2020.12.24
箱根駅伝直前Special
学生長距離Close-up
小袖英人
Kosode Hideto(明治大学4年)
「月陸Online」限定で大学長距離選手のインタビューを毎月お届けする「学生長距離Close-upインタビュー」。12月は箱根駅伝直前Specialと題し、8チームの選手・監督のインタビュー記事を掲載していく。
第6回目は、11月の全日本大学駅伝でトップ3に食い込んだ明大から、最上級生としてチームを牽引する小袖英人をピックアップ。端正な顔立ちとスマートな走りから、挫折やスランプに苦しむ姿を連想しにくいが、ここまで順風満帆な大学生活を送ってきたわけではない。むしろ悔しい思いをいくつも重ねながら、チームの主軸へと成長を遂げてきた。
大六野秀畝にあこがれて明大へ
青森・八戸学院光星高時代からロードよりもトラックが得意だった小袖英人(4年)には、多くのスピードランナーが箱根駅伝で活躍していた明大が眩しく見えた。
「明治はトラックでスピード練習をガンガンやっているイメージがあったので、自分に合っているんじゃないかな、と。特に大六野さん(秀畝/現・旭化成)に憧れていて、ああいう選手になりたいと思ったことが明治に進むきっかけでした」
高3時に5000mでインターハイ17位、国体少年A15位の成績を残して入学した小袖。トラックで活躍することはもちろん、箱根駅伝を走ることも大学での目標の1つだった。
インターハイ5000mで決勝に進出するなど高校時代からトラックが得意だった小袖
しかし、“箱根の壁”は高く険しかった。初めて臨んだ1年時の予選会で、明大は主力の欠場やレース中の転倒による途中棄権といったアクシデントが重なり、9年続けてきた本戦出場を逃した。小袖もチーム11番手に沈み、「チームに迷惑をかけて、情けない気持ちでいっぱいでした」と自身の力不足を実感する。「もっと強い選手になりたい」と決意したのはこの頃だった。
2年目に入ると、主要大会への出場機会が増えていった。秋の箱根予選会ではチーム2番手に食い込み、明大の2年ぶり本戦復帰に大きく貢献。全日本大学駅伝では学生駅伝デビュー(4区区間9位)を果たし、10000mの自己記録は28分台(28分54秒75)に突入した。
ところが、今度は“箱根の壁”が目の前に立ちはだかる。7区で箱根駅伝デビューを果たしたものの、終盤に低血糖症に陥って失速し、区間18位。チームもちぐはぐな継走で17位に終わった。
「あの時の箱根駅伝でうまく走れなかったことが本当に悔しかった。それを糧に成長できた側面もあるので、良い経験だったとも思っています」
その言葉通り、3年時は主要大会に出るだけではなく、しっかりと結果も残してきた。5000mで13分52秒75の自己ベストをマークし、関東インカレ1部10000mでは8位入賞。1学年先輩の絶対的エース・阿部弘輝(現・住友電工)が本調子でない時の練習では、「自分ががんばらないと」と率先してチームメイトを引っ張った。後輩への声掛けも欠かさないようになるなど視野も広がり、小袖はもはやチームに不可欠な存在となっていた。
全日本大学駅伝と箱根駅伝では、ともに1区という重要な区間を任され、チームに良い流れをもたらした。ただ、チーム8番手に終わった予選会での不振や箱根本戦前の故障など、真のエースになるために改善しなければならない課題も残った。チームが5年ぶりのシード権獲得に沸いた箱根本戦も、1区10位という結果に小袖自身は納得していない。
「15km過ぎまで先頭集団についていきましたが、ラストの六郷橋の上りで離されてズルズル行ってしまいました。自分がもうちょっと粘っていれば、2区の加藤(大誠/現2年)ももっと楽に走れただろうし、チームの順位も変わってきたと思うので、心残りというか悔しかった部分はあります」
好調のチームメイトに刺激受ける
迎えた今シーズン。小袖は、阿部が卒業して抜けたエースの座に自分が就くのだと、意気込んで大学最後のシーズンを迎えた。当初の目標は「前半シーズンはトラックでがんばること。5000mで13分30秒前半ぐらいを出せれば、日本選手権でも戦える」と考えていた。
そんな折に、コロナ禍という未曽有の事態がすべてを大きく狂わせる。予定されていた試合は軒並み中止や延期を余儀なくされ、練習さえ今までのようにはできない時期が続いた。
「試合がなくなり、正直、自分の中で気持ちが切れてしまいました。練習も最低限しかできず、なんとなく日常を過ごしながら、『走っていて意味があるんだろうか』と思ったこともあります。ようやくチームが集合し始めた7月のある朝、20km走で自分だけが遅れてしまい、山本(佑樹駅伝)監督から『そんなんじゃエースは務まらないぞ』と言われて、スイッチが入りました」
夏合宿以降は徐々に調子が戻り、10月に5000mで13分46秒56、11月に10000mで28分29秒88と、いずれも自己新をマークした。チーム全体も秋から絶好調で、自己記録を更新する者が続出。夏までは2種目ともにチームトップだった小袖も、ここに来て5000mがチーム3番手、10000mが同4番手に下がったが、その分「チームメイトから刺激をもらっている」と笑顔で話す。
「みんなが今までにないくらい良いタイムが出ていますし、主力だった選手も下からの突き上げを感じて、もっとがんばろうという気持ちになっています。チームの雰囲気はとても良いと思います」
全日本大学駅伝ではこれまでの主力と新戦力が融合し、見事な3位フィニッシュ。2区で出走した小袖も3人抜きで首位争いを演じるなど、「初めて駅伝でトップを走れたのは自分にとってもプラスになりましたし、箱根駅伝につながる」と確かな手応えをつかんだ。
自身最後となるその箱根路は、1区か3区を希望している。「1区は自分が一番経験があって、そこで流れを作りたいです。3区は自分に一番合っているコースかなと。ただ、どの区間になるにしても、最後はチームに貢献して終わりたい。前回の阿部さんも4年目で初めて区間賞を取ったので、自分も区間賞を取って卒業したいと思っています」
秋シーズンに俄然、存在感を増してきた明大。そのキーパーソンの1人でもある小袖が、まずは序盤区間でチームを勢いづかせる。
◎こそで・ひでと/1998年5月5日生まれ。岩手県出身。171cm、51kg。三崎中(岩手)→八戸学院光星高(青森)→明大。5000m13分46秒56、10000m28分29秒88
文/小野哲史
「月陸Online」限定で大学長距離選手のインタビューを毎月お届けする「学生長距離Close-upインタビュー」。12月は箱根駅伝直前Specialと題し、8チームの選手・監督のインタビュー記事を掲載していく。
第6回目は、11月の全日本大学駅伝でトップ3に食い込んだ明大から、最上級生としてチームを牽引する小袖英人をピックアップ。端正な顔立ちとスマートな走りから、挫折やスランプに苦しむ姿を連想しにくいが、ここまで順風満帆な大学生活を送ってきたわけではない。むしろ悔しい思いをいくつも重ねながら、チームの主軸へと成長を遂げてきた。
大六野秀畝にあこがれて明大へ
青森・八戸学院光星高時代からロードよりもトラックが得意だった小袖英人(4年)には、多くのスピードランナーが箱根駅伝で活躍していた明大が眩しく見えた。 「明治はトラックでスピード練習をガンガンやっているイメージがあったので、自分に合っているんじゃないかな、と。特に大六野さん(秀畝/現・旭化成)に憧れていて、ああいう選手になりたいと思ったことが明治に進むきっかけでした」 高3時に5000mでインターハイ17位、国体少年A15位の成績を残して入学した小袖。トラックで活躍することはもちろん、箱根駅伝を走ることも大学での目標の1つだった。
インターハイ5000mで決勝に進出するなど高校時代からトラックが得意だった小袖
しかし、“箱根の壁”は高く険しかった。初めて臨んだ1年時の予選会で、明大は主力の欠場やレース中の転倒による途中棄権といったアクシデントが重なり、9年続けてきた本戦出場を逃した。小袖もチーム11番手に沈み、「チームに迷惑をかけて、情けない気持ちでいっぱいでした」と自身の力不足を実感する。「もっと強い選手になりたい」と決意したのはこの頃だった。
2年目に入ると、主要大会への出場機会が増えていった。秋の箱根予選会ではチーム2番手に食い込み、明大の2年ぶり本戦復帰に大きく貢献。全日本大学駅伝では学生駅伝デビュー(4区区間9位)を果たし、10000mの自己記録は28分台(28分54秒75)に突入した。
ところが、今度は“箱根の壁”が目の前に立ちはだかる。7区で箱根駅伝デビューを果たしたものの、終盤に低血糖症に陥って失速し、区間18位。チームもちぐはぐな継走で17位に終わった。
「あの時の箱根駅伝でうまく走れなかったことが本当に悔しかった。それを糧に成長できた側面もあるので、良い経験だったとも思っています」
その言葉通り、3年時は主要大会に出るだけではなく、しっかりと結果も残してきた。5000mで13分52秒75の自己ベストをマークし、関東インカレ1部10000mでは8位入賞。1学年先輩の絶対的エース・阿部弘輝(現・住友電工)が本調子でない時の練習では、「自分ががんばらないと」と率先してチームメイトを引っ張った。後輩への声掛けも欠かさないようになるなど視野も広がり、小袖はもはやチームに不可欠な存在となっていた。
全日本大学駅伝と箱根駅伝では、ともに1区という重要な区間を任され、チームに良い流れをもたらした。ただ、チーム8番手に終わった予選会での不振や箱根本戦前の故障など、真のエースになるために改善しなければならない課題も残った。チームが5年ぶりのシード権獲得に沸いた箱根本戦も、1区10位という結果に小袖自身は納得していない。
「15km過ぎまで先頭集団についていきましたが、ラストの六郷橋の上りで離されてズルズル行ってしまいました。自分がもうちょっと粘っていれば、2区の加藤(大誠/現2年)ももっと楽に走れただろうし、チームの順位も変わってきたと思うので、心残りというか悔しかった部分はあります」
好調のチームメイトに刺激受ける
迎えた今シーズン。小袖は、阿部が卒業して抜けたエースの座に自分が就くのだと、意気込んで大学最後のシーズンを迎えた。当初の目標は「前半シーズンはトラックでがんばること。5000mで13分30秒前半ぐらいを出せれば、日本選手権でも戦える」と考えていた。 そんな折に、コロナ禍という未曽有の事態がすべてを大きく狂わせる。予定されていた試合は軒並み中止や延期を余儀なくされ、練習さえ今までのようにはできない時期が続いた。 「試合がなくなり、正直、自分の中で気持ちが切れてしまいました。練習も最低限しかできず、なんとなく日常を過ごしながら、『走っていて意味があるんだろうか』と思ったこともあります。ようやくチームが集合し始めた7月のある朝、20km走で自分だけが遅れてしまい、山本(佑樹駅伝)監督から『そんなんじゃエースは務まらないぞ』と言われて、スイッチが入りました」 夏合宿以降は徐々に調子が戻り、10月に5000mで13分46秒56、11月に10000mで28分29秒88と、いずれも自己新をマークした。チーム全体も秋から絶好調で、自己記録を更新する者が続出。夏までは2種目ともにチームトップだった小袖も、ここに来て5000mがチーム3番手、10000mが同4番手に下がったが、その分「チームメイトから刺激をもらっている」と笑顔で話す。 「みんなが今までにないくらい良いタイムが出ていますし、主力だった選手も下からの突き上げを感じて、もっとがんばろうという気持ちになっています。チームの雰囲気はとても良いと思います」 全日本大学駅伝ではこれまでの主力と新戦力が融合し、見事な3位フィニッシュ。2区で出走した小袖も3人抜きで首位争いを演じるなど、「初めて駅伝でトップを走れたのは自分にとってもプラスになりましたし、箱根駅伝につながる」と確かな手応えをつかんだ。 自身最後となるその箱根路は、1区か3区を希望している。「1区は自分が一番経験があって、そこで流れを作りたいです。3区は自分に一番合っているコースかなと。ただ、どの区間になるにしても、最後はチームに貢献して終わりたい。前回の阿部さんも4年目で初めて区間賞を取ったので、自分も区間賞を取って卒業したいと思っています」 秋シーズンに俄然、存在感を増してきた明大。そのキーパーソンの1人でもある小袖が、まずは序盤区間でチームを勢いづかせる。
◎こそで・ひでと/1998年5月5日生まれ。岩手県出身。171cm、51kg。三崎中(岩手)→八戸学院光星高(青森)→明大。5000m13分46秒56、10000m28分29秒88
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