2023.10.25
教室に入ったら陸上のことは忘れて勉強に集中
――「これをやったから強くなれた」と思える練習は?
毎朝の8000mです。これは先頭を引っ張る人がペースを決めて良くて、1000mごとに交代していきます。4人グループで走るなら、先頭が2回ずつ回ってきますが、先頭の人は直前の人の1000mより上げないといけないというルールです。だから例えば、3000mあたりで一気に上げたら、そこからは相当きつい。疲れている時はみんなが空気を見ながら上げていったり、強くなりたいメンバーがそろうと、試合のようにペースが上がったりして大変でしたね。
――高校はどんな雰囲気の部でしたか?
須磨学園は自主性をとても重んじていました。30分ジョグをそれぞれ考えてやりましょうというメニューも多くて、そういう時、しんどいなと思う子はそれほどペースを上げないし、私みたいに強くなりたい人は、誰からも抜かされたくないので、30分間全力疾走するんです。楽しようと思えば楽できる部で、私には合っていましたし、当時はレベルが高いメンバーが集まっていたので、毎日がすごく刺激的でした。

須磨学園高では1年から高校のトップで活躍。この頃から世界を意識していたという
――さまざまな大会で活躍するなか、どのように目標を設定していましたか?
全中で2冠していたので、入学当初はインターハイで勝つことが目標で、高校記録を出したい、日本選手権で優勝したいと、目標をクリアするごとに次の目標を持つようになりました。ただ、3年生の時はキャプテンだったこともあって、個人の目標より全国高校駅伝で優勝したいという思いが非常に大きくなっていました。
――多忙な毎日で、学校生活や勉強の方はいかがでしたか?
オンとオフの切り替えというか、中学生の頃から部活動だけでなく、勉強やいろいろなことにしっかりがんばりなさいと言われていたので、高校でもそれを継続していた感じです。生徒会もやりましたし、教室に入ったら陸上のことは忘れて勉強に集中する。一般クラスに陸上部員はいなくて、私もずっと陸上を考えているようなタイプではなかったので、切り替えること自体が楽しくて好きになりました。
――毎日の生活で工夫していたことや意識していたことは?
通学に2時間かかっていたので、電車に乗っているのは往復3時間弱。そのなかですべて済ませるという独自のルールを決めていました。練習のことを振り返ったり、日誌を書いたり、勉強の単語を覚えたり、宿題したりというのは、電車のなかで終わらせる。そういう生活スタイルだったので、1日のスケジュールが流れるように進んでいました。ちなみに朝練習のために5時過ぎの電車に乗らないといけなかったので、母が3時に起きて10種類ぐらいおかずがあるお弁当を毎日3年間作ってくれて、父が駅まで車で送ってくれました。自分が母親になって、お弁当を作る大変さを実感しているので、両親には本当に感謝しています。

高3の世界ジュニア選手権1500mで銅メダルを獲得。同時に学業との両立にも力を注いでいた
――中学や高校時代、先輩や後輩との関係で悩んだことは?
まったくなかったですね。中学校は田舎の学校なので、みんな小学校から一緒みたいな感じで、先輩からは可愛がってもらっていました。高校も強豪校で上下関係が厳しいと思っていましたが、そんなことはありませんでした。先輩方は優しくて、私自身も先輩を立てることもなく友達のように接していたので、居心地が良かったです。今でも一番仲が良いのが高校の同級生のメンバーで、たまに先輩方が私の家にふらっと遊びに来てくれたりするのもうれしいです。
――陸上を辞めたいときはありましたか?
中学や高校の頃は一切ありません。もちろん、落ち込むこともありました。高校3年の日本選手権で僅差で負けた時など、悔しい経験は何回もしましたが、そのたびにチームメイトが前向きな言葉で支えてくれました。おそらく個人でやっていたら、精神的にもっときつかったと思います。

練習よりも大事なことを学んだ中学時代
――中学の陸上部の雰囲気は? 練習は全然積まないのですが、生活面のきつさがあったというか、まず中学生としてあるべき姿みたいな所を求められていた気がします。例えば、挨拶や学校の勉強が土台にしっかりあって部活ができるという感じで、規律など練習以外の部分の基本的なものを学ばせてもらいました。 [caption id="attachment_118024" align="alignnone" width="800"]

教室に入ったら陸上のことは忘れて勉強に集中
――「これをやったから強くなれた」と思える練習は? 毎朝の8000mです。これは先頭を引っ張る人がペースを決めて良くて、1000mごとに交代していきます。4人グループで走るなら、先頭が2回ずつ回ってきますが、先頭の人は直前の人の1000mより上げないといけないというルールです。だから例えば、3000mあたりで一気に上げたら、そこからは相当きつい。疲れている時はみんなが空気を見ながら上げていったり、強くなりたいメンバーがそろうと、試合のようにペースが上がったりして大変でしたね。 ――高校はどんな雰囲気の部でしたか? 須磨学園は自主性をとても重んじていました。30分ジョグをそれぞれ考えてやりましょうというメニューも多くて、そういう時、しんどいなと思う子はそれほどペースを上げないし、私みたいに強くなりたい人は、誰からも抜かされたくないので、30分間全力疾走するんです。楽しようと思えば楽できる部で、私には合っていましたし、当時はレベルが高いメンバーが集まっていたので、毎日がすごく刺激的でした。 [caption id="attachment_118027" align="alignnone" width="800"]

中学、高校で頑張る選手たちへ
――ご自身の中学高校生時代と今の中高生との違いはありますか? 今の中高生は、オーバートレーニングでケガをする子が非常に多い印象があります。私自身は中学や高校では練習で無理をせず、好きな物をたくさん食べていたので、一度もケガをしませんでした。自分の身体の成長に合ったトレーニングをやっていく必要がありますし、私は女子長距離選手の目線で見てしまいますが、月経の部分で今の時代になっても、まだまだ問題意識がない選手が多いという気がしています。指導者側の「結果を出させてあげたい」という気持ちも理解できますが、中学生や高校生の年代では、楽しいという気持ちが全面に出るようなメンタル状態で競技に取り組んでほしいですね。 [caption id="attachment_118028" align="alignnone" width="800"]

こばやし・ゆりこ/1988年12月12日生まれ。兵庫県出身。旭丘中→須磨学園高→豊田自動織機。中3の北海道全中で800m、1500mの2種目に優勝し、ジュニア五輪、全中駅伝1区区間賞のタイトルを獲得した。高校では1年からインターハイ1500mで日本人トップの2位となり、翌年の世界ユース選手権1500mで銀メダル、3年の世界ジュニア選手権でも銅メダルと世界の舞台で活躍。高校卒業後は5000mで北京五輪に出場した。現在は解説者やラジオパーソナリティなど活動をしている。 |
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