2018.10.13
2度目のマラソンで本領発揮 MGCへ弾みをつける2時間8分16秒
エリウド・キプチョゲ(ケニア)の世界新記録樹立(2時間1分39秒)に沸いた、9月16日のベルリン・マラソン。男子の日本勢はマラソングランドチャンピオンシップ(MGC/ 2020東京五輪選考会)出場権獲得者の佐藤悠基(日清食品グループ)や上門大祐(大塚製薬)ら、有力選手が複数出場したが、その中で日本人トップの4位に入ったのが中村匠吾(富士通)だ。レース序盤からペースメーカーがいなくなるアクシデントに見舞われながら、終始単独走で安定した走りを見せ、2時間8分16秒の大幅自己新をマーク。初マラソンだった3月のびわ湖毎日(日本人トップの7位/2時間10分51秒)でMGC出場権を獲得していたホープは、2度目のマラソンにいかにして臨んだのか。大会当日に26歳の誕生日を迎えたばかりの本人に話を聞いた。
◎構成/松永貴允
35kmまでは2時間7分台前半ペース
――ベルリン・マラソンでは2時間8分16秒の大幅自己新で4位に入りました。率直な感想をお願いします。
中村 本来はペースメーカーが25kmまで、中間点を63分で通過するペースで引っ張ってくれる予定でしたが、そのペースメーカーがスタートしてすぐ前のグループについて行ってしまい、5km付近から単独走のようなかたちになってしまいました。そこから最後まで1人で走り切れたというのは、自分でも力がついてきたなと感じています。マラソンはまだ2戦目ですが、練習面も含めて、自分のやってきたことが間違っていなかったなと再確認できたので、レースとしては良かったかなと思います。
――ペースメーカーがいなくなった時、周りには誰もいなかったのですか?
中村 2時間5分台の選手が目の前にいたので一緒に走っていたのですが、5kmくらいで調子が悪かったのか、後ろに下がってしまったんです。一緒に行けたらと思っていたのですが、そこからは一人旅でしたね。でも、すぐに気持ちを切り替えて自分で行けるところまで1km 3分ペースで押していこうと思っていました。
――前の選手は見えていましたか?
中村 前のグループは世界記録ペースだったのと、ベルリンはカーブが多いコースなので、あまり前は見えない状況でした。ただ、自分のところには福嶋(正)監督が乗っている車がついてくれて、500mごとにゴールの予想タイムを出してくれていたので、それがモチベーションの1つとなりました。
――35kmまでは1km3分ペースで進んでいましたが、そこからフィニッシュまでの7.195kmで少し失速が見られました。
中村 そうですね、35kmくらいまでは自分の考えていたペース通りに押せていたと思います。そこから38kmあたりが一番きつくて、後半の走りが課題として残りました。
世界新記録誕生のレースを体感
――同じレースで世界記録が出たことについてはどう思いますか?
中村 2時間1分台ということで、やはり日本と世界のトップ選手とではまだまだ力の差があるなと痛感しました。ゴールした時も悔しさの方が強かったので、そういう意味では自分がさらにレベルアップできる材料というか、モチベーションにしていきたいです。ただ、日本のマラソン界も少しずつ盛り上がってきているので、少しずつでも追いつこうという気持ちで切磋琢磨していければと思います。
――初マラソンだった3月のびわ湖の時と比べて、準備段階で変えたところはありましたか?
中村 びわ湖は初マラソンだったので、前年の夏くらいからマラソンを意識した40km走を入れたりして半年間ほど準備をしていました。今回は2ヵ月半という短い準備期間だったので、そこが大きな違いですね。2ヵ月前からアップダウンを利用して走り込んで、1ヵ月前からは高地トレーニングを取り入れるという基本的な流れは前回と変わりません。
――調整段階での仕上がり具合はいかがでしたか?
中村 前回と比べると、距離走のペースは比較的余裕を持って取り組み、逆にインターバルのスピード部分で質を上げていました。それでも自分の中では余裕があったので、びわ湖の時よりは良い状態でスタートラインに立てるのかなと感じていました。
――それはベルリンの速い展開を想定しての対策でしょうか?
中村 そういう意味もありますし、びわ湖の時に距離走のペースを上げていたら、疲労がなかなか抜けなかったという反省を生かした部分もあります。走り込みはタイムを追うというよりはしっかりと距離をこなして、インターバル練習でスピードの切れ味を出していく方が自分に合ったスタンスなのかな、と。そこは今回うまくいった要因の1つだと思います。
――40km走などの設定ペースを落としたということでしょうか?
中村 びわ湖の時は1番速くて2時間10分、ベースとして2時間15分くらいだったのですが、今回は2時間20分くらい。比較的余裕を持たせて、次の日にインターバルを入れることで(レースペースである)1km3分の余裕度を作ることに意識を置きました。
――35km以降の失速についてはどのような対策を考えていますか?
中村 やはり40km以上の距離走は必要になると思います。今回も45kmを1本、40kmを3本入れたのですが、それでもまだまだという実感があるので……。あとは、マラソンの高速化が進んでいるので、スピード練習の質を上げていくことを意識してやっていけたら、2時間6分台で走り抜ける力がついていくのかなと思います。
※この続きは2018年10月12日発売の『月刊陸上競技』11月号をご覧ください
※大八木弘明コーチとの関係や、福嶋正監督と大八木コーチのコメントなどが続きます
2度目のマラソンで本領発揮 MGCへ弾みをつける2時間8分16秒
エリウド・キプチョゲ(ケニア)の世界新記録樹立(2時間1分39秒)に沸いた、9月16日のベルリン・マラソン。男子の日本勢はマラソングランドチャンピオンシップ(MGC/ 2020東京五輪選考会)出場権獲得者の佐藤悠基(日清食品グループ)や上門大祐(大塚製薬)ら、有力選手が複数出場したが、その中で日本人トップの4位に入ったのが中村匠吾(富士通)だ。レース序盤からペースメーカーがいなくなるアクシデントに見舞われながら、終始単独走で安定した走りを見せ、2時間8分16秒の大幅自己新をマーク。初マラソンだった3月のびわ湖毎日(日本人トップの7位/2時間10分51秒)でMGC出場権を獲得していたホープは、2度目のマラソンにいかにして臨んだのか。大会当日に26歳の誕生日を迎えたばかりの本人に話を聞いた。 ◎構成/松永貴允35kmまでは2時間7分台前半ペース
――ベルリン・マラソンでは2時間8分16秒の大幅自己新で4位に入りました。率直な感想をお願いします。 中村 本来はペースメーカーが25kmまで、中間点を63分で通過するペースで引っ張ってくれる予定でしたが、そのペースメーカーがスタートしてすぐ前のグループについて行ってしまい、5km付近から単独走のようなかたちになってしまいました。そこから最後まで1人で走り切れたというのは、自分でも力がついてきたなと感じています。マラソンはまだ2戦目ですが、練習面も含めて、自分のやってきたことが間違っていなかったなと再確認できたので、レースとしては良かったかなと思います。 ――ペースメーカーがいなくなった時、周りには誰もいなかったのですか? 中村 2時間5分台の選手が目の前にいたので一緒に走っていたのですが、5kmくらいで調子が悪かったのか、後ろに下がってしまったんです。一緒に行けたらと思っていたのですが、そこからは一人旅でしたね。でも、すぐに気持ちを切り替えて自分で行けるところまで1km 3分ペースで押していこうと思っていました。 ――前の選手は見えていましたか? 中村 前のグループは世界記録ペースだったのと、ベルリンはカーブが多いコースなので、あまり前は見えない状況でした。ただ、自分のところには福嶋(正)監督が乗っている車がついてくれて、500mごとにゴールの予想タイムを出してくれていたので、それがモチベーションの1つとなりました。 ――35kmまでは1km3分ペースで進んでいましたが、そこからフィニッシュまでの7.195kmで少し失速が見られました。 中村 そうですね、35kmくらいまでは自分の考えていたペース通りに押せていたと思います。そこから38kmあたりが一番きつくて、後半の走りが課題として残りました。世界新記録誕生のレースを体感
――同じレースで世界記録が出たことについてはどう思いますか? 中村 2時間1分台ということで、やはり日本と世界のトップ選手とではまだまだ力の差があるなと痛感しました。ゴールした時も悔しさの方が強かったので、そういう意味では自分がさらにレベルアップできる材料というか、モチベーションにしていきたいです。ただ、日本のマラソン界も少しずつ盛り上がってきているので、少しずつでも追いつこうという気持ちで切磋琢磨していければと思います。 ――初マラソンだった3月のびわ湖の時と比べて、準備段階で変えたところはありましたか? 中村 びわ湖は初マラソンだったので、前年の夏くらいからマラソンを意識した40km走を入れたりして半年間ほど準備をしていました。今回は2ヵ月半という短い準備期間だったので、そこが大きな違いですね。2ヵ月前からアップダウンを利用して走り込んで、1ヵ月前からは高地トレーニングを取り入れるという基本的な流れは前回と変わりません。 ――調整段階での仕上がり具合はいかがでしたか? 中村 前回と比べると、距離走のペースは比較的余裕を持って取り組み、逆にインターバルのスピード部分で質を上げていました。それでも自分の中では余裕があったので、びわ湖の時よりは良い状態でスタートラインに立てるのかなと感じていました。 ――それはベルリンの速い展開を想定しての対策でしょうか? 中村 そういう意味もありますし、びわ湖の時に距離走のペースを上げていたら、疲労がなかなか抜けなかったという反省を生かした部分もあります。走り込みはタイムを追うというよりはしっかりと距離をこなして、インターバル練習でスピードの切れ味を出していく方が自分に合ったスタンスなのかな、と。そこは今回うまくいった要因の1つだと思います。 ――40km走などの設定ペースを落としたということでしょうか? 中村 びわ湖の時は1番速くて2時間10分、ベースとして2時間15分くらいだったのですが、今回は2時間20分くらい。比較的余裕を持たせて、次の日にインターバルを入れることで(レースペースである)1km3分の余裕度を作ることに意識を置きました。 ――35km以降の失速についてはどのような対策を考えていますか? 中村 やはり40km以上の距離走は必要になると思います。今回も45kmを1本、40kmを3本入れたのですが、それでもまだまだという実感があるので……。あとは、マラソンの高速化が進んでいるので、スピード練習の質を上げていくことを意識してやっていけたら、2時間6分台で走り抜ける力がついていくのかなと思います。 ※この続きは2018年10月12日発売の『月刊陸上競技』11月号をご覧ください ※大八木弘明コーチとの関係や、福嶋正監督と大八木コーチのコメントなどが続きます
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