2020.12.21
箱根駅伝直前Special
学生長距離Close-up
名取燎太
Natori Ryota(東海大学4年)
「月陸Online」限定で大学長距離選手のインタビューを毎月お届けする「学生長距離Close-upインタビュー」。12月は箱根駅伝直前Specialと題し、8チームの選手・監督のインタビュー記事を掲載していく。
第3回目は、東海大の“もうひとつの黄金世代”である4年生から名取燎太に話をうかがい、最後の箱根に懸ける想いを語ってもらった。
学生ナンバー1の座は譲らない
東海大が16年ぶりの日本一に輝いた昨年の全日本大学駅伝で、ヒーローになったのが最終8区で逆転劇を演じた名取燎太(現4年)だ。今年の伊勢路も同じアンカー勝負を任されたが、今度はライバル校の2学年後輩に敗北を喫してしまう。
名取はトップ青学大と39秒差の2位でスタート。2秒遅れで駒大・田澤廉(2年)が追いかけてきた。
「僕はいい位置でタスキをもらえたと思っていたんですけど、前の青学大を追っていくなかで、序盤に体力を消費してしまった感じがあったんです。どこかで田澤君を離さないといけないと思っていたんですけど、それをするだけの余力が残っていませんでした。タイム的にもレース内容的にも物足りなかったですね」
前年のタイムから13秒遅れての区間3位。田澤を引っ張り続けたが、名取は一度も前に出すことは考えていなかったという。
「僕は4年生で彼は2年生。アンカーは最後の勝負が大切ですけど、僕が前を追いかけていなかったら、田澤君が前に出て引っ張ったかどうかはわかりません。また、ラスト勝負は分が悪いので、自分が引っ張っていくしかなかったと思います」
名取の言葉には最上級生の意地と、「学生ナンバー1」は譲らないという思いがみなぎっていた。
ケガに苦しんだ大学1、2年時
昨年度の東海大は高校時代から活躍した選手が多数そろった“黄金世代”がチームを牽引したが、今年は2016年の全国高校駅伝1区でトップ3を占めた“もうひとつの黄金世代”が中心だ。そのなかでも名取がナンバー1といえるキャリアを誇っていた。
長野・佐久長聖高時代は3年連続で全国高校駅伝に出場。3年時には5000mで13分52秒61(16年度の高校ランキング日本人2位)をマークし、全国高校駅伝はエース区間の1区で区間賞を獲得した。
全国高校駅伝では3年時に1区区間賞(左)。のちにチームメイトとなる西田壮志(その右)、塩澤稀夕(先頭)らと競り合った
しかし、大学入学後は苦しんだ。
大半の選手が月間600km以上を走るなか、名取は故障の影響で月間200kmに満たないことも少なくなかった。
その中でも下級生の頃から活躍を見せていたのが同期の塩澤稀夕と西田壮志だ。塩澤は1年時の全日本大学駅伝に抜てきされ、西田は2年時に全日本と箱根に出場。いつしか2人の背中を遠くに感じていた。
2年時の箱根駅伝は5区を走る西田の給水係を務めている。
「給水のときは、西田にがんばってほしいなと思いました。でも、チームが総合優勝に輝いたシーンを間近に見て、走れなくて悔しいなという気持ちがこみ上げてきたんです。3人のなかでは、僕だけ3年時の全日本まで出番がなくて、すごくもどかしかった。自分も早く故障なく走れるようになりたいと思っていましたね」
名取は故障しない身体を作るために、2年時の冬からチームとは別メニューを実施。スピード練習は抑えて、50kmウォークや6~8時間の山歩きなど地道なトレーニングを続けてきた。
そして3年時の全日本では最終8区19.7kmを日本人区間歴代5位タイ(当時)の57分46秒で走破。区間賞は東京国際大のルカ・ムセンビ(現2年)に譲ったものの、日本人トップは確保した。
しかし、大きな期待を背負った箱根駅伝は直前に故障をして、2区の予定から4区にまわることになる。
「12月上旬に脚を痛めてしまい、うまく練習が積めなかったことに悔いが残っています。それに区間順位は2位でしたけど、青学大・吉田祐也さん(現・GMOインターネットグループ)に1分以上も引き離されてしまいました。そのタイム差は後半の区間に響いたと思いますし、自分自身、納得できる走りができませんでした」
今季は9月に10000mで28分10秒51の自己ベストをマーク。全日本後のトレーニングも順調だ。最後の学生駅伝で、前回の箱根と全日本のリベンジを果たす準備はできている。
東海大を牽引する4年生トリオ。右から名取、駅伝主将の塩澤、西田
「個人的に走りたいのは1区、2区、4区です。1区を走るとしたら区間記録に挑戦したい気持ちがありますし、2区はひとりでも1時間6分台を狙えるくらいの走りがしたいなと思います。4区を走ることになれば、前回の吉田祐也さんの区間記録がひとつの目標になってきます。どの区間を任せられるとしても、区間賞は獲得したいです」
名取が2区を任されれば、駒大・田澤とのリターンマッチが実現する可能性が高い。東海大の王座奪回のために、名取は自分の区間でトップを奪い取るつもりだ。
◎なとり・りょうた/1998年7月21日生まれ。長野県出身。169cm、56kg。富士見中(長野)→佐久長聖高→東海大。5000m13分52秒61、10000m28分10秒51。
文/酒井政人

学生ナンバー1の座は譲らない
東海大が16年ぶりの日本一に輝いた昨年の全日本大学駅伝で、ヒーローになったのが最終8区で逆転劇を演じた名取燎太(現4年)だ。今年の伊勢路も同じアンカー勝負を任されたが、今度はライバル校の2学年後輩に敗北を喫してしまう。 名取はトップ青学大と39秒差の2位でスタート。2秒遅れで駒大・田澤廉(2年)が追いかけてきた。 「僕はいい位置でタスキをもらえたと思っていたんですけど、前の青学大を追っていくなかで、序盤に体力を消費してしまった感じがあったんです。どこかで田澤君を離さないといけないと思っていたんですけど、それをするだけの余力が残っていませんでした。タイム的にもレース内容的にも物足りなかったですね」 前年のタイムから13秒遅れての区間3位。田澤を引っ張り続けたが、名取は一度も前に出すことは考えていなかったという。 「僕は4年生で彼は2年生。アンカーは最後の勝負が大切ですけど、僕が前を追いかけていなかったら、田澤君が前に出て引っ張ったかどうかはわかりません。また、ラスト勝負は分が悪いので、自分が引っ張っていくしかなかったと思います」 名取の言葉には最上級生の意地と、「学生ナンバー1」は譲らないという思いがみなぎっていた。ケガに苦しんだ大学1、2年時
昨年度の東海大は高校時代から活躍した選手が多数そろった“黄金世代”がチームを牽引したが、今年は2016年の全国高校駅伝1区でトップ3を占めた“もうひとつの黄金世代”が中心だ。そのなかでも名取がナンバー1といえるキャリアを誇っていた。 長野・佐久長聖高時代は3年連続で全国高校駅伝に出場。3年時には5000mで13分52秒61(16年度の高校ランキング日本人2位)をマークし、全国高校駅伝はエース区間の1区で区間賞を獲得した。

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