2022.08.22
◇福島全中(8月18日~21日/福島・県営あづま競技場)4日目
大会前の時点でともに13秒68の中学記録を持っていた岩本咲真(八屋3福岡)と村田隼(立花3兵庫)。男子110mハードルは、2人のレコードホルダーによる頂上決戦に注目が集まった。
大会3日目の予選で先手を打ったのが岩本だった。13秒60(+1.1)をマークし、7月に自身が打ち立てた中学記録を0秒08更新。「1台目からいつも以上に低く入れて、それを10台目まで続けられたのが良かったです。正直、予選から(中学新が)出ると思っていなかったので、すごくうれしいです」と興奮を隠さなかった。
迎えた翌21日の決勝。スタート直前の岩本は、左隣りのレーンの村田がにこやかな笑みを浮かべていたのとは対照的に、やや硬い表情に見えた。しかし、それは「集中できていた」から。むしろ胸中には「(村田のような)速い人と走れることをずっと楽しみにしていました」という思いがあった。村田とは3月のU16日本室内60mハードルで同じレースを走ったが、全中のような中学最高峰の舞台での直接対決に心躍らせていた。
岩本自身の「スタートから先行して最後まで逃げ切るのが僕のレース展開」という言葉通り、最初の2、3歩で頭1つ抜け出した。村田が終盤まで必死に食らいついていたが、岩本は「ゴールまで自分のレーンしか見えていなくて、(状況は)わかりませんでしたが、ゴールした時は勝ったかなという感じはありました」と振り返る。フィニッシュタイムは13秒51(+0.4)。2日連続の中学新記録樹立に、タイム表示板を確認した岩本は思わずガッツポーツを作った。
「優勝することが中学の目標だったので、とてもうれしいです。タイムはそこまで狙っていませんでしたが、(直前の女子100mハードルで中学新が出たという)放送が聞こえてきて、自分も出したいなと。中学新が出てうれしかったです」
これで八屋中としても、2年前の全国中学校大会の渕上翔太(現・東福岡高2年)、昨年の全中女子100mハードルの谷中天架(現・大分雄城台高1年)と合わせて、スプリントハードル全国3連覇を達成。この点に関して岩本は「よく周りから3連覇と言われましたが、一切気にしないで、今回は僕の優勝を目指すだけという気持ちで臨みました」と話す。
とにかく優勝する――。岩本が使命感にも似た思いを貫徹した結果、手にしたのは金メダルだけでなく、中学新記録やチームの3連覇といった輝かしい偉業だった。
文/小野哲史
■男子110mH中学歴代10傑
13.51 0.4 岩本 咲真(八屋3福岡) 2022. 8.21
13.68 0.4 村田 隼(立花3兵庫) 2022. 8. 7
13.74 0.5 田原 歩睦(平城東3奈良) 2019. 8.24
13.76 1.5 山田 真大(三雲3三重) 2018.10.21
13.79 1.8 鹿田 真翔(飯山3香川) 2018. 8. 5
13.84 0.6 矢澤 航(岩崎3神奈川) 2006. 8.21
13.84 0.5 紺野 稜真(白鷹3山形) 2019. 8.24
13.85 1.3 芳賀 智文(東陽3東京) 2003. 7.12
13.85 0.8 久保田倖輔(播磨南3兵庫) 2016. 7.17
13.90 0.6 渕上 翔太(八屋3福岡) 2020. 8.29
◇4日目の優勝者
【男子】
100m 舛田快理(札幌簾舞3北海道) 10秒72(+1.4)
1500m 渡辺敦紀(岩出二3和歌山) 4分03秒02
110mH 岩本咲真(八屋3福岡) 13秒51(+0.4)=日本中学新、大会新
4×100mR 鳥屋野(新潟) 42秒89
走高跳 東隆臣選手(常盤野3青森) 1m94
走幅跳 佐々木景亮(立花3愛媛) 7m18(+3.2)
【女子】
100m 寺平祈愛選手(木祖3長野) 11秒89(+1.0)
1500m ドルーリー朱瑛里(鶴山3岡山)4分23秒79
100mH 香取奈摘(三和2茨城) 13秒42(+1.4)=日本中学新、大会新
4×100mR 小俣(三重) 48秒07
砲丸投 筒井幸咲(墨江丘3大阪) 14m86
RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
-
2025.12.23
-
2025.12.23
-
2025.12.22
2025.12.21
【大会結果】第37回全国高校駅伝・女子(2025年12月21日)
2025.12.21
早大が来春入部選手発表!高校駅伝1区激闘の増子陽太、新妻、本田がそろって加入!
2025.12.21
【大会結果】第76回全国高校駅伝・男子(2025年12月21日)
-
2025.12.21
-
2025.12.20
2025.12.14
【大会結果】第33回全国中学校駅伝女子(2025年12月14日)
2025.12.21
【大会結果】第37回全国高校駅伝・女子(2025年12月21日)
2025.12.14
【大会結果】第33回全国中学校駅伝男子(2025年12月14日)
-
2025.12.21
-
2025.12.21
-
2025.12.21
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2023.04.01
-
2022.12.20
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2025.12.23
箱根駅伝Stories/3度目の山で伝説を作る早大・工藤慎作 スピードに磨き「ストロングポイントとして活躍を」
新春の風物詩・第102回箱根駅伝に挑む選手やチームを取り上げる「箱根駅伝Stories」。学生三大駅伝最終決戦に向かうそれぞれの歩みや思いを紹介する。 中学では当初卓球部を希望 「いよいよ始まるなっていうところで、純粋に […]
2025.12.23
箱根駅伝Stories/東京国際大・大村良紀「10区で展開を作っていく走りを」 集大成の舞台で全力を出し切る
新春の風物詩・第102回箱根駅伝に挑む選手やチームを取り上げる「箱根駅伝Stories」。学生三大駅伝最終決戦に向かうそれぞれの歩みや思いを紹介する。 競技を続けるきっかけは消去法 「大村良紀=10区」、という構図ができ […]
2025.12.23
箱根駅伝Stories/自信と屈辱を経てたくましく成長した中大・岡田開成 「自分がゲームチェンジャーになろう」
新春の風物詩・第102回箱根駅伝に挑む選手やチームを取り上げる「箱根駅伝Stories」。学生三大駅伝最終決戦に向かうそれぞれの歩みや思いを紹介する。 武者修行で変わった“基準” 中大・岡田開成(2年)にとって第101回 […]
2025.12.23
ニューイヤー駅伝「クマ対応」発表 桐生市内一部エリアに出没例 該当区間の中止も
一般社団法人日本実業団陸上競技連合は12月23日、第70回全日本実業団対抗駅伝(ニューイヤー駅伝)の「クマ対応」について発表した。 同大会は群馬県庁スタート・フィニッシュで、前橋市、高崎市、伊勢崎氏、太田市、桐生市をめぐ […]
2025.12.23
短距離の竹田一平がスズキを退社「一生の宝物」今後も競技継続 中大2年時にU20代表
スズキは12月末をもって男子短距離の竹田一平が退社・退団すると発表した。 竹田は埼玉県出身の28歳。不動岡高時代は走幅跳や三段跳をメインにしていたが、中大から本格的にスプリントへ。大学2年だった2016年には10秒27を […]
Latest Issue
最新号
2026年1月号 (12月12日発売)
箱根駅伝観戦ガイド&全国高校駅伝総展望
大迫傑がマラソン日本新
箱根駅伝「5強」主将インタビュー
クイーンズ駅伝/福岡国際マラソン
〔新旧男子100m高校記録保持者〕桐生祥秀×清水空跳
