2024.03.16
準高地合宿として利用者が年々増えている裾野市
富士山麓の豊かな自然環境や首都圏からのアクセスの良さなどが魅力の静岡県裾野市。近年は、陸上長距離合宿地として高校・大学・実業団チームから注目を集めている。標高差を生かしたトレーニング環境があり、陸上競技場や認知動作型トレーニングマシンを完備した体育館、温泉など充実した施設が揃い、メニューに応じたトレーニングができることで、多くのアスリートの関心が高まっている。
準高地でのクロスカントリーなど多様なニーズに対応
富士山と神奈川県箱根町に挟まれた静岡県裾野市。同市はスポーツを通じた地域振興を目指すため2018年にスポーツツーリズム推進協議会を発足。心肺機能を鍛える「準高地トレーニング」ができる地勢を生かして、実業団や大学、高校の陸上チームの合宿誘致に力を入れている。その取り組みが着実に成果を挙げ、今では年間を通して多くの長距離ランナーが競技力向上のためこの地を訪れている。
標高約1450mに位置する水ヶ塚公園遊歩道・クロスカントリーコースをはじめ、2021年に整備した梅の里遊歩道・クロスカントリーコースは2つのコースがあり、ウォーキングやランニングに適している。標高約860mから1040mの繰り返しのアップダウンが特徴のふじ山夢ロードは、脚づくりには最適な環境だ。

梅の里遊歩道・クロスカントリーコースは、1周900mと777mの2つのコース設定があり、起伏に富んだコースとなっている

富士山こどもの国クロスカントリーコースは、標高約920mに位置する一面芝生張りのコース

「遊園地ぐりんぱ」ゴルフ場跡地にあるクロカンコース。標高約1345m。クロカンコースは水ヶ塚公園を含めて4ヵ所もあり、目的に応じて使い分けられそうだ
そのほかに陸上競技場や認知動作型トレーニングマシンをはじめ室内トレーニング設備が充実した体育館などもあり、質の高いトレーニングができる。

裾野市運動公園陸上競技場は、400m×8レーンの全天候型ウレタン塗装のブルートラック

ふじ山夢ロードは、アップダウンが特徴。交通量が少なく信号もない片道約11kmのコース

富士山に向かって進む「パノラマロード」。標高330mから550mまで総延長5㎞のコース

バーベルやマシンなどのウエイトトレーニング機器のほか、東京大学小林寛道名誉教授が開発した「認知動作型トレーニングマシン」も設置している裾野市民体育館
多彩な取り組み ランナーを全力で応援・サポート
陸上チームへの直接訪問や、さまざまな大会での誘致活動を積極的に行い、富士山麓のスポーツ合宿の地として認知されてきた裾野市。誘致促進に向けた裾野市ならではのプロジェクトは他にもある。トレーニング効果を最大化するための食事に関するサポートだ。
合宿に来るランナーの食事満足度向上を図るため、日本大学短期大学部食物栄養学科(三島市)や実業団陸上競技部の管理栄養士と協力し、体重調整をしつつ筋肉をつくるために必要な栄養素など、長距離ランナーを念頭においた〝バランスの良い食事メニュー〟を考案。それをベースに、地元の食材を中心に活用した「献立開発」と、市内宿泊施設や飲食店などが参加した「スポーツ栄養学講座」の2つを柱とした『すその頂飯(いただきめし)プロジェクト』を展開しており、市内の宿泊施設や飲食店などと連携し合宿の受け入れ態勢を強化している。

アスリート向け食事メニュー「すその頂飯(いただきめし)」を考案し、市内宿泊施設などと連携した取り組みを行っている
また、準高地トレーニングの効果を医・科学的に検証する実証実験を2019年から4年間にわたり静岡大学や順天堂大学などと連携して取り組み、準高地トレーニングの優位性が実証された。

静岡県からの委託を受け、準高地トレーニングの医科学的な効果を調べる研究を行った
さらに裾野市と裾野市陸上競技協会は2022年度、正式記録が残る公認の陸上競技大会を2つ新設。7月に「富士裾野トラックミート」、12月に「富士裾野ディスタンスチャレンジ」と2年連続で開催し、県内の小中高生に加え、関東の強豪大学の選手などが多数出場した。

「富士裾野トラックミート」は大学駅伝関東強豪校が参加し、2022年から開催されている
今年からは市初の地域おこし協力隊の隊員として元女子陸上実業団ランナーであった萩原歩美さん(静岡市出身)が加わり、選手時代に築いた人脈を武器にして誘致活動を強化していく。
今後さらに〝準高地トレーニングができるまち〟として多くのランナーを育成する聖地となっていきそうだ。

ホテルクーネルインの大浴場は、伊豆より取り寄せた温泉を使用しており、身体の芯から温まることができ疲労回復効果がある
■裾野市地域おこし協力隊 萩原歩美さん
(2014年仁川アジア大会 陸上女子10000m銅メダリスト)
「裾野市には中学時代に選抜合宿などでお世話になり、最近ではランニングイベントの運営スタッフとしても携わり、改めて裾野市は良い場所だと実感しました。特に空気がおいしく、富士山の眺望は段違いだと感じます。また、他の合宿地よりも都心からのアクセスが良く、練習設備が良いことも大きな強みです。クロスカントリーコースが4ヶ所にあり、陸上競技場やロードを含め、その時の状況に応じたトレーニングができる環境だと思います。トレーニング地としてはまだまだ知られていない部分があるので、選手時代に築いた人脈などを生かし、多くの方が楽しめるイベントや合宿誘致をしていきたいです」

今年の1月から地域おこし協力隊の隊員に就任された萩原歩美さん
■裾野市へのアクセス
裾野市スポーツツーリズム推進協議会 事務局 裾野市産業観光スポーツ課
〒410-1192
静岡県裾野市佐野1059
TEL:055-995-1825
FAX:055-995-1864
Mail:kankou@city-susono.shizuoka.jp
※この記事は『月刊陸上競技』2024年4月号に掲載しています
<関連リンク>
裾野市スポーツツーリズム推進協議会
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準高地合宿として利用者が年々増えている裾野市
富士山麓の豊かな自然環境や首都圏からのアクセスの良さなどが魅力の静岡県裾野市。近年は、陸上長距離合宿地として高校・大学・実業団チームから注目を集めている。標高差を生かしたトレーニング環境があり、陸上競技場や認知動作型トレーニングマシンを完備した体育館、温泉など充実した施設が揃い、メニューに応じたトレーニングができることで、多くのアスリートの関心が高まっている。準高地でのクロスカントリーなど多様なニーズに対応
富士山と神奈川県箱根町に挟まれた静岡県裾野市。同市はスポーツを通じた地域振興を目指すため2018年にスポーツツーリズム推進協議会を発足。心肺機能を鍛える「準高地トレーニング」ができる地勢を生かして、実業団や大学、高校の陸上チームの合宿誘致に力を入れている。その取り組みが着実に成果を挙げ、今では年間を通して多くの長距離ランナーが競技力向上のためこの地を訪れている。 標高約1450mに位置する水ヶ塚公園遊歩道・クロスカントリーコースをはじめ、2021年に整備した梅の里遊歩道・クロスカントリーコースは2つのコースがあり、ウォーキングやランニングに適している。標高約860mから1040mの繰り返しのアップダウンが特徴のふじ山夢ロードは、脚づくりには最適な環境だ。 [caption id="attachment_129339" align="alignnone" width="800"]






多彩な取り組み ランナーを全力で応援・サポート
陸上チームへの直接訪問や、さまざまな大会での誘致活動を積極的に行い、富士山麓のスポーツ合宿の地として認知されてきた裾野市。誘致促進に向けた裾野市ならではのプロジェクトは他にもある。トレーニング効果を最大化するための食事に関するサポートだ。 合宿に来るランナーの食事満足度向上を図るため、日本大学短期大学部食物栄養学科(三島市)や実業団陸上競技部の管理栄養士と協力し、体重調整をしつつ筋肉をつくるために必要な栄養素など、長距離ランナーを念頭においた〝バランスの良い食事メニュー〟を考案。それをベースに、地元の食材を中心に活用した「献立開発」と、市内宿泊施設や飲食店などが参加した「スポーツ栄養学講座」の2つを柱とした『すその頂飯(いただきめし)プロジェクト』を展開しており、市内の宿泊施設や飲食店などと連携し合宿の受け入れ態勢を強化している。 [caption id="attachment_129347" align="alignnone" width="800"]





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