HOME 国内

2023.06.02

やり投・北口榛花2位で涙「負けてはいけないとやってきた」高み目指すからこそのチャレンジ/日本選手権
やり投・北口榛花2位で涙「負けてはいけないとやってきた」高み目指すからこそのチャレンジ/日本選手権

59m92で2位に甘んじた北口榛花

◇第107回日本選手権(6月1日~4日/大阪・ヤンマースタジアム長居)2日目

ブダペスト世界選手権の代表選考会を兼ねた第107回日本選手権の2日目に女子やり投が行われ、斉藤真理菜(スズキ)が61m14で5年ぶり2度目の優勝を飾った。

広告の下にコンテンツが続きます

日本記録保持者で、オレゴン世界選手権銅メダリスト、そしてブダペスト世界選手権代表に内定している北口榛花(JAL)は59m92で2位。試合後は大粒の涙をこぼした。

「ずっと日本人に負けてはいけないと思ってやってきました。ずっと真理菜さんが一番強いと思っていました。結果的に負けて残念ですし悔しいですが、1回も自分の投げができなかったから負けました」

世界を目指しているからこそ、絶対的な強さを誇った前日本記録保持者の海老原有希のように、国内で負けないように。そうすることで全体が引き上げられ、日本の女子やり投が強くなる。だからこそ負けたくなかった。

世界選手権メダリストとして始まった今シーズン。一見、順調に見えた。4月の織田記念で64m50を投げて世界選手権参加標準記録突破のため代表に内定。5月の木南記念では64m43を放った。

広告の下にコンテンツが続きます

しかし、セイコーゴールデングランプリでは一転して安定感を欠き61m34。「タイミングがズレてしまった」。そこから今大会まで「自分なりに修正してきたつもりでした」と言うが、やはり不安もあったという。

向上した助走スピードを生かすために、高い速度で助走した中で、より素早く身体のひねり、ブロック、やりを放つタイミングなどを噛み合わせていかなければいいけない。加えて、課題である「両脚をなるべく長く着いて力を加える」という点を意識してきた。

「こうすれば飛ぶというのはわかっているのですが…」。そう言ってまたタオルで顔を覆う。6投すべてで「チグハグで、やりに翻弄されていました」と言う。

ただ、これは北口がもっともっと高みを目指しているからこそ生まれた現象。「昨年と同じ投げ方では同じ記録しか出ない」。同じ記録を続けていれば、もちろんまた上位争いはできるかもしれない。

しかし、北口は世界一を目指し、誰も見たことのない景色を見たいと思っている。だからこそ、安定を求めるのではなく、例え苦しんだとしても新しいことに挑戦している。

すぐに渡欧して、ダイヤモンドリーグなどを転戦予定。「こんな記録では相手にならない。世界選手権まであと2ヵ月あるので、世界のトップと試合を重ねながら修正していきます」。

これまで、何度も涙を原動力に変え、成長してきた。自ら道を切り開いていけば、またあの高い弧を描くやりと、北口らしい笑顔が見られる。

◇第107回日本選手権(6月1日~4日/大阪・ヤンマースタジアム長居)2日目 ブダペスト世界選手権の代表選考会を兼ねた第107回日本選手権の2日目に女子やり投が行われ、斉藤真理菜(スズキ)が61m14で5年ぶり2度目の優勝を飾った。 日本記録保持者で、オレゴン世界選手権銅メダリスト、そしてブダペスト世界選手権代表に内定している北口榛花(JAL)は59m92で2位。試合後は大粒の涙をこぼした。 「ずっと日本人に負けてはいけないと思ってやってきました。ずっと真理菜さんが一番強いと思っていました。結果的に負けて残念ですし悔しいですが、1回も自分の投げができなかったから負けました」 世界を目指しているからこそ、絶対的な強さを誇った前日本記録保持者の海老原有希のように、国内で負けないように。そうすることで全体が引き上げられ、日本の女子やり投が強くなる。だからこそ負けたくなかった。 世界選手権メダリストとして始まった今シーズン。一見、順調に見えた。4月の織田記念で64m50を投げて世界選手権参加標準記録突破のため代表に内定。5月の木南記念では64m43を放った。 しかし、セイコーゴールデングランプリでは一転して安定感を欠き61m34。「タイミングがズレてしまった」。そこから今大会まで「自分なりに修正してきたつもりでした」と言うが、やはり不安もあったという。 向上した助走スピードを生かすために、高い速度で助走した中で、より素早く身体のひねり、ブロック、やりを放つタイミングなどを噛み合わせていかなければいいけない。加えて、課題である「両脚をなるべく長く着いて力を加える」という点を意識してきた。 「こうすれば飛ぶというのはわかっているのですが…」。そう言ってまたタオルで顔を覆う。6投すべてで「チグハグで、やりに翻弄されていました」と言う。 ただ、これは北口がもっともっと高みを目指しているからこそ生まれた現象。「昨年と同じ投げ方では同じ記録しか出ない」。同じ記録を続けていれば、もちろんまた上位争いはできるかもしれない。 しかし、北口は世界一を目指し、誰も見たことのない景色を見たいと思っている。だからこそ、安定を求めるのではなく、例え苦しんだとしても新しいことに挑戦している。 すぐに渡欧して、ダイヤモンドリーグなどを転戦予定。「こんな記録では相手にならない。世界選手権まであと2ヵ月あるので、世界のトップと試合を重ねながら修正していきます」。 これまで、何度も涙を原動力に変え、成長してきた。自ら道を切り開いていけば、またあの高い弧を描くやりと、北口らしい笑顔が見られる。

【動画】59m92をマークした北口榛花の投てき

次ページ:

ページ: 1 2

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.12.22

佐久長聖1年の橋本蒼平が5000m14分30秒50でトップ/SGH文スポ チャレンジ

12月23日、滋賀県守山市のSGホールディングスグループ陸上競技場で令和7年度SGH文スポ チャレンジ競技会が開催された。 同大会は主に前日の全国高校駅伝(男子)に出場した学校のうち、出走できなかった選手たちを中心に参加 […]

NEWS 箱根駅伝Stories/継続中最長シード・東洋大 激動のシーズンに高まる結束力 2年生世代が台頭

2025.12.22

箱根駅伝Stories/継続中最長シード・東洋大 激動のシーズンに高まる結束力 2年生世代が台頭

新春の風物詩・第102回箱根駅伝に挑む選手やチームを取り上げる「箱根駅伝Stories」。学生三大駅伝最終決戦に向かうそれぞれの歩みや思いを紹介する。 「チームのために走る」 20年連続で箱根駅伝のシード権を守り続けてい […]

NEWS 箱根駅伝Stories/悔しさを味わってきた東農大・原田洋輔 「がっつり爪痕を残したい」 地元・戸塚で貢献を

2025.12.22

箱根駅伝Stories/悔しさを味わってきた東農大・原田洋輔 「がっつり爪痕を残したい」 地元・戸塚で貢献を

新春の風物詩・第102回箱根駅伝に挑む選手やチームを取り上げる「箱根駅伝Stories」。学生三大駅伝最終決戦に向かうそれぞれの歩みや思いを紹介する。 身近にあった箱根駅伝 10月の箱根駅伝予選会で東農大は6位を占め、2 […]

NEWS 箱根駅伝Stories/ハーフで強さ示してきた帝京大・島田晃希 「エース区間を走りたい」期待の“大器”最後の舞台へ

2025.12.22

箱根駅伝Stories/ハーフで強さ示してきた帝京大・島田晃希 「エース区間を走りたい」期待の“大器”最後の舞台へ

新春の風物詩・第102回箱根駅伝に挑む選手やチームを取り上げる「箱根駅伝Stories」。学生三大駅伝最終決戦に向かうそれぞれの歩みや思いを紹介する。 身近にあった箱根駅伝 この1年で帝京大の長距離種目の歴代記録がガラリ […]

NEWS 大学対校男女混合駅伝のアンバサダーに堀未央奈が就任!来年2月15日開催、22チーム出場

2025.12.22

大学対校男女混合駅伝のアンバサダーに堀未央奈が就任!来年2月15日開催、22チーム出場

第6回全国大学対校男女混合駅伝の大会要項が公開され、大会アンバサダーに元乃木坂46の堀未央奈さんが選ばれた。 堀さんは乃木坂46の2期生として加入し、『バレッタ』でセンターを務めるなど人気メンバーとして活躍。21年3月に […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2026年1月号 (12月12日発売)

2026年1月号 (12月12日発売)

箱根駅伝観戦ガイド&全国高校駅伝総展望
大迫傑がマラソン日本新
箱根駅伝「5強」主将インタビュー
クイーンズ駅伝/福岡国際マラソン
〔新旧男子100m高校記録保持者〕桐生祥秀×清水空跳

page top