2021.12.05
歴史に幕を下ろした福岡国際マラソン。今大会は日本陸連ジャパンマラソンシリーズ(JMCシリーズ)の1期・初戦で、来年のオレゴン世界選手権選考会、そして2024年パリ五輪の前年に開催予定のマラソングランドチャンプピオンシップ(MGC)の出場資格対象大会でもあった。大会後、瀬古利彦氏と高岡寿成氏が会見に出席し、大会を総括した。
日本のマラソン、ロードレース全体を運営、活性化させていく日本陸連ロードランニングコミッション(JRRC)のリーダーを務める瀬古氏。現役時代は福岡国際で通算4回優勝している。「今日で最後になりました。応援していただいたみなさん、ありがとうございました」とあいさつし、「今の自分があるのは福岡国際のお陰。なくなるのは残念」と惜しむ。
思い出に残っているのは、やはり宗兄弟と激闘を繰り広げた1979年を挙げ、「日本の男子マラソンを支え、世界のマラソンを育ててきた。この大会がなければ強化はされなかった」と語る。実際、世界最高記録が2度、日本最高記録が8度マークされ、最盛期は世界のトップランナーが集う「マラソン世界一決定戦」と言えるレースだった。
今大会のレースについては「パリ五輪選考会のマラソングランドチャンプピオンシップ(MGC)の出場権を4人が獲得してくれたのはよかった」と評価する一方、「30km以降、前に出たら逃げ切るだけの力がなければいけない。勝ち方を学んでほしい。僕もこの大会を経験して勝ち方を学んだ」と期待を込めた。
最後には「福岡のファンのみなさんが一番寂しいのかなと思います。12月の当たり前だった風景。競技場は無観客試合で入れなかったが、多くのファンに見てほしかった。どこかの大会でつながるといいなと思います」と語った。
パリ五輪に向けた新たな日本陸連強化委員会でシニアディレクターを務める高岡氏は、「1km2分58秒というハイペースに多くの選手がチャレンジした。きつい局面はあったと思うが、世界選手権、MGCを目指す姿が印象に残った」と言う。日本人トップとなった細谷恭平(黒崎播磨)については「粘るところがたくさんあって、勝ちきることはできませんでしたが、粘りきったところは評価できる。それぞれがマラソンらしいマラソンをした」と称えた。
一方で、「オレゴン世界選手権の派遣設定記録(2時間7分53秒)1人も届かなかったのは残念。2分58秒ペースがスタンダードになって練習もしていると思うが、30kmまで余裕をもっていって、そこからだと予想していたが、いっぱいいっぱいになってしまった」と冷静に分析。「細谷選手をはじめ、勝負で勝ちきるためには多くの経験が必要。最終的に五輪という舞台で戦える力をつけていってほしい」と奮起を促していた。
MGCの出場権は細谷恭平(黒崎播磨)、大塚祥平(九電工)、高久龍(ヤクルト)、上門大祐(大塚製薬)の4人が獲得した。
◇福岡国際マラソン…
「日本マラソンの父」金栗四三の功績を称え、1947年に前身である「金栗賞朝日マラソン」として熊本で産声を上げた。その後、開催地を幾度か変更され、1951年に初めて福岡で開催。その後も全国各地で行われ、1974年(28回大会)から「福岡国際マラソン」としてコースを変えながら現在まで続けられてきた。昨年は世界陸連(WA)が陸上界の歴史において多大なる貢献を果たした個人や団体に贈る「ヘリテージプラーク」(陸上世界遺産)にも選ばれた。近年、有力ランナーの出場が少なくなり注目度が下がったことや、市民マラソンとエリートマラソンの一体型大会が主流となったことによる経済面での理由により、「継続は困難」と決断され廃止が決定。市民大会の福岡マラソンなどとの統合についても検討がなされたが、「コースを鑑みると難しい」と条件が整わなかった。
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