
写真/時事
◇東京五輪(7月30日~8月8日/国立競技場)陸上競技9日目
陸上競技9日目イブニングセッション、女子10000m。これが国立競技場で日本代表が東京五輪を戦う最後のレースとなった。日本から日本記録保持者の新谷仁美(積水化学)、廣中璃梨佳(日本郵政グループ)、安藤友香(ワコール)の3人が出場。快走を見せたのは、20歳の廣中だった。
「レースを楽しむんだという気持ちが強かったです」
5000mにも出場して決勝進出。14分52秒84の日本新をマークして9位と好走したのが4日前のこと。疲労がある中でも「レースに身を任せて先頭に行こうと思いました」と、廣中らしい積極的な走りで先頭に躍り出てレースを作る。
ややペースが上がって後退した5000m。トレードマークのキャップを投げてスイッチを入れ、前を追った。「ペースが上がってからは少し離れてしまいましたが、体力を見ながら前に行こうと切り替えました」。残り500mで1度は9番手まで下がったが、「ラストは気力。フォームは崩れていましたがもう気持ちで腕を振りました」。
何番手か「わからない」ほどの激走で、7位でフィニッシュ。自身3レース目の10000mで31分00秒71の日本歴代4位をマークし、1996年アトランタ五輪で千葉真子が5位、川上優子が7位に入って以来、日本人25年ぶり3人目の入賞を果たした。
「初めての舞台で海外のトップ選手と対等に戦えたのは、たくさんの励ましや応援に背中を押されて笑顔でスタートラインに立てたから。去年はなかった積極性が生まれたのが一番の収穫です」
1500mで入賞した1学年上の田中希実(豊田自動織機TC)とともに、日本女子長距離界を引っ張るたくましい若手が、さらに世界へと挑戦を続けていく。

写真/時事
2012年ロンドン大会以来となる五輪に臨んだ新谷。しかし、世界のレースに対応できない。2000mを前にトップ集団から遅れると、その後はいつものような軽やかさがなかった。
最後は苦しそうに顔を歪めてフィニッシュ。結果は32分23秒87で21位だった。
「何度も何度も逃げたくなったんですけど、そのたびに何度も何度も前を向かせてくれる人たちの応援があったので、途中であきらめそうになっても走り切るということだけはできたのかなと思います」
大粒の汗とともに涙が止まらなかった。
2012年ロンドン五輪は日本歴代3位(当時)の30分59秒19で9位。翌年のモスクワ世界選手権は3500m付近で先頭に立つと、9500m付近までトップを引っ張り、自己新の30分56秒70で5位入賞を果たした。
その後、一度は引退するが、約4年半のブランクを経てレースに復帰。2019年ドーハ世界選手権10000mに参戦すると、昨年12月の日本選手権では日本記録を約28秒も更新する30分20秒44と爆走した。東京五輪の快走に大きな期待が寄せられていたが、今季は調子が上がっていなかった。
「多くの方々からたくさん応援をしていただいた中でも、どんなときでも味方でいてくれる横田コーチがいたので、最後は横田コーチが待っていてくれると思って走りました」
これまでサポートを受けてきた横田真人コーチに感謝した。
「結果を出すことができなかったところが、つくづく私の弱さ。本当にすみません」と言葉を絞り出す姿に、相当な覚悟を持っていたことが見て取れた。
安藤にとっても厳しい戦いが待っていた。
2000m過ぎにトップ集団から遅れると、その後もうまくペースをつかむことができない。残り2周を迎えるあたりで、ハッサン(オランダ)が勢いよくフィニッシュに駆け込んだ。安藤は32分40秒77の22位でレースを終えた。
「ただただ自分が不甲斐ない走りをしたので申し訳ない。まわりの人の支えがあって、この場所に立つことができています。とても貴重な体験をさせてもらったので、これを無駄にしないようにしてマラソンに挑戦していきたいです」
マラソンでの東京五輪出場を狙っていた安藤は昨年3月の名古屋ウィメンズマラソンで2位(2時間22分41秒)に入った。しかし、チームメイトの一山麻緒が日本歴代4位の2時間20分29秒で優勝。最後の1枠を後輩に譲るかたちになった。
そこから10000m代表に狙いを切り替えると、5月3日の日本選手権で好走。五輪参加標準記録(31分25秒00)を突破する31分18秒18で2位に食い込み、五輪代表をつかみ取った。
「マラソンがダメで10000mに切り替えたときにサポートしていただいた方々に感謝の気持ちを伝えたいですね。この大会で得たものはすごく大きいものがあると思うので、それを走りで表現していきたいです」
東京五輪を目指すなかで培った10000mのスピードを今度はマラソンで生かすことだろう。
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◇東京五輪(7月30日~8月8日/国立競技場)陸上競技9日目
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「レースを楽しむんだという気持ちが強かったです」
5000mにも出場して決勝進出。14分52秒84の日本新をマークして9位と好走したのが4日前のこと。疲労がある中でも「レースに身を任せて先頭に行こうと思いました」と、廣中らしい積極的な走りで先頭に躍り出てレースを作る。
ややペースが上がって後退した5000m。トレードマークのキャップを投げてスイッチを入れ、前を追った。「ペースが上がってからは少し離れてしまいましたが、体力を見ながら前に行こうと切り替えました」。残り500mで1度は9番手まで下がったが、「ラストは気力。フォームは崩れていましたがもう気持ちで腕を振りました」。
何番手か「わからない」ほどの激走で、7位でフィニッシュ。自身3レース目の10000mで31分00秒71の日本歴代4位をマークし、1996年アトランタ五輪で千葉真子が5位、川上優子が7位に入って以来、日本人25年ぶり3人目の入賞を果たした。
「初めての舞台で海外のトップ選手と対等に戦えたのは、たくさんの励ましや応援に背中を押されて笑顔でスタートラインに立てたから。去年はなかった積極性が生まれたのが一番の収穫です」
1500mで入賞した1学年上の田中希実(豊田自動織機TC)とともに、日本女子長距離界を引っ張るたくましい若手が、さらに世界へと挑戦を続けていく。
写真/時事
2012年ロンドン大会以来となる五輪に臨んだ新谷。しかし、世界のレースに対応できない。2000mを前にトップ集団から遅れると、その後はいつものような軽やかさがなかった。
最後は苦しそうに顔を歪めてフィニッシュ。結果は32分23秒87で21位だった。
「何度も何度も逃げたくなったんですけど、そのたびに何度も何度も前を向かせてくれる人たちの応援があったので、途中であきらめそうになっても走り切るということだけはできたのかなと思います」
大粒の汗とともに涙が止まらなかった。
2012年ロンドン五輪は日本歴代3位(当時)の30分59秒19で9位。翌年のモスクワ世界選手権は3500m付近で先頭に立つと、9500m付近までトップを引っ張り、自己新の30分56秒70で5位入賞を果たした。
その後、一度は引退するが、約4年半のブランクを経てレースに復帰。2019年ドーハ世界選手権10000mに参戦すると、昨年12月の日本選手権では日本記録を約28秒も更新する30分20秒44と爆走した。東京五輪の快走に大きな期待が寄せられていたが、今季は調子が上がっていなかった。
「多くの方々からたくさん応援をしていただいた中でも、どんなときでも味方でいてくれる横田コーチがいたので、最後は横田コーチが待っていてくれると思って走りました」
これまでサポートを受けてきた横田真人コーチに感謝した。
「結果を出すことができなかったところが、つくづく私の弱さ。本当にすみません」と言葉を絞り出す姿に、相当な覚悟を持っていたことが見て取れた。
安藤にとっても厳しい戦いが待っていた。
2000m過ぎにトップ集団から遅れると、その後もうまくペースをつかむことができない。残り2周を迎えるあたりで、ハッサン(オランダ)が勢いよくフィニッシュに駆け込んだ。安藤は32分40秒77の22位でレースを終えた。
「ただただ自分が不甲斐ない走りをしたので申し訳ない。まわりの人の支えがあって、この場所に立つことができています。とても貴重な体験をさせてもらったので、これを無駄にしないようにしてマラソンに挑戦していきたいです」
マラソンでの東京五輪出場を狙っていた安藤は昨年3月の名古屋ウィメンズマラソンで2位(2時間22分41秒)に入った。しかし、チームメイトの一山麻緒が日本歴代4位の2時間20分29秒で優勝。最後の1枠を後輩に譲るかたちになった。
そこから10000m代表に狙いを切り替えると、5月3日の日本選手権で好走。五輪参加標準記録(31分25秒00)を突破する31分18秒18で2位に食い込み、五輪代表をつかみ取った。
「マラソンがダメで10000mに切り替えたときにサポートしていただいた方々に感謝の気持ちを伝えたいですね。この大会で得たものはすごく大きいものがあると思うので、それを走りで表現していきたいです」
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