも6区に出場し、区間3位、2位と好走している。前回は1区31位とやや出遅れたものの、3区以降に順位を上げて3位まで浮上した。県大会と九州大会にも起用された1年生2人の走りがカギとなるだろう。

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前回3位の曽根(福岡/6区荒尾波瑠) 前回7位の我孫子(千葉/6区石島太一)

多くのチームに入賞の可能性

他にも上位候補に挙がるチームは多い。至近7年で6回入賞の栃木からは、16年ぶりに市貝が出場する。全中3000m9位の薄根大河を中心にまとまったチームで、県大会はオール区間賞で優勝を飾った。関東大会も1区薄根の区間賞でスタートすると、一度も首位を明け渡すことなく逃げ切り勝ち。全国でも序盤で波に乗ればおもしろい存在だ。

前回7位の我孫子(千葉)は県大会を前年とほぼ変わらないタイムで勝ち上がってきた。前回の全国6区5位の石島太一と、関東大会6区区間賞の二井琉輝がチームの軸となる。

東北大会優勝の高田(福島)は白井恒成と齋藤真那斗が11月に行われた記録会の3000mで8分台のベストをマークして上り調子。全長18kmのコースで行われた北信越大会を56分15秒の大会新記録で制した宮田(長野)も上位を狙っている。8月の大阪全中男子4×100mリレーを中学新で優勝している吉田(静岡)は、駅伝でも上位を目指す。

1年前は上位に食い込んだ松橋(熊本)、萩東(山口)、中村(高知)、新居浜西(愛媛)や、近畿大会4位の畝傍(奈良)も入賞候補。初出場組では全中800m入賞の原悠貴、小瀬堅大を擁する芝東(埼玉)が有力だ。また、個人では11月に3000m8分27秒92の今季中学最高をマークした白子(三重)の倉本晃羽に注目が集まる。

女子

常勝・桂を破った樫原や9分台2人を擁する七尾、六ツ美北がV候補

2014年~18年まで5連覇を果たした桂(京都)が府大会で敗れ、6連覇の道が絶たれた。また前回2位の静岡東や同4位の久寺家(千葉)が予選を突破できず、全国的に波乱が続いた。

その中で優勝争いを演じそうなのが桂を破った樫原(京都)だ。6年ぶりの出場だが、桂が全国優勝をしていた5年間、府大会では桂と競り合いながら2位を占めており、その実力は全国級と言われてきた。今年度は2年生エースの深田望友が府大会、近畿大会の1区区間賞でチームを流れに乗せた。太田咲雪も3000m9分56秒49の実力を持ち、先手必勝のレースで京都府勢による6連覇を目論んでいる。

樫原を追うチームは前回3位の七尾(石川)六ツ美北(愛知)になるだろう。七尾は前回3km区間を走った示野悠奈と新野莉璃、そして3区4位の垣田愛が残り、示野と垣田は今季3000mで9分台を出している。1区から先頭争いを展開してレースの主導権を握れば、北信越地区初の優勝も見えてくる。

初出場の六ツ美北はジュニア五輪B1500m2位の小嶋聖來を筆頭に1500m4分40秒以内の選手が4人そろう。選手層の厚さではライバルを一歩リードしており、2km区間で順位を上げてきそうだ。また、前回1、2年生だけで8位に入り、北信越大会では七尾と競り合った速星(富山)も優勝の可能性を秘める。

女子優勝候補の樫原(京都)は深田望友がエース 初V目指す七尾(石川)。前回1区の示野悠奈ら経験者が3人残る

地区優勝の白山、山鹿にも注目

これに続くのが白山(千葉)山鹿(熊本)の地区大会優勝校だろう。

ともに2年前の全国で入賞しており、その時に走った3年生が主要区間を担う。白山は3000m9分台こそいないが、2年前に1区9位と好走した和田水希がチームの大黒柱として県大会、関東大会と1区を担ってきた。関東大会では約2kmの2~4区のランナーが全員6分台で走り、着実な駅伝で優勝を果たした。

一方、山鹿は前々回4区5位の緒方咲花が、県大会、九州大会と後半区間を走り、優勝に貢献。全国ではどのような布陣で臨むかにも注目だ。

岐阜県勢初入賞を狙う日枝は山腰亜依、住野友理の3000m9分台のダブルエースが強力。過去に入賞経験のある大田原(栃木)浅川(福岡)も上位候補に挙げられる。かつて3連覇を果たし、18年ぶりに全国の舞台に戻ってきた御殿場(静岡)も入賞がターゲット。

今年は有力校に3000m9分20秒台を持つような突出したエースがいない。3km区間では戦力が拮抗しており、それだけに中間の2km区間での走りがチームの順位を左右しそうだ。

大会公式サイト(14日にオーダー発表。大会当日には記録速報)
http://www.zenkokuekiden-shiga.jp/
大会当日の動画配信サイト
https://www.youtube.com/channel/UCbmPPH1lE7T6AwCQw0ZV8RA

 第27回全国中学校駅伝は12月15日、滋賀県の野洲市と湖南市にまたがる希望が丘文化公園で開催される。舞台が滋賀に戻って今回が4回目。例年と同じく男子が6区間18km、女子が5区間12kmのコースに各都道府県代表と開催地代表、オープン参加の地元選抜を加えた男女各49チームが出場し、中学駅伝日本一を目指す。  前回大会では桂(京都)が史上初のアベック優勝。女子は5連覇という偉業を成し遂げたが、新元号「令和」最初の大会はどのようなドラマが展開されるだろうか。 ●文/大久保雅文

男子

近畿王者の大池が初出場初Vなるか ~ 連覇目指す桂、経験豊富な曽根も有力

例年と比べて突出したチームはおらず、混戦模様の男子。その中で桂(京都)、大池(兵庫)、曽根(福岡)が優勝候補として名前が挙がる。 前回、3回目の出場にして初優勝を飾った。そのメンバーのうち1区5位の柴田大地と3区9位の宮村友也が残り、府大会では2位に1分以上の大差をつける圧勝で、全国に駒を進めてきた。 柴田は今季3000mで8分43秒40、1500mでも4分03秒70と全国トップクラスのタイムを出し、チームの勝負区間で起用されるだろう。前回、補欠選手によるオープンレースで1年生ながら4位タイと好走した高倉侃斗もおり、男子4校目の連覇を目指す。 12月1日に希望が丘公園で行われた近畿大会で、桂を抑えて優勝したのが大池だ。全国大会とは異なるコースで行われたものの、フィニッシュタイムの56分04秒は過去3回の全国大会優勝記録を上回る。 初出場だが、エースの熊井渓人は3000m8分34秒34のタイムを持ち、竹田優人と脇田幸輝も3000m8分台と実力者がそろう。県大会、近畿大会ともに竹田、脇田を1、2区に配して上位でタスキをつなぎ、4区の熊井で2位以下を突き放すレースを展開。全国大会でも台風の目になりそうだ。 過去2大会連続銅メダルの曽根は6年連続11回目の出場。前回のメンバーが3人残るのが強みだ。荒尾波瑠は過去2回とも6区に出場し、区間3位、2位と好走している。前回は1区31位とやや出遅れたものの、3区以降に順位を上げて3位まで浮上した。県大会と九州大会にも起用された1年生2人の走りがカギとなるだろう。
前回3位の曽根(福岡/6区荒尾波瑠) 前回7位の我孫子(千葉/6区石島太一)

多くのチームに入賞の可能性

他にも上位候補に挙がるチームは多い。至近7年で6回入賞の栃木からは、16年ぶりに市貝が出場する。全中3000m9位の薄根大河を中心にまとまったチームで、県大会はオール区間賞で優勝を飾った。関東大会も1区薄根の区間賞でスタートすると、一度も首位を明け渡すことなく逃げ切り勝ち。全国でも序盤で波に乗ればおもしろい存在だ。 前回7位の我孫子(千葉)は県大会を前年とほぼ変わらないタイムで勝ち上がってきた。前回の全国6区5位の石島太一と、関東大会6区区間賞の二井琉輝がチームの軸となる。 東北大会優勝の高田(福島)は白井恒成と齋藤真那斗が11月に行われた記録会の3000mで8分台のベストをマークして上り調子。全長18kmのコースで行われた北信越大会を56分15秒の大会新記録で制した宮田(長野)も上位を狙っている。8月の大阪全中男子4×100mリレーを中学新で優勝している吉田(静岡)は、駅伝でも上位を目指す。 1年前は上位に食い込んだ松橋(熊本)、萩東(山口)、中村(高知)、新居浜西(愛媛)や、近畿大会4位の畝傍(奈良)も入賞候補。初出場組では全中800m入賞の原悠貴、小瀬堅大を擁する芝東(埼玉)が有力だ。また、個人では11月に3000m8分27秒92の今季中学最高をマークした白子(三重)の倉本晃羽に注目が集まる。

女子

常勝・桂を破った樫原や9分台2人を擁する七尾、六ツ美北がV候補

2014年~18年まで5連覇を果たした桂(京都)が府大会で敗れ、6連覇の道が絶たれた。また前回2位の静岡東や同4位の久寺家(千葉)が予選を突破できず、全国的に波乱が続いた。 その中で優勝争いを演じそうなのが桂を破った樫原(京都)だ。6年ぶりの出場だが、桂が全国優勝をしていた5年間、府大会では桂と競り合いながら2位を占めており、その実力は全国級と言われてきた。今年度は2年生エースの深田望友が府大会、近畿大会の1区区間賞でチームを流れに乗せた。太田咲雪も3000m9分56秒49の実力を持ち、先手必勝のレースで京都府勢による6連覇を目論んでいる。 樫原を追うチームは前回3位の七尾(石川)六ツ美北(愛知)になるだろう。七尾は前回3km区間を走った示野悠奈と新野莉璃、そして3区4位の垣田愛が残り、示野と垣田は今季3000mで9分台を出している。1区から先頭争いを展開してレースの主導権を握れば、北信越地区初の優勝も見えてくる。 初出場の六ツ美北はジュニア五輪B1500m2位の小嶋聖來を筆頭に1500m4分40秒以内の選手が4人そろう。選手層の厚さではライバルを一歩リードしており、2km区間で順位を上げてきそうだ。また、前回1、2年生だけで8位に入り、北信越大会では七尾と競り合った速星(富山)も優勝の可能性を秘める。
女子優勝候補の樫原(京都)は深田望友がエース 初V目指す七尾(石川)。前回1区の示野悠奈ら経験者が3人残る

地区優勝の白山、山鹿にも注目

これに続くのが白山(千葉)山鹿(熊本)の地区大会優勝校だろう。 ともに2年前の全国で入賞しており、その時に走った3年生が主要区間を担う。白山は3000m9分台こそいないが、2年前に1区9位と好走した和田水希がチームの大黒柱として県大会、関東大会と1区を担ってきた。関東大会では約2kmの2~4区のランナーが全員6分台で走り、着実な駅伝で優勝を果たした。 一方、山鹿は前々回4区5位の緒方咲花が、県大会、九州大会と後半区間を走り、優勝に貢献。全国ではどのような布陣で臨むかにも注目だ。 岐阜県勢初入賞を狙う日枝は山腰亜依、住野友理の3000m9分台のダブルエースが強力。過去に入賞経験のある大田原(栃木)浅川(福岡)も上位候補に挙げられる。かつて3連覇を果たし、18年ぶりに全国の舞台に戻ってきた御殿場(静岡)も入賞がターゲット。 今年は有力校に3000m9分20秒台を持つような突出したエースがいない。3km区間では戦力が拮抗しており、それだけに中間の2km区間での走りがチームの順位を左右しそうだ。 大会公式サイト(14日にオーダー発表。大会当日には記録速報) http://www.zenkokuekiden-shiga.jp/ 大会当日の動画配信サイト https://www.youtube.com/channel/UCbmPPH1lE7T6AwCQw0ZV8RA

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