男子100mで日本人初の9秒台をマークした東京五輪代表の桐生祥秀(日本生命)が11月28日、学生とアスリートが直接交流するアシックスのイベント「Run for X ASICS DREAM DAY」で春日部女高(埼玉)を訪問して陸上部の選手たちにアドバイスを送った。
トークセッションでは慶大競走部出身のタレントであるMCの宇佐美菜穂さんや部員からの質問に答え、「タイムに反映されなかった経験があるので、緊張はほぐさないようにしている。2週間前から試合のイメージトレーニングを行い、当日は自分の走りに集中する」など、自身の経験をもとに試合に臨む心構えやトレーニングの考え方を紹介した。
グラウンドではウォーミングアップやドリル指導のほか、部員との50m走も実施。「チームのみんなで体感などを共有して生かしてくれたらうれしい。彼女たちの世代からオリンピックに出てくれるような活躍を期待している。僕もそこまで日本代表でいられるようにがんばりたい」と今後も長く世界と戦っていく意欲を示した。
来シーズンについては「今年はケガが続いて満足できる年にならなかった。また良いタイムを出せるようにしたい」とし、まずはケガなく冬季練習を乗り切ることを当面の目標に掲げた。
トークセッションでの質疑応答は以下の通り。
Q.自宅でのトレーニングはどのようにやっていましたか?
A.高校時代はやっていません。学校の往来(※滋賀県彦根市の実家から京都市の洛南高に通学)で精一杯でした。今はストレッチかトレーニングをしています。学校では朝練があったので、そこでトレーニングをしていました。
高校では、自分でもトレーニングメニューを組むようにしていて、監督やコーチと相談しながら取り組んでいました。
Q.緊張することはありますか? それにどのように対応していますか?
A.緊張はほぐさないようにしていました。緊張をほぐしてもタイムに反映されなかった経験があります。2週間前から試合のイメージトレーニングを行い、他の選手を含めてイメージをつけ、当日は自分自身の走りに集中するようにしています。練習と試合は別物なので、うまく緊張と向き合うようにしています。
Q.イメージと違うと緊張しますか?
A.試合に向けて準備することが大事で、基本的に悪い緊張をする時は、自分の準備不足でした。しっかりと準備とイメージができれば、緊張もプラスに変えることができます。
Q.ケガをした時のモチベーションの保ち方と、その時に行っていたことは?
A.ケガをしたら完全に治るまで走りません。ケガをした時のトレーニングも想定して作っていたので、それを実行していました。回復してきたら左右のバランスが整うようにトレーニングをします。
Q.ケガした時はどうやって気持ちをコントルールしますか?
A.練習するしかないです。おもしろい映画に必ずアクシデントと成長があるように、自分の浮き沈みのストーリーを復活した時に話せるように、と考えるようにしていました。前向きに考えるようにしています。
Q.日常生活で意識していることはありますか?
A.特にアスリートらしいことは日常はしていませんが、今はSNSでいろいろな練習方法が見られる時代。自分に合う練習方法を選ぶのが大変だと思います。僕が高校生の時は練習方法を自分で探しにいっていました。
Q.練習は量と質のどちらが大切ですか?
A.どちらも大事です。どちらかのみに限定してしまうと、仮に伸び悩んだ時に何をすればいいのかわからなくなってしまいます。量も質も大切に。量は自信につながるので、その量の中で質を上げればいいと思います。
Q.ピッチを上げるにはどうすればいいですか?
A.ミニハードル走でピッチを強化するようにしています。距離や台数を変えてピッチ強化を図っています。
Q.走っている時の目線はどこに置いていますか?
A.最近はゴールラインの先にいるカメラマンを見るようにしています。高校の時は練習であえて前に人を走らせて、視界に人が入っても集中力が途切れないようにしていました。
Q.食事面で意識していることはありますか?
A.ずっと意識をしているので当たり前になっています。野菜から食べるようにするなど、食べる順に配慮します。体重に変化があった時に食生活への意識をするようになります。その時に注意すれば良いのではないでしょうか。
Q.練習したくない時はどうしていますか?
A.ずっと高いモチベーションでいるのは難しいので、高校の時は意識して力を抜いたりもしていました。
春日部女高を訪問した桐生祥秀(日本生命、前列中央)〔写真提供/アシックスジャパン〕
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