2021.11.08
◇第53回全日本大学駅伝(2021年11月7日/愛知・熱田神宮~三重・伊勢神宮:8区間106.8km)
優勝した駒大までわずか8秒。全区間8、つまりまさに「1人1秒」が足りなかった。3年ぶりの優勝を狙った青学大は5時間13分06秒で2位。優勝と2位の差が8秒というのは過去最小差だった。
「悔しいです。勝てるチャンスが幾度となくありました。決戦で敗れたのは残念です」。原晋監督はレース後、ストレートに打ち明ける。
志貴が好スタート、岸本が復活の走り
「勝つチャンス」は確かにあった。1区に配したのは2年生の志貴勇斗。学生駅伝初出走の志貴はトップの駒大・佐藤条二(1年)から5秒差の区間4位で走った。ここが最初の“勝てる(展開の)チャンス”でもあっただろう。ここで流れに乗りたいところだったが、2区の中村唯翔(3年)は区間14位。その悪い流れを断ち切ったのは1年時の箱根駅伝以来となる岸本大紀(3年)だった。
長くケガで戦列から離れ、昨年度は駅伝出走はなし。原監督は「不安と期待」の中で送り出した岸本が、「どんな順位でもらっても先頭に近い位置で渡すつもりだった」と、日本人トップの区間3位で10位から8位へと順位を押し上げた。さらに圧巻の走りを見せたのが4区・高橋勇輝(4年)と5区・佐藤一世(2年)。「良い位置でタスキを持ってきてくれたので、前を追っていこうと積極的に突っ込めた」という高橋が前を追う。「最後はなかなかつまらなくて苦しかった」と振り返る高橋だが、区間賞を獲得してここでも2つ順位を上げた。
昨年、ルーキーながら同じ5区を走り、区間新を打ち立てた佐藤を、原監督は「駅伝男」と評する。出雲駅伝以降は「ノーランニングの日が2、3日あった」(原監督)が、さすがの走りで連続区間賞。ここで一気に3位へ。トップの早大からは19秒、2位・順大からは2秒差だった。2度目“チャンス”。だが、6区の若林宏樹(1年)は区間12位。「でこぼこ駅伝」(原監督)となるが、青学大には流れを引き寄せる『ゲームチェンジャー』がいた。エースの近藤幸太郎(3年)だ。
近藤と飯田が好走もわずか届かず
東京国際大が逃げ、順大が2番手。そこから1分以上離れて明大。近藤は猛追してきた駒大とほぼ同時にスタートする。相手は学生長距離のエース・田澤廉(3年)だ。
しばらく並走しながら前を追い、ラストは突き放されたものの、盛り返した近藤。駒大が田澤でトップに立ち、18秒差で近藤は主将の飯田貴之(4年)へとタスキをつないだ。「学生ナンバーワンの選手とほぼ同時にスタートして、互角といえる走りができました。力がついています」と指揮官はエースの走りを称える。
「前半区間は苦しみましたが、優勝争いができる良い位置でつないでくれました」と飯田。8km過ぎに追いつくと、駒大との長いデッドヒートが始まる。当初は「先頭で回ってくると思っていた」が、2番手になったことで前半はやや押し気味で入る。ペースは想定内でも、やはり気持ちの面でプレッシャーはあった。「(駒大は)余裕がありそうだったので、残り1kmで仕掛けようと思っていました」。しかし、想像より早い残り2kmで駒大・花尾恭輔(2年)がロングスパート。「上り坂で余裕がなかった」飯田は、最後の“勝つチャンス”を物にできなかった。レース後は涙も見せた飯田。「主将として申し訳ない気持ちでいっぱい」と悔しがる。
登録外のメンバーも含めて「優秀なランナーが数多くいました」(原監督)。その中でも、「期待値で出した選手もいる」という。今回、思うような走りができなかった2区間もそうかもしれないし、一方で不安もあった岸本、佐藤についても同じだろう。結果的に、「今回の負けは采配ミス」と原監督。それでも、「2区間でふたケタ順位になったら優勝は難しい。その中で優勝争いに絡めたのは力がある。箱根駅伝に向けて手応えをつかみました」と、悔しさの中にも、大きな収穫もあった伊勢路となった。
2年ぶりの箱根駅伝制覇へ。指揮官は「箱根駅伝は戦えるチームだと再認識した。でこぼこ駅伝にならないように、日頃の朝練、ジョグから、(選手の)調子を見られるように監督としての“目力”をつけていきたい」と、残り2ヵ月弱でチームを磨き上げていく。
復活を遂げた岸本から高橋へのタスキリレー
◇第53回全日本大学駅伝(2021年11月7日/愛知・熱田神宮~三重・伊勢神宮:8区間106.8km)
優勝した駒大までわずか8秒。全区間8、つまりまさに「1人1秒」が足りなかった。3年ぶりの優勝を狙った青学大は5時間13分06秒で2位。優勝と2位の差が8秒というのは過去最小差だった。
「悔しいです。勝てるチャンスが幾度となくありました。決戦で敗れたのは残念です」。原晋監督はレース後、ストレートに打ち明ける。
志貴が好スタート、岸本が復活の走り
「勝つチャンス」は確かにあった。1区に配したのは2年生の志貴勇斗。学生駅伝初出走の志貴はトップの駒大・佐藤条二(1年)から5秒差の区間4位で走った。ここが最初の“勝てる(展開の)チャンス”でもあっただろう。ここで流れに乗りたいところだったが、2区の中村唯翔(3年)は区間14位。その悪い流れを断ち切ったのは1年時の箱根駅伝以来となる岸本大紀(3年)だった。 長くケガで戦列から離れ、昨年度は駅伝出走はなし。原監督は「不安と期待」の中で送り出した岸本が、「どんな順位でもらっても先頭に近い位置で渡すつもりだった」と、日本人トップの区間3位で10位から8位へと順位を押し上げた。さらに圧巻の走りを見せたのが4区・高橋勇輝(4年)と5区・佐藤一世(2年)。「良い位置でタスキを持ってきてくれたので、前を追っていこうと積極的に突っ込めた」という高橋が前を追う。「最後はなかなかつまらなくて苦しかった」と振り返る高橋だが、区間賞を獲得してここでも2つ順位を上げた。 昨年、ルーキーながら同じ5区を走り、区間新を打ち立てた佐藤を、原監督は「駅伝男」と評する。出雲駅伝以降は「ノーランニングの日が2、3日あった」(原監督)が、さすがの走りで連続区間賞。ここで一気に3位へ。トップの早大からは19秒、2位・順大からは2秒差だった。2度目“チャンス”。だが、6区の若林宏樹(1年)は区間12位。「でこぼこ駅伝」(原監督)となるが、青学大には流れを引き寄せる『ゲームチェンジャー』がいた。エースの近藤幸太郎(3年)だ。近藤と飯田が好走もわずか届かず
東京国際大が逃げ、順大が2番手。そこから1分以上離れて明大。近藤は猛追してきた駒大とほぼ同時にスタートする。相手は学生長距離のエース・田澤廉(3年)だ。 しばらく並走しながら前を追い、ラストは突き放されたものの、盛り返した近藤。駒大が田澤でトップに立ち、18秒差で近藤は主将の飯田貴之(4年)へとタスキをつないだ。「学生ナンバーワンの選手とほぼ同時にスタートして、互角といえる走りができました。力がついています」と指揮官はエースの走りを称える。
駒大・田澤とほぼ同時に走り出した近藤も快走した
「前半区間は苦しみましたが、優勝争いができる良い位置でつないでくれました」と飯田。8km過ぎに追いつくと、駒大との長いデッドヒートが始まる。当初は「先頭で回ってくると思っていた」が、2番手になったことで前半はやや押し気味で入る。ペースは想定内でも、やはり気持ちの面でプレッシャーはあった。「(駒大は)余裕がありそうだったので、残り1kmで仕掛けようと思っていました」。しかし、想像より早い残り2kmで駒大・花尾恭輔(2年)がロングスパート。「上り坂で余裕がなかった」飯田は、最後の“勝つチャンス”を物にできなかった。レース後は涙も見せた飯田。「主将として申し訳ない気持ちでいっぱい」と悔しがる。
登録外のメンバーも含めて「優秀なランナーが数多くいました」(原監督)。その中でも、「期待値で出した選手もいる」という。今回、思うような走りができなかった2区間もそうかもしれないし、一方で不安もあった岸本、佐藤についても同じだろう。結果的に、「今回の負けは采配ミス」と原監督。それでも、「2区間でふたケタ順位になったら優勝は難しい。その中で優勝争いに絡めたのは力がある。箱根駅伝に向けて手応えをつかみました」と、悔しさの中にも、大きな収穫もあった伊勢路となった。
2年ぶりの箱根駅伝制覇へ。指揮官は「箱根駅伝は戦えるチームだと再認識した。でこぼこ駅伝にならないように、日頃の朝練、ジョグから、(選手の)調子を見られるように監督としての“目力”をつけていきたい」と、残り2ヵ月弱でチームを磨き上げていく。 RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
-
2025.11.05
-
2025.11.05
-
2025.11.05
-
2025.11.05
-
2025.11.05
-
2025.11.05
2025.11.02
青学大が苦戦の中で3位確保!作戦不発も「力がないチームではない」/全日本大学駅伝
-
2025.11.02
-
2025.11.02
-
2025.11.03
2025.10.18
【大会結果】第102回箱根駅伝予選会/個人成績(2025年10月18日)
2025.11.02
青学大が苦戦の中で3位確保!作戦不発も「力がないチームではない」/全日本大学駅伝
-
2025.10.18
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2023.04.01
-
2022.12.20
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2025.11.05
全国高校駅伝都道府県代表出そろう 前年V佐久長聖&長野東など 最速は男女とも仙台育英 6日から地区大会順次開幕
全国高校駅伝の出場権を懸けた都道府県高校駅伝が11月4日の埼玉をもってすべて終了し、都道府県代表がすべて出そろった。 昨年の全国大会は男子が佐久長聖、女子は長野東といずれも長野勢が優勝を遂げた。全国2連覇中の佐久長聖は県 […]
2025.11.05
神戸マラソンの招待選手発表 荒生実慧、平田幸四郎らがエントリー 21年パリ優勝のロティッチも参戦
11月5日、神戸マラソンの主催者は16日に開催される神戸マラソン2025の招待選手を発表した。 国内からは、8月末のシドニーで2時間7分42秒の6位に入った荒生実慧(NDソフト)がエントリー。前回大会で日本人トップの4位 […]
2025.11.05
日本陸連と広島テレビ放送が 「スポーツを通じて誰もが自分らしく活躍できる社会づくりに関する連携協力協定」を締結
11月5日、日本陸連は広島テレビ放送株式会と「スポーツを通じて誰もが自分らしく活躍できる社会づくりに関する連携協力協定」を結んだことを発表した。陸上競技を通じて人と人をつなぎ、すべての人が心身ともに健やかで、自分らしく生 […]
2025.11.05
仙台国際ハーフの来年大会の日程が決定 国内レースによる「ジャパンプレミアハーフシリーズ」
仙台国際ハーフマラソン大会実行委員会は、2026年大会の日程が5月10日に決まったと発表した。定員は10,000人とし、エントリーは11月18日から順次開始される。 国内主要ハーフマラソン6大会が連携する「ジャパンプレミ […]
2025.11.05
「アスリート・オブ・ザ・イヤー」最終候補にデュプランティス、ライルズら12人!
世界陸連(WA)はワールド・アスレティクス・アワード2025「ワールド・アスリート・オブ・ザ・イヤー」の最終候補者を発表した。 トラック、フィールド、競技場外種目の各部門で、10月に発表された候補者の中から男女2選手ずつ […]
Latest Issue
最新号
2025年11月号 (10月14日発売)
東京世界選手権 総特集
箱根駅伝予選会&全日本大学駅伝展望