◇オレゴン世界陸上(7月15日〜24日/米国・オレゴン州ユージン)1日目
オレゴン世界陸上初日が行われ、3種目で決勝が実施。このうち、男子20㎞競歩は山西利和(愛知製鋼)が1時間19分07秒で2連覇を飾り、2位にも7秒差で池田向希(旭化成)が続いてワン・ツーを成し遂げた。日本人選手の世界選手権連覇、および金、銀メダル独占は、全種目を通じていずれも史上初の快挙だった。
深夜の酷暑という中で行われた前回のドーハ大会を制している山西は、スタート後すぐに飛び出すと、4km過ぎに集団に吸収されてからも時折揺さぶりをかける。13km過ぎに本格的にペースを上げ、昨年の東京五輪銀メダルの池田、今年3月の世界競歩チーム選手権3位のサムエル・キレリ・ガシンバ(ケニア)との争いに。
いったんはペルセウス・カールストレーム(スウェーデン)に追いつかれたものの、17km過ぎに再びペースアップすると、それに対応したのは池田だけだった。日本人同士の金メダルを懸けた一騎打ち。池田が前に出れば、山西も譲らない。
東京五輪では池田に敗れて銅メダル。「池田選手にはリベンジしたかった」と、山西が前回王者のプライドを見せたのが残り1km。力強い腕振りで池田を一気に引き離す。ラスト1kmを3分40秒でカバーする強烈なスパートを見せ、ガッツポーズで栄光のフィニッシュテープを切った。
「自分の良さを出すために前半からある程度早い展開に」持ち込み、「他の選手が消耗した状態でラストを迎えることを狙って、揺さぶりをかけた」山西。最初から最後までレースを支配し、同種目では03~07年に3連覇したジェファーソン・ペレス(エクアドル)以来の偉業に、充実の笑顔が広がった。
池田も、山西に離されてから粘って2位を確保。五輪に続くメダリストとなり、「うれしい反面、(山西に負けて)悔しい思いもあるが、ステップアップしている証拠」と胸を張った。
今大会最初の決勝種目として行われた女子20km競歩は、キンバリー・ガルシア・レオン(ペルー)が自己ベストの1時間26分58秒で金メダル「第1号」となった。
前回銀メダルの切陽什姐(中国)とともに集団から飛び出すと、14kmあたりで独歩となり、そのまま逃げ切り。世界選手権では2017年ロンドン大会の7位が最高。五輪での入賞実績はないが、今年3月の世界競歩チーム選手権で3位と急成長を遂げた28歳が中国勢の6連覇を阻止し、ペルー勢として全種目を通じて大会初優勝を果たした。
この日最終種目として行われた男女混合4×400mリレーは、ラスト100mを切って地元米国を逆転したドミニカ共和国が3分09秒82で初制覇。オランダが3分09秒90の自国新で2位に続き、米国は3分10秒16で銅メダルだった。
米国の2走を務めたのは今大会が現役「ラストラン」となる36歳のアリソン・フェリックス。トップでバトンを受けると、地元の大歓声を背に快調にトラックを駆け抜けた。終盤にペースダウンして順位を2位に下げ、自身が持つ最多金メダル数(13個)を伸ばすことはできなかったが、スタンドを埋めた大観衆からの惜別の拍手は鳴りやまなかった。
日本勢は男子20km競歩以外にも大活躍。先に行われた女子20km競歩では、藤井菜々子(エディオン)が1時間29分01秒の6位に食い込み、前回のドーハ大会(7位)に続く入賞を果たした。フィニッシュ直前に3度の優勝実績がある劉虹(中国)にかわされたが、前回6位の岡田久美子(ビックカメラ/現・富士通)に並ぶ同種目日本人最高順位に、「ドーハとは展開も違いますが、7位以上に入れたことは価値がある。良いレースができた」と振り返った。
男子走幅跳予選では、日本チームの主将・橋岡優輝(富士通)が2回目に8m18(+0.4)をジャンプして予選通過標準(8m15)を突破。8位入賞を果たした前回に続く決勝進出を、全体1位で決めた。
男子100m予選は4組で初出場の坂井隆一郎(大阪ガス)が3着(10秒12/+0.2)に食い込んで着順通過を果たすと、最終7組ではサニブラウン・アブデル・ハキーム(タンブルウィードTC)が自身3度目、世界大会で日本人初の9秒台となる9秒98(-0.3)をマークして堂々の1着通過。世界選手権では日本人初のファイナル進出を懸け、16日の準決勝に挑む。
東京五輪入賞者が明暗を分け、女子1500m予選では田中希実(豊田自動織機)が4分05秒30で着順通過の6着にあと一歩の7着ながら、プラス2番目で準決勝に進出。しかし、3着+6の予選通過条件で行われた男子3000m障害では三浦龍司(順大)が8分21秒80の2組5着。タイム順でも6番目と0.74秒差の7番手にとどまり、決勝進出を逃した。
●男子20km競歩メダルセレモニー後のコメント
山西利和(愛知製鋼)
「フラワーセレモニーはそれで楽しいのですが、スタジアムでもらえてうれしかった。君が代はそうそう聴けないので、流せて良かった。住所(大翔/順大)の8位が大きい。池田、川野(将虎/旭化成)以降が出てきていない中で彼が出てきてくれて、難しい中で調整してくれた。同じくらいの選手には意外と世界が近いと思ってくれれば。35kmも勢いのある選手たち。男女とも入賞を狙えると思う」
池田向希(旭化成)
「メダルをもらって実感が湧いてきた。このままチームが勢いに乗ってくれればいい。(君が代を)東京五輪では流せなかったので、山西さんのお陰で流せた。メダルを期待されている種目なので成果を残せて良かった。安心感もありますし、これから先も国際大会が続くので日本の強さを見せていければ。35㎞は初開催なので難しい部分もあると思うが、同期や先輩たちに初代王者を期待したい」
■1日目優勝者一覧
【男子】
20km競歩 山西利和(愛知製鋼) 1時間19分07秒
【女子】
20km競歩 キンバリー・ガルシア・レオン(ペルー) 1時間26分58秒=自己新
【男女混合】
4×400mR ドミニカ共和国 3分09秒82
◇オレゴン世界陸上(7月15日〜24日/米国・オレゴン州ユージン)1日目
オレゴン世界陸上初日が行われ、3種目で決勝が実施。このうち、男子20㎞競歩は山西利和(愛知製鋼)が1時間19分07秒で2連覇を飾り、2位にも7秒差で池田向希(旭化成)が続いてワン・ツーを成し遂げた。日本人選手の世界選手権連覇、および金、銀メダル独占は、全種目を通じていずれも史上初の快挙だった。
深夜の酷暑という中で行われた前回のドーハ大会を制している山西は、スタート後すぐに飛び出すと、4km過ぎに集団に吸収されてからも時折揺さぶりをかける。13km過ぎに本格的にペースを上げ、昨年の東京五輪銀メダルの池田、今年3月の世界競歩チーム選手権3位のサムエル・キレリ・ガシンバ(ケニア)との争いに。
いったんはペルセウス・カールストレーム(スウェーデン)に追いつかれたものの、17km過ぎに再びペースアップすると、それに対応したのは池田だけだった。日本人同士の金メダルを懸けた一騎打ち。池田が前に出れば、山西も譲らない。
東京五輪では池田に敗れて銅メダル。「池田選手にはリベンジしたかった」と、山西が前回王者のプライドを見せたのが残り1km。力強い腕振りで池田を一気に引き離す。ラスト1kmを3分40秒でカバーする強烈なスパートを見せ、ガッツポーズで栄光のフィニッシュテープを切った。
「自分の良さを出すために前半からある程度早い展開に」持ち込み、「他の選手が消耗した状態でラストを迎えることを狙って、揺さぶりをかけた」山西。最初から最後までレースを支配し、同種目では03~07年に3連覇したジェファーソン・ペレス(エクアドル)以来の偉業に、充実の笑顔が広がった。
池田も、山西に離されてから粘って2位を確保。五輪に続くメダリストとなり、「うれしい反面、(山西に負けて)悔しい思いもあるが、ステップアップしている証拠」と胸を張った。
今大会最初の決勝種目として行われた女子20km競歩は、キンバリー・ガルシア・レオン(ペルー)が自己ベストの1時間26分58秒で金メダル「第1号」となった。
前回銀メダルの切陽什姐(中国)とともに集団から飛び出すと、14kmあたりで独歩となり、そのまま逃げ切り。世界選手権では2017年ロンドン大会の7位が最高。五輪での入賞実績はないが、今年3月の世界競歩チーム選手権で3位と急成長を遂げた28歳が中国勢の6連覇を阻止し、ペルー勢として全種目を通じて大会初優勝を果たした。
この日最終種目として行われた男女混合4×400mリレーは、ラスト100mを切って地元米国を逆転したドミニカ共和国が3分09秒82で初制覇。オランダが3分09秒90の自国新で2位に続き、米国は3分10秒16で銅メダルだった。
米国の2走を務めたのは今大会が現役「ラストラン」となる36歳のアリソン・フェリックス。トップでバトンを受けると、地元の大歓声を背に快調にトラックを駆け抜けた。終盤にペースダウンして順位を2位に下げ、自身が持つ最多金メダル数(13個)を伸ばすことはできなかったが、スタンドを埋めた大観衆からの惜別の拍手は鳴りやまなかった。
日本勢は男子20km競歩以外にも大活躍。先に行われた女子20km競歩では、藤井菜々子(エディオン)が1時間29分01秒の6位に食い込み、前回のドーハ大会(7位)に続く入賞を果たした。フィニッシュ直前に3度の優勝実績がある劉虹(中国)にかわされたが、前回6位の岡田久美子(ビックカメラ/現・富士通)に並ぶ同種目日本人最高順位に、「ドーハとは展開も違いますが、7位以上に入れたことは価値がある。良いレースができた」と振り返った。
男子走幅跳予選では、日本チームの主将・橋岡優輝(富士通)が2回目に8m18(+0.4)をジャンプして予選通過標準(8m15)を突破。8位入賞を果たした前回に続く決勝進出を、全体1位で決めた。
男子100m予選は4組で初出場の坂井隆一郎(大阪ガス)が3着(10秒12/+0.2)に食い込んで着順通過を果たすと、最終7組ではサニブラウン・アブデル・ハキーム(タンブルウィードTC)が自身3度目、世界大会で日本人初の9秒台となる9秒98(-0.3)をマークして堂々の1着通過。世界選手権では日本人初のファイナル進出を懸け、16日の準決勝に挑む。
東京五輪入賞者が明暗を分け、女子1500m予選では田中希実(豊田自動織機)が4分05秒30で着順通過の6着にあと一歩の7着ながら、プラス2番目で準決勝に進出。しかし、3着+6の予選通過条件で行われた男子3000m障害では三浦龍司(順大)が8分21秒80の2組5着。タイム順でも6番目と0.74秒差の7番手にとどまり、決勝進出を逃した。
●男子20km競歩メダルセレモニー後のコメント
山西利和(愛知製鋼)
「フラワーセレモニーはそれで楽しいのですが、スタジアムでもらえてうれしかった。君が代はそうそう聴けないので、流せて良かった。住所(大翔/順大)の8位が大きい。池田、川野(将虎/旭化成)以降が出てきていない中で彼が出てきてくれて、難しい中で調整してくれた。同じくらいの選手には意外と世界が近いと思ってくれれば。35kmも勢いのある選手たち。男女とも入賞を狙えると思う」
池田向希(旭化成)
「メダルをもらって実感が湧いてきた。このままチームが勢いに乗ってくれればいい。(君が代を)東京五輪では流せなかったので、山西さんのお陰で流せた。メダルを期待されている種目なので成果を残せて良かった。安心感もありますし、これから先も国際大会が続くので日本の強さを見せていければ。35㎞は初開催なので難しい部分もあると思うが、同期や先輩たちに初代王者を期待したい」
■1日目優勝者一覧
【男子】
20km競歩 山西利和(愛知製鋼) 1時間19分07秒
【女子】
20km競歩 キンバリー・ガルシア・レオン(ペルー) 1時間26分58秒=自己新
【男女混合】
4×400mR ドミニカ共和国 3分09秒82
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