2022.11.29
FOCUS! 高校生INTERVIEW
山口翔輝夜 Yamaguchi Tokiya
社3兵庫
活躍中の注目高校アスリートをフォーカスして紹介! 今回は男子投てきの山口翔輝夜選手(社3兵庫)にインタビューしました。8月の徳島インターハイでは円盤投で頂点に立ち、ハンマー投でも2位に食い込んだ山口選手。10月の栃木国体少年男子Aハンマー投では、13年ぶりの高校新記録となる68m99で優勝しました。マルチな才能を発揮した2022年シーズンを振り返りつつ、今後の目標などをうかがいました。
自然と声が出た国体5投目
――栃木国体ではハンマー投の高校新記録を樹立して優勝されました。
山口 国体ではハンマー投しか種目がなかったこともあり、インターハイ後は専門の円盤投の練習を少し控え、ハンマー投に集中して練習に励んできました。顧問の大久保(良正)先生が市尼崎高赴任された時に指導を受けた服部さん(優允/2016年インターハイハンマー投優勝)に練習に来ていただき、入りの最初のスイングや足の使い方など技術面はもちろん、試合の流れも含めて経験談をいろいろ聞くことができました。
――実際試合はいかがでしたか。
山口 栃木入りした際は、調子も上向きで、当日のコンディションも思っていたよりも悪くなく記録が狙える感触がありました。身体も軽く、試合前の練習投てきで67mぐらい飛んでいたので、1本目から気持ちを高めていました。68m22の県高校タイ記録を投げることができ、少し自分でもびっくりしました。
――高校新は5投目でした。
山口 最初に自己ベストが出ましたが県高校タイ記録だったので、2投目以降で1㎝でも先輩たちの記録を抜いて、できれば高校記録(当時68m33)も更新したい思いでした。1投1投細かな課題を確認して挑んだ結果が5投目の高校新記録につながったと思います。入りのスイングが決まったので回っている最中からハンマーに力を加えられている感触があり、自然と声も出ていました。高校新は出ましたが、高校生の間に70mオーバーを狙っていきたいと思います。
――インターハイは円盤投で優勝されましたが、ハンマー投は2位でした。
山口 インターハイも円盤投との二冠を目指していましたが、秋山君(玲二郎/四学香川西3)に及ばず2位と悔しかったので、国体は絶対にリベンジする気持ちでいました。インターハイも比較的落ち着いて競技できましたが、国体に向けてさらに質の高い練習を積めたこともあって、自信を持っていました。
――円盤投、ハンマー投の2種目に取り組むきっかけは。
山口 中学時代から円盤投に取り組んでいました。高校に入って、もう1つ力を入れる種目を選ぶ際、先生に勧められたのがハンマー投でした。最初はただ重いだけで、技術的にも難しそうだったので大丈夫かなと不安もありましたが、やっていくうちに記録も伸び、足の使い方など円盤投と共通する部分も多く、途中からは相乗効果もあって、やりがいを持って取り組めるようになりました。
――今後はどのように考えていますか。
山口 大学に進む予定ですが、これまで通り2種目に取り組むつもりで、将来的には、いずれか可能性のある方に絞り、東京世界陸上(2025年)、ロス五輪(2028年)を目指してがんばっていきたいと考えています。
――高校生活で一番印象に残っていることは。
山口 一番は2年生の時の福井インターハイです。自分の不注意から大会直前に足をケガして、ハンマー投は予選落ち、ランキングトップで臨んだ円盤投も9位と入賞を逃し、本当に悔しい思いをしました。あの経験があったからこそ、普段の生活から見直すことができ、それが今シーズンの結果につながったと思います。

中学で水泳から陸上の道へ
――お名前の由来を教えてください。
山口 名前のことはよく質問されます。父が「ときや」という名前を付けたかったらしく、画数を調べ、当てはまったのが今の漢字だったと聞いています。
――陸上を始めたのはいつ、どのようなきっかけでしたか。
山口 陸上を始めたのは中学からです。小さい頃から水泳に取り組んでおり、陸上もそのトレーニングの一環で始めました。中学時代もスイミングスクールに通っており、自由形でジュニア五輪など全国大会にも出場していました。陸上は最初、短距離をやっていましたが、陸上のトレーニングは意外にきつく、水泳との二足のわらじでは疲労が蓄積するばかり。陸上をやっていた兄のススメもあり、筋トレなどが中心の投てきに転向しました。
――陸上に絞ったのはいつからですか。
山口 中3前の春休みに腰を痛めて泳げない時期があり、その際の筋トレが功を奏したのか、秋に行われるジュニア五輪の円盤投の標準を突破。それがきっかけで気持ちが陸上に傾き、高校では投てき、円盤投で全国のトップになりたいと思うようになりました。
――社高を選んだ理由は。
山口 中学時代からの夢が体育の高校教員になることで、体育科があり、少しでも早く専門的に学べると思ったこと、環境も整っていて陸上に打ち込めると思って社高を選びました。2年の時に投てきが専門の大久保先生が市尼崎高から転任され、先生の人脈を含め、より高いレベルで陸上に取り組め、目標の日本一を達成することができました。
――寮生活をされていると聞きました。
山口 現在は陸上部の部員と2人部屋ですが1、2年の時は他の部活動の人と一緒でした。日本一になるためには、練習はもちろん、それ以外の時間の過ごし方が重要になってきます。食事や睡眠、ケアのことなど、中学時代までは何もかも親任せでしたが、高校では全部自分でやらなければいけなかったので、特に2年生からは、いろいろ考えながらスケジュールを立て計画的に時間も有効に使うように過ごしてきました。
――休日などはどう過ごされていますか。
山口 本当に疲れている時は、部屋でゆっくり過ごしますが、息抜きも大事なので、大好きなコーヒーを飲みにカフェに出かけたり、友達と買い物に行ったりして心身のバランスを保つようにしていました。
――大学での目標を教えてください。
山口 高2の冬季練習で走る・跳ぶ練習を中心にバランス良く体力作りに努めてきたことが今季の好結果につながったと思っています。大学では円盤投もハンマー投も一般用で重くなりますが、だからこそ、この冬も昨年以上にしっかりトレーニングを積んで基礎体力向上を図っていきたいと考えています。大学でも、これまで取り組んできた軸はブレることなく、まずは学生日本一、そして日本選手権優勝を目標に取り組んでいきたいです。

◎やまぐち・ときや/2004年11月3日生まれ。兵庫・三原中→社高。陸上は中学に入学して始め、当初は短距離だったが、2年生からは砲丸投や円盤投でも試合にも出場。3年時はエントリーしていたジュニア五輪が台風接近で大会打ち切り中止となり円盤投は行われなかった。その後、中学歴代5位の49m06(中学1.5kg)をマークしている。高校では円盤投とハンマー投に取り組み、円盤投では21年にU20日本選手権8位、U18大会2位の成績を残し、今年はU20日本選手権2位、インターハイでは優勝を果たした。ハンマー投では今年のインターハイこそ2位だったが、栃木国体を高校新記録の68m99で制した。円盤投(高校1.75kg)でも高校歴代6位の55m09の自己記録を持つ。その他の自己ベストは円盤投→一般(2kg)48m02(22年) ハンマー投→一般(7.26kg)55m80(22年) 砲丸投→高校(6kg)14m69
構成/花木 雫
自然と声が出た国体5投目
――栃木国体ではハンマー投の高校新記録を樹立して優勝されました。 山口 国体ではハンマー投しか種目がなかったこともあり、インターハイ後は専門の円盤投の練習を少し控え、ハンマー投に集中して練習に励んできました。顧問の大久保(良正)先生が市尼崎高赴任された時に指導を受けた服部さん(優允/2016年インターハイハンマー投優勝)に練習に来ていただき、入りの最初のスイングや足の使い方など技術面はもちろん、試合の流れも含めて経験談をいろいろ聞くことができました。 ――実際試合はいかがでしたか。 山口 栃木入りした際は、調子も上向きで、当日のコンディションも思っていたよりも悪くなく記録が狙える感触がありました。身体も軽く、試合前の練習投てきで67mぐらい飛んでいたので、1本目から気持ちを高めていました。68m22の県高校タイ記録を投げることができ、少し自分でもびっくりしました。 ――高校新は5投目でした。 山口 最初に自己ベストが出ましたが県高校タイ記録だったので、2投目以降で1㎝でも先輩たちの記録を抜いて、できれば高校記録(当時68m33)も更新したい思いでした。1投1投細かな課題を確認して挑んだ結果が5投目の高校新記録につながったと思います。入りのスイングが決まったので回っている最中からハンマーに力を加えられている感触があり、自然と声も出ていました。高校新は出ましたが、高校生の間に70mオーバーを狙っていきたいと思います。 ――インターハイは円盤投で優勝されましたが、ハンマー投は2位でした。 山口 インターハイも円盤投との二冠を目指していましたが、秋山君(玲二郎/四学香川西3)に及ばず2位と悔しかったので、国体は絶対にリベンジする気持ちでいました。インターハイも比較的落ち着いて競技できましたが、国体に向けてさらに質の高い練習を積めたこともあって、自信を持っていました。 ――円盤投、ハンマー投の2種目に取り組むきっかけは。 山口 中学時代から円盤投に取り組んでいました。高校に入って、もう1つ力を入れる種目を選ぶ際、先生に勧められたのがハンマー投でした。最初はただ重いだけで、技術的にも難しそうだったので大丈夫かなと不安もありましたが、やっていくうちに記録も伸び、足の使い方など円盤投と共通する部分も多く、途中からは相乗効果もあって、やりがいを持って取り組めるようになりました。 ――今後はどのように考えていますか。 山口 大学に進む予定ですが、これまで通り2種目に取り組むつもりで、将来的には、いずれか可能性のある方に絞り、東京世界陸上(2025年)、ロス五輪(2028年)を目指してがんばっていきたいと考えています。 ――高校生活で一番印象に残っていることは。 山口 一番は2年生の時の福井インターハイです。自分の不注意から大会直前に足をケガして、ハンマー投は予選落ち、ランキングトップで臨んだ円盤投も9位と入賞を逃し、本当に悔しい思いをしました。あの経験があったからこそ、普段の生活から見直すことができ、それが今シーズンの結果につながったと思います。
中学で水泳から陸上の道へ
――お名前の由来を教えてください。 山口 名前のことはよく質問されます。父が「ときや」という名前を付けたかったらしく、画数を調べ、当てはまったのが今の漢字だったと聞いています。 ――陸上を始めたのはいつ、どのようなきっかけでしたか。 山口 陸上を始めたのは中学からです。小さい頃から水泳に取り組んでおり、陸上もそのトレーニングの一環で始めました。中学時代もスイミングスクールに通っており、自由形でジュニア五輪など全国大会にも出場していました。陸上は最初、短距離をやっていましたが、陸上のトレーニングは意外にきつく、水泳との二足のわらじでは疲労が蓄積するばかり。陸上をやっていた兄のススメもあり、筋トレなどが中心の投てきに転向しました。 ――陸上に絞ったのはいつからですか。 山口 中3前の春休みに腰を痛めて泳げない時期があり、その際の筋トレが功を奏したのか、秋に行われるジュニア五輪の円盤投の標準を突破。それがきっかけで気持ちが陸上に傾き、高校では投てき、円盤投で全国のトップになりたいと思うようになりました。 ――社高を選んだ理由は。 山口 中学時代からの夢が体育の高校教員になることで、体育科があり、少しでも早く専門的に学べると思ったこと、環境も整っていて陸上に打ち込めると思って社高を選びました。2年の時に投てきが専門の大久保先生が市尼崎高から転任され、先生の人脈を含め、より高いレベルで陸上に取り組め、目標の日本一を達成することができました。 ――寮生活をされていると聞きました。 山口 現在は陸上部の部員と2人部屋ですが1、2年の時は他の部活動の人と一緒でした。日本一になるためには、練習はもちろん、それ以外の時間の過ごし方が重要になってきます。食事や睡眠、ケアのことなど、中学時代までは何もかも親任せでしたが、高校では全部自分でやらなければいけなかったので、特に2年生からは、いろいろ考えながらスケジュールを立て計画的に時間も有効に使うように過ごしてきました。 ――休日などはどう過ごされていますか。 山口 本当に疲れている時は、部屋でゆっくり過ごしますが、息抜きも大事なので、大好きなコーヒーを飲みにカフェに出かけたり、友達と買い物に行ったりして心身のバランスを保つようにしていました。 ――大学での目標を教えてください。 山口 高2の冬季練習で走る・跳ぶ練習を中心にバランス良く体力作りに努めてきたことが今季の好結果につながったと思っています。大学では円盤投もハンマー投も一般用で重くなりますが、だからこそ、この冬も昨年以上にしっかりトレーニングを積んで基礎体力向上を図っていきたいと考えています。大学でも、これまで取り組んできた軸はブレることなく、まずは学生日本一、そして日本選手権優勝を目標に取り組んでいきたいです。
◎やまぐち・ときや/2004年11月3日生まれ。兵庫・三原中→社高。陸上は中学に入学して始め、当初は短距離だったが、2年生からは砲丸投や円盤投でも試合にも出場。3年時はエントリーしていたジュニア五輪が台風接近で大会打ち切り中止となり円盤投は行われなかった。その後、中学歴代5位の49m06(中学1.5kg)をマークしている。高校では円盤投とハンマー投に取り組み、円盤投では21年にU20日本選手権8位、U18大会2位の成績を残し、今年はU20日本選手権2位、インターハイでは優勝を果たした。ハンマー投では今年のインターハイこそ2位だったが、栃木国体を高校新記録の68m99で制した。円盤投(高校1.75kg)でも高校歴代6位の55m09の自己記録を持つ。その他の自己ベストは円盤投→一般(2kg)48m02(22年) ハンマー投→一般(7.26kg)55m80(22年) 砲丸投→高校(6kg)14m69
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