東京五輪女子10000m代表の新谷仁美(積水化学)が、自身4度目のフルマラソンとなる3月6日の東京マラソンに向けてオンラインで会見を行い、「SNSでマラソン挑戦を発表して、本当に多くの人が私のマラソンを楽しみにしてくださっていたと感じた。自分が納得する、みんなが喜んでくれる結果で終われたらなと思う」と意気込みを語った。
これまで、自ら「遠ざけてきた」と話すマラソン出場に踏み切る決断をしたのは、11月末の全日本実業団女子駅伝(クイーンズ駅伝)を走り終えてから。練習拠点にするTWOLAPS TCの横田真人コーチに、自分の口で「マラソンをやります」と伝えたという。
2013年のモスクワ世界選手権10000mで5位入賞を果たした後、いったんは現役を引退。18年に復帰した後は、横田コーチの指導を受けながら、トラックで早々に国内トップの位置へと返り咲いた。そして20年1月にハーフマラソンで1時間6分38秒の日本新を樹立。同年12月の日本選手権10000mでは30分20秒44という驚異的な日本新をマークし、東京五輪代表に内定した。
しかし、1年延期後に迎えた肝心の五輪本番では、21位どまり。コロナ禍で開催された五輪に対する思いを整理しきれず、心身ともにコンディションを整えきれなかった。
「常に結果を大事にしてきた人間として、結果を出せなかった」ことのショックは大きく、大会後もその気持ちを引きずっていたという。
そんななかで、横田コーチやチームメイトをはじめ、周りの支えがあることに少しずつ気がついた。
「苦しんだのは私だけじゃない。私が苦しむ中で横田コーチもそうだったし、所属先、スポンサー、ファンの方々のお陰でここに立てている。それを返せるのはシンプルに結果だけ」
クイーンズ駅伝で5区を走ってチームの初優勝を貢献し、一緒に走ったチームメイトと喜びを分かち合ったことで、気持ちは決まった。「今、必要なのは結果。私が完全に立ち直りたいという思いがある」と13年ぶり4度目のマラソン挑戦へ覚悟を決めた。
東京マラソンで求めていくのは「タイム」。具体的な数字の目標は明言を避けたが、2時間20分を切って、日本記録(2時間19分12秒)を視野に入れていることは間違いない。心に秘める思いがある。
「自分の中ではっきりとしたタイムを決めている部分はあって、『納得した結果』はそこが(出せるかどうかが)一番強い部分。もちろん、そのタイムを出せば今後につながるという部分はあるけど、(実際のレースは)そのことを考えずに『自分が納得する記録を出したい』ということだけを思って走りたい」
そのために始めたマラソン練習について横田コーチは「ほぼ完璧にこなしている」といい、目指すレースプランは、「シンプルに3分20秒を切るペースをどこまで維持できるか」だと言う。
まだトラックも視野に入れる新谷にとっては、今のスピードを生かしたかたちのマラソンを目指していく必要がある。そのため、「10000mのレースペースから落したくない」という思いがあり、またそのスピードこそが自分の武器だとも思っている。
「トレーニングはこれまでの経験だったり、マラソンにはこれぐらいが必要だという距離、質を決めて取り組んでいる。完全に不安がなくなったわけではないが、ただ、そこをどうにか失速しないように質や距離をカバーできるように、横田コーチが練習を組み立ててくれているので、安心感はあります」
オレゴン世界選手権の選考レースでもあり、パリ五輪選考会MGCの出場権もかかる一戦。すでにコースの試走は28㎞までを2回実施しており、2月13日の全日本実業団ハーフマラソンをステップに、最後までコースをチェックしたうえで本番に臨む。
「高速レースというのはわかっているので、じゃあどうすれば記録が出るのか。難しくタフなコースですが、自分の持ち味を出せるコース。東京五輪の結果を引きずっているけど、どうしても戦いたい。自分が遠ざけていた、苦手なマラソンに出ると決めた。納得のいくかたちで成功させたい」
13年ぶりに再びマラソンを走る新谷。これまでとは違う景色が広がっているはずだ。
■新谷仁美のマラソン全成績
2007年2月 東京 2時間31分02秒=優勝
2008年8月 北海道 2時間32分19秒=2位
2009年3月 名古屋 2時間30分58秒=8位

RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
2025.08.25
34年ぶり東京世界陸上 注目の男子100m3枠、9秒台再びの桐生祥秀らが代表入りへ
-
2025.08.24
-
2025.08.24
2025.08.19
15年ぶりの箱根総合優勝へ 早大駅伝主将・山口智規「夏合宿で底上げを」 妙高で合同取材会
-
2025.08.24
2025.08.16
100mH・福部真子12秒73!!ついに東京世界選手権参加標準を突破/福井ナイトゲームズ
-
2025.08.19
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2023.04.01
-
2022.12.20
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2025.08.25
キプリモ58分29秒、アルゼンチンのハーフで快勝!英国ではカムウォロル貫禄V、アレム1時間5分38秒
8月24日、アルゼンチンで「21kブエノス・アイレス」が開催され、男子ハーフマラソンで世界記録保持者のJ.キプリモ(ウガンダ)が58分29秒で優勝した。 キプリモは現在24歳。東京五輪、オレゴン世界選手権の10000mで […]
2025.08.25
Onの「On Flagship Store Tokyo Ginza」が9月12日にオープン!原宿では期間限定スペース「On Labs Tokyo」を開催
スイスのスポーツブランド「On (オン) 」およびオン・ジャパンは9月12日、東京・銀座に旗艦店の「On Flagship Store Tokyo Ginza」をオープンする。翌9月13日 から9日間、東京・原宿にて期間 […]
2025.08.25
34年ぶり東京世界陸上 注目の男子100m3枠、9秒台再びの桐生祥秀らが代表入りへ
今年9月、34年ぶりに東京で開かれる世界選手権の出場資格獲得のための記録の有効期間が8月24日で終了した。 世界選手権の各種目の代表枠は最大3名。最後まで注目を集めたのが男子100mだった。7月の日本選手権時点で、内定条 […]
2025.08.24
栁田大輝 最後の最後まで挑戦も100m代表逃す「無理をしなくて良かったと思える日が絶対に来る」
東京世界選手権出場のための記録の有効期間最終日となる8月24日、奈良市サーキットの男子100mに栁田大輝(東洋大)が出場した。 土壇場での大逆転を狙い、日本記録(9秒95)を目指した栁田。午前中の第一レースを10秒11( […]
2025.08.24
ドキュメント/今年も歴史が刻まれた福井の夜に熱狂!東京世界陸上前に過去最大規模の“お祭り”が夏を彩る
2019年に産声を上げたAthlete Night Games in FUKUIは、今年で6回目を迎えた。17年に行われた日本インカレの男子100mで、桐生祥秀(東洋大、現・日本生命)が日本初の9秒台を刻んだ時の感動から […]
Latest Issue
最新号

2025年9月号 (8月12日発売)
衝撃の5日間
広島インターハイ特集!
桐生祥秀 9秒99