2025.03.28
今年、陸上の世界選手権(世界陸上)が34年ぶりに東京・国立競技場で開催される。今回で20回目の節目を迎える世界陸上。日本で開催されるのは1991年の東京、2007年の大阪大会を含めて3回目で、これは同一国で最多だ。これまで数々のスーパースター、名勝負が生まれた世界陸上の各大会の様子を紹介する『世界陸上プレイバック』。今回は1983年に開催された第1回大会を振り返る。
世界陸上が始まったのは1983年だった。きっかけは1980年に行われたモスクワ五輪。ソ連のアフガニスタン侵攻をきっかけに米国など多くの国がボイコットし、日本もそれに続いた。男子マラソンの瀬古利彦や宗茂・猛兄弟などメダル候補だった有力選手が代表に内定しながらも不出場となった。
こうした事態をきっかけに、世界中の国が参加できる陸上競技の国際大会を開催しようという機運が高まり、世界陸上競技選手権大会の新設が決定。83年にフィンランドのヘルシンキで第1回の世界陸上が開催されることになる。当時は4年に一度の開催だった(現在は2年に一度)。
記念すべき第1回大会でとてつもない世界記録が誕生する。女子400mのヤルミラ・クラトフヴィロヴァ(チェコスロバキア)だ。叩き出した47秒99は、現在も大会記録として残っており、世界歴代2位にランクインしている。
クラトフヴィロヴァは前年に当時・世界歴代2位の48秒85という記録を出しているが、実はクラトフヴィロヴァの本職は800mであり、世界陸上の約2週間前には現在も世界記録として残っている1分53秒28をマーク。今大会でも400mの前日に1分54秒68の好タイムで制していた。ちなみにこの優勝記録も現在まで大会記録として残っている。
400mでは3レーンのクラトフヴィロヴァは4レーンのマリヤ・ピニギナ(ソ連)と中盤まで競り合う。200mを超えたあたりから差を広げ始め、最終的には2位になったタタナ・コセンボヴァ(チェコスロバキア)に5m以上の大差をつけて優勝。後半の強さは圧巻だった。
過酷な2種目で驚異的な記録を出して2冠を達成したクラトフヴィロヴァ。400mは2年後にマリタ・コッホ(東ドイツ)が47秒60を出して、世界記録こそ更新されたが、2種目で大会記録を40年以上保持している偉業は色褪せることはない。
男子で大活躍したのが当時22歳のカール・ルイス(米国)。100m(10秒07)、走幅跳(8m55)、4×100mリレーの3冠を達成した。
特に圧巻だったのが、4×100mリレー。史上初の37秒台となる37秒86の世界新記録を樹立した。
米国は100m銅メダルのエミット・キング、110mハードル銅メダルのウィリー・ゴールト、200m金メダル、100m銀メダルのカルヴィン・スミスに4走がルイスという豪華メンバー。2走までは混戦だったが、3走のスミスでリードを奪うと、4走のルイスが後続との差を大きく広げてフィニッシュした。
ルイスは翌年に行われた自国開催のロサンゼルス五輪で200mも加えた4冠を達成。陸上競技界のスター選手としての階段を一気に駆け上がった。
日本勢は男子14選手、女子6選手が参加。男子400mの日本記録保持者である当時・東海大4年の高野進、男子ハンマー投で「アジアの鉄人」と呼ばれた当時37歳の室伏重信などが出場したが、高野は2次予選敗退、室伏は予選敗退に終わった。

男子ハンマー投に出場した室伏重信
男子棒高跳予選は雨天により競技中止となり、出場者全員が決勝進出。この種目に出場した高橋卓巳は5m25で19位だった。
残りのトラック&フィールド種目はいずれも決勝進出を果たすことはできず、男子5000mの井出健二、男子3000m障害の愛敬重之、男子4×400mリレー(麻場一徳、磯部友晴、小池弘文、高野)が準決勝に進出した。
マラソンは男子が西村義弘の35位、女子が田島三枝子の31位がそれぞれ日本勢の最高順位。日本の初世界陸上での入賞はゼロ。厳しい結果となったが、ここから日本の世界陸上史もスタートした。

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