2020.08.12
【Close-up】三浦龍司(順大)
東京五輪候補に名乗り
男子3000mSCのニューカマー
7月18日のホクレン・ディスタンスチャレンジ千歳大会で、18歳の三浦龍司(順大1)が快挙を成し遂げた。男子3000m障害で日本歴代2位の8分19秒37をマーク。大学初レースで、いきなりU20日本記録と日本学生記録を塗り替えてみせた。
近年、停滞していた日本の男子3000m障害に現れた〝希望の星〟。1年後に延期された東京五輪の出場も可能性が見えてきている。中学時代まで全国の決勝の舞台にすら立てなかった男がなぜ、これだけのタイムを残すことができたのか。北海道遠征から帰ってきたばかりの本人に話を聞き、そのルーツを探った。
◎文/酒井政人
歴史を塗り替える快走
誰がこれだけの記録を想像しただろうか。2月11日に18歳を迎えたジュニア選手が、ホクレン・ディスタンスチャレンジ千歳大会の男子3000m障害で衝撃の走りを見せた。
これが大学生となって初レースだった三浦龍司(順大)は、1000mを2分47秒9で通過する高速レースを集団前方で推移する。2000mを5分39秒9で通過すると、残り1000mは8分21秒30の自己記録を持つフィレモン・キプラガット(愛三工業)の後ろにつけた。
「1000mの通過だけ聞いて、あとはタイムを気にしていなかったので、どれくらいでゴールできそうなのか、自分でもよくわかっていませんでした。ただ、ラスト1周でこれまでのレースでは感じたことがないくらいの余裕があったんです」
三浦はペースアップすると、最後の1周は障害物に足を掛けないハードリングで攻めていく。なかなか先頭を奪えずにいたが、最後の直線でキプラガットをかわし、フィニッシュラインに飛びこんだ。
「キプラガットに勝てたことと、記録が出た喜びが同時に来ましたね。8分30秒は切れたかなという感触はあったんですけど、(8分)20秒も切れていたなんて、本当に驚きました」
三浦とキプラガットは同学年にあたり、昨夏のインターハイでは3連覇を達成したキプラガットの後塵を拝する2位。「勝負したい」とは思っても、「『勝とう』とは思えなかった」という格上の存在に劇的初勝利を収めた。
北の大地で刻んだ8分19秒37は、岩水嘉孝が持つ日本記録に0秒44と迫る歴代2位で、国内日本人最高記録となる。昨年、8分39秒37の高校新記録を30年ぶりに樹立した三浦は、愛敬重之(中京大)が1983年に樹立したU20日本記録(8分31秒27)と新宅雅也(日体大)が79年に打ち立てた学生記録(8分25 秒8)、〝最古〟となっていた2つのレコードを塗り替えた。いずれも平成の30年間で破られなかった記録であることから、歴史を大きく動かしたと言える。さらに、有効期限外ではあるが、2021年に延期した東京五輪の参加標準記録(8分22秒00)も上回った。
「今季はU20日本記録を目標にしていたので、それはすごくうれしいです。ただ学生記録に関しては、まったく実感がありません。自分の中では東京五輪はまだまだ差があるなと感じていたんですけど、キプラガットに勝てたことで自信もついたので、東京五輪を目指したいという気持ちが湧いてきました」
高1の春から3000mSCに着手
18歳ながら学生記録保持者となった三浦。日本記録も目の前まで迫っている
三浦は小学生の時に島根県浜田市のクラブチーム「浜田JAS」で競技を開始。専門は長距離(1000m)だったが、チーム方針で80mハードルなど、さまざまな種目をこなしたという。浜田東中では陸上部に入部して、引き続きクラブでも練習を続けた。中学ベストは1500m4分06秒00、3000m8分49秒63。決勝に進むことはできなかったが、全中や国体、ジュニア五輪に出場している。
三浦のセンスと将来性を考えた浜田JASの上ヶ迫定夫コーチは「5000mや10000mよりも戦える」と、中学時代から3000m障害をプッシュ。クラブチームではハードル練習を積極的に取り入れていたという。
そして、より高いレベルの環境を求めて京都・洛南高に越境進学すると、奥村隆太郎先生に希望を伝えて3000m障害に挑戦した。1年時はインターハイ路線で近畿大会まで進出。秋には高1歴代2位の9分10秒78をマークした。
この続きは2020年8月12日発売の『月刊陸上競技9月号』をご覧ください。
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【Close-up】三浦龍司(順大)
東京五輪候補に名乗り 男子3000mSCのニューカマー
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歴史を塗り替える快走
誰がこれだけの記録を想像しただろうか。2月11日に18歳を迎えたジュニア選手が、ホクレン・ディスタンスチャレンジ千歳大会の男子3000m障害で衝撃の走りを見せた。 これが大学生となって初レースだった三浦龍司(順大)は、1000mを2分47秒9で通過する高速レースを集団前方で推移する。2000mを5分39秒9で通過すると、残り1000mは8分21秒30の自己記録を持つフィレモン・キプラガット(愛三工業)の後ろにつけた。 「1000mの通過だけ聞いて、あとはタイムを気にしていなかったので、どれくらいでゴールできそうなのか、自分でもよくわかっていませんでした。ただ、ラスト1周でこれまでのレースでは感じたことがないくらいの余裕があったんです」 三浦はペースアップすると、最後の1周は障害物に足を掛けないハードリングで攻めていく。なかなか先頭を奪えずにいたが、最後の直線でキプラガットをかわし、フィニッシュラインに飛びこんだ。 「キプラガットに勝てたことと、記録が出た喜びが同時に来ましたね。8分30秒は切れたかなという感触はあったんですけど、(8分)20秒も切れていたなんて、本当に驚きました」 三浦とキプラガットは同学年にあたり、昨夏のインターハイでは3連覇を達成したキプラガットの後塵を拝する2位。「勝負したい」とは思っても、「『勝とう』とは思えなかった」という格上の存在に劇的初勝利を収めた。 北の大地で刻んだ8分19秒37は、岩水嘉孝が持つ日本記録に0秒44と迫る歴代2位で、国内日本人最高記録となる。昨年、8分39秒37の高校新記録を30年ぶりに樹立した三浦は、愛敬重之(中京大)が1983年に樹立したU20日本記録(8分31秒27)と新宅雅也(日体大)が79年に打ち立てた学生記録(8分25 秒8)、〝最古〟となっていた2つのレコードを塗り替えた。いずれも平成の30年間で破られなかった記録であることから、歴史を大きく動かしたと言える。さらに、有効期限外ではあるが、2021年に延期した東京五輪の参加標準記録(8分22秒00)も上回った。 「今季はU20日本記録を目標にしていたので、それはすごくうれしいです。ただ学生記録に関しては、まったく実感がありません。自分の中では東京五輪はまだまだ差があるなと感じていたんですけど、キプラガットに勝てたことで自信もついたので、東京五輪を目指したいという気持ちが湧いてきました」高1の春から3000mSCに着手
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