HOME バックナンバー
サニブラウン・A・ハキーム単独インタビュー/課題を日々クリアできれば、目標達成は自然と見えてくる
サニブラウン・A・ハキーム単独インタビュー/課題を日々クリアできれば、目標達成は自然と見えてくる

 これまで、いくつもの道を切り開いてきた。東京・城西高2年だった2015年は世界ユース選手権の100m、200m2冠&MVPに輝き、北京世界選手権は200mで史上最年少(16歳172日)出場。次代を担う国際陸連(現・世界陸連)「ライジング・スター・アワード」も受賞した。卒業後には渡米してフロリダ大に入学。そして、2年目のシーズンを終えた後にはプロ宣言をし、100m、200mの世界記録を持つ〝レジェンド〟ウサイン・ボルトと同じプーマとの契約も交わした。
 世界中が〝ボルトの後継者〟として注目する22歳、サニブラウン・アブデル・ハキーム(タンブルウィードTC)。地元・東京五輪イヤーのシーズンインを前に、その思いを語った。

広告の下にコンテンツが続きます

●文/加藤康博

重心とスタートの改善へ取り組み
100mに特化した練習を実施

 2020年8月に、フロリダ大からタンブルウィードTCへと練習拠点を変更。ロンドン世界選手権7位など、飛躍の年となった2017年に師事していたラナ・レイダーコーチの指導を再度仰ぐようになり、約7ヵ月が過ぎた。この間、どんなテーマをもち、どのように練習に取り組んできたのか。まずはそこから聞いた。

 最初は練習のプログラムに慣れるようにと基礎を2、3ヵ月やり、その後、冬季練習は体力強化、身体強化をやってきたかたちです。レイダー・コーチに走りを見てもらうようになってすぐ「以前より走りの重心が下がっている」と指摘されました。ただ、このチームに来てからはウォームアップでやるドリルの数や、ウォームアップ自体が長くなり、2017年同様のことをここ数ヵ月やってきたので、重心の位置はもう戻っていると思います。2019年はがむしゃらに走っていた感じでしたが、17年はきれいに走ろうという意識があったので、今やっている動き作りをこれからも取り入れていけば、アメリカに来てからついたパワーを生かして、もっとスムーズに走れると思っています。

 ここまでの間、重点的に取り組んだのはスタートの部分ですね。まだブロックを使った練習はしていないのですが、最初の3歩を毎回、同じように出られるような練習を繰り返しています。スタート後の1歩目、2歩目で少し頭が上がってしまい、そこから加速する時に脚が流れたりしてしまうことなどもあったので、そうした小さい課題を修正する練習を繰り返しています。リアクションタイムへのこだわりはありません。海外のトップ選手を見ていてもリアクションタイムが遅くても、しっかりスタートで加速する自分の動きができれば、問題ありません。そこがこの1年間で一番学んだことかなと思います。

広告の下にコンテンツが続きます

 スタートからトップスピードに乗る局面へのつながりも重視している、とサニブラウンは付け加える。

 スタート後、加速する10mから30mまで。そこから60mまで、さらに100mまでと100mを小分けして考えた時に、一番難しいのは加速後、30mから60mでいかにトップスピードに乗れるか。この一連の流れの中でこれまでよくやっていたミスは少し動きが鈍くなってしまったり、逆に脚を回転して進もうという意識がなく、維持しようとしてしまったりということです。そこの意識改善もそうですし、10mから30m、30mから60mの切り替えの部分をいかにスムーズに加速し続けられるかも意識して取り組んできた部分です。

 2019年6月、9秒97の日本記録を出した全米学生選手権の直後は「60mまでは良かったが、その後はストライドが間延びしてしまった」とコメントを残した。その部分の改善はどこまで進んだのだろうか。

 そこはまだいろいろとやっている途中なのですが、終盤になってくると乳酸もたまってきますし、しっかり腕を振ろうと逆に力んでしまって、少し腕が前に出て、後ろまで振れなくなり、それが脚が流れたり、オーバーストライドにつながったりしています。しっかり腕を振り、それで自分のフォームが大きくならないように調整している感じです。腕振りに関しては後半だけでなく、走りのどの局面においても大切かなと思いますね。

 ここまで100mを念頭に置いてのコメントが続いている。100mと200mのウエイトの置き方、それぞれに取り組むことでの相乗効果などはどのように考えているのだろうか。

 この冬季はここまで、確かに100mを中心に取り組んできましたね。ただ、レースの組み立て方は100mも200mも変わらないと思っています。200mでもスタートで出ないといけないので、最初の3歩は脚を回す必要がありますし、距離は長いですが、似ている部分も多いです。ですので、練習では100mが多いとはいえ、200mのためにもなっているかなと思います。

 実際、100mがしっかり走れれば、200mも割と走れてしまうんです。今は100mのための練習をして、シーズンに入って試合を重ねていく中で、200mに特化した練習を入れていく感じなのかなと思います。

この続きは2021年4月14日発売の『月刊陸上競技5月号』をご覧ください。

 

 

※インターネットショップ「BASE」のサイトに移動します
郵便振替で購入する
定期購読はこちらから

 これまで、いくつもの道を切り開いてきた。東京・城西高2年だった2015年は世界ユース選手権の100m、200m2冠&MVPに輝き、北京世界選手権は200mで史上最年少(16歳172日)出場。次代を担う国際陸連(現・世界陸連)「ライジング・スター・アワード」も受賞した。卒業後には渡米してフロリダ大に入学。そして、2年目のシーズンを終えた後にはプロ宣言をし、100m、200mの世界記録を持つ〝レジェンド〟ウサイン・ボルトと同じプーマとの契約も交わした。  世界中が〝ボルトの後継者〟として注目する22歳、サニブラウン・アブデル・ハキーム(タンブルウィードTC)。地元・東京五輪イヤーのシーズンインを前に、その思いを語った。 ●文/加藤康博

重心とスタートの改善へ取り組み 100mに特化した練習を実施

 2020年8月に、フロリダ大からタンブルウィードTCへと練習拠点を変更。ロンドン世界選手権7位など、飛躍の年となった2017年に師事していたラナ・レイダーコーチの指導を再度仰ぐようになり、約7ヵ月が過ぎた。この間、どんなテーマをもち、どのように練習に取り組んできたのか。まずはそこから聞いた。  最初は練習のプログラムに慣れるようにと基礎を2、3ヵ月やり、その後、冬季練習は体力強化、身体強化をやってきたかたちです。レイダー・コーチに走りを見てもらうようになってすぐ「以前より走りの重心が下がっている」と指摘されました。ただ、このチームに来てからはウォームアップでやるドリルの数や、ウォームアップ自体が長くなり、2017年同様のことをここ数ヵ月やってきたので、重心の位置はもう戻っていると思います。2019年はがむしゃらに走っていた感じでしたが、17年はきれいに走ろうという意識があったので、今やっている動き作りをこれからも取り入れていけば、アメリカに来てからついたパワーを生かして、もっとスムーズに走れると思っています。  ここまでの間、重点的に取り組んだのはスタートの部分ですね。まだブロックを使った練習はしていないのですが、最初の3歩を毎回、同じように出られるような練習を繰り返しています。スタート後の1歩目、2歩目で少し頭が上がってしまい、そこから加速する時に脚が流れたりしてしまうことなどもあったので、そうした小さい課題を修正する練習を繰り返しています。リアクションタイムへのこだわりはありません。海外のトップ選手を見ていてもリアクションタイムが遅くても、しっかりスタートで加速する自分の動きができれば、問題ありません。そこがこの1年間で一番学んだことかなと思います。  スタートからトップスピードに乗る局面へのつながりも重視している、とサニブラウンは付け加える。  スタート後、加速する10mから30mまで。そこから60mまで、さらに100mまでと100mを小分けして考えた時に、一番難しいのは加速後、30mから60mでいかにトップスピードに乗れるか。この一連の流れの中でこれまでよくやっていたミスは少し動きが鈍くなってしまったり、逆に脚を回転して進もうという意識がなく、維持しようとしてしまったりということです。そこの意識改善もそうですし、10mから30m、30mから60mの切り替えの部分をいかにスムーズに加速し続けられるかも意識して取り組んできた部分です。  2019年6月、9秒97の日本記録を出した全米学生選手権の直後は「60mまでは良かったが、その後はストライドが間延びしてしまった」とコメントを残した。その部分の改善はどこまで進んだのだろうか。  そこはまだいろいろとやっている途中なのですが、終盤になってくると乳酸もたまってきますし、しっかり腕を振ろうと逆に力んでしまって、少し腕が前に出て、後ろまで振れなくなり、それが脚が流れたり、オーバーストライドにつながったりしています。しっかり腕を振り、それで自分のフォームが大きくならないように調整している感じです。腕振りに関しては後半だけでなく、走りのどの局面においても大切かなと思いますね。  ここまで100mを念頭に置いてのコメントが続いている。100mと200mのウエイトの置き方、それぞれに取り組むことでの相乗効果などはどのように考えているのだろうか。  この冬季はここまで、確かに100mを中心に取り組んできましたね。ただ、レースの組み立て方は100mも200mも変わらないと思っています。200mでもスタートで出ないといけないので、最初の3歩は脚を回す必要がありますし、距離は長いですが、似ている部分も多いです。ですので、練習では100mが多いとはいえ、200mのためにもなっているかなと思います。  実際、100mがしっかり走れれば、200mも割と走れてしまうんです。今は100mのための練習をして、シーズンに入って試合を重ねていく中で、200mに特化した練習を入れていく感じなのかなと思います。 この続きは2021年4月14日発売の『月刊陸上競技5月号』をご覧ください。    
※インターネットショップ「BASE」のサイトに移動します
郵便振替で購入する 定期購読はこちらから

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.07.04

400mHボルが結婚!世界歴代2位、23年世界陸上金メダリストの25歳

女子400mハードルのフェムケ・ボル(オランダ)が自身のSNSを更新し、結婚したことを報告した。 25歳のボル。自己記録の50秒95は世界歴代2位。23年ブダペスト世界選手権では金メダルに輝いた。昨年のパリ五輪では男女混 […]

NEWS 日本選手権、2日目も猛暑のため競技時間変更 一部種目を夜に

2025.07.04

日本選手権、2日目も猛暑のため競技時間変更 一部種目を夜に

◇第109回日本選手権(7月4日~6日/東京・国立競技場) 東京世界選手権の代表選考会を兼ねた日本選手権の2日目の競技開始時間の変更が決まった。 広告の下にコンテンツが続きます 主催する日本陸連は、大会前から暑熱に関する […]

NEWS 東京世界陸上懸けた熱戦!20年ぶり国立開催の日本選手権、今日開幕

2025.07.04

東京世界陸上懸けた熱戦!20年ぶり国立開催の日本選手権、今日開幕

◇第109回日本選手権(7月4日~6日/東京・国立競技場) 東京世界選手権の代表選考会を兼ねた日本選手権が今日(7月4日)に開幕する。 広告の下にコンテンツが続きます 初日のトラック種目の決勝は男子3000m障害と女子5 […]

NEWS 日本選手権初日の競技日程が変更 暑熱対策の一環としてフィールド種目が14時以降開始へ

2025.07.03

日本選手権初日の競技日程が変更 暑熱対策の一環としてフィールド種目が14時以降開始へ

◇第109回日本選手権(7月4日~6日/東京・国立競技場) 東京世界選手権の代表選考会を兼ねた日本選手権の初日のタイムテーブル変更が発表された。 広告の下にコンテンツが続きます 大会のオープニング種目として女子棒高跳、同 […]

NEWS 1500m、5000m出場の田中希実 代表内定とともに「世界陸上で戦うことを意識したレース」を目指す 廣中との対戦「楽しみ」/日本選手権

2025.07.03

1500m、5000m出場の田中希実 代表内定とともに「世界陸上で戦うことを意識したレース」を目指す 廣中との対戦「楽しみ」/日本選手権

◇第109回日本選手権(7月4日~6日/東京・国立競技場) 東京世界選手権の代表選考会を兼ねた日本選手権の開幕を控え、前日会見が国立競技場で行われ、女子1500m、5000mに出場する田中希実(New Balance)が […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2025年7月号 (6月13日発売)

2025年7月号 (6月13日発売)

詳報!アジア選手権
日本インカレ
IH都府県大会

page top