HOME ニュース、国内

2020.12.25

【長距離】新谷仁美が「勝負」の2021年へスタート、東京五輪では「自分の土俵に持っていく」
【長距離】新谷仁美が「勝負」の2021年へスタート、東京五輪では「自分の土俵に持っていく」

東京五輪女子10000m代表の新谷仁美(積水化学)が12月25日、メディアに練習を公開した。

12月4日の日本選手権で30分20秒44と、従来の日本記録を30秒近く短縮する激走を見せた新谷。それから3週間が経ち、「短い期間ですがオフを入れてから、ベースを作り直している段階」だという。

この日は前日にポイント練習を入れたということもあり、「リズムを重視した」12000mのペース走(1000m3分30~40秒ペース)と、3kgのダイナマックスソフトメディシンボールを使った補強を実施。つなぎの練習とは思えない、高い集中力を持って取り組んだ。

1月のハーフマラソン(米国・ヒューストン)での日本新(1時間6分38秒)から始まり、10000mの日本新で締めくくった2020年。「総合的に見れば、『記録』につながった1年だったかもしれません」と新谷は振り返る。

しかし、その間にはコロナ禍、東京五輪の1年延期などもあり、「本来であれば『勝負』の1年」だったものの、それどころではない状況でもあった。ただ、新谷自身は常々語るように「やるべきことをやってきました」。

広告の下にコンテンツが続きます

そのうえで、「勝負をして、勝てた試合があまりなかった」という思いがある。再びやって来る「勝負の1年」に向けて、思い描くレースのために、また厳しいトレーニングに打ち込む覚悟だ。

今後は国内を拠点に自分自身を鍛え上げ、海外レースの開催情報へ常にアンテナを張りながら、スケジュールを調整していくという。五輪本番へのプランは、「5000mの日本記録(14分53秒22)を更新すること」が一番のポイントに挙げた。

それを春先にクリアできれば、ハーフマラソンなどの長い距離を踏みつつ、3000mなど中距離でスピードを磨く。口で言うほど簡単なことではないが、「うまくコントロールしながらやっていきたい」と新谷。その力を集約させるのが、10000mだ。東京五輪で「メダル」を獲得するためのレースプランとは――。

「これまで世界大会を経験して、単純にスピードを身につけるだけでは勝負にならない、(スピードで優る)相手の土俵になると感じています。だから、まずは総合的なタイムを上げたうえで、最初から自分の土俵へ持っていく走りをする。世界は29分30秒というレベルですが、29分台は世界でもまだ少数です。最初から1000m3分を切るペースで9000mまでいけば、後ろについてくる選手はそれほど多くないと思います。それが2人であれば銅メダル、1人であれば銀メダルになるはずです」

10000mで日本人初の29分台を出せるほどの高いスピードを身につけていくことは大前提として、自らの強みである「リズム」の水準を「1000m3分切り」に上げることが、これからの課題。しかも、それを東京の夏に最後まで維持し続けなければならない。

以前は取り組んでこなかった長い距離の走り込みも厭わず、これまで経験したことのなかったフィジカルトレーニングでも男子並みの負荷を姿勢を崩さず実施できるまでになった。東京五輪までに、できることはすべてやる。どんな準備をしても、レースに出る前には逃げ出したくなる。それでも、逃げない。

「仕事である以上、結果を求められている以上はどんなことをしても結果を取りに行きます。試合前がどんな状態でもやる時はやるので、期待していてほしい」

新谷は笑顔で、きっぱりと語った。

文/小川雅生

東京五輪女子10000m代表の新谷仁美(積水化学)が12月25日、メディアに練習を公開した。 12月4日の日本選手権で30分20秒44と、従来の日本記録を30秒近く短縮する激走を見せた新谷。それから3週間が経ち、「短い期間ですがオフを入れてから、ベースを作り直している段階」だという。 この日は前日にポイント練習を入れたということもあり、「リズムを重視した」12000mのペース走(1000m3分30~40秒ペース)と、3kgのダイナマックスソフトメディシンボールを使った補強を実施。つなぎの練習とは思えない、高い集中力を持って取り組んだ。 1月のハーフマラソン(米国・ヒューストン)での日本新(1時間6分38秒)から始まり、10000mの日本新で締めくくった2020年。「総合的に見れば、『記録』につながった1年だったかもしれません」と新谷は振り返る。 しかし、その間にはコロナ禍、東京五輪の1年延期などもあり、「本来であれば『勝負』の1年」だったものの、それどころではない状況でもあった。ただ、新谷自身は常々語るように「やるべきことをやってきました」。 そのうえで、「勝負をして、勝てた試合があまりなかった」という思いがある。再びやって来る「勝負の1年」に向けて、思い描くレースのために、また厳しいトレーニングに打ち込む覚悟だ。 今後は国内を拠点に自分自身を鍛え上げ、海外レースの開催情報へ常にアンテナを張りながら、スケジュールを調整していくという。五輪本番へのプランは、「5000mの日本記録(14分53秒22)を更新すること」が一番のポイントに挙げた。 それを春先にクリアできれば、ハーフマラソンなどの長い距離を踏みつつ、3000mなど中距離でスピードを磨く。口で言うほど簡単なことではないが、「うまくコントロールしながらやっていきたい」と新谷。その力を集約させるのが、10000mだ。東京五輪で「メダル」を獲得するためのレースプランとは――。 「これまで世界大会を経験して、単純にスピードを身につけるだけでは勝負にならない、(スピードで優る)相手の土俵になると感じています。だから、まずは総合的なタイムを上げたうえで、最初から自分の土俵へ持っていく走りをする。世界は29分30秒というレベルですが、29分台は世界でもまだ少数です。最初から1000m3分を切るペースで9000mまでいけば、後ろについてくる選手はそれほど多くないと思います。それが2人であれば銅メダル、1人であれば銀メダルになるはずです」 10000mで日本人初の29分台を出せるほどの高いスピードを身につけていくことは大前提として、自らの強みである「リズム」の水準を「1000m3分切り」に上げることが、これからの課題。しかも、それを東京の夏に最後まで維持し続けなければならない。 以前は取り組んでこなかった長い距離の走り込みも厭わず、これまで経験したことのなかったフィジカルトレーニングでも男子並みの負荷を姿勢を崩さず実施できるまでになった。東京五輪までに、できることはすべてやる。どんな準備をしても、レースに出る前には逃げ出したくなる。それでも、逃げない。 「仕事である以上、結果を求められている以上はどんなことをしても結果を取りに行きます。試合前がどんな状態でもやる時はやるので、期待していてほしい」 新谷は笑顔で、きっぱりと語った。 文/小川雅生

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.04.30

【連載】上田誠仁コラム雲外蒼天/第56回「昭和100年とスポーツ用具の進化」

山梨学大の上田誠仁顧問の月陸Online特別連載コラム。これまでの経験や感じたこと、想いなど、心のままに綴っていただきます! 第56回「昭和100年とスポーツ用具の進化」 昨年は記念大会となる第100回箱根駅伝が開催され […]

NEWS 【高校生FOCUS】男子競歩・山田大智(西脇工高)インターハイで昨夏の雪辱誓う 高校記録更新にも挑戦

2025.04.30

【高校生FOCUS】男子競歩・山田大智(西脇工高)インターハイで昨夏の雪辱誓う 高校記録更新にも挑戦

FOCUS! 高校生INTERVIEW 山田大智 Yamada Daichi 西脇工高3兵庫 2025年シーズンが本格的に始まり、高校陸上界では記録会、競技会が次々と開かれています。その中で好記録も生まれており、男子50 […]

NEWS 5.3静岡国際、パリ五輪代表の坂井隆一郎、200m世界陸上標準突破の水久保漱至らが欠場

2025.04.30

5.3静岡国際、パリ五輪代表の坂井隆一郎、200m世界陸上標準突破の水久保漱至らが欠場

5月3日に行われる静岡国際のエントリーリストが更新され、現時点で欠場届を提出した選手が判明した。 男子100mはパリ五輪代表の坂井隆一郎(大阪ガス)が欠場。坂井は4月13日の出雲陸上で脚を痛め、29日の織田記念の出場も見 […]

NEWS 26年ブダペスト開催の「世界陸上アルティメット選手権」やり投・北口榛花が出場権獲得

2025.04.30

26年ブダペスト開催の「世界陸上アルティメット選手権」やり投・北口榛花が出場権獲得

世界陸連(WA)は4月29日、2026年に新設する「世界陸上アルティメット選手権」の大会500日前を受け、昨年のパリ五輪の金メダリストに出場資格を与えることを発表した。女子やり投で金メダルを獲得した北口榛花(JAL)も含 […]

NEWS 100mH寺田明日香 恩師の訃報に「熱意と愛情を少しでも次の世代へ引き継げるように」

2025.04.30

100mH寺田明日香 恩師の訃報に「熱意と愛情を少しでも次の世代へ引き継げるように」

福島千里や寺田明日香ら女子短距離を中心に数々の名選手を育成した中村宏之氏が4月29日に79歳で他界したことを受け、寺田が自身のSNSを更新して思いを綴った。 寺田は北海道・恵庭北高時代に中村氏の指導を受け、100mハード […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2025年4月号 (3月14日発売)

2025年4月号 (3月14日発売)

東京世界選手権シーズン開幕特集
Re:Tokyo25―東京世界陸上への道―
北口榛花(JAL) 
三浦龍司(SUBARU)
赤松諒一×真野友博
豊田 兼(トヨタ自動車)×高野大樹コーチ
Revenge
泉谷駿介(住友電工)

page top