HOME 駅伝

2022.04.13

国士大が「小川・添田体制」に “悲運のエース”が母校をシード常連校に導く
国士大が「小川・添田体制」に “悲運のエース”が母校をシード常連校に導く


今年の箱根駅伝で15位だった国士大駅伝チームの指導体制が変更され、昨年度まで助監督だった小川博之氏(43歳)が4月1日付けで駅伝監督に昇格した。「日本人エースを育てて箱根駅伝でシード権を取れるようにしたい」と小川監督。同じ福島県出身で国士大の2年先輩である添田正美前駅伝監督(45歳)はコーチとして引き続きチームを指導する。

小川監督は福島・植田中時代の1991年に全中1年1500mを制し、田村高3年時の96年にはインターハイ5000mで日本人最上位(2位)、国体少年A5000m優勝など全国トップレベルで活躍。国士大では3年時の99年に関東インカレ5000mで優勝し、ユニバーシアードにも出場した。チームが予選会を突破できなかったため箱根駅伝の出場経験はないが、予選会(20km)では1年時に個人3位に食い込むなど、毎年“悲運のエース”として注目を集めた。卒業後はケガや病気に苦しみながらも日清食品、JALグランドサービス、八千代工業で競技を続け、2013年に34歳で引退した。

八千代工業に在籍していた2010~12年度には現役の実業団選手ながらコーチとして国士大を指導し、チームを実質的に率いていた12年の箱根駅伝ではシード次点の11位に入っている(小川氏は前日の全日本実業団対抗駅伝にも出場)。個人でも関東インカレ5000m2連覇の藤本拓、現在ケニアを拠点として活動するプロランナーの福田穣(NN Running Team)らを育てた。現役引退後は三井住友海上のコーチを経てサンベルクスの監督となったが、再建を目指す国士大から2020年に助監督として迎え入れられ、今季は11年ぶりに母校を率いることになった。

広告の下にコンテンツが続きます

誰からも好かれる気さくな人柄と個々の選手に合わせた丁寧なコーチングには定評があり、「まだ故障や体調不良で出遅れている選手も多いですが、今年は10000m28分30秒前後の日本人選手を1人か2人、28分台を4人くらいは出したい」と話す。昨年度まではチームをA、B、Cに分けつつも全体で同じメニューをこなすスタイルだったが、今季からはAの25~30人を小川監督が、BとCを添田コーチが担当するかたちに役割分担し、ジェームス・ムワンギコーチが指導する留学生のピーター・カマウと日本人選手が一緒に練習する機会も増やしたいという。チームの軸となるのは綱島辰弥、福井大夢、中西真大、山本龍神らで、国士大初の高校時代5000m13分台ルーキー・岩下翔哉も即戦力だ。

また、小川監督はこの春から2年間、日大大学院(通信課程)でスポーツ心理学を学ぶ予定だったため、学業と並行しながらの指導となる。「メンタルの強化が必要な選手もいるので、試合や練習によって心理状態がどのように変化するか調査をしながら現場に生かしたい」と意気込む。

「今年は立て直しの年になるかもしれませんが、まずは確実に箱根駅伝予選会を通過したい。本戦でもシード権獲得の常連になれたらと思っています。そして、個人でも日の丸をつけられる選手を育てたいです」(小川監督)

駒大・大八木弘明監督をはじめ、福島県出身の指導者が多い学生長距離界。かつて福島のヒーローだった小川監督が箱根駅伝でどんな手腕を発揮するのか、今後に注目だ。

文/山本慎一郎

今年の箱根駅伝で15位だった国士大駅伝チームの指導体制が変更され、昨年度まで助監督だった小川博之氏(43歳)が4月1日付けで駅伝監督に昇格した。「日本人エースを育てて箱根駅伝でシード権を取れるようにしたい」と小川監督。同じ福島県出身で国士大の2年先輩である添田正美前駅伝監督(45歳)はコーチとして引き続きチームを指導する。 小川監督は福島・植田中時代の1991年に全中1年1500mを制し、田村高3年時の96年にはインターハイ5000mで日本人最上位(2位)、国体少年A5000m優勝など全国トップレベルで活躍。国士大では3年時の99年に関東インカレ5000mで優勝し、ユニバーシアードにも出場した。チームが予選会を突破できなかったため箱根駅伝の出場経験はないが、予選会(20km)では1年時に個人3位に食い込むなど、毎年“悲運のエース”として注目を集めた。卒業後はケガや病気に苦しみながらも日清食品、JALグランドサービス、八千代工業で競技を続け、2013年に34歳で引退した。 八千代工業に在籍していた2010~12年度には現役の実業団選手ながらコーチとして国士大を指導し、チームを実質的に率いていた12年の箱根駅伝ではシード次点の11位に入っている(小川氏は前日の全日本実業団対抗駅伝にも出場)。個人でも関東インカレ5000m2連覇の藤本拓、現在ケニアを拠点として活動するプロランナーの福田穣(NN Running Team)らを育てた。現役引退後は三井住友海上のコーチを経てサンベルクスの監督となったが、再建を目指す国士大から2020年に助監督として迎え入れられ、今季は11年ぶりに母校を率いることになった。 誰からも好かれる気さくな人柄と個々の選手に合わせた丁寧なコーチングには定評があり、「まだ故障や体調不良で出遅れている選手も多いですが、今年は10000m28分30秒前後の日本人選手を1人か2人、28分台を4人くらいは出したい」と話す。昨年度まではチームをA、B、Cに分けつつも全体で同じメニューをこなすスタイルだったが、今季からはAの25~30人を小川監督が、BとCを添田コーチが担当するかたちに役割分担し、ジェームス・ムワンギコーチが指導する留学生のピーター・カマウと日本人選手が一緒に練習する機会も増やしたいという。チームの軸となるのは綱島辰弥、福井大夢、中西真大、山本龍神らで、国士大初の高校時代5000m13分台ルーキー・岩下翔哉も即戦力だ。 また、小川監督はこの春から2年間、日大大学院(通信課程)でスポーツ心理学を学ぶ予定だったため、学業と並行しながらの指導となる。「メンタルの強化が必要な選手もいるので、試合や練習によって心理状態がどのように変化するか調査をしながら現場に生かしたい」と意気込む。 「今年は立て直しの年になるかもしれませんが、まずは確実に箱根駅伝予選会を通過したい。本戦でもシード権獲得の常連になれたらと思っています。そして、個人でも日の丸をつけられる選手を育てたいです」(小川監督) 駒大・大八木弘明監督をはじめ、福島県出身の指導者が多い学生長距離界。かつて福島のヒーローだった小川監督が箱根駅伝でどんな手腕を発揮するのか、今後に注目だ。 文/山本慎一郎

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.11.08

関西実業団対抗駅伝の区間エントリー発表! SGHの5区は近藤幸太郎 全日本復帰目指すNTT西日本は4区服部弾馬、5区一色恭志

11月9日の第68回関西実業団対抗駅伝を前日に控え、区間エントリーが発表された。 前回、1区から首位を譲らず3年ぶり9回目の優勝を飾ったSGホールディングスは、最長16kmの5区に近藤幸太郎が入った。2区(7.68km) […]

NEWS 編集部コラム「追いかけっこ」

2025.11.07

編集部コラム「追いかけっこ」

毎週金曜日更新!? ★月陸編集部★ 攻め(?)のアンダーハンド リレーコラム🔥 毎週金曜日(できる限り!)、月刊陸上競技の編集部員がコラムをアップ! 陸上界への熱い想い、日頃抱いている独り言、取材の裏話、どーでもいいこと […]

NEWS メモリードが実業団陸上部の活動終了を発表 今後は個人アスリート支援へ

2025.11.07

メモリードが実業団陸上部の活動終了を発表 今後は個人アスリート支援へ

11月7日、実業団のメモリードは、27年3月をもって実業団陸上部としての活動を終了すると発表した。今後は「チーム単位での支援」から「個人アスリート支援」へと方針を転換し、陸上競技に限らず幅広いスポーツ分野の選手を対象に支 […]

NEWS 110mH学生世界一の阿部竜希がエターナルホスピタリティG内定!「勇往邁進の精神で」棒高跳・柄澤、短距離・木梨もアスナビ就職

2025.11.07

110mH学生世界一の阿部竜希がエターナルホスピタリティG内定!「勇往邁進の精神で」棒高跳・柄澤、短距離・木梨もアスナビ就職

公益財団法人日本オリンピック委員会(JOC)が実施するアスリート支援ナビゲーション「アスナビ」を活用し、陸上3選手の就職・内定が決まった。 男子110mハードルで13秒12(学生歴代3位、日本歴代4位)を持つ阿部竜希(順 […]

NEWS 日本陸連・有森裕子会長に岡山市市民栄誉賞「本市の名を高めることに特に顕著な功績」五輪2大会メダル

2025.11.07

日本陸連・有森裕子会長に岡山市市民栄誉賞「本市の名を高めることに特に顕著な功績」五輪2大会メダル

岡山市は11月7日、女子マラソンで五輪2大会連続メダリストの日本陸連・有森裕子会長に、岡山市市民栄誉賞を授与し同日授与式が執り行われた。 有森会長は岡山県岡山市出身の58歳。女子マラソンにおいて、1992年バルセロナ五輪 […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2025年11月号 (10月14日発売)

2025年11月号 (10月14日発売)

東京世界選手権 総特集
箱根駅伝予選会&全日本大学駅伝展望

page top