HOME PR
PR

2025.07.16

NEWS
安川電機陸上部 創部50年の節目にO2Room®を導入、2030年のニューイヤー駅伝で〝優勝〟を目指す!!
安川電機陸上部 創部50年の節目にO2Room®を導入、2030年のニューイヤー駅伝で〝優勝〟を目指す!!

今年1月に導入された「O2Room®」をトレーニングやケアに積極活用している安川電機陸上部の選手たち。前列左から九嶋恵舜、合田椋、後列左から漆畑瑠人、古賀淳紫

「世界大会で活躍できる選手を育てていきたい」(中本監督)

昨年、創部50周年を迎えた安川電機陸上部が面白い。男子マラソンでロンドン五輪6位、モスクワ世界選手権5位のキャリアを持つ中本健太郎が2023年3月に監督に就任。ニューイヤー駅伝は昨年12位、今年9位と入賞ラインに近づくと、今季から〝新兵器〟を導入した。それが日本気圧バルク工業の「O2Room®」だ。中本監督がやりたかったという高地トレーニングを低圧低酸素ルームで行い、高気圧酸素ルームでしっかりリカバリーするのが主な狙いになる。実業団チームの古豪・安川電機が〝科学の力〟で新たな伝統を築いていく。

創部50年を超える陸上部、驚異の〝育成力〟

福岡県北九州市を拠点とする安川電機陸上部は1974年に創部。全日本実業団対抗駅伝(ニューイヤー駅伝)に47度の出場を誇るチームで、過去最高成績は1992年の3位だ。

チームの長い歴史の中でも〝特別な輝き〟を放ったランナーがいる。現在監督を務める中本健太郎だ。高校(山口・西市)時代は全国大会の活躍はなく、拓大時代も正月の駅伝に出場したのは4年時の一度だけ。しかも、7区で区間16位という結果だった。

しかし、2005年に入社した安川電機でマラソンの才能がきらめいた。2011年テグ世界選手権で9位に入ると、2012年ロンドン五輪で6位、翌年のモスクワ世界選手権で5位と世界大会で〝連続入賞〟の偉業を果たす。中本は2016年のびわ湖毎日マラソンで8位に終わったが、チームメイトの北島寿典が日本人トップの2位に食い込んで同年のリオ五輪代表入り。安川電機は2大会連続で男子マラソンの五輪代表を輩出した。なお、中本は2017年の別府大分毎日でマラソン初優勝。同年夏のロンドン世界選手権(10位)は入賞に迫る激走を見せている。

中本が入社後、チームはニューイヤー駅伝でも元気を取り戻して躍進する。2007年に7位、2008年に4位、2011年に4位、2012年に6位、2016年に8位と5度の入賞を飾った。しかし、2022年に25位に沈むと、2023年はコロナ感染者が出て出場を辞退するなど、チームは苦しい時代を過ごした。

〝世界〟を知る中本が2023年3月に監督就任

中本は2021年のニューイヤー駅伝を最後に引退。コーチを経て、2023年3月に監督に就任する。指導を受けてきた山頭直樹前監督(現・副部長)から〝伝統のタスキ〟を引き継ぐことになった。

「監督の重責を背負えるのか不安はあったのですが、もう一度、強い安川電機を作っていきたい。世界大会代表も北島以降、出ていません。ニューイヤー駅伝だけでなく、世界大会で活躍できる選手を育てる、という使命を果たしたいと思っています」

2024年に創部50年の節目を迎えた安川電機。中本監督は入社後すぐに結果を残すことができなかった〝苦労人〟だけに、選手を見つめる視線は温かいものがある。

「私は入社してもなかなか芽が出ない選手でした。引退を告げられたこともあるのですが、マラソンにチャレンジして、自分の活路を見いだすことができました。ですから、全選手に世界に羽ばたくチャンスがあると感じています。その選手にどんな適性があるのか。個々のポテンシャルを生かして、伸ばしていきたいと思っています」

変えないことと、新たに取り入れるもの

中本監督がチームの指揮を執り、ニューイヤー駅伝は昨年が12位、今年が9位と順位を上げてきた。しかし、「入賞」にはあと一歩届いていない。近年のチーム状況を中本監督はこう説明する。

「ニューイヤー駅伝は2年連続で1区の流れが良くなくて、2区の古賀淳紫でばん回するかたちになりました。外国人選手(4区)がうまく機能しなかったのも反省点です。昨年から漆畑瑠人が急成長して、チームの主力になりました。また、合田椋はポテンシャルがチームで1、2番です。まだ大舞台で力を発揮できていないので、3月からは副主将としての責任感を持たせながらやらせています」

今年3月からはエースの古賀が主将、合田が副主将に就任。チームは〝新たなステージ〟を目指していくことになった。
「2030年のニューイヤー駅伝の『優勝』を目標に掲げています。そのためには中期的なチーム作りが必要です。2016年以降、ニューイヤー駅伝の入賞から遠ざかっているので、まず来年は『6位以内』に入って、さらに上を目指していきたい」

マラソンで2012年ロンドン五輪6位、2013年モスクワ世界選手権5位の実績を持つ中本健太郎監督。ニューイヤー駅伝の優勝とともに、自身のように世界の舞台で活躍する選手の育成を目指して日本気圧バルク工業の「O2Room®」をチームに導入することを決めた

一方、安川電機のトレーニングは前任の山頭監督が構築してきたものがベースになっている。中本監督を世界で戦えるマラソンランナーにした〝安川メソッド〟だ。

「陸上部の理念である『草魂』は、ひたむきに努力することです。私は地道で泥臭い練習を積んできて、それがマラソンの粘りや我慢につながりました。今の選手はそういうメニューを嫌う傾向があるのですが、やらなければ世界に通用しない気がしています。その一方で科学的なアプローチも欠かせません。これまでの経験とさらに進化させた取り組みをミックスさせて、選手の競技力を伸ばしていきたいと考えています」

世界で戦うために必要なトレーニング

安川電機のさらなる進化に向けて、中本監督が注目していたのが「高地トレーニング」だ。
「以前から強化策のなかでやってみたいという思いがありました。高地環境下でのトレーニングは科学的にも実証されていますが、私自身の経験が少なく、九州に標高の高い練習コースもほとんどありません。そこで昨年より長野・湯の丸高原(標高1730~1750m)での高地トレーニングを試みているのですが、その好感触から、もっと身近で『低酸素トレーニング』ができないかと考えました」

そして、低酸素トレーニングを経験しようと熊本県の水上村スカイヴィレッジ(標高約1000m)に向かった。水上村は九州の合宿地として有名で、同施設には日本気圧バルク工業の「O2Room®」を常設している。多くのランナーが使用しているだけでなく、村民の健康増進にも役立っているという。

水上村スカイヴィレッジでは安川電機の選手4名が「O2Room®」を体験。その感触と効果をヒアリング。10年ほど前からチームにあった酸素カプセルが老朽化していたこともあり、「総合的に判断しました」(中本監督)と、安川電機は「O2Room®」のブランド名で知られる日本気圧バルク工業の低圧低酸素ルームと高気圧酸素ルームの両方を一気に導入することになった。

「日本気圧バルク工業の製品は旭化成、トヨタ自動車、資生堂という強豪チームも使用していて信頼性がありました。低酸素ルームは他社とも比較しましたが、日本気圧バルク工業の製品は特許数が多かったですし、他に同じような製品がなかったので導入を決めました」

低圧低酸素は常圧低酸素と異なり、酸素濃度が低くなるだけでなく、自然界と同じ気圧まで低下させることができる。例えば標高3000mの高地と同じ環境を作ることができるのだ。

「高地環境下のトレーニングは心肺機能向上の効果が期待できます。いろんな情報を得ましたが、常圧低酸素は知見が少なく、低圧低酸素の方が自然界に近い環境でトレーニングできるメリットを感じました。導入段階ですが、効果を感じている部分もあるので、試合でパフォーマンスを発揮できる最適なプログラムを構築したうえで選手たちを伸ばしていきたいと思っています」

一方の高気圧酸素ルームの目的は疲労回復がメインとなる。
「低圧低酸素トレーニングはダメージが大きいので、早めのリカバリーができるように高気圧酸素ルームを活用しています。故障時には治癒促進も期待できるので、低圧低酸素と高気圧酸素をうまく融合させて、トレーニングの相乗効果を狙っています」

日本気圧バルク工業の製品は自社で開発・製造しており、安全面の高さに定評がある。さらに大学や病院と共同研究し、数々のエビデンスを取得。「安心感があるので、選手たちは精神的な負担も少なく取り組めているのかなと思っています」と中本監督は話している。

トレーニングルームの一角に低圧低酸素ルーム(手前)と高気圧酸素ルームを並べて設置。低圧低酸素ルームは幅2.0m、高さ2.5m、奥行き3.5mの大型サイズで、サイドにはランナーをモチーフにしたイラストと部訓である「草魂」の文字が入ったオリジナルデザインが施されている

高気圧酸素ルームは幅1.2m、高さ1.8m、奥行き2.25mのミドルサイズだが、一緒に5~6名で利用できる

悲願のニューイヤー駅伝Vに向けて「O2Room®」が選手たちに大好評

安川電機のエースであり、今季は主将としてチームを引っ張っているのが佐賀・鳥栖工高出身で入社11年目の古賀だ。ニューイヤー駅伝は2022年に当時・最長区間だった4区で区間2位。昨年は最長2区で22人抜き(区間9位)、今年は同区間で20人抜き(区間4位)と大活躍してきた。10000m(27分51秒64)とマラソン(2時間8分30秒)の安川電機記録保持者で、2023年のMGCにも出場した。これまでは酸素カプセルを頻繁に使用してきただけに、高気圧酸素ルームの導入に笑顔を見せている。

「温度調整ができますし、とにかく広いので快適ですね。ストレッチをしながら過ごせますし、読書やスマホの使用も容易にできます。テレビも設置してあるので、不自由が少なくなりました」

今季は5000mで自己ベストを更新するなど好調をキープしているだけでなく、チームの〝成長〟も感じている。
「この数年でチーム力が上がっているので今後が楽しみです。ニューイヤー駅伝は目標の『6位入賞』を達成するために自分が区間賞争いをしないといけないと思っています。マラソンもしっかり走って、2時間6分台、5分台。それから世界の舞台を目指していきたいです」

29歳の古賀が「若いチーム」と表現する安川電機。副主将の25歳・合田(岡山・倉敷高、拓大出身)は、中本監督同様に拓大時代は華やかな活躍を見せることができなかったが、昨季は10000mで27分台に突入。ニューイヤー駅伝は後半のポイント区間である5区で2年連続(区間7位、同8位)して3人抜きを演じている。

合田は水上村で「O2Room®」を体験して、その威力を実感。「予算もかかるのに導入していただき、素直にうれしい気持ちです」と話す。これまで故障時のトレーニングに悩んでいたが、「低圧低酸素ルームのトレッドミルで歩いたり、中で補強をするだけで心肺機能が鍛えられるので、復帰後の戻りが早くなっています」と感じている。そして、「今季は5000m13分20秒台、10000m27分45秒が目標です。将来はマラソンで世界大会を目指していきたい」と意気込んでいる。

日本気圧バルク工業の低圧低酸素ルームは標高3000mの高地と同じ気圧と酸素濃度の環境をつくり出せるのが特長で、トレッドミルや固定式バイクを使って自然界と同じ高地トレーニングが実施できる

鹿児島城西高、明大出身の漆畑は中本監督らが世界大会で活躍するテレビ中継を観て、地元・九州の安川電機に入社。昨年に急成長して、今年のニューイヤー駅伝は3区を区間7位と好走した。「エース級が揃うなかで自信になりました」という漆畑は2月の全日本実業団ハーフマラソンで1時間00分47秒をマーク。古賀が保持していた安川電機記録を5年ぶりに2秒塗り替えた。

「練習だけでなく、食事や睡眠の管理もしています。高気圧酸素ルームを活用してからは睡眠の質が上がり、スマートウォッチの睡眠スコアも良くなりました。1500m(3分43秒15)、5000m(13分32秒71)、ハーフで安川電機記録を持っているので、次は10000mで更新したい。マラソンもゆくゆくは走りたいですけど、まずは自分の得意分野であるトラックで日本選手権の表彰台に立ちたいです」

宮崎・小林高、東洋大出身で、学生時代は正月の駅伝に3年連続で出場した九嶋恵舜は、大学の先輩でもある北島さん(現在は福岡・希望が丘高駅伝部監督)から実業団生活での〝教え〟を伝授された。しかし、入社1年目の昨季は「先輩方の走りに圧倒された一年でした」と予想以上に厳しい戦いになった。自己ベストを更新できず、ニューイヤー駅伝も走ることができなかった。それでも大学時代から活用している「O2Room®」が安川電機に導入されて、競技へのモチベーションが高まっている。

高気圧酸素ルームでテレビを見ながらくつろぐ選手たち。安川電機陸上部には10年ほど前から1人用の酸素カプセルがあったが、広くて複数人で一緒に入れる酸素ルームの利便性や快適性は別格だ

「大学時代はチームで一番、O2Room®を使っていました。低圧低酸素は高温多湿の状態にしてバイクで追い込むと、復帰後の順応がまったく違います。高気圧酸素の方は暇さえあれば入り、中で睡眠をとることもありました。また、ウエイトトレーニングをした後に使用すると、翌日の筋肉痛が違うのでお勧めですね。待望の施設が導入されたので、今季は絶対ニューイヤー駅伝のメンバーに入ってチームに貢献したいです」

中本監督の下で〝再浮上〟を始めた安川電機。伝統の安川メソッドと新たに取り入れた酸素パワーのハイブリッドでさらに上を目指していく。狙うは2030年ニューイヤー駅伝の「優勝」と「世界」への挑戦だ。

「O2Room®」という〝科学の力〟を取り入れて新たな伝統を築こうとしている安川電機陸上部。当面のターゲットである来年のニューイヤー駅伝では「6位以内」の目標を掲げている

「世界大会で活躍できる選手を育てていきたい」(中本監督)

昨年、創部50周年を迎えた安川電機陸上部が面白い。男子マラソンでロンドン五輪6位、モスクワ世界選手権5位のキャリアを持つ中本健太郎が2023年3月に監督に就任。ニューイヤー駅伝は昨年12位、今年9位と入賞ラインに近づくと、今季から〝新兵器〟を導入した。それが日本気圧バルク工業の「O2Room®」だ。中本監督がやりたかったという高地トレーニングを低圧低酸素ルームで行い、高気圧酸素ルームでしっかりリカバリーするのが主な狙いになる。実業団チームの古豪・安川電機が〝科学の力〟で新たな伝統を築いていく。

創部50年を超える陸上部、驚異の〝育成力〟

福岡県北九州市を拠点とする安川電機陸上部は1974年に創部。全日本実業団対抗駅伝(ニューイヤー駅伝)に47度の出場を誇るチームで、過去最高成績は1992年の3位だ。 チームの長い歴史の中でも〝特別な輝き〟を放ったランナーがいる。現在監督を務める中本健太郎だ。高校(山口・西市)時代は全国大会の活躍はなく、拓大時代も正月の駅伝に出場したのは4年時の一度だけ。しかも、7区で区間16位という結果だった。 しかし、2005年に入社した安川電機でマラソンの才能がきらめいた。2011年テグ世界選手権で9位に入ると、2012年ロンドン五輪で6位、翌年のモスクワ世界選手権で5位と世界大会で〝連続入賞〟の偉業を果たす。中本は2016年のびわ湖毎日マラソンで8位に終わったが、チームメイトの北島寿典が日本人トップの2位に食い込んで同年のリオ五輪代表入り。安川電機は2大会連続で男子マラソンの五輪代表を輩出した。なお、中本は2017年の別府大分毎日でマラソン初優勝。同年夏のロンドン世界選手権(10位)は入賞に迫る激走を見せている。 中本が入社後、チームはニューイヤー駅伝でも元気を取り戻して躍進する。2007年に7位、2008年に4位、2011年に4位、2012年に6位、2016年に8位と5度の入賞を飾った。しかし、2022年に25位に沈むと、2023年はコロナ感染者が出て出場を辞退するなど、チームは苦しい時代を過ごした。

〝世界〟を知る中本が2023年3月に監督就任

中本は2021年のニューイヤー駅伝を最後に引退。コーチを経て、2023年3月に監督に就任する。指導を受けてきた山頭直樹前監督(現・副部長)から〝伝統のタスキ〟を引き継ぐことになった。 「監督の重責を背負えるのか不安はあったのですが、もう一度、強い安川電機を作っていきたい。世界大会代表も北島以降、出ていません。ニューイヤー駅伝だけでなく、世界大会で活躍できる選手を育てる、という使命を果たしたいと思っています」 2024年に創部50年の節目を迎えた安川電機。中本監督は入社後すぐに結果を残すことができなかった〝苦労人〟だけに、選手を見つめる視線は温かいものがある。 「私は入社してもなかなか芽が出ない選手でした。引退を告げられたこともあるのですが、マラソンにチャレンジして、自分の活路を見いだすことができました。ですから、全選手に世界に羽ばたくチャンスがあると感じています。その選手にどんな適性があるのか。個々のポテンシャルを生かして、伸ばしていきたいと思っています」

変えないことと、新たに取り入れるもの

中本監督がチームの指揮を執り、ニューイヤー駅伝は昨年が12位、今年が9位と順位を上げてきた。しかし、「入賞」にはあと一歩届いていない。近年のチーム状況を中本監督はこう説明する。 「ニューイヤー駅伝は2年連続で1区の流れが良くなくて、2区の古賀淳紫でばん回するかたちになりました。外国人選手(4区)がうまく機能しなかったのも反省点です。昨年から漆畑瑠人が急成長して、チームの主力になりました。また、合田椋はポテンシャルがチームで1、2番です。まだ大舞台で力を発揮できていないので、3月からは副主将としての責任感を持たせながらやらせています」 今年3月からはエースの古賀が主将、合田が副主将に就任。チームは〝新たなステージ〟を目指していくことになった。 「2030年のニューイヤー駅伝の『優勝』を目標に掲げています。そのためには中期的なチーム作りが必要です。2016年以降、ニューイヤー駅伝の入賞から遠ざかっているので、まず来年は『6位以内』に入って、さらに上を目指していきたい」 [caption id="attachment_175881" align="alignnone" width="800"] マラソンで2012年ロンドン五輪6位、2013年モスクワ世界選手権5位の実績を持つ中本健太郎監督。ニューイヤー駅伝の優勝とともに、自身のように世界の舞台で活躍する選手の育成を目指して日本気圧バルク工業の「O2Room®」をチームに導入することを決めた[/caption] 一方、安川電機のトレーニングは前任の山頭監督が構築してきたものがベースになっている。中本監督を世界で戦えるマラソンランナーにした〝安川メソッド〟だ。 「陸上部の理念である『草魂』は、ひたむきに努力することです。私は地道で泥臭い練習を積んできて、それがマラソンの粘りや我慢につながりました。今の選手はそういうメニューを嫌う傾向があるのですが、やらなければ世界に通用しない気がしています。その一方で科学的なアプローチも欠かせません。これまでの経験とさらに進化させた取り組みをミックスさせて、選手の競技力を伸ばしていきたいと考えています」

世界で戦うために必要なトレーニング

安川電機のさらなる進化に向けて、中本監督が注目していたのが「高地トレーニング」だ。 「以前から強化策のなかでやってみたいという思いがありました。高地環境下でのトレーニングは科学的にも実証されていますが、私自身の経験が少なく、九州に標高の高い練習コースもほとんどありません。そこで昨年より長野・湯の丸高原(標高1730~1750m)での高地トレーニングを試みているのですが、その好感触から、もっと身近で『低酸素トレーニング』ができないかと考えました」 そして、低酸素トレーニングを経験しようと熊本県の水上村スカイヴィレッジ(標高約1000m)に向かった。水上村は九州の合宿地として有名で、同施設には日本気圧バルク工業の「O2Room®」を常設している。多くのランナーが使用しているだけでなく、村民の健康増進にも役立っているという。 水上村スカイヴィレッジでは安川電機の選手4名が「O2Room®」を体験。その感触と効果をヒアリング。10年ほど前からチームにあった酸素カプセルが老朽化していたこともあり、「総合的に判断しました」(中本監督)と、安川電機は「O2Room®」のブランド名で知られる日本気圧バルク工業の低圧低酸素ルームと高気圧酸素ルームの両方を一気に導入することになった。 「日本気圧バルク工業の製品は旭化成、トヨタ自動車、資生堂という強豪チームも使用していて信頼性がありました。低酸素ルームは他社とも比較しましたが、日本気圧バルク工業の製品は特許数が多かったですし、他に同じような製品がなかったので導入を決めました」 低圧低酸素は常圧低酸素と異なり、酸素濃度が低くなるだけでなく、自然界と同じ気圧まで低下させることができる。例えば標高3000mの高地と同じ環境を作ることができるのだ。 「高地環境下のトレーニングは心肺機能向上の効果が期待できます。いろんな情報を得ましたが、常圧低酸素は知見が少なく、低圧低酸素の方が自然界に近い環境でトレーニングできるメリットを感じました。導入段階ですが、効果を感じている部分もあるので、試合でパフォーマンスを発揮できる最適なプログラムを構築したうえで選手たちを伸ばしていきたいと思っています」 一方の高気圧酸素ルームの目的は疲労回復がメインとなる。 「低圧低酸素トレーニングはダメージが大きいので、早めのリカバリーができるように高気圧酸素ルームを活用しています。故障時には治癒促進も期待できるので、低圧低酸素と高気圧酸素をうまく融合させて、トレーニングの相乗効果を狙っています」 日本気圧バルク工業の製品は自社で開発・製造しており、安全面の高さに定評がある。さらに大学や病院と共同研究し、数々のエビデンスを取得。「安心感があるので、選手たちは精神的な負担も少なく取り組めているのかなと思っています」と中本監督は話している。 [caption id="attachment_175879" align="alignnone" width="800"] トレーニングルームの一角に低圧低酸素ルーム(手前)と高気圧酸素ルームを並べて設置。低圧低酸素ルームは幅2.0m、高さ2.5m、奥行き3.5mの大型サイズで、サイドにはランナーをモチーフにしたイラストと部訓である「草魂」の文字が入ったオリジナルデザインが施されている[/caption] [caption id="attachment_175880" align="alignnone" width="800"] 高気圧酸素ルームは幅1.2m、高さ1.8m、奥行き2.25mのミドルサイズだが、一緒に5~6名で利用できる[/caption]

悲願のニューイヤー駅伝Vに向けて「O2Room®」が選手たちに大好評

安川電機のエースであり、今季は主将としてチームを引っ張っているのが佐賀・鳥栖工高出身で入社11年目の古賀だ。ニューイヤー駅伝は2022年に当時・最長区間だった4区で区間2位。昨年は最長2区で22人抜き(区間9位)、今年は同区間で20人抜き(区間4位)と大活躍してきた。10000m(27分51秒64)とマラソン(2時間8分30秒)の安川電機記録保持者で、2023年のMGCにも出場した。これまでは酸素カプセルを頻繁に使用してきただけに、高気圧酸素ルームの導入に笑顔を見せている。 「温度調整ができますし、とにかく広いので快適ですね。ストレッチをしながら過ごせますし、読書やスマホの使用も容易にできます。テレビも設置してあるので、不自由が少なくなりました」 今季は5000mで自己ベストを更新するなど好調をキープしているだけでなく、チームの〝成長〟も感じている。 「この数年でチーム力が上がっているので今後が楽しみです。ニューイヤー駅伝は目標の『6位入賞』を達成するために自分が区間賞争いをしないといけないと思っています。マラソンもしっかり走って、2時間6分台、5分台。それから世界の舞台を目指していきたいです」 29歳の古賀が「若いチーム」と表現する安川電機。副主将の25歳・合田(岡山・倉敷高、拓大出身)は、中本監督同様に拓大時代は華やかな活躍を見せることができなかったが、昨季は10000mで27分台に突入。ニューイヤー駅伝は後半のポイント区間である5区で2年連続(区間7位、同8位)して3人抜きを演じている。 合田は水上村で「O2Room®」を体験して、その威力を実感。「予算もかかるのに導入していただき、素直にうれしい気持ちです」と話す。これまで故障時のトレーニングに悩んでいたが、「低圧低酸素ルームのトレッドミルで歩いたり、中で補強をするだけで心肺機能が鍛えられるので、復帰後の戻りが早くなっています」と感じている。そして、「今季は5000m13分20秒台、10000m27分45秒が目標です。将来はマラソンで世界大会を目指していきたい」と意気込んでいる。 [caption id="attachment_175884" align="alignnone" width="800"] 日本気圧バルク工業の低圧低酸素ルームは標高3000mの高地と同じ気圧と酸素濃度の環境をつくり出せるのが特長で、トレッドミルや固定式バイクを使って自然界と同じ高地トレーニングが実施できる[/caption] 鹿児島城西高、明大出身の漆畑は中本監督らが世界大会で活躍するテレビ中継を観て、地元・九州の安川電機に入社。昨年に急成長して、今年のニューイヤー駅伝は3区を区間7位と好走した。「エース級が揃うなかで自信になりました」という漆畑は2月の全日本実業団ハーフマラソンで1時間00分47秒をマーク。古賀が保持していた安川電機記録を5年ぶりに2秒塗り替えた。 「練習だけでなく、食事や睡眠の管理もしています。高気圧酸素ルームを活用してからは睡眠の質が上がり、スマートウォッチの睡眠スコアも良くなりました。1500m(3分43秒15)、5000m(13分32秒71)、ハーフで安川電機記録を持っているので、次は10000mで更新したい。マラソンもゆくゆくは走りたいですけど、まずは自分の得意分野であるトラックで日本選手権の表彰台に立ちたいです」 宮崎・小林高、東洋大出身で、学生時代は正月の駅伝に3年連続で出場した九嶋恵舜は、大学の先輩でもある北島さん(現在は福岡・希望が丘高駅伝部監督)から実業団生活での〝教え〟を伝授された。しかし、入社1年目の昨季は「先輩方の走りに圧倒された一年でした」と予想以上に厳しい戦いになった。自己ベストを更新できず、ニューイヤー駅伝も走ることができなかった。それでも大学時代から活用している「O2Room®」が安川電機に導入されて、競技へのモチベーションが高まっている。 [caption id="attachment_175885" align="alignnone" width="800"] 高気圧酸素ルームでテレビを見ながらくつろぐ選手たち。安川電機陸上部には10年ほど前から1人用の酸素カプセルがあったが、広くて複数人で一緒に入れる酸素ルームの利便性や快適性は別格だ[/caption] 「大学時代はチームで一番、O2Room®を使っていました。低圧低酸素は高温多湿の状態にしてバイクで追い込むと、復帰後の順応がまったく違います。高気圧酸素の方は暇さえあれば入り、中で睡眠をとることもありました。また、ウエイトトレーニングをした後に使用すると、翌日の筋肉痛が違うのでお勧めですね。待望の施設が導入されたので、今季は絶対ニューイヤー駅伝のメンバーに入ってチームに貢献したいです」 中本監督の下で〝再浮上〟を始めた安川電機。伝統の安川メソッドと新たに取り入れた酸素パワーのハイブリッドでさらに上を目指していく。狙うは2030年ニューイヤー駅伝の「優勝」と「世界」への挑戦だ。 [caption id="attachment_175886" align="alignnone" width="800"] 「O2Room®」という〝科学の力〟を取り入れて新たな伝統を築こうとしている安川電機陸上部。当面のターゲットである来年のニューイヤー駅伝では「6位以内」の目標を掲げている[/caption]

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.07.16

2029年日・韓・中ジュニア交流競技会の愛媛開催が決定! 2026年は佐賀で実施予定

日本スポーツ協会は7月16日に理事会を開き、2029年に開催される「第37回日・韓・中ジュニア交流競技会」の開催地が愛媛県に決定したと発表した。 同競技会は、東アジア諸国との青少年スポーツを促進し、相互理解を深め、競技力 […]

NEWS 湯浅仁が5000m13分39秒59の自己新で日本人トップ! 800m・塩見綾乃はセカンドベスト2分02秒60/ホクレンDC北見

2025.07.16

湯浅仁が5000m13分39秒59の自己新で日本人トップ! 800m・塩見綾乃はセカンドベスト2分02秒60/ホクレンDC北見

7月16日、北海道北見市の北見市東陵公園陸上競技場でホクレンディスタンスチャレンジ第4戦・北見大会が行われ、男子5000mはA組の湯浅仁(トヨタ自動車)が自己新記録となる13分39秒59で日本人トップの11着だった。 レ […]

NEWS 荒井七海が1500m日本歴代3位の3分36秒58!自己ベストを3年ぶり0.05秒更新/ホクレンDC北見

2025.07.16

荒井七海が1500m日本歴代3位の3分36秒58!自己ベストを3年ぶり0.05秒更新/ホクレンDC北見

7月15日、北海道北見市の北見市東陵公園陸上競技場でホクレンディスタンスチャレンジ第4戦・北見大会が行われ、男子1500mで荒井七海(Honda)が日本歴代3位の3分36秒58をマークして日本人トップの2位を占めた。トッ […]

NEWS 廣中璃梨佳が3000mで8分48秒90! 連戦でも日本歴代5位!/ホクレンDC北見

2025.07.16

廣中璃梨佳が3000mで8分48秒90! 連戦でも日本歴代5位!/ホクレンDC北見

7月15日、北海道北見市の北見市東陵公園陸上競技場でホクレンディスタンスチャレンジ第4戦・北見大会が行われ、女子3000mA組では、廣中璃梨佳(日本郵政グループ)が8分48秒90の日本歴代5位となるタイムで、2位に入った […]

NEWS 東京世界陸上チケット販売37万枚を突破!Day9は完売間近の5万枚到達、Day2、Day8も残りわずか

2025.07.16

東京世界陸上チケット販売37万枚を突破!Day9は完売間近の5万枚到達、Day2、Day8も残りわずか

公益財団法人東京2025世界陸上財団は7月16日、東京世界陸上のチケット販売枚数が37万枚を突破したことを発表した。 もっとも売れているのが男子4×100mリレーをはじめリレー4種目の決勝が行われる大会最終日のDay9午 […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2025年8月号 (7月14日発売)

2025年8月号 (7月14日発売)

詳報!日本選手権
IH地区大会

page top