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2022.08.30

【高校生FOCUS】女子競歩・大山藍(鹿児島女)U20世界選手権銀メダル「私でいいのかなと思った」

FOCUS! 高校生INTERVIEW
大山 藍 Oyama Ai
鹿児島女2鹿児島

 活躍中の注目高校アスリートをフォーカスして紹介! 今回は女子競歩の大山藍選手(鹿児島女2)にインタビューしました。コロンビアのカリで行われたU20世界選手権(8月1日~6日)10000m競歩は銀メダルを獲得。この種目では日本勢12年ぶりのメダルを手にしました。競歩初レースから1年ほどで〝世界2位〟に輝き、あらためてそのレースを振り替えるとともに、普段の練習などをうかがいました。

時間が経って「全部良かった」

――U20世界選手権での銀メダル獲得、おめでとうございます!
大山 ありがとうございます! 初めての国際大会で緊張しましたし、結果は銀メダルで、最初は正直あまり納得がいかなくて、うれしさもなかったのですが、時間が経って、良い結果だったことやいろいろ経験できたことも含めて、全部良かったと思っています。

――レース前に立てた目標を教えてください。
大山 出場者リストでは持ちタイムが一番だったので、目標としては優勝を狙っていました。

――インターハイ路線の5000mとは違う10000mという距離はいかがでしたか?
大山 10000mは輪島(4月の全日本競歩輪島大会)の10㎞を含めても今回が2回目でした。大会前の練習では、10000mに向けた長い距離を歩く練習をほとんどやらずに、本番は少し不安でしたが、しっかり最後まで歩けたので良かったです。

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――万全の状態でスタートラインに立てましたか?
大山 日本と違うことも多く、食事があまり合わなくて、レースの2、3日前にお腹を壊してしまいました。でも、本番当日は体調を合わせることができました。

――金メダルのK.X.セラーノ選手(メキシコ)とは0.09秒差でした。
大山 いつもはあまり前の方で引っ張ることをしないのですが、今回は何回か引っ張ることになりました。海外の選手が結構粘り強く、最後もメキシコ選手に前に出られたり、予想外のレースではありましたが、内容としては悪くなかったと思います。

――プライベートを含め、これまで海外に行ったことはありましたか?
大山 初めての海外でした。一番大変だったのはやはり食事。最初は食堂で食べていましたが、後半は新型コロナウイルスの感染対策で、トレイによそってもらい、自分の部屋で食べるという感じでした。お米もあったのですが、あまりおいしくなくて、レース前は日本から持っていった補食が中心でした。

――U20世界選手権と日程が重なったインターハイに出場したかったという思いはなかったですか?
大山 最初は「インターハイに出たい」と思っていましたが、まだ2年生でインターハイは来年もチャンスがあるので、2年に1回しかないU20世界選手権の方に出させていただきました。

――オレゴン世界選手権では競歩の日本選手が活躍しました。感じたことを教えてください。
大山 男子20㎞競歩の金、銀をはじめ、メダルを取ったり入賞して、環境が違う世界の舞台でも力を発揮して結果を出せることがすごいと感じました。


写真/Mochizuki Jiro(Agence SHOT)

試合は「楽しく終わること」が大切

――陸上はいつから、どんなきっかけで始めたのですか?
大山 小学校ではバレーボールをしていて体力がついたことと、中学校に入った時に勧誘されたこともあって、陸上部に入りました。

――競歩を始めたきっかけは?
大山 元々長距離をやっていたのですが、高校入学してまもなく、左脚にシンスプリントを発症し、すぐに走れる状態ではありませんでした。そんな時に先生から「競歩をやってみないか」と言われて、1年生の6月下旬に競歩を始めて、7月上旬の県選手権(ジュニア3000m競歩)に出場しました。

――長距離を続けたいという思いはありませんでしたか?
大山 最初は走りたかったので、歩きながら走ったりもして、どちらも両立してやるということを考えていました。

――競歩のレースに出て1年で国際大会のメダリストとなった心境は?
大山 最初は私でいいのかなと思いました。ただ、周囲に支えてもらいながら、自分の力でここまで来ることができましたし、私にも向いている種目があるんだなと感じるようになりました。

――強みと課題を教えてください。
大山 周りから言われる強みは、後半になってから粘れることと、身長は低い方ですが、他の人に負けないくらいの長いストライドです。課題は、疲れが出てくる時の腕振りなど技術的な部分。全体的に完璧ではないので、そこをもっとがんばっていきたいです。

――普段はどんな練習をしているのですか?
大山 学校がある日は、朝練習でみんなと一緒に走って、放課後は競歩の練習をしています。歩く距離はだいたい4000mから長くても8000mくらいです。

――顧問の髙山克司先生からどんなことを教わっていますか?
大山 動きに関して、気が緩んでいる時に腕振りで脇が開いてしまったりすることがあるので、そういう点を指摘していただいています。

――座右の銘は?
大山 座右の銘ではありませんが、試合では「最後は楽しく終わること」を自分の中で大切にしています。緊張してプレッシャーを受けてレースをするよりも、楽しくレースをする方が気持ちも楽ですし、良い結果が出ることが多いからです。

――今後の目標を聞かせてください。
大山 今年は、10月の栃木国体で優勝を目指してがんばろうという目標を立てています。来年はまだ1回も出ていないインターハイに出て優勝したいです。

――高校の先の目標や競技者としての最終的な夢は?
大山 まだはっきり決めてはいませんが、できれば進学して競技を続けたいです。

――得意な教科や苦手な教科はありますか?
大山 体育などが結構好きです。数学や英語は苦手な方で、U20世界選手権に出て、もうちょっと英語を勉強しておけば良かったなと思いました。

――休日はどのように過ごしていますか?
大山 治療に行くことが多いですが、あとはスマホで好きな動画を見てリフレッシュしたりしています。

◎おおやま あい/2005年10月28日生まれ。鹿児島・南中→鹿児島女高。中学校で陸上を始め、当時は800mや1500mなど中長距離がメイン。競歩は高1の夏に始めると、秋以降、一気に記録を伸ばす。今年2月のU20選抜競歩5㎞を制し、3月末には5000mで22分31秒74の高1最高をマーク。4月の全日本輪島大会10㎞を優勝して、U20世界選手権では銀メダルを獲得した。自己ベストは5000m競歩22分10秒30、10000m競歩46分24秒44、10㎞競歩45分19秒。

構成/小野哲史

FOCUS! 高校生INTERVIEW 大山 藍 Oyama Ai 鹿児島女2鹿児島  活躍中の注目高校アスリートをフォーカスして紹介! 今回は女子競歩の大山藍選手(鹿児島女2)にインタビューしました。コロンビアのカリで行われたU20世界選手権(8月1日~6日)10000m競歩は銀メダルを獲得。この種目では日本勢12年ぶりのメダルを手にしました。競歩初レースから1年ほどで〝世界2位〟に輝き、あらためてそのレースを振り替えるとともに、普段の練習などをうかがいました。

時間が経って「全部良かった」

――U20世界選手権での銀メダル獲得、おめでとうございます! 大山 ありがとうございます! 初めての国際大会で緊張しましたし、結果は銀メダルで、最初は正直あまり納得がいかなくて、うれしさもなかったのですが、時間が経って、良い結果だったことやいろいろ経験できたことも含めて、全部良かったと思っています。 ――レース前に立てた目標を教えてください。 大山 出場者リストでは持ちタイムが一番だったので、目標としては優勝を狙っていました。 ――インターハイ路線の5000mとは違う10000mという距離はいかがでしたか? 大山 10000mは輪島(4月の全日本競歩輪島大会)の10㎞を含めても今回が2回目でした。大会前の練習では、10000mに向けた長い距離を歩く練習をほとんどやらずに、本番は少し不安でしたが、しっかり最後まで歩けたので良かったです。 ――万全の状態でスタートラインに立てましたか? 大山 日本と違うことも多く、食事があまり合わなくて、レースの2、3日前にお腹を壊してしまいました。でも、本番当日は体調を合わせることができました。 ――金メダルのK.X.セラーノ選手(メキシコ)とは0.09秒差でした。 大山 いつもはあまり前の方で引っ張ることをしないのですが、今回は何回か引っ張ることになりました。海外の選手が結構粘り強く、最後もメキシコ選手に前に出られたり、予想外のレースではありましたが、内容としては悪くなかったと思います。 ――プライベートを含め、これまで海外に行ったことはありましたか? 大山 初めての海外でした。一番大変だったのはやはり食事。最初は食堂で食べていましたが、後半は新型コロナウイルスの感染対策で、トレイによそってもらい、自分の部屋で食べるという感じでした。お米もあったのですが、あまりおいしくなくて、レース前は日本から持っていった補食が中心でした。 ――U20世界選手権と日程が重なったインターハイに出場したかったという思いはなかったですか? 大山 最初は「インターハイに出たい」と思っていましたが、まだ2年生でインターハイは来年もチャンスがあるので、2年に1回しかないU20世界選手権の方に出させていただきました。 ――オレゴン世界選手権では競歩の日本選手が活躍しました。感じたことを教えてください。 大山 男子20㎞競歩の金、銀をはじめ、メダルを取ったり入賞して、環境が違う世界の舞台でも力を発揮して結果を出せることがすごいと感じました。 写真/Mochizuki Jiro(Agence SHOT)

試合は「楽しく終わること」が大切

――陸上はいつから、どんなきっかけで始めたのですか? 大山 小学校ではバレーボールをしていて体力がついたことと、中学校に入った時に勧誘されたこともあって、陸上部に入りました。 ――競歩を始めたきっかけは? 大山 元々長距離をやっていたのですが、高校入学してまもなく、左脚にシンスプリントを発症し、すぐに走れる状態ではありませんでした。そんな時に先生から「競歩をやってみないか」と言われて、1年生の6月下旬に競歩を始めて、7月上旬の県選手権(ジュニア3000m競歩)に出場しました。 ――長距離を続けたいという思いはありませんでしたか? 大山 最初は走りたかったので、歩きながら走ったりもして、どちらも両立してやるということを考えていました。 ――競歩のレースに出て1年で国際大会のメダリストとなった心境は? 大山 最初は私でいいのかなと思いました。ただ、周囲に支えてもらいながら、自分の力でここまで来ることができましたし、私にも向いている種目があるんだなと感じるようになりました。 ――強みと課題を教えてください。 大山 周りから言われる強みは、後半になってから粘れることと、身長は低い方ですが、他の人に負けないくらいの長いストライドです。課題は、疲れが出てくる時の腕振りなど技術的な部分。全体的に完璧ではないので、そこをもっとがんばっていきたいです。 ――普段はどんな練習をしているのですか? 大山 学校がある日は、朝練習でみんなと一緒に走って、放課後は競歩の練習をしています。歩く距離はだいたい4000mから長くても8000mくらいです。 ――顧問の髙山克司先生からどんなことを教わっていますか? 大山 動きに関して、気が緩んでいる時に腕振りで脇が開いてしまったりすることがあるので、そういう点を指摘していただいています。 ――座右の銘は? 大山 座右の銘ではありませんが、試合では「最後は楽しく終わること」を自分の中で大切にしています。緊張してプレッシャーを受けてレースをするよりも、楽しくレースをする方が気持ちも楽ですし、良い結果が出ることが多いからです。 ――今後の目標を聞かせてください。 大山 今年は、10月の栃木国体で優勝を目指してがんばろうという目標を立てています。来年はまだ1回も出ていないインターハイに出て優勝したいです。 ――高校の先の目標や競技者としての最終的な夢は? 大山 まだはっきり決めてはいませんが、できれば進学して競技を続けたいです。 ――得意な教科や苦手な教科はありますか? 大山 体育などが結構好きです。数学や英語は苦手な方で、U20世界選手権に出て、もうちょっと英語を勉強しておけば良かったなと思いました。 ――休日はどのように過ごしていますか? 大山 治療に行くことが多いですが、あとはスマホで好きな動画を見てリフレッシュしたりしています。 ◎おおやま あい/2005年10月28日生まれ。鹿児島・南中→鹿児島女高。中学校で陸上を始め、当時は800mや1500mなど中長距離がメイン。競歩は高1の夏に始めると、秋以降、一気に記録を伸ばす。今年2月のU20選抜競歩5㎞を制し、3月末には5000mで22分31秒74の高1最高をマーク。4月の全日本輪島大会10㎞を優勝して、U20世界選手権では銀メダルを獲得した。自己ベストは5000m競歩22分10秒30、10000m競歩46分24秒44、10㎞競歩45分19秒。 構成/小野哲史

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