◇第97回箱根駅伝(東京・大手町~神奈川・箱根町/10区間217.1km)
往路優勝を成し遂げた前日の勢いそのままに飛び出した創価大。約5時間後に劇的な展開が待っていようとは誰も予想できなかった。
「1位でスタートすると思っていなかった」という6区の濱野将基(2年)は「目標だった58分台で走れた」と区間7位となる58分49秒で山を駆け下りた。続く原富慶季(4年)、永井大育(3年)と駒大、東洋大らの追走をしのぐと、9区では石津佳晃(4年)が1時間8分14秒の区間新記録。「前回(9区区間6位)のリベンジ。前半から突っ込んでいい記録を狙いにいった」という石津の記録は区間歴代4位の好走だった。これで勝負あり、かに思われた。
しかし、10区・小野寺勇樹(3年)の表情がゆがみ、明らかにペースダウン。駒大の石川拓慎(3年)の激走を前に、20.8kmで追いつかれ、かわされた。初の総合優勝が目の前でスルリと逃したが、小野寺は懸命にタスキをフィニッシュまで運ぶ。出場4回目、往路優勝、復路5位、総合2位。快挙と言える217.1kmの継走だった。大会の目標は総合3位。
榎木和貴監督は「選手たちが目標に向かってしっかり走ってくれた」と選手たちを称える。創価大は前回9位に入って初めてシード権を獲得した。だが、出場権を持っていた出雲駅伝がコロナ禍により中止となり、初出場を狙った全日本大学駅伝は記録による書類選考で落選。その分、箱根駅伝に向けて調整を続け本番を迎えた。
往路優勝にも、「優勝という言葉は出さずに100%の力を出そう。目標の3位は最低限クリアしよう」と声をかけて送り出した榎木監督。そして、「楽しんでこい」と。
石津は「一人ひとり成長していて、考える力がついた。総合3位も本当に取れるのかなと思っていましたが、全体的な意識が上がったことが大きいです」とチームとしての成長を感じ取っている。
榎木監督自身、中大時代に箱根駅伝では4年連続区間賞(8区、8区、4区、4区)を達成し、3年時には総合優勝を経験。そんな指揮官だからこそ、勝負の厳しさも十分に理解している。榎木監督が常々口にするのが「タイムではなく、人が走るんだ」という言葉。「27分台の選手だから負けたというのではなく、その場でいる選手が走るわけですから、自分の走りに徹すれば27分台の選手にも勝てるチャンスがあるということを言い続けてきました。まさに9区まではそういう走りをしてくれたと思います」。
そして、小野寺に対して、「レース前の段階では体調に問題はなかった。優勝のプレッシャーもあったのかな……。力がなかったのだと思います」と言い、「今日の悔しさを一生忘れることなく、今後の競技に生かしてほしいです。この経験があったからこそ、将来の小野寺があるんだと言えるくらいに次に生かしてほしいです」を思いやった。
10人中7人が残る次年度。「優勝争いは上出来すぎる。走った選手はよく頑張ったと思います。まずは3位をもう1回クリアできるようにチーム作りをしていきたい」(榎木監督)。箱根路に新たに吹き抜けた創価大旋風は、確かに人々の胸に刻まれた。
■創価大のメンバー
1区 福田 悠一(4年)1.03.15(区間3位/通過3位)
2区 フィリップ・ムルワ(2年)1.07.18(区間6位/通過2位)
3区 葛西 潤(2年)1.02.41(区間3位/通過2位)
4区 島津 雄大(3年)1.02.49(区間2位/通過1位)
5区 三上 雄太(3年)1.12.05(区間2位/通過1位)
6区 濱野 将基(2年)58.49(区間7位/通過1位)
7区 原富 慶季(4年)1.03.12(区間2位/通過1位)
8区 永井 大育(3年)1.05.10(区間8位/通過1位)
9区 石津 佳晃(4年)1.08.14(区間1位/通過1位)
10区 小野寺勇樹(3年)1.13.23(区間20位/通過2位)
|
|
RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking 人気記事ランキング
-
2025.01.19
-
2025.01.19
-
2025.01.19
-
2025.01.19
2025.01.14
創価大が来春入学の長距離10人を発表! 西脇工・衣川勇太、倉敷・大倉凰來ら
2025.01.19
【大会結果】第30回全国都道府県対抗男子駅伝(2025年1月19日)
-
2025.01.15
-
2025.01.19
2024.12.22
早大に鈴木琉胤、佐々木哲の都大路区間賞2人が来春入学!女子100mH谷中、松田ら推薦合格
-
2024.12.22
-
2024.12.30
-
2025.01.12
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2022.12.20
-
2023.04.01
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2025.01.19
米国の室内競技会シーズンが本格スタート ダイヤモンドアスリートの澤田結弥、U20日本選手権優勝の樋口諒も出場
米国では1月17日、18日を中心に各地で大学主催の室内競技会が開催。室内シーズンが本格的にスタートした。 日本のインカレにあたるNCAA(全米大学体育協会)では、9月から11月末にかけてクロスカントリー、12月中旬から3 […]
2025.01.19
リオ五輪5000mファイナリスト・上原美幸が最後の駅伝に出場 3月の鹿児島マラソンが引退レース
1月19日に行われた選抜女子駅伝北九州に、上原美幸(鹿児島銀行)が所属チームで出場する最後の駅伝として2区に出場した。 上原は1995年生まれの29歳。鹿児島・ 皇徳寺中から陸上を始め、鹿児島女高では1年目からインターハ […]
2025.01.19
神村学園高が逆転で3年連続6回目のV 一般の部は京セラが22年ぶり2回目の優勝/選抜女子駅伝北九州
◇第36回選抜女子駅伝北九州(1月19日/福岡・小倉城歴史の道広場発着) 選抜女子駅伝北九州が1月19日に行われ、高校の部は神村学園(鹿児島)が1時間28分15秒の大会新記録で3年連続6回目の優勝を飾り、一般の部は京セラ […]
2025.01.19
「長野の歴史を作ってくれた多くの方のおかげ」 長野が圧倒的な継走で11回目の優勝 高見澤監督「佐々木は想像以上」/都道府県男子駅伝
◇天皇盃第30回全国都道府県対抗男子駅伝(1月19日/広島・平和記念公園前発着:7区間48km) 中学生から高校生、社会人・大学生のランナーがふるさとのチームでタスキをつなぐ都道府県男子駅伝が行われ、長野が2時間16分5 […]
2025.01.19
長野が圧巻の4連覇!千葉が過去最高の2位、3位・福島、地元広島が4位/都道府県男子駅伝
◇天皇盃第30回全国都道府県対抗男子駅伝(1月19日/広島・平和記念公園前発着:7区間48km) 中学生から高校生、社会人・大学生のランナーがふるさとのチームでタスキをつなぐ都道府県男子駅伝が行われ、長野が2時間16分5 […]
Latest Issue 最新号
2025年2月号 (1月14日発売)
駅伝総特集!
箱根駅伝
ニューイヤー駅伝
高校駅伝、中学駅伝
富士山女子駅伝