HOME 特集

2022.03.21

110mH五輪代表・金井大旺さんが陸上スクール創設「走ることを楽しんで好きになってほしい」
110mH五輪代表・金井大旺さんが陸上スクール創設「走ることを楽しんで好きになってほしい」

男子110mハードルの前日本記録(13秒16)保持者で、昨年の東京五輪に出場して現役を引退した金井大旺さんが陸上スクール「Blue Shoes」を立ち上げた。3月に3回、都内で無料体験会を実施。多くの小学生たちが笑顔で汗を流した。

3月21日には1部に小1~3、2部に小4~6の小学生が参加した。走る時の姿勢や「前傾して足をまっすぐに向けよう」と走り方のアドバイスを送り、低いハードルもジャンプ。最後はだんだんと鬼が増えていく鬼ごっこで、金井さんが小学生たちを追いかけると笑顔があふれた。

広告の下にコンテンツが続きます

「まだ慣れていないですが、とても楽しいです」と金井さん。サポートしてくれるコーチ陣と準備や保護者対応に奔走しながら、充実した表情を浮かべていた。

日本スプリントハードルの歴史を開いてきた金井さん。幼い頃から歯科医師だった父の背中を見て育った影響で、自然と歯科医師を目指すようになった。北海道で屈指の進学校である函館ラ・サール高でインターハイ入賞を果たし、法大、そして福井スポーツ協会、ミズノに所属して世界を舞台に活躍するトップハードラーの仲間入り。だが、東京五輪を区切りとして現役引退することを早くから宣言し、その言葉通りスパイクを脱いだ。この4月からは編入合格した日本歯科大学・生命歯学部に通う。

もともと、引退後は「陸上に関わるつもりはなかったです」という金井さん。だが、引退が近づくにつれて「自分の経験を伝えていきたい」という思いが強くなり、陸上スクールを創設することを決意した。所属していたミズノを退社後は同社のブランドアンバサダーに就任。「会社や周囲の人にたくさん支えていただいた」(金井)というように心強いサポートでスクールが実現した。

一時は完全に陸上から離れるつもりだった金井さんが、なぜ経験や思いを伝えたいと思うようになったのか。

「今、スポーツ界は早熟化が進んでいます。小学生のうちからやるべきことがあると思いますし、いろいろな動きをすることと、楽しむことがとても大事だと思います。私の周りにも、『楽しくない』と辞めていった人がたくさんいます。身体より心が冷めてしまう。私は小学校の時から自分が楽しくて、純粋に続けてこられました。大学卒業して4年目までこうして続けられたのは、小学校時代の経験があるから。そういったことを伝えていきたいと思いました」

スポーツ界全体の問題点でもある、早いうちからの『競技志向』に警鐘を鳴らす。特に「保護者の方に伝えていきたい」と金井さん。自らの経験や考えを保護者に発信するため、スクール生の保護者向けに公式LINEツール「BLUE LINE」を活用し、東京五輪の経験や文武両道を目指すサポートのアドバイス、環境作りなどを定期的に発信していくという。過熱するのではなく、自らの家族がそうだったように、楽しめるように見守ってほしい、という思いがある。

スクールは4月から本格スタート。現在、入学前の課題とスクールの準備で多忙を極め、「イベントをするにしても、どれだけ準備や雑務が必要か。大変さと、これまで支えていただいていたことを実感しました」と語る。自らスクール会員募集のチラシを作成したり、電話・メールの対応をしたり、ホームページ作成の打ち合わせをしたり。「現役時代より忙しい」と苦笑いした。

プログラムについては「まずは走ることを楽しむこと、好きになること」を前提に、「いろいろな動きをしたり、体幹を使ったり。走るのはどのスポーツの基本、全スポーツの共通なので、陸上以外を習っている子にも来てもらえればいいなと思います」。まずは都内2会場、小学生を対象に実施。「今後は中学校の部活動のあり方も変わってくるので、少しずつ中学、高校と広げていければ」と言う。そして、「将来的には地元の函館で開くのが目標です」と展望を明かした。

「私が小学生から引退まで自己ベストを更新し続けられたのは、小学校時代の経験があったから。慣れないことばかりですが、少しずつ形にしていきます」

自ら目標を設定し、試行錯誤しながら成長し、夢を追いかけ叶えた金井さん。医学の道へ進む者として、そしてスクールのコーチとして、陸上を通して得た経験を第二の人生で生かし、伝えていく。

金井大旺さんの陸上スクール「Blue Shoes」ホームページ

男子110mハードルの前日本記録(13秒16)保持者で、昨年の東京五輪に出場して現役を引退した金井大旺さんが陸上スクール「Blue Shoes」を立ち上げた。3月に3回、都内で無料体験会を実施。多くの小学生たちが笑顔で汗を流した。 3月21日には1部に小1~3、2部に小4~6の小学生が参加した。走る時の姿勢や「前傾して足をまっすぐに向けよう」と走り方のアドバイスを送り、低いハードルもジャンプ。最後はだんだんと鬼が増えていく鬼ごっこで、金井さんが小学生たちを追いかけると笑顔があふれた。 「まだ慣れていないですが、とても楽しいです」と金井さん。サポートしてくれるコーチ陣と準備や保護者対応に奔走しながら、充実した表情を浮かべていた。 日本スプリントハードルの歴史を開いてきた金井さん。幼い頃から歯科医師だった父の背中を見て育った影響で、自然と歯科医師を目指すようになった。北海道で屈指の進学校である函館ラ・サール高でインターハイ入賞を果たし、法大、そして福井スポーツ協会、ミズノに所属して世界を舞台に活躍するトップハードラーの仲間入り。だが、東京五輪を区切りとして現役引退することを早くから宣言し、その言葉通りスパイクを脱いだ。この4月からは編入合格した日本歯科大学・生命歯学部に通う。 もともと、引退後は「陸上に関わるつもりはなかったです」という金井さん。だが、引退が近づくにつれて「自分の経験を伝えていきたい」という思いが強くなり、陸上スクールを創設することを決意した。所属していたミズノを退社後は同社のブランドアンバサダーに就任。「会社や周囲の人にたくさん支えていただいた」(金井)というように心強いサポートでスクールが実現した。 一時は完全に陸上から離れるつもりだった金井さんが、なぜ経験や思いを伝えたいと思うようになったのか。 「今、スポーツ界は早熟化が進んでいます。小学生のうちからやるべきことがあると思いますし、いろいろな動きをすることと、楽しむことがとても大事だと思います。私の周りにも、『楽しくない』と辞めていった人がたくさんいます。身体より心が冷めてしまう。私は小学校の時から自分が楽しくて、純粋に続けてこられました。大学卒業して4年目までこうして続けられたのは、小学校時代の経験があるから。そういったことを伝えていきたいと思いました」 スポーツ界全体の問題点でもある、早いうちからの『競技志向』に警鐘を鳴らす。特に「保護者の方に伝えていきたい」と金井さん。自らの経験や考えを保護者に発信するため、スクール生の保護者向けに公式LINEツール「BLUE LINE」を活用し、東京五輪の経験や文武両道を目指すサポートのアドバイス、環境作りなどを定期的に発信していくという。過熱するのではなく、自らの家族がそうだったように、楽しめるように見守ってほしい、という思いがある。 スクールは4月から本格スタート。現在、入学前の課題とスクールの準備で多忙を極め、「イベントをするにしても、どれだけ準備や雑務が必要か。大変さと、これまで支えていただいていたことを実感しました」と語る。自らスクール会員募集のチラシを作成したり、電話・メールの対応をしたり、ホームページ作成の打ち合わせをしたり。「現役時代より忙しい」と苦笑いした。 プログラムについては「まずは走ることを楽しむこと、好きになること」を前提に、「いろいろな動きをしたり、体幹を使ったり。走るのはどのスポーツの基本、全スポーツの共通なので、陸上以外を習っている子にも来てもらえればいいなと思います」。まずは都内2会場、小学生を対象に実施。「今後は中学校の部活動のあり方も変わってくるので、少しずつ中学、高校と広げていければ」と言う。そして、「将来的には地元の函館で開くのが目標です」と展望を明かした。 「私が小学生から引退まで自己ベストを更新し続けられたのは、小学校時代の経験があったから。慣れないことばかりですが、少しずつ形にしていきます」 自ら目標を設定し、試行錯誤しながら成長し、夢を追いかけ叶えた金井さん。医学の道へ進む者として、そしてスクールのコーチとして、陸上を通して得た経験を第二の人生で生かし、伝えていく。 金井大旺さんの陸上スクール「Blue Shoes」ホームページ

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.12.13

編集部コラム「あっという間の2025年」

攻め(?)のアンダーハンド リレーコラム?? 毎週金曜日(できる限り!)、月刊陸上競技の編集部員がコラムをアップ! 陸上界への熱い想い、日頃抱いている独り言、取材の裏話、どーでもいいことetc…。 編集スタッフが週替りで […]

NEWS 早大のルーキー・鈴木琉胤「少しずつトラックの頃に戻ってきた」 往路希望で「区間賞を狙う走りを」

2025.12.13

早大のルーキー・鈴木琉胤「少しずつトラックの頃に戻ってきた」 往路希望で「区間賞を狙う走りを」

箱根駅伝で15年ぶりの総合優勝を狙う早大が12月13日、埼玉・所沢キャンパスで合同取材会を開いた。 出雲駅伝、全日本大学駅伝で出走したルーキー・鈴木琉胤は「ハーフは走ったことがなくて、箱根でいきなりという不安はあります。 […]

NEWS 箱根駅伝15年ぶりV狙う早大が合同取材会 花田勝彦駅伝監督「状態上がっている」 山口智規「大手町を楽しみにしてほしい」

2025.12.13

箱根駅伝15年ぶりV狙う早大が合同取材会 花田勝彦駅伝監督「状態上がっている」 山口智規「大手町を楽しみにしてほしい」

箱根駅伝で15年ぶりの総合優勝を狙う早大が12月13日、埼玉・所沢キャンパスで合同取材会を開いた。 この日は撮影と共通取材、個別取材を実施。共通取材で花田勝彦駅伝監督は「今年もかなり良いかたちで準備ができたと思っています […]

NEWS 連覇か、V奪回か?「ニューイヤー駅伝2026」に挑む強豪3チームの意気込み/旭化成・トヨタ自動車・富士通
PR

2025.12.13

連覇か、V奪回か?「ニューイヤー駅伝2026」に挑む強豪3チームの意気込み/旭化成・トヨタ自動車・富士通

2026年の幕開けを飾る全日本実業団対抗駅伝(通称・ニューイヤー駅伝)は、第70回の記念大会として1月1日、前橋市にある群馬県庁前をスタートし、上州路をぐるりと回って県庁に戻る7区間・総距離100kmのコースで行われる。 […]

NEWS ロス瑚花アディアが60m7秒48のユタ州立大新記録 東京・城西高出身で今秋から留学中

2025.12.13

ロス瑚花アディアが60m7秒48のユタ州立大新記録 東京・城西高出身で今秋から留学中

12月10日に米国・ユタ州でブリガム・ヤング大で行われた同大学招待競技会室内女子60mで、ロス瑚花アディア(ユタ州立大)が7秒48で4位に入った。従来のユタ州立大記録38年ぶりの更新となる。 ロスは東京・駒沢中から城西高 […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2025年12月号 (11月14日発売)

2025年12月号 (11月14日発売)

EKIDEN REVIEW
全日本大学駅伝
箱根駅伝予選会
高校駅伝&実業団駅伝予選

Follow-up Tokyo 2025

page top