写真/時事
◇東京五輪(7月30日~8月8日/国立競技場)陸上競技4日目
男子走幅跳で決勝に進んだ橋岡優輝(富士通)。「最低メダル」と臨んだ舞台は、8m10(±0.0)で6位だった。
メダリストたちが国旗を掲げて写真撮影する姿をじっと見つめる。「何も考えられなかったというのが素直なところ」。関係者から国旗を渡されたが、入賞で背負うことはできなかった。
結果的に、優勝記録は8m41、メダルは8m21。自己記録8m36を持ち、8m50を目指していた橋岡にとっては十分位狙える場所だった。だが、世界の壁は高かった。
「一言、悔しい」
37年ぶり入賞は快挙。日本の走幅跳の歴史を動かしてきた橋岡がまた一つ成し遂げたのだが、目指してきた場所とは違った。
持ち味の助走が「噛み合わなかった」。中盤で「少し身体が浮いてしまった。鋭さに欠けていた」と振り返る。これまでポイントに置いて取り組んできたところが噛み合わず、踏み切りに向かう局面で勢いに欠いた。
予選で8m17と1回で通過記録(8m15)を越えたが、「オリンピックということもあって疲労感が違った」とも。メダルを獲得したのは2016年、初めてU20世界選手権に出場(10位)した時に一緒に戦った同世代の面々で、これまでずっと意識してきた相手たち。この5年間、橋岡は大きく成長したが、同じかそれ以上に世界の強豪もしのぎを削る中で強くなっている。
「もっと海外の選手と知り合ってラフな雰囲気で試合に臨む必要があると感じました。来年は海外を拠点にして転戦したい」。記録や技術とは違う、大きな差を感じ取ったに違いない。だからこそ、海を渡らなければ、と感じたのだろう。
これまで順調にキャリアを積んできた橋岡だが、成長の原動力は「悔しさ」。U20世界選手権で世界との差を感じた2年後のU20世界選手権で橋岡は史上初の金メダリストになった。ユニバーシアードは世界一になっているが、その2年前は代表になりながら肉離れで出場できていない。アジア大会で4位に敗れた悔しさを次につなげたのが、アジア選手権の金メダル。橋岡は「2度目」に絶対に同じ失敗はしない。
19年ドーハ世界選手権で決勝8位と初入賞したが、予選の記録(8m07)を決勝で上回れず7m97にとどまった。2度目の世界となった東京五輪では順位を2つ上げて8m10と意地を見せた。2度目の世界選手権は来年ユージンで、2度目の五輪は3年後パリで待っている。
東京五輪のこの悔しさは、橋岡がもっともっと強い、世界一のロングジャンパーになるための大きなステップになる。
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