2020.06.15
【Study】
ウイルスに負けない!!
感染症を防ぐ「免疫力」アップの仕組みと方法
アスリートにとって体調管理は最重要課題だ。どんなに充実したトレーニングを積んでも、試合当日に体調を崩してしまったら本来の実力は発揮できない。また、トレーニングを継続するためにも、日々の練習では体調を崩すことなく、健康な状態を維持することが望ましい。
コンディショニングのカギとなるのは「免疫力」。日ごろから免疫力を高めておくことで、感染症などで体調を崩すリスクを下げられるのだ。免疫力のメカニズムを知り、体調管理に役立てよう。
アスリートの免疫力
重要な大会を前にして、風邪や体調不良に見舞われてしまった経験はないだろうか。本来、人間の身体には免疫機能が備わっているが、それが低下することでウイルスや細菌といった病原体に感染しやすくなり、体調不良を引き起こす。
一度感染症にかかってしまうと、体調の悪化やパフォーマンスの低下のほかにもマイナス面が生じる。感染症がチーム内に蔓延したり、ひどい時には試合への出場自体を断念せざるを得なくなるなど、さまざまな悪影響がある。
それだけに、アスリートは免疫機能が低下しないように日頃から意識する必要があるだろう。なぜなら、アスリートはその活動の特性から免疫機能が低下しやすく、感染症にもかかりやすいからだ。
免疫力の1つである粘膜免疫は、唾液(だえき)に含まれる「SlgA」という免疫物質の分泌量を調べることで変化の傾向が読み取れる。持久系トレーニングをすると免疫力は下がりやすいが、練習強度や時間を減らすことで低下を抑えられる(図1)。
免疫力はトレーニングのほか、航空機での長距離移動でも低下する。免疫にはバリア機能(粘膜免疫)と排除機能(全身免疫)という2段階の機能があり(図3)、全身免疫はだるさや痛みを伴い体調が悪化するため、第1段階のバリア機能である粘膜免疫を高めて病原体の侵入を防ぐことが重要だ。免疫低下のサインを見逃さず、対策法を実践することで感染リスクを下げよう。
免疫力を高めて感染症拡大を阻止
感染症にかからないようにするには、以下の2つの方法がある。
①病原体を体内に入れないようにする
②免疫力の維持や低下後のリカバリーを心がける
まずは手洗い、うがいなどで病原体そのものを体内に入れないことが大事になる。しかし、それだけで病原体の侵入をゼロにすることはできないので、免疫力のバリア機能を高く維持することで病原体の粘膜下への侵入・感染を防ぐことも重要だ。
自分が感染症にかからないだけではなく、感染症を広めないことも大切。感染症はかかっても自覚症状がない場合もあり、病原体を拡散しないためにも手洗いやうがいは習慣化したほうが良いだろう。
また、免疫力の回復や低下を防ぐためにはマッサージや鍼治療、入浴なども有効(図6、7)。規則正しい睡眠(7~9時間)や、ビタミンAとビタミンDの摂取、飲酒や喫煙を控えることも免疫力の低下を防ぐ。また、乳酸菌を継続してとることで、トレーニングを持続しながらでも免疫力を維持できることがわかっている。なかでも「乳酸菌B240」は、乳酸菌の中でバリア機能の主体であるSIgAを高める機能が特に高く、1ヵ月以上継続して摂取することでバリア機能を高く維持できる。
免疫力が低下しやすい状況を知ることで、感染症は予防しやすくなるだろう。一度体調を崩してしまうと、元の状態に戻るまでにはどうしてもある程度の時間がかかる。感染症にかからないように、日頃から免疫力について意識していこう。
監修
清水和弘
独立行政法人日本スポーツ振興センター
ハイパフォーマンススポーツセンター
国立スポーツ科学センタースポーツ研究部 研究員
※この記事は『月刊陸上競技』2020年7月号に掲載されています
【Study】 ウイルスに負けない!! 感染症を防ぐ「免疫力」アップの仕組みと方法
アスリートにとって体調管理は最重要課題だ。どんなに充実したトレーニングを積んでも、試合当日に体調を崩してしまったら本来の実力は発揮できない。また、トレーニングを継続するためにも、日々の練習では体調を崩すことなく、健康な状態を維持することが望ましい。 コンディショニングのカギとなるのは「免疫力」。日ごろから免疫力を高めておくことで、感染症などで体調を崩すリスクを下げられるのだ。免疫力のメカニズムを知り、体調管理に役立てよう。
アスリートの免疫力
重要な大会を前にして、風邪や体調不良に見舞われてしまった経験はないだろうか。本来、人間の身体には免疫機能が備わっているが、それが低下することでウイルスや細菌といった病原体に感染しやすくなり、体調不良を引き起こす。 一度感染症にかかってしまうと、体調の悪化やパフォーマンスの低下のほかにもマイナス面が生じる。感染症がチーム内に蔓延したり、ひどい時には試合への出場自体を断念せざるを得なくなるなど、さまざまな悪影響がある。 それだけに、アスリートは免疫機能が低下しないように日頃から意識する必要があるだろう。なぜなら、アスリートはその活動の特性から免疫機能が低下しやすく、感染症にもかかりやすいからだ。 免疫力の1つである粘膜免疫は、唾液(だえき)に含まれる「SlgA」という免疫物質の分泌量を調べることで変化の傾向が読み取れる。持久系トレーニングをすると免疫力は下がりやすいが、練習強度や時間を減らすことで低下を抑えられる(図1)。



免疫力を高めて感染症拡大を阻止
感染症にかからないようにするには、以下の2つの方法がある。 ①病原体を体内に入れないようにする ②免疫力の維持や低下後のリカバリーを心がける まずは手洗い、うがいなどで病原体そのものを体内に入れないことが大事になる。しかし、それだけで病原体の侵入をゼロにすることはできないので、免疫力のバリア機能を高く維持することで病原体の粘膜下への侵入・感染を防ぐことも重要だ。


RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
2025.08.25
34年ぶり東京世界陸上 注目の男子100m3枠、9秒台再びの桐生祥秀らが代表入りへ
-
2025.08.24
-
2025.08.24
2025.08.19
15年ぶりの箱根総合優勝へ 早大駅伝主将・山口智規「夏合宿で底上げを」 妙高で合同取材会
-
2025.08.24
2025.08.16
100mH・福部真子12秒73!!ついに東京世界選手権参加標準を突破/福井ナイトゲームズ
-
2025.08.19
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2023.04.01
-
2022.12.20
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2025.08.25
キプリモ58分29秒、アルゼンチンのハーフで快勝!英国ではカムウォロル貫禄V、アレム1時間5分38秒
8月24日、アルゼンチンで「21kブエノス・アイレス」が開催され、男子ハーフマラソンで世界記録保持者のJ.キプリモ(ウガンダ)が58分29秒で優勝した。 キプリモは現在24歳。東京五輪、オレゴン世界選手権の10000mで […]
2025.08.25
Onの「On Flagship Store Tokyo Ginza」が9月12日にオープン!原宿では期間限定スペース「On Labs Tokyo」を開催
スイスのスポーツブランド「On (オン) 」およびオン・ジャパンは9月12日、東京・銀座に旗艦店の「On Flagship Store Tokyo Ginza」をオープンする。翌9月13日 から9日間、東京・原宿にて期間 […]
2025.08.25
34年ぶり東京世界陸上 注目の男子100m3枠、9秒台再びの桐生祥秀らが代表入りへ
今年9月、34年ぶりに東京で開かれる世界選手権の出場資格獲得のための記録の有効期間が8月24日で終了した。 世界選手権の各種目の代表枠は最大3名。最後まで注目を集めたのが男子100mだった。7月の日本選手権時点で、内定条 […]
2025.08.24
栁田大輝 最後の最後まで挑戦も100m代表逃す「無理をしなくて良かったと思える日が絶対に来る」
東京世界選手権出場のための記録の有効期間最終日となる8月24日、奈良市サーキットの男子100mに栁田大輝(東洋大)が出場した。 土壇場での大逆転を狙い、日本記録(9秒95)を目指した栁田。午前中の第一レースを10秒11( […]
2025.08.24
ドキュメント/今年も歴史が刻まれた福井の夜に熱狂!東京世界陸上前に過去最大規模の“お祭り”が夏を彩る
2019年に産声を上げたAthlete Night Games in FUKUIは、今年で6回目を迎えた。17年に行われた日本インカレの男子100mで、桐生祥秀(東洋大、現・日本生命)が日本初の9秒台を刻んだ時の感動から […]
Latest Issue
最新号

2025年9月号 (8月12日発売)
衝撃の5日間
広島インターハイ特集!
桐生祥秀 9秒99