2020.06.14
鍋島莉奈(日本郵政グループ)
東京五輪の舞台で輝くために
「1年後でものんびりしていられない」
2016年に日本郵政グループへ入社した後、一気に日本のトップへと駆け上がった鍋島莉奈。翌年にはロンドン世界選手権5000mに出場し、大学までは想像さえもしていなかった世界の舞台に立った。その勢いは止まらず、昨年は東京五輪で戦うために10000mへシフトし、17年、18年の5000mに続く日本選手権制覇。順風満帆かに思われたが、秋のドーハ世界選手権は2種目で出場権を得ながら、ケガで出場がかなわなかった。その後も故障が相次いだが、決して悲観していない。「まだ鍋島は死んでいない」。来年、東京で輝くため、再び進化する過程にある。
◎文/福本ケイヤ
大学時代に日本インカレ連覇
ほんの数年前までは想像さえもしていなかった境地で、鍋島莉奈(日本郵政グルー
プ)は競技者としての道を突き進んでいる。
「高校の3年間も、大学の4年間も『とにかく競技を続けられたらいい。できれば、全国大会に出場できたらいいな』ぐらいにしか思っていませんでした。『日本のトップに立とう』とか『世界を目指したい』という意識はほとんどなかったですね。実業団で続けようと思ったのも、『日本選手権に一度でもいいから出てみたい』と思っていたからでした」
ところが、〝一度出る〟どころか、初めて出場した2017年の日本選手権でいきなり女子5000mを制すると、翌18年は連覇を達成。そして昨年は、新たな主戦場となる10000mで頂点に立った。10000mではまだ届いていない五輪参加標準記録(31分25秒00)突破はもちろん、ワールドランキング28位(1ヵ国3人換算で23位)につけており、来年に延期された東京五輪が狙える位置にいる。
「今も昔も、世界で戦う自分の姿を想像していなくて、逆に『どうして走れているんだろう』と疑問のほうが大きいぐらい。たぶん、一緒にがんばるチームメイトに恵まれたのかな。自分の力でここまで上り詰めたというよりも、周りに助けられたお陰で世界の舞台に立てたのかな、と思っています」
そんな言葉は謙遜のようにも聞こえるが、話を聞き進めていくと、案外、本心のような気もしてくる。
高知・山田高時代は、2年時、3年時と、全国高校駅伝でいずれも1区5位と好走。その一方で故障が多く、決して全国区の選手とは言えなかった。一躍、その名が知られるようになったのは鹿屋体大に進学してから。それも上級生になってからだ。男子選手と一緒に練習に取り組み、年々、質の高いトレーニングをこなせるようになると、メキメキと力をつけていった。日本インカレでは2年時に5000mで5位入賞すると、3年時は10000mで悲願の頂点へ。この頃から実業団で競技を続けることを考えるようになったという。4年時の日本インカレでも10000mで2連覇を飾っている。
鹿屋体大3、4年時に日本インカレ10000mを連覇。3年時はチームメイトの藤田理恵(左)とワン・ツーを飾った
実は、実業団での競技継続を本格的に検討する以前から、「競技を続けるなら日本郵政グループでやってみたい」という思いを密かに持っていた。日本郵政グループ女子陸上部が創部されたのは2014年のことだが、先輩の勧誘で鹿屋体大を訪れていた髙橋昌彦監督を見て、鍋島の直感が働いた。
「競技を続けられるような実績もなかった頃ですが、髙橋監督を見て『この監督いいな』と思ったんです。高校、大学とけっこう厳しいチームだったので、ふわーっとした監督の雰囲気が良かったんですかね。入社してみると全然違っていましたが(笑)。先生を通して、監督につないでもらいました。ただ、その時は鈴木亜由子さんや関根花観が入るようなチームだとは思ってもいませんでした」
鈴木と関根の背中を追ってグングン成長
そして、鈴木と関根、この2人の存在が鍋島の意欲を刺激することになる。
入社1年目の2016年、6月の日本選手権で、鍋島の姿は会場のパロマ瑞穂スタジアムのスタンドにあった。前年に5000mの参加標準記録を突破し、念願の日本選手権への出場資格を有していたが、ケガをして出場がかなわなかったのだ。その舞台で躍動したのが同僚の鈴木と関根だった。
「2人は海外の合宿に行っていたので、まだほとんど顔を合わせていなかったのですが、同じユニフォームを着ている2人が、日本一を決める大会(10000m)でワン・ツーフィニッシュ。(リオデジャネイロ)オリンピック出場を決めたのを見て、痺れたというか、心を動かされました。それと同時に、出場権を持ちながらも出場できなかった自分に対し、不甲斐なさや取り組みの甘さなど、いろいろと思うところがありました。これがきっかけとなり、『2人と練習がしたい!』と強く思うようになりました。自分の陸上人生は、あの時がターニングポイントになったのかなと思っています」
秋に復活すると、11月の全日本実業団対抗女子駅伝では5区で区間賞を獲得し、チームの初優勝に貢献。その1週間後には5000mで当時の自己新(15分22秒34)をマークするなど、活躍を続けた。
※この続きは2020年6月12日発売の『月刊陸上競技7月号』をご覧ください。
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鍋島莉奈(日本郵政グループ) 東京五輪の舞台で輝くために 「1年後でものんびりしていられない」
2017年のロンドン世界選手権女子5000mに出場した鍋島
2016年に日本郵政グループへ入社した後、一気に日本のトップへと駆け上がった鍋島莉奈。翌年にはロンドン世界選手権5000mに出場し、大学までは想像さえもしていなかった世界の舞台に立った。その勢いは止まらず、昨年は東京五輪で戦うために10000mへシフトし、17年、18年の5000mに続く日本選手権制覇。順風満帆かに思われたが、秋のドーハ世界選手権は2種目で出場権を得ながら、ケガで出場がかなわなかった。その後も故障が相次いだが、決して悲観していない。「まだ鍋島は死んでいない」。来年、東京で輝くため、再び進化する過程にある。
◎文/福本ケイヤ
大学時代に日本インカレ連覇
ほんの数年前までは想像さえもしていなかった境地で、鍋島莉奈(日本郵政グルー プ)は競技者としての道を突き進んでいる。 「高校の3年間も、大学の4年間も『とにかく競技を続けられたらいい。できれば、全国大会に出場できたらいいな』ぐらいにしか思っていませんでした。『日本のトップに立とう』とか『世界を目指したい』という意識はほとんどなかったですね。実業団で続けようと思ったのも、『日本選手権に一度でもいいから出てみたい』と思っていたからでした」 ところが、〝一度出る〟どころか、初めて出場した2017年の日本選手権でいきなり女子5000mを制すると、翌18年は連覇を達成。そして昨年は、新たな主戦場となる10000mで頂点に立った。10000mではまだ届いていない五輪参加標準記録(31分25秒00)突破はもちろん、ワールドランキング28位(1ヵ国3人換算で23位)につけており、来年に延期された東京五輪が狙える位置にいる。 「今も昔も、世界で戦う自分の姿を想像していなくて、逆に『どうして走れているんだろう』と疑問のほうが大きいぐらい。たぶん、一緒にがんばるチームメイトに恵まれたのかな。自分の力でここまで上り詰めたというよりも、周りに助けられたお陰で世界の舞台に立てたのかな、と思っています」 そんな言葉は謙遜のようにも聞こえるが、話を聞き進めていくと、案外、本心のような気もしてくる。 高知・山田高時代は、2年時、3年時と、全国高校駅伝でいずれも1区5位と好走。その一方で故障が多く、決して全国区の選手とは言えなかった。一躍、その名が知られるようになったのは鹿屋体大に進学してから。それも上級生になってからだ。男子選手と一緒に練習に取り組み、年々、質の高いトレーニングをこなせるようになると、メキメキと力をつけていった。日本インカレでは2年時に5000mで5位入賞すると、3年時は10000mで悲願の頂点へ。この頃から実業団で競技を続けることを考えるようになったという。4年時の日本インカレでも10000mで2連覇を飾っている。
鹿屋体大3、4年時に日本インカレ10000mを連覇。3年時はチームメイトの藤田理恵(左)とワン・ツーを飾った
実は、実業団での競技継続を本格的に検討する以前から、「競技を続けるなら日本郵政グループでやってみたい」という思いを密かに持っていた。日本郵政グループ女子陸上部が創部されたのは2014年のことだが、先輩の勧誘で鹿屋体大を訪れていた髙橋昌彦監督を見て、鍋島の直感が働いた。
「競技を続けられるような実績もなかった頃ですが、髙橋監督を見て『この監督いいな』と思ったんです。高校、大学とけっこう厳しいチームだったので、ふわーっとした監督の雰囲気が良かったんですかね。入社してみると全然違っていましたが(笑)。先生を通して、監督につないでもらいました。ただ、その時は鈴木亜由子さんや関根花観が入るようなチームだとは思ってもいませんでした」
鈴木と関根の背中を追ってグングン成長
そして、鈴木と関根、この2人の存在が鍋島の意欲を刺激することになる。 入社1年目の2016年、6月の日本選手権で、鍋島の姿は会場のパロマ瑞穂スタジアムのスタンドにあった。前年に5000mの参加標準記録を突破し、念願の日本選手権への出場資格を有していたが、ケガをして出場がかなわなかったのだ。その舞台で躍動したのが同僚の鈴木と関根だった。 「2人は海外の合宿に行っていたので、まだほとんど顔を合わせていなかったのですが、同じユニフォームを着ている2人が、日本一を決める大会(10000m)でワン・ツーフィニッシュ。(リオデジャネイロ)オリンピック出場を決めたのを見て、痺れたというか、心を動かされました。それと同時に、出場権を持ちながらも出場できなかった自分に対し、不甲斐なさや取り組みの甘さなど、いろいろと思うところがありました。これがきっかけとなり、『2人と練習がしたい!』と強く思うようになりました。自分の陸上人生は、あの時がターニングポイントになったのかなと思っています」 秋に復活すると、11月の全日本実業団対抗女子駅伝では5区で区間賞を獲得し、チームの初優勝に貢献。その1週間後には5000mで当時の自己新(15分22秒34)をマークするなど、活躍を続けた。 ※この続きは2020年6月12日発売の『月刊陸上競技7月号』をご覧ください。RECOMMENDED おすすめの記事
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