HOME 駅伝

2021.10.10

【出雲駅伝】初出場初優勝の快挙を達成! 東京国際大が見せた「留学生に頼らない駅伝」
【出雲駅伝】初出場初優勝の快挙を達成! 東京国際大が見せた「留学生に頼らない駅伝」


◇第33回出雲全日本大学選抜駅伝競走(10月10日・島根県出雲市)

東京国際大が有言実行の「初出場初優勝」を達成した。

広告の下にコンテンツが続きます

アンカーに5000mの学生記録保持者であるイェゴン・ヴィンセント(3年)を擁するだけに、ライバル校の指揮官たちがポイントに考えていたのは「アンカーに渡るまでにどれだけのリードを奪えるか」。

大志田秀次監督も、前日会見では「45秒くらい(のビハインド)なら優勝の可能性が見えてくる」と話していた。

しかし、蓋を開けてみれば、そんなことは杞憂だったと思わせるほどの圧勝劇だった。

1区の山谷昌也(3年)が3位と好位置でスタートを切ると、2区のルーキー・佐藤榛紀が順位を守り、3区の丹所健(3年)で早くも先頭を奪った。

広告の下にコンテンツが続きます

「後半はうまく切り替えられなかった。点数をつけるなら70~80点」と丹所自身は辛口評価だが、2位の創価大に29秒差をつける区間2位の好走で、日本インカレ5000m3位の実力を駅伝でも発揮した。

優勝候補筆頭に挙げられていた駒大が、この時点で52秒差の5位と出遅れたために、精神的な安心感もあったのかもしれない。4区の白井勇佑(1年)は区間5位、5区の宗像聖(3年)は区間3位とそろって好走。当初の予定と異なり、28秒の「リード」をヴィンセントにプレゼントした。

ここまで来れば、ヴィンセントはVロードを駆け抜けるだけだった。30度を超える暑さをものともしない走りで10.2kmを29分21秒で走破し、区間賞で優勝に華を添えた。

「勝つなら、逆転で勝つだろうと思っていました。天候にも助けられましたね。各校チーム、暑さ対策を考えながらのペース配分でしたので、我々にとっては都合がよかったと思っています」

「ヴィンセントに負担を掛けないようにしよう」

大志田監督はレース後、「1区の山谷で流れを作れたのが良かった」と勝因を挙げた。

山谷は茨城・水城高時代にインターハイ北関東大会を大会新で制覇するなど、大きな期待を受けて東京国際大に入学した実力者だ。トラックでは2年に10000m28分29秒36と好タイムを残していたが、2度走った全日本大学駅伝では1区で区間14位、13位と好走できなかった。

それでも、9月19日の記録会で5000m13分49秒47と自己新を刻んだことで「もう1回彼にがんばってもらいたいと思ったんです」と大志田監督。山谷は見事にその期待を応え、後続に勢いをもたらした。

前述のとおり、今大会はアンカーのヴィンセントまでにどれだけ先頭から離されないかが目標達成のカギを握っていた。

「少しでもヴィンセントに負担をかけない、というのが我々の目標でした。区間賞を取るとか、トップでいかなきゃいけないというよりは、上位のチームとどれだけの差でいけるか、そのためになるべく集団でいければいいね、という話を選手たちにはしていました」

丹所が3位からトップに押し上げる快走を見せながらも反省の弁を口にしたのは「少しでもリードを作ってあげよう」という意識があったからかもしれない。

2年前は初出場だった全日本大学駅伝で4位。箱根駅伝では5位、10位と連続でシード権を獲得するなど、チームの進化が止まらない。

「残り2つの駅伝で優勝を目指せるチーム作りができている」(大志田監督)

かつて「新興校」と呼ばれた東京国際大が、「強豪校」としての地位を確立しつつある。

◇第33回出雲全日本大学選抜駅伝競走(10月10日・島根県出雲市) 東京国際大が有言実行の「初出場初優勝」を達成した。 アンカーに5000mの学生記録保持者であるイェゴン・ヴィンセント(3年)を擁するだけに、ライバル校の指揮官たちがポイントに考えていたのは「アンカーに渡るまでにどれだけのリードを奪えるか」。 大志田秀次監督も、前日会見では「45秒くらい(のビハインド)なら優勝の可能性が見えてくる」と話していた。 しかし、蓋を開けてみれば、そんなことは杞憂だったと思わせるほどの圧勝劇だった。 1区の山谷昌也(3年)が3位と好位置でスタートを切ると、2区のルーキー・佐藤榛紀が順位を守り、3区の丹所健(3年)で早くも先頭を奪った。 「後半はうまく切り替えられなかった。点数をつけるなら70~80点」と丹所自身は辛口評価だが、2位の創価大に29秒差をつける区間2位の好走で、日本インカレ5000m3位の実力を駅伝でも発揮した。 優勝候補筆頭に挙げられていた駒大が、この時点で52秒差の5位と出遅れたために、精神的な安心感もあったのかもしれない。4区の白井勇佑(1年)は区間5位、5区の宗像聖(3年)は区間3位とそろって好走。当初の予定と異なり、28秒の「リード」をヴィンセントにプレゼントした。 ここまで来れば、ヴィンセントはVロードを駆け抜けるだけだった。30度を超える暑さをものともしない走りで10.2kmを29分21秒で走破し、区間賞で優勝に華を添えた。 「勝つなら、逆転で勝つだろうと思っていました。天候にも助けられましたね。各校チーム、暑さ対策を考えながらのペース配分でしたので、我々にとっては都合がよかったと思っています」

「ヴィンセントに負担を掛けないようにしよう」

大志田監督はレース後、「1区の山谷で流れを作れたのが良かった」と勝因を挙げた。 山谷は茨城・水城高時代にインターハイ北関東大会を大会新で制覇するなど、大きな期待を受けて東京国際大に入学した実力者だ。トラックでは2年に10000m28分29秒36と好タイムを残していたが、2度走った全日本大学駅伝では1区で区間14位、13位と好走できなかった。 それでも、9月19日の記録会で5000m13分49秒47と自己新を刻んだことで「もう1回彼にがんばってもらいたいと思ったんです」と大志田監督。山谷は見事にその期待を応え、後続に勢いをもたらした。 前述のとおり、今大会はアンカーのヴィンセントまでにどれだけ先頭から離されないかが目標達成のカギを握っていた。 「少しでもヴィンセントに負担をかけない、というのが我々の目標でした。区間賞を取るとか、トップでいかなきゃいけないというよりは、上位のチームとどれだけの差でいけるか、そのためになるべく集団でいければいいね、という話を選手たちにはしていました」 丹所が3位からトップに押し上げる快走を見せながらも反省の弁を口にしたのは「少しでもリードを作ってあげよう」という意識があったからかもしれない。 2年前は初出場だった全日本大学駅伝で4位。箱根駅伝では5位、10位と連続でシード権を獲得するなど、チームの進化が止まらない。 「残り2つの駅伝で優勝を目指せるチーム作りができている」(大志田監督) かつて「新興校」と呼ばれた東京国際大が、「強豪校」としての地位を確立しつつある。

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.12.23

箱根駅伝Stories/3度目の山で伝説を作る早大・工藤慎作 スピードに磨き「ストロングポイントとして活躍を」

新春の風物詩・第102回箱根駅伝に挑む選手やチームを取り上げる「箱根駅伝Stories」。学生三大駅伝最終決戦に向かうそれぞれの歩みや思いを紹介する。 中学では当初卓球部を希望 「いよいよ始まるなっていうところで、純粋に […]

NEWS 箱根駅伝Stories/東京国際大・大村良紀「10区で展開を作っていく走りを」 集大成の舞台で全力を出し切る

2025.12.23

箱根駅伝Stories/東京国際大・大村良紀「10区で展開を作っていく走りを」 集大成の舞台で全力を出し切る

新春の風物詩・第102回箱根駅伝に挑む選手やチームを取り上げる「箱根駅伝Stories」。学生三大駅伝最終決戦に向かうそれぞれの歩みや思いを紹介する。 競技を続けるきっかけは消去法 「大村良紀=10区」、という構図ができ […]

NEWS 箱根駅伝Stories/自信と屈辱を経てたくましく成長した中大・岡田開成 「自分がゲームチェンジャーになろう」

2025.12.23

箱根駅伝Stories/自信と屈辱を経てたくましく成長した中大・岡田開成 「自分がゲームチェンジャーになろう」

新春の風物詩・第102回箱根駅伝に挑む選手やチームを取り上げる「箱根駅伝Stories」。学生三大駅伝最終決戦に向かうそれぞれの歩みや思いを紹介する。 武者修行で変わった“基準” 中大・岡田開成(2年)にとって第101回 […]

NEWS ニューイヤー駅伝「クマ対応」発表 桐生市内一部エリアに出没例 該当区間の中止も

2025.12.23

ニューイヤー駅伝「クマ対応」発表 桐生市内一部エリアに出没例 該当区間の中止も

一般社団法人日本実業団陸上競技連合は12月23日、第70回全日本実業団対抗駅伝(ニューイヤー駅伝)の「クマ対応」について発表した。 同大会は群馬県庁スタート・フィニッシュで、前橋市、高崎市、伊勢崎氏、太田市、桐生市をめぐ […]

NEWS 短距離の竹田一平がスズキを退社「一生の宝物」今後も競技継続 中大2年時にU20代表

2025.12.23

短距離の竹田一平がスズキを退社「一生の宝物」今後も競技継続 中大2年時にU20代表

スズキは12月末をもって男子短距離の竹田一平が退社・退団すると発表した。 竹田は埼玉県出身の28歳。不動岡高時代は走幅跳や三段跳をメインにしていたが、中大から本格的にスプリントへ。大学2年だった2016年には10秒27を […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2026年1月号 (12月12日発売)

2026年1月号 (12月12日発売)

箱根駅伝観戦ガイド&全国高校駅伝総展望
大迫傑がマラソン日本新
箱根駅伝「5強」主将インタビュー
クイーンズ駅伝/福岡国際マラソン
〔新旧男子100m高校記録保持者〕桐生祥秀×清水空跳

page top