HOME 国内、日本代表、五輪
日本マイル「このアジア記録を誇りにまだまだ成長したい」力尽くして2分58秒33、5大会ぶり入賞の6位/パリ五輪
日本マイル「このアジア記録を誇りにまだまだ成長したい」力尽くして2分58秒33、5大会ぶり入賞の6位/パリ五輪

レースを走り終えて、記録発表を待つマイルメンバー

◇パリ五輪・陸上競技(8月1日~11日/フランス・パリ)10日目

パリ五輪・陸上競技10日目のイブニングセッションが行われ、男子4×400mリレー決勝に出場した日本は2分58秒33のアジア新記録で6位入賞を果たした。

2分59秒48の日本新記録をマークした予選と同じ、1走から中島佑気ジョセフ(富士通)、川端魁人(中京大クラブ)、佐藤風雅(ミズノ)、佐藤拳太郎(富士通)のオーダー。予選の記録を1秒以上も上回り、日本として力を尽くした。佐藤拳は言う。

広告の下にコンテンツが続きます

「2分58秒50以内を目指して、このチームはスタートしました」

昨年のブダペスト世界選手権でインドが作った2分59秒01のアジア記録を更新するタイムが、メダル争いに必要な水準。そう分析しての目標設定だ。

パリでの流れは決して良くはなかった。中島、ダブル佐藤ともに、個人の400mでは予選敗退。今大会では予選敗退者の中から上位を準決勝に復活させる敗者復活戦が設けられたが、4×400mリレーに懸けるために棄権を選択する。

広告の下にコンテンツが続きます

その力を予選からぶつけ、まずは日本新をマーク。組4着でプラス通過ながら、全体4位のタイムに手応えはあった。

だが、世界の壁は厚かった。3連覇を達成した米国が世界記録に0.14秒差と迫る歴代2位、五輪新の2分54秒43、ボツワナが歴代3位の2分54秒53をマークするなど好記録が続出。その流れに乗って、アジア初の2分59秒切り。そして、チームの設定タイムは見事にクリアした。

それでも、1走の中島が「陸上を初めて10年間のすべてをぶつける思いで走って、今できる最善のものは出せた」という走りを見せても6位争いに持ち込むのが精一杯。2走の川端も、レース後にメディカルに運ばれるほど力を出し尽くした。だが、その後も7位前後の争いに終始した。

3走の佐藤風も、「抜かれずに前との差をつめる仕事をしたかったけど、世界のレベルに追いつかなかった」と悔しがる。

佐藤拳は前を走るチームの転倒があって1つ順位を上げたが、「まだまだ世界との差があるという気持と、そもそも(設定した)そのタイムではメダル争いすらできなかった。見通しが甘かった」と総括する。

3年前の東京五輪に向けて、前半からできる限り前のポジションを狙う戦略を組み立ててきた。世界的に進む前半200mのスピード化に対応したものだが、東京五輪では25年ぶりに日本タイ記録の3分00秒76をマークしながら、予選敗退に終わった。このとき、2走は川端、3走は佐藤拳が務めた。

だが、その取り組みは翌年に大きな成果となって現れる。オレゴン世界選手権で9大会ぶりの決勝進出を果たすと、決勝は日本初の3分切りとなる2分59秒51のアジア新(当時)を打ち立てて過去最高の4位に。メダルまであと0.79秒届かなかったが、歴史を大きく動かした。このとき、1走は佐藤風、2走は川端、4走は中島がバトンをつないだ。

そして昨年、ブダペスト世界選手権では個人の400mで佐藤拳が32年ぶり日本新の44秒78、佐藤風が日本歴代3位の44秒88と快走し、中島も含めて3人そろってセミファイナルに進出した。その3人を擁した“最速オーダー”をもってしても、4×400mリレーで予選敗退。この悔しさこそが、今回の原動力となっている。

今回、確かにメダルには届かなかったかもしれない。佐藤拳は「私たち4人は400m選手としてまだまだ弱い」と言う。だがそれでも、日本ロングスプリントにとって、これは価値ある一歩であることは間違いない。

「このアジア記録を誇りとして、まだまだ成長していきたい。その足掛かりにはなれたのかなと思います」

佐藤拳はそう話し、少し胸を張った。メダル常連となった4×100mリレーは、入賞を重ねることで訪れたメダルのチャンスをつかみ取った。マイルチームも一つひとつ結果を積み上げることが、悲願への近道となるはずだ。

◇パリ五輪・陸上競技(8月1日~11日/フランス・パリ)10日目 パリ五輪・陸上競技10日目のイブニングセッションが行われ、男子4×400mリレー決勝に出場した日本は2分58秒33のアジア新記録で6位入賞を果たした。 2分59秒48の日本新記録をマークした予選と同じ、1走から中島佑気ジョセフ(富士通)、川端魁人(中京大クラブ)、佐藤風雅(ミズノ)、佐藤拳太郎(富士通)のオーダー。予選の記録を1秒以上も上回り、日本として力を尽くした。佐藤拳は言う。 「2分58秒50以内を目指して、このチームはスタートしました」 昨年のブダペスト世界選手権でインドが作った2分59秒01のアジア記録を更新するタイムが、メダル争いに必要な水準。そう分析しての目標設定だ。 パリでの流れは決して良くはなかった。中島、ダブル佐藤ともに、個人の400mでは予選敗退。今大会では予選敗退者の中から上位を準決勝に復活させる敗者復活戦が設けられたが、4×400mリレーに懸けるために棄権を選択する。 その力を予選からぶつけ、まずは日本新をマーク。組4着でプラス通過ながら、全体4位のタイムに手応えはあった。 だが、世界の壁は厚かった。3連覇を達成した米国が世界記録に0.14秒差と迫る歴代2位、五輪新の2分54秒43、ボツワナが歴代3位の2分54秒53をマークするなど好記録が続出。その流れに乗って、アジア初の2分59秒切り。そして、チームの設定タイムは見事にクリアした。 それでも、1走の中島が「陸上を初めて10年間のすべてをぶつける思いで走って、今できる最善のものは出せた」という走りを見せても6位争いに持ち込むのが精一杯。2走の川端も、レース後にメディカルに運ばれるほど力を出し尽くした。だが、その後も7位前後の争いに終始した。 3走の佐藤風も、「抜かれずに前との差をつめる仕事をしたかったけど、世界のレベルに追いつかなかった」と悔しがる。 佐藤拳は前を走るチームの転倒があって1つ順位を上げたが、「まだまだ世界との差があるという気持と、そもそも(設定した)そのタイムではメダル争いすらできなかった。見通しが甘かった」と総括する。 3年前の東京五輪に向けて、前半からできる限り前のポジションを狙う戦略を組み立ててきた。世界的に進む前半200mのスピード化に対応したものだが、東京五輪では25年ぶりに日本タイ記録の3分00秒76をマークしながら、予選敗退に終わった。このとき、2走は川端、3走は佐藤拳が務めた。 だが、その取り組みは翌年に大きな成果となって現れる。オレゴン世界選手権で9大会ぶりの決勝進出を果たすと、決勝は日本初の3分切りとなる2分59秒51のアジア新(当時)を打ち立てて過去最高の4位に。メダルまであと0.79秒届かなかったが、歴史を大きく動かした。このとき、1走は佐藤風、2走は川端、4走は中島がバトンをつないだ。 そして昨年、ブダペスト世界選手権では個人の400mで佐藤拳が32年ぶり日本新の44秒78、佐藤風が日本歴代3位の44秒88と快走し、中島も含めて3人そろってセミファイナルに進出した。その3人を擁した“最速オーダー”をもってしても、4×400mリレーで予選敗退。この悔しさこそが、今回の原動力となっている。 今回、確かにメダルには届かなかったかもしれない。佐藤拳は「私たち4人は400m選手としてまだまだ弱い」と言う。だがそれでも、日本ロングスプリントにとって、これは価値ある一歩であることは間違いない。 「このアジア記録を誇りとして、まだまだ成長していきたい。その足掛かりにはなれたのかなと思います」 佐藤拳はそう話し、少し胸を張った。メダル常連となった4×100mリレーは、入賞を重ねることで訪れたメダルのチャンスをつかみ取った。マイルチームも一つひとつ結果を積み上げることが、悲願への近道となるはずだ。

【動画】アジア記録奪還!4×400mRは世界の6位

https://youtu.be/SvWYmEbAFJA?si=n9jcV26o2a8nQLG1

次ページ:

ページ: 1 2

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.09.04

織田裕二、今田美桜、Kがキター!!日本代表を聖地で激励「実力はあるから楽しんで」/東京世界陸上

東京世界選手権の開幕を控える9月4日、都内で壮行会が開かれ、その後に選手は国立競技場へ移動。練習公開と取材対応があった。 国立競技場へ移動した選手たちをサプライズが待っていた。大会のスペシャルアンバサダーを務める俳優の織 […]

NEWS 17歳・久保凛が800mで初の大舞台へ 「国立で楽しんで走れたらいい」/東京世界陸上

2025.09.04

17歳・久保凛が800mで初の大舞台へ 「国立で楽しんで走れたらいい」/東京世界陸上

東京世界選手権の開幕を控える9月4日、都内で壮行会が開かれ、その後に選手は国立競技場へ移動。練習公開と取材対応があった。 女子800mに出場する久保凛(東大阪大敬愛高3)は「今回初めての世界陸上が東京で開催されるというこ […]

NEWS 男子マイルリレー悲願のメダルへ! 中島佑気ジョセフ「僕がリーダーとして」佐藤風雅「個々のレベルは過去最高」/東京世界陸上

2025.09.04

男子マイルリレー悲願のメダルへ! 中島佑気ジョセフ「僕がリーダーとして」佐藤風雅「個々のレベルは過去最高」/東京世界陸上

東京世界選手権の開幕を控える9月4日、都内で壮行会が開かれ、その後に選手は国立競技場へ移動。練習公開と取材対応があった。 初のメダル獲得を目指し、男子4×400mリレーチームが最後の調整を進める。 中心となるのは個人の4 […]

NEWS 男子4継 悲願のメダルへ 桐生祥秀、鵜澤飛羽が軸「過去最高のメンバー」/東京世界陸上

2025.09.04

男子4継 悲願のメダルへ 桐生祥秀、鵜澤飛羽が軸「過去最高のメンバー」/東京世界陸上

東京世界選手権の開幕を控える9月4日、都内で壮行会が開かれ、その後に選手は国立競技場へ移動。練習公開と取材対応があった。 「過去最高のメンバー」 リレーの主将に任命された桐生祥秀(日本生命)の言葉に熱がこもる。最終日に決 […]

NEWS いざ、出陣!日本代表壮行会 村竹ラシッド「一緒に盛り上げていきましょう!」/東京世界陸上

2025.09.04

いざ、出陣!日本代表壮行会 村竹ラシッド「一緒に盛り上げていきましょう!」/東京世界陸上

9月13日に開幕する東京世界選手権を控える9月4日、日本代表壮行会が東京・明治記念館で行われた。 総勢80名になった東京世界選手権の日本代表。この日は一部選手を除くものの、代表選手44名が一堂に会し、「サンライズレッド」 […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2025年9月号 (8月12日発売)

2025年9月号 (8月12日発売)

衝撃の5日間
広島インターハイ特集!
桐生祥秀 9秒99

page top