HOME 東京五輪、日本代表、五輪
多田修平が東京五輪への決意「9秒台が見えれば、ファイナルも見えてくる。リレーでも勢いを」
多田修平が東京五輪への決意「9秒台が見えれば、ファイナルも見えてくる。リレーでも勢いを」

地元・大阪で行われた日本選手権の男子100mで初優勝を果たし、東京五輪代表に内定した多田修平(住友電工)が7月5日、大阪市中央区の住友電工大阪本社で記者会見を開き、改めて日本選手権の激走を振り返るとともに、東京五輪への抱負を語った。

広告の下にコンテンツが続きます

五輪参加標準記録突破者が多田自身も含めて5人並び、3人の五輪代表枠を懸けた日本選手権決勝は、過去最高レベルの緊張感に包まれていた。多田にとっては、関学大2年だった2016年のリオ五輪イヤーも出場してはいたが、まだ代表に絡むレベルではなく、準決勝どまり。決勝はスタンドで観戦する立場だった。実質初めて味わう五輪選考会に「一発で五輪代表が決まる。他の選手も今までよりも集中していたし、異様な空気だった」とかつてない重圧を感じていた。

その中で、得意のスタートから一気に抜け出し、そのまま他を寄せ付けない圧巻の走り。10秒15(+0.2)で真っ先にフィニッシュラインを懸け抜けた。

「ここまですごく苦しい思いをして、日本選手権は3年連続5位。五輪が決まったこともうれしかったけど、僕自身としては優勝できたことで喜びが爆発。自然とガッツポーズ出た」

リオ五輪翌年の2017年にブレイク。追い風4.5mの参考記録ながら9秒94をマークするなど一気に注目を集め、同年のロンドン世界選手権で初の世界大会代表入りを果たした。本番では100mで準決勝に進出すると、4×100mリレーでは1走を務めて銅メダル獲得に貢献。同年秋には、桐生祥秀(日本生命)が日本人初の9秒台(9秒98)を出した日本インカレで、桐生に次ぐ2位ながら10秒07(当時日本歴代7位タイ)をマークしている。

広告の下にコンテンツが続きます

ただ、当時は「何もわからない状態」で必死にトラックを駆け抜けていた。だが、その後もドーハ世界選手権で再び4×100mリレーの銅メダル獲得に貢献するなど、日本代表に常に名を連ねることで多くの経験を積んできた。今では「重圧にもある程度前向きに捉えられる。緊張感があったほうがいい走りができるようになっている」と胸を張る。

その過程で、持ち味のスタートからの加速に迷いが生じ、後半に抜かれるパターンを繰り返した時期もあった。「本当に苦しくて、何回も考え込んで寝られない時期もあった」と振り返る。

それでも、大学卒業後から師事する佐藤真太郎コーチと試行錯誤を重ね、大躍進した17年のようにブロックを蹴ってから脚をしっかりと回転させていくスタイルを追求していくことで、徐々に抜かれる距離をフィニッシュ地点へと近づけていった。6月の布勢スプリントでは9秒95の日本新を出した山縣亮太(セイコー)に次いで、日本歴代6位の10秒01をマーク。そして、日本選手権ではついに最後まで誰にも抜かせないまでになった。

「挫折や苦しいことが多かったけど、佐藤コーチを信頼してここまでやってきた。道は間違ってなかったんだと感じている」

五輪本番に向けては、技術的には「決勝は後半力づくになっていた部分がある。後傾にならずに前傾をしっかりと保つこと」と課題に挙げた多田。精神的にも、日本選手権という最大の関門を乗り越えたことで、「五輪は僕はチャレンジャーなので、日本選手権よりも緊張は少ないと思う。過度に緊張せず、リラックスして楽しむことが五輪のテーマ」と力強く話す。

目指すは9秒台とファイナル。1走が予想されるリレーでも、日本が目標に掲げる金メダル獲得に向けての決意を口にする。

「リオ五輪の4継の銀メダルを見た時は、悔しいという思いがあった。その頃は日本選手権準決勝落ちの選手だったけど、出場した4選手と差が開いてしまった感覚があって、どこか悔しさを感じていた。でも、日本人でもここまで戦えるんだと示してくれて、そのお陰で意識が高まった。個人ではファイナルを目標に4年間やってきた。まずは準決勝で力を出すこと。9秒台が見えれば、ファイナルも見えてくる。リレーでも勢いをつけるスタートを切りたい」

夏の国立競技場。多田のロケットスタートが世界のトップスプリンターたちを驚かせる日が、もうすぐそこまで来ている。

地元・大阪で行われた日本選手権の男子100mで初優勝を果たし、東京五輪代表に内定した多田修平(住友電工)が7月5日、大阪市中央区の住友電工大阪本社で記者会見を開き、改めて日本選手権の激走を振り返るとともに、東京五輪への抱負を語った。 五輪参加標準記録突破者が多田自身も含めて5人並び、3人の五輪代表枠を懸けた日本選手権決勝は、過去最高レベルの緊張感に包まれていた。多田にとっては、関学大2年だった2016年のリオ五輪イヤーも出場してはいたが、まだ代表に絡むレベルではなく、準決勝どまり。決勝はスタンドで観戦する立場だった。実質初めて味わう五輪選考会に「一発で五輪代表が決まる。他の選手も今までよりも集中していたし、異様な空気だった」とかつてない重圧を感じていた。 その中で、得意のスタートから一気に抜け出し、そのまま他を寄せ付けない圧巻の走り。10秒15(+0.2)で真っ先にフィニッシュラインを懸け抜けた。 「ここまですごく苦しい思いをして、日本選手権は3年連続5位。五輪が決まったこともうれしかったけど、僕自身としては優勝できたことで喜びが爆発。自然とガッツポーズ出た」 リオ五輪翌年の2017年にブレイク。追い風4.5mの参考記録ながら9秒94をマークするなど一気に注目を集め、同年のロンドン世界選手権で初の世界大会代表入りを果たした。本番では100mで準決勝に進出すると、4×100mリレーでは1走を務めて銅メダル獲得に貢献。同年秋には、桐生祥秀(日本生命)が日本人初の9秒台(9秒98)を出した日本インカレで、桐生に次ぐ2位ながら10秒07(当時日本歴代7位タイ)をマークしている。 ただ、当時は「何もわからない状態」で必死にトラックを駆け抜けていた。だが、その後もドーハ世界選手権で再び4×100mリレーの銅メダル獲得に貢献するなど、日本代表に常に名を連ねることで多くの経験を積んできた。今では「重圧にもある程度前向きに捉えられる。緊張感があったほうがいい走りができるようになっている」と胸を張る。 その過程で、持ち味のスタートからの加速に迷いが生じ、後半に抜かれるパターンを繰り返した時期もあった。「本当に苦しくて、何回も考え込んで寝られない時期もあった」と振り返る。 それでも、大学卒業後から師事する佐藤真太郎コーチと試行錯誤を重ね、大躍進した17年のようにブロックを蹴ってから脚をしっかりと回転させていくスタイルを追求していくことで、徐々に抜かれる距離をフィニッシュ地点へと近づけていった。6月の布勢スプリントでは9秒95の日本新を出した山縣亮太(セイコー)に次いで、日本歴代6位の10秒01をマーク。そして、日本選手権ではついに最後まで誰にも抜かせないまでになった。 「挫折や苦しいことが多かったけど、佐藤コーチを信頼してここまでやってきた。道は間違ってなかったんだと感じている」 五輪本番に向けては、技術的には「決勝は後半力づくになっていた部分がある。後傾にならずに前傾をしっかりと保つこと」と課題に挙げた多田。精神的にも、日本選手権という最大の関門を乗り越えたことで、「五輪は僕はチャレンジャーなので、日本選手権よりも緊張は少ないと思う。過度に緊張せず、リラックスして楽しむことが五輪のテーマ」と力強く話す。 目指すは9秒台とファイナル。1走が予想されるリレーでも、日本が目標に掲げる金メダル獲得に向けての決意を口にする。 「リオ五輪の4継の銀メダルを見た時は、悔しいという思いがあった。その頃は日本選手権準決勝落ちの選手だったけど、出場した4選手と差が開いてしまった感覚があって、どこか悔しさを感じていた。でも、日本人でもここまで戦えるんだと示してくれて、そのお陰で意識が高まった。個人ではファイナルを目標に4年間やってきた。まずは準決勝で力を出すこと。9秒台が見えれば、ファイナルも見えてくる。リレーでも勢いをつけるスタートを切りたい」 夏の国立競技場。多田のロケットスタートが世界のトップスプリンターたちを驚かせる日が、もうすぐそこまで来ている。

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.06.16

田中希実は3000m8分50秒18の11位 自己新ペースで進めるもラスト1000mで離される/DLストックホルム

6月15日、スウェーデン・ストックホルムで行われたダイヤモンドリーグ第7戦バウハウス・ガランの女子3000mに田中希実(New Balance)が出場し、8分50秒18で11位に入った。 1周目を69秒で入った田中。序盤 […]

NEWS 編集部コラム「私のインターハイ地区大会」

2025.06.15

編集部コラム「私のインターハイ地区大会」

毎週金曜日更新!? ★月陸編集部★ 広告の下にコンテンツが続きます 攻め(?)のアンダーハンドリレーコラム🔥 毎週金曜日(できる限り!)、月刊陸上競技の編集部員がコラムをアップ! 陸上界への熱い想い、日頃 […]

NEWS NCG5000mはアジア選手権5位・荒井七海が13分47秒58で日本人トップ!東海大・永本脩が学生トップ/日体大長距離競技会

2025.06.15

NCG5000mはアジア選手権5位・荒井七海が13分47秒58で日本人トップ!東海大・永本脩が学生トップ/日体大長距離競技会

第322回日本体育大学長距離競技会兼第16回NITTAIDAI Challenge Games(NCG)の2日目が6月15日に行われ、最終種目のNCG男子5000mはB.キプトゥー(麗澤大)が13分46秒77で1着を占め […]

NEWS 小原響が3000m障害で8分22秒64の日本歴代8位!セイコーGGPに続く自己新マーク

2025.06.15

小原響が3000m障害で8分22秒64の日本歴代8位!セイコーGGPに続く自己新マーク

6月14日に米国・ポートランドで行われたポートランド・トラックフェスティバルの男子3000m障害で、小原響(GMOインターネットグループ)が日本歴代8位の8分22秒64をマークした。 大会は世界陸連コンチネンタルツアー・ […]

NEWS 久保凛が800m2分02秒76の大会新でV3!! 1500mと2年連続2冠「チームへの貢献を考えていた」/IH近畿

2025.06.15

久保凛が800m2分02秒76の大会新でV3!! 1500mと2年連続2冠「チームへの貢献を考えていた」/IH近畿

◇インターハイ近畿地区大会(6月12~15日/京都市・たけびしスタジアム京都)4日目 広島インターハイを懸けた近畿地区大会の4日目が行われ、女子800mは久保凛(東大阪大敬愛3大阪)が昨年自らがマークした大会記録を0.7 […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2025年7月号 (6月13日発売)

2025年7月号 (6月13日発売)

詳報!アジア選手権
日本インカレ
IH都府県大会

page top