2021.06.15
世界にどんどん近づきつつある女子やり投で、また1人将来性豊かな選手が台頭してきた。助走はスピード感にあふれ、振り切りは力強い。ブロック動作などまだまだ技術は粗削り。それでも、上田百寧(福岡大)が放つやりの放物線は、少しずつ少しずつ、大きさを増す。福岡から東京、そしてパリへと――。
●文/田端慶子
学生3人目の60mスロワー
女子やり投で、上田百寧(福岡大)の勢いが加速している。5月9日に東京・国立競技場で行われたREADY STEADY TOKYOでは、2019年ドーハ世界選手権代表の佐藤友佳(ニコニコのり)、17年ロンドン世界選手権代表の斉藤真理菜(スズキ)らを抑えて殊勲の優勝。記録も日本歴代10位タイの58m93をマークした。
その投てきについて、「ハマった感じはなかったんです」と上田。それでも自己ベストが出せたのは、右肘の痛みもあったとはいえ約3ヵ月間投げを封印し、ウエイトトレーニングに重点を置いた冬季練習の成果が大きい。
「野口(安忠)監督から『技術や動きが100%の状態じゃなくても、つけてきた力でカバーすれば、100%に持っていける』と言われていたことを体感できた試合でした。動きの練習もしつこくやってきたので、染みついてきたのかもしれません」
感覚的な部分でも、新たな境地に突入したことを実感しているようだ。そして、その手応えが自信へと変わったのが、6月1日の木南記念。5投目に60m38を放ち、日本人7人目、学生では3人目の60mスロワーに。
「ずっと60mを目指してやってきたので、ワンランクアップできました」と言って胸を張った。
躍進への気配は、昨年から漂っていた。コロナ禍で試合数が限られていたにもかかわらず、9月の日本インカレに当時学生歴代7位の58m12で初優勝、10月の日本選手権はさらに13cm記録を伸ばして3位に食い込む。特に日本選手権では、57m台を2本投げて高いアベレージも残し、「これならそろそろ60mが出るのでは」と感じるほどだったという。
しかし、その後の2試合では日本選手権の記録を上回ることはできなかった。悔しさが残り、「2021年は絶対に60mを投げるんだ、という例年になく強い気持ちで冬季に移行しました」。
冬季のウエイトトレーニングの成果は、数字的にも明らかだ。フルスクワットのベストは130kgから170kgに、ベンチプレスは95kgから130kgにアップするなど、目に見えてパワーアップした。当初は「力任せの投てきになってしまわないか心配だった」そうだが、その不安はシーズンに入って消えていった。
「今季に入って、それまで遠くに感じていた60mラインが、急に近くに見えるようになったんです」
心身の充実は、念願だった60m超えを現実のものにした。
ドッジボールからやり投への道のり
小学生の時から、その運動能力には天性のものがあった。小学校6年間は地元のドッジボールチームに所属し、全国3位になった。
一方で足が速かったことから、夢だったのは短距離選手になること。福岡・前原西中では陸上部に入り、100mで県大会出場の常連となった。しかし、なかなかドッジボールで味わったような楽しさや充実感が味わえず、「中学で陸上を辞めることも考えて
いました」。
そんな時、福岡県のタレント発掘事業で適性種目を見てもらう機会があり、ハンドボール、ラグビー、ジャベリックスローの3競技に適性があることがわかった。中学3年で初めてターボジャブを握ると、その才能がもっと発揮される競技への道が開けていった。
ジャベリックスローの初試合で県1位になると、ジュニア五輪の出場資格もクリア。顧問の先生を通じて福岡市の名門・中村学園女高の黒岩太先生から指導を受けて臨んだジュニア五輪本番で、見事に3位に食い込んだ。
「正直に言うと、まさかこんな簡単に飛ぶとは……、という感じでしたね。短距離では全国大会に行けなかったので、全国3位に入れたことで、高校でやり投をするという決意が固まりました」
上田は、引き続き黒岩先生の教えを受けるべく、中村学園女高へ進学。インターハイ優勝を経験している先生のように、やり投で日本一を目指し始めた。
この続きは2021年6月14日発売の『月刊陸上競技7月号』をご覧ください。
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学生3人目の60mスロワー
女子やり投で、上田百寧(福岡大)の勢いが加速している。5月9日に東京・国立競技場で行われたREADY STEADY TOKYOでは、2019年ドーハ世界選手権代表の佐藤友佳(ニコニコのり)、17年ロンドン世界選手権代表の斉藤真理菜(スズキ)らを抑えて殊勲の優勝。記録も日本歴代10位タイの58m93をマークした。その投てきについて、「ハマった感じはなかったんです」と上田。それでも自己ベストが出せたのは、右肘の痛みもあったとはいえ約3ヵ月間投げを封印し、ウエイトトレーニングに重点を置いた冬季練習の成果が大きい。「野口(安忠)監督から『技術や動きが100%の状態じゃなくても、つけてきた力でカバーすれば、100%に持っていける』と言われていたことを体感できた試合でした。動きの練習もしつこくやってきたので、染みついてきたのかもしれません」感覚的な部分でも、新たな境地に突入したことを実感しているようだ。そして、その手応えが自信へと変わったのが、6月1日の木南記念。5投目に60m38を放ち、日本人7人目、学生では3人目の60mスロワーに。「ずっと60mを目指してやってきたので、ワンランクアップできました」と言って胸を張った。躍進への気配は、昨年から漂っていた。コロナ禍で試合数が限られていたにもかかわらず、9月の日本インカレに当時学生歴代7位の58m12で初優勝、10月の日本選手権はさらに13cm記録を伸ばして3位に食い込む。特に日本選手権では、57m台を2本投げて高いアベレージも残し、「これならそろそろ60mが出るのでは」と感じるほどだったという。
しかし、その後の2試合では日本選手権の記録を上回ることはできなかった。悔しさが残り、「2021年は絶対に60mを投げるんだ、という例年になく強い気持ちで冬季に移行しました」。冬季のウエイトトレーニングの成果は、数字的にも明らかだ。フルスクワットのベストは130kgから170kgに、ベンチプレスは95kgから130kgにアップするなど、目に見えてパワーアップした。当初は「力任せの投てきになってしまわないか心配だった」そうだが、その不安はシーズンに入って消えていった。「今季に入って、それまで遠くに感じていた60mラインが、急に近くに見えるようになったんです」心身の充実は、念願だった60m超えを現実のものにした。ドッジボールからやり投への道のり
小学生の時から、その運動能力には天性のものがあった。小学校6年間は地元のドッジボールチームに所属し、全国3位になった。一方で足が速かったことから、夢だったのは短距離選手になること。福岡・前原西中では陸上部に入り、100mで県大会出場の常連となった。しかし、なかなかドッジボールで味わったような楽しさや充実感が味わえず、「中学で陸上を辞めることも考えて いました」。そんな時、福岡県のタレント発掘事業で適性種目を見てもらう機会があり、ハンドボール、ラグビー、ジャベリックスローの3競技に適性があることがわかった。中学3年で初めてターボジャブを握ると、その才能がもっと発揮される競技への道が開けていった。ジャベリックスローの初試合で県1位になると、ジュニア五輪の出場資格もクリア。顧問の先生を通じて福岡市の名門・中村学園女高の黒岩太先生から指導を受けて臨んだジュニア五輪本番で、見事に3位に食い込んだ。「正直に言うと、まさかこんな簡単に飛ぶとは……、という感じでしたね。短距離では全国大会に行けなかったので、全国3位に入れたことで、高校でやり投をするという決意が固まりました」上田は、引き続き黒岩先生の教えを受けるべく、中村学園女高へ進学。インターハイ優勝を経験している先生のように、やり投で日本一を目指し始めた。この続きは2021年6月14日発売の『月刊陸上競技7月号』をご覧ください。RECOMMENDED おすすめの記事
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