2023.06.03
台風2号と梅雨前線の影響で、雨が降りしきる中でのレースとなった日本選手権の2日目(6月2日)。その男子200m決勝は、鵜澤飛羽(筑波大)が学生歴代4位の20秒32(-0.2)で初優勝を飾った。2008年北京五輪4×100mリレー銀メダリストの高平慎士さん(富士通一般種目ブロック長)に、その男子200mを振り返ってもらった。
◇ ◇ ◇
予選の走りも含めて、鵜澤飛羽選手の優勝は順当なものだったと思います。決勝は、たとえうまくいっていなかったとしても、それを含めて誰も彼に対抗できなかったのではないか、と思えるぐらいに上回っていました。この雨の条件で20秒32は速いですね。
実際、前半は1つ外の7レーンから宇野勝翔選手(順大)が優勝するにはこれしかないというぐらいに飛ばし、4レーンの水久保漱至選手(第一酒造)も力を使い過ぎたかなと思うぐらいの入りを見せました。
それでも、鵜澤選手は200mトータルのスピード感を把握したうえで前半を入り、後半に突き抜けました。もともと、後半にギアが入った時にムキになって走っているように見えるほどの上体のブレがある選手で、そのタイミングはいつもより早かったかもしれません。もし、宇野選手や水久保選手の突っ込みがなく、よりリラックスした状況になっていたら、世界選手権の参加標準記録(20秒15)の突破もあったのではないでしょうか。それぐらいの強さを感じました。
鵜澤選手のフォームの特徴として、後半にムキになって走っているように見えても、かえって脚はコンパクトに回っていて、上体の左右のブレとのタイミングが合っている。自分の最大限の力を発揮できる走り方をわかっているからこそのフォームで、これは「特殊能力」と言えるものかもしれません。
本人も「やっとスタート地点に立った」と言っているように、彼にとってはここからがスタート。今回、優勝候補として乗り込んで、しっかりと勝つ、ということを実現しました。これからはもう一段階進んだ「強さをいかに継続していくか」ということに向き合っていくことになるでしょう。これは、男子スプリントだけでなく、日本陸上界全体に言えることですが、日本選手権で毎年結果を出している選手は少ないです。
おそらく、ブダペスト世界選手権の代表入りはかなり見えてきていると思います。世界の舞台では、前半はもっと前に出られることになるでしょう。その中で、今の感覚を貫き通せるか。200mトータルでの勝負に徹することができるか。ただ、それをやってほしいと思わせる力を持っていると思うので、これからのさらなる心身の成長に期待したいです。
宇野選手も、水久保選手も、最善を尽くしたレースだったと思います。これを、いい経験にしてステップアップしていってほしいです。ワールドランキング制度になり、一発ではない真の実力が試されています。鵜澤選手と同様に、これをいかに継続させるか、だと思います。
一方で、飯塚選手、上山選手にとっては厳しいレースになりました。特に飯塚選手はシーズンの入りが良かったので、アクシデントがなければ、とは思います。ただ、右膝の痛みが続いていることから、身体が耐えきれなかったのかもしれません。100mの選手の参戦が少なかったとはいえ、200m全体として決して水準が高いとは言えない状況ではあるので、2人の奮起を期待しています。
◎高平慎士(たかひら・しんじ)
富士通陸上競技部一般種目ブロック長。五輪に3大会連続(2004年アテネ、08年北京、12年ロンドン)で出場し、北京大会では4×100mリレーで銀メダルに輝いた(3走)。自己ベストは100m10秒20、200m20秒22(日本歴代7位)
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