日本航空株式会社(JAL)が5月13日に都内で、女子走高跳世界記録保持者でパリ五輪金メダルのヤロスラワ・マフチフ(ウクライナ)と、JAL所属の男子走高跳日本記録保持者の戸邉直人の対談を行った。
走高跳の豪華クロストークが実現した。女子走高跳で2m10の世界記録保持者を持つマフチフが、セイコーゴールデングランプリ(5月18日/国立競技場)に向けて来日している。JALは世界陸連とオフィシャルサプライヤー契約を締結したこともあり、東京世界選手権を4ヵ月前に控え、「いつかは世界へ挑戦したい」という若者に応援メッセージを送りたいと開催に至った。
2人は何度かエストニアで一緒にトレーニングしたことがあるそうで、マフチフは「現地で日本食レストランに行って、初めて箸を使いました。とても貴重な経験でした」と当時の思い出を語る。
マフチフが幼い頃は、姉が空手道場に通っており、姉は10年前に欧州で2位になったほどの実力者。マフチフ自身も「7歳の時に勧められたけど、陸上のほうが好きだった」とし、「1、2週間だけ通って辞めた」と笑顔で明かす。
本格的に走高跳を始めたのは14歳の時で「今では世界記録保持者にもなれた。空手を選ばなかったのは正しい選択だったわ」と笑いを誘う。
世界大会や夢を現実的に目指すようになったのは2017年頃で「初めて国際大会(U18世界選手権を1m92の金メダル)に出たことで、夢を叶えたいと思うようになった」。その後、マフチフは2m04のU20世界記録を樹立し、昨年は2m10の世界記録も作った。
順風満帆なキャリアに見えるが、戦禍による苦難も味わっている。祖国ウクライナへのロシア侵攻が2022年に始まり、今もなお胸を痛めている。母国を離れており「いつ戻れるかわからなかった」。帰国しようと考えたが、父から「試合があるのだから行くべきだ」「戦争の暗いニュースだけでなく、明るい話題にフォーカスが当たる」と、当時控えていたベオグラード世界室内出場へ背中を押してくれた。
今も拠点をウクライナに置いていないが「家族、友人、スタッフが支えてくれた」と感謝し、だからこそ「あきらめない気持ちがある」と語る。
若者へのメッセージについて「自分が好きなことを探してほしい。そこから情熱が生まれます。ハイジャンプは私の情熱。情熱を傾けられる何かを見つけて、あきらめずに突き進むこと」とエールを送り、「1回失敗しても大丈夫。走高跳も3回チャンスがある。継続すること、そしてベストを尽くすこと。そして、みなさん、走高跳じゃなくてもいいからスポーツをして健康になってください」と笑みを浮かべた。
質問コーナーでは戸邉に対して「コーナーでスピードを出さずにうまく内傾を作るのはどうすればいい? あなたはとてもじょうずだわ」と専門的な質問も。戸邉は「カーブを小さくすれば傾きが大きくなって、うまく踏み切れるようになればいいかも」とアドバイスを送る。
視聴者から「走高跳の難しいところは?」という質問に、戸邉が先に「助走が速ければ跳べるわけではなく、高く跳ぶためのちょうどいい速さがある。それを探すのが難しい」と答えると、日本語がわからないマフチフも「スピードとテイクオフの位置やバランスがすごく難しい」とまったく同じ答えに。
マフチフは今週末のセイコーゴールデングランプリに出場。21年銅メダルを手にした東京五輪以来の日本での試合に「シーズンベスト(2m02)以上を跳びたい」と目標を掲げる。
また、9月の世界選手権は連覇が懸かるが、「とても楽しみです。満員のスタジアムで熱気がある。ベストを尽くします」と力強く。将来的には「ロス五輪で金メダルを取りたいし、自分の世界記録、そしてオリンピックレコード(2m06)も塗り替えたい」と語った。
RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
-
2025.11.15
-
2025.11.14
-
2025.11.14
-
2025.11.10
-
2025.11.10
2025.10.18
【大会結果】第102回箱根駅伝予選会/個人成績(2025年10月18日)
2025.11.02
青学大が苦戦の中で3位確保!作戦不発も「力がないチームではない」/全日本大学駅伝
-
2025.10.18
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2023.04.01
-
2022.12.20
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2025.11.15
仙台育英高・長森結愛が3000m高1歴代2位の9分04秒77! 米澤奈々香 4年ぶり自己新の5000m15分26秒64/日体大長距離競技会
11月15日、神奈川横浜市の日体大健志台陸上競技場で第324回日体大長距離競技会兼第18回NITTAIDAII Challenge Gamesが行われ、NCG女子3000mでは高校1年生の長森結愛(仙台育英高・宮城)が留 […]
2025.11.15
好調の楠岡由浩が1万m27分52秒09 帝京大初27分台! 高1のビリスが27分33秒99のU18世界歴代5位/日体大長距離競技会
11月15日、神奈川横浜市の日体大健志台陸上競技場で第324回日体大長距離競技会兼第18回NITTAIDAII Challenge Gamesが行われ、NCG男子10000mでは楠岡由浩(帝京大)が27分52秒09の自己 […]
2025.11.15
レジェンド・金丸祐三さん、塚原直貴さんが参加! サニブラウンとともに陸上教室講師として/RIKUJOフェスティバル
11月15日、日本陸連はRIKUJOフェスティバル(11月29日/東京・国立競技場)で実施する「RIKUJOスクール(子ども向け陸上教室)」の講師に、東京世界選手権代表のサニブラウン・アブデル・ハキーム(東レ)とともに、 […]
2025.11.15
関大が56年ぶりV! 6区・嶋田匠海の区間新で逆転 2位関学大、3位大経大 オープン参加の青学大も好走/丹後大学駅伝
◇丹後大学駅伝/第87回関西学生駅伝(11月15日/京都・宮津市民体育館~京丹後はごろも競技場着8区間74.7km) 11月15日、関西学生駅伝が行われ、関大が3時間45分55秒で56年ぶり12回目の優勝を飾った。 関大 […]
Latest Issue
最新号
2025年12月号 (11月14日発売)
EKIDEN REVIEW
全日本大学駅伝
箱根駅伝予選会
高校駅伝&実業団駅伝予選
Follow-up Tokyo 2025