HOME バックナンバー
男子10000m日本新 特別インタビュー 相澤晃 東京五輪への熱走を振り返る
男子10000m日本新 特別インタビュー 相澤晃 東京五輪への熱走を振り返る

女子10000mで衝撃的な日本新記録が出たあと、日本選手権長距離の最終種目として行われた男子10000m。トラックにはまだ新谷仁美(積水化学)が演じた〝独走劇〟の余韻が漂っていたが、事前の予想を覆して男子も素晴らしいレースに。東洋大を出て社会人1年目の相澤晃(旭化成)が、チームの先輩・村山紘太が2015年に作った27分29秒69の日本記録を破るだけでなく、東京五輪参加標準記録の27分28秒00を初めて突破する27分18秒75をマークして、晴れの代表に内定した。当日は冷静に喜びを語っていた相澤だが、一晩経って心境はどう変わったのか、レースをどう振り返ったのか、翌日少しだけ時間をもらって聞いてみた。

●構成/小森貞子

広告の下にコンテンツが続きます

タイムは出ると思っていた

――レース後は記者会見があったり、ドーピング検査があったりでそんなに早くホテルに帰れなかったと思いますが、疲労があるなか、夜は寝られましたか。

相澤 ほとんど眠れませんでした(笑)。ボーッとしたり、友達に電話したり。今朝にかけていろんな方から連絡をいただいて、本当に応援されているんだなと実感しましたね。改めて、走りで恩返しできればと思いました。

――これほどのタイムが出ると思っていたのですか。

相澤 東京五輪の参加標準記録は切れると思っていました。でも、(27分)18秒は自分が思っていたより上ですね。

――10月半ばに初めて27分台(27分55秒76)に入ったばかりなのに、そこから1ヵ月半で27分28秒00の標準記録が見えていたのですか。

相澤 トラックとロードは別物だと思いますが、去年(2019年)の全日本大学駅伝の時、10㎞を27分40秒台で通過できて、しかも感覚的にはきつくなかったんです。その感覚をベースに、どれだけ標準記録に近づけるかをこの1年間やってきて、10月の記録会もまだまだ練習途上でした。このまま練習をこなしていけば、タイムは出ると思いましたね。

――10月の記録会は、故障明けでしたね。

相澤 故障明けと言っても、2ヵ月半ぐらいは経っていました。日本選手権に参加する標準記録を破るためのレースでしたので、比較的抑え目に、余裕を持って走ったんです。最後は余裕があったのでペースを上げて、そうしたら27分台に乗った、というぐらいの感覚でした。

――11月3日の九州実業団駅伝の後は、この日本選手権に向けて、チームの先輩の鎧坂哲哉さんと質の高い練習をやったそうですね。

相澤 鎧坂さんのメニューを一緒にやらせていただいて、しっかり同じメニューをこなすことができたので、すごく自信になりました。鎧坂さんに褒めてもらったんですよ(笑)。うれしかったです。

――鎧坂選手も日本選手権で代表入りを狙っていましたよね。

相澤 練習を見ていても、鎧坂さんはしっかりやれていたので、一番のライバルになると思っていました。今回は自分が勝ちましたけど、積み上げてきたものは鎧坂さんのほうが上ですし、安定した実力はまだ鎧坂さんに劣ります。

7000mまでは絶対に動かない

――レースは、その鎧坂選手やマラソン代表の大迫傑選手(Nike)が前にいましたね。

相澤 レース前に鎧坂さんと「外国人選手の真後ろにつくのは、どうしても1周ごとにペースの上げ下げがあってきついよね」という話をしたんです。でも、思った以上に鎧坂さんが前のほうにいて「調子がいいのかな」と思ったり、途中で下がってきた時には「きついのかな」と思ったり、冷静に見てました。

――自分のレースプランは?

相澤 「7000mまでは絶対に動かない」と決めていて、誰かが前に行って集団が分かれても、絶対に自分から前へ詰めないと思っていました。

――前の集団と間が空いても、ですか。

相澤 はい。絶対に誰かが詰めるとわかっていたので、本当に最後まで力を使わないように、残り3000m、あるいは残り2000mまで、絶対に自分で行かないと決めていました。そこで無理に上げてしまうと、詰めるのに3〜4秒かかって、ペースが速くなるので、そういう動きはしないようにしましたね。

――でも、前との距離が開いたら、焦りませんか。

相澤 今回に関して言うと、ペースが速かったので、絶対にそのまま行き切る選手はいないだろうなと思っていましたし、絶対に誰かしらが詰めると思いました。みんなのこの大会に懸ける思いは、すごく強いとわかっていましたからね。そこは冷静に走ってました。

この続きは2020年12月14日発売の『月刊陸上競技1月号』をご覧ください。

 

※インターネットショップ「BASE」のサイトに移動します
郵便振替で購入する
定期購読はこちらから

女子10000mで衝撃的な日本新記録が出たあと、日本選手権長距離の最終種目として行われた男子10000m。トラックにはまだ新谷仁美(積水化学)が演じた〝独走劇〟の余韻が漂っていたが、事前の予想を覆して男子も素晴らしいレースに。東洋大を出て社会人1年目の相澤晃(旭化成)が、チームの先輩・村山紘太が2015年に作った27分29秒69の日本記録を破るだけでなく、東京五輪参加標準記録の27分28秒00を初めて突破する27分18秒75をマークして、晴れの代表に内定した。当日は冷静に喜びを語っていた相澤だが、一晩経って心境はどう変わったのか、レースをどう振り返ったのか、翌日少しだけ時間をもらって聞いてみた。 ●構成/小森貞子

タイムは出ると思っていた

――レース後は記者会見があったり、ドーピング検査があったりでそんなに早くホテルに帰れなかったと思いますが、疲労があるなか、夜は寝られましたか。 相澤 ほとんど眠れませんでした(笑)。ボーッとしたり、友達に電話したり。今朝にかけていろんな方から連絡をいただいて、本当に応援されているんだなと実感しましたね。改めて、走りで恩返しできればと思いました。 ――これほどのタイムが出ると思っていたのですか。 相澤 東京五輪の参加標準記録は切れると思っていました。でも、(27分)18秒は自分が思っていたより上ですね。 ――10月半ばに初めて27分台(27分55秒76)に入ったばかりなのに、そこから1ヵ月半で27分28秒00の標準記録が見えていたのですか。 相澤 トラックとロードは別物だと思いますが、去年(2019年)の全日本大学駅伝の時、10㎞を27分40秒台で通過できて、しかも感覚的にはきつくなかったんです。その感覚をベースに、どれだけ標準記録に近づけるかをこの1年間やってきて、10月の記録会もまだまだ練習途上でした。このまま練習をこなしていけば、タイムは出ると思いましたね。 ――10月の記録会は、故障明けでしたね。 相澤 故障明けと言っても、2ヵ月半ぐらいは経っていました。日本選手権に参加する標準記録を破るためのレースでしたので、比較的抑え目に、余裕を持って走ったんです。最後は余裕があったのでペースを上げて、そうしたら27分台に乗った、というぐらいの感覚でした。 ――11月3日の九州実業団駅伝の後は、この日本選手権に向けて、チームの先輩の鎧坂哲哉さんと質の高い練習をやったそうですね。 相澤 鎧坂さんのメニューを一緒にやらせていただいて、しっかり同じメニューをこなすことができたので、すごく自信になりました。鎧坂さんに褒めてもらったんですよ(笑)。うれしかったです。 ――鎧坂選手も日本選手権で代表入りを狙っていましたよね。 相澤 練習を見ていても、鎧坂さんはしっかりやれていたので、一番のライバルになると思っていました。今回は自分が勝ちましたけど、積み上げてきたものは鎧坂さんのほうが上ですし、安定した実力はまだ鎧坂さんに劣ります。

7000mまでは絶対に動かない

――レースは、その鎧坂選手やマラソン代表の大迫傑選手(Nike)が前にいましたね。 相澤 レース前に鎧坂さんと「外国人選手の真後ろにつくのは、どうしても1周ごとにペースの上げ下げがあってきついよね」という話をしたんです。でも、思った以上に鎧坂さんが前のほうにいて「調子がいいのかな」と思ったり、途中で下がってきた時には「きついのかな」と思ったり、冷静に見てました。 ――自分のレースプランは? 相澤 「7000mまでは絶対に動かない」と決めていて、誰かが前に行って集団が分かれても、絶対に自分から前へ詰めないと思っていました。 ――前の集団と間が空いても、ですか。 相澤 はい。絶対に誰かが詰めるとわかっていたので、本当に最後まで力を使わないように、残り3000m、あるいは残り2000mまで、絶対に自分で行かないと決めていました。そこで無理に上げてしまうと、詰めるのに3〜4秒かかって、ペースが速くなるので、そういう動きはしないようにしましたね。 ――でも、前との距離が開いたら、焦りませんか。 相澤 今回に関して言うと、ペースが速かったので、絶対にそのまま行き切る選手はいないだろうなと思っていましたし、絶対に誰かしらが詰めると思いました。みんなのこの大会に懸ける思いは、すごく強いとわかっていましたからね。そこは冷静に走ってました。 この続きは2020年12月14日発売の『月刊陸上競技1月号』をご覧ください。  
※インターネットショップ「BASE」のサイトに移動します
郵便振替で購入する 定期購読はこちらから

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.12.04

パリ五輪競歩代表・濱西諒がサンベルクス退社 「再び日の丸を背負って戦うために」

24年パリ五輪男子20km競歩代表の濱西諒が12月1日に自身のSNSを更新し、所属していたサンベルクスを11月末で退社したことを発表した。 濱西は大阪府出身で、履正社高から競歩に取り組み、国体優勝など早くから頭角を現した […]

NEWS 飯塚翔太がラオスで陸上競技指導 「飯塚翔太リレーカーニバル」も開催

2025.12.04

飯塚翔太がラオスで陸上競技指導 「飯塚翔太リレーカーニバル」も開催

東京世界選手権男子200m代表の飯塚翔大(ミズノ)が11月30日から12月3日まで、ラオスを訪問。4日にリモートで現地で行った活動について報告会見を行った。 飯塚はJICA(国際協力機構)が進める「スポーツを通じて世界平 […]

NEWS 世界クロカンU20日本代表が決定!新妻遼己、本田桜二郎、宇都宮桃奈ら男女各6名で世界に挑戦

2025.12.04

世界クロカンU20日本代表が決定!新妻遼己、本田桜二郎、宇都宮桃奈ら男女各6名で世界に挑戦

日本陸連は12月4日、米国・タラハシーで開催される世界クロスカントリー選手権(2026年1月10日)のU20日本代表を発表した。 11月30日の京都陸協記録会内で行われた選考会の上位選手を中心に選考され、男子は今季のイン […]

NEWS 世界陸連が走幅跳のルール変更を断念 「テイクオフゾーン」提案も選手からの反発強く

2025.12.04

世界陸連が走幅跳のルール変更を断念 「テイクオフゾーン」提案も選手からの反発強く

世界陸連(WA)が検討していた走幅跳のルール変更案について、選手からの反発などを受けて撤回されたことを英ガーディアン紙が報じた。 走幅跳では、20cmの踏み切り板とその先に10cmの粘土板が敷かれ、踏み切り板と粘土板の境 […]

NEWS 北口榛花、村竹ラシッド、鵜澤飛羽のJALトリオ参戦!1/2放送「木梨憲武のスポーツKING」自転車、プロ野球、バド世界王者と対決

2025.12.04

北口榛花、村竹ラシッド、鵜澤飛羽のJALトリオ参戦!1/2放送「木梨憲武のスポーツKING」自転車、プロ野球、バド世界王者と対決

2026年1月2日放送の「木梨憲武のスポーツKING!」に、JALの北口榛花、村竹ラシッド、鵜澤飛羽が参戦することがわかった。 現役トップアスリートやレジェンドが、木梨憲武らと異種競技バトルを繰り広げる正月恒例の特別番組 […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2025年12月号 (11月14日発売)

2025年12月号 (11月14日発売)

EKIDEN REVIEW
全日本大学駅伝
箱根駅伝予選会
高校駅伝&実業団駅伝予選

Follow-up Tokyo 2025

page top