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【学生長距離Close-upインタビュー】石原翔太郎 東海大の新エースへ成長中「花の2区で活躍できるような選手になりたい」

学生長距離Close-upインタビュー
石原翔太郎 Ishihara Shotaro 東海大学1年

「月陸Online」限定で大学長距離選手のインタビューをお届けする「学生長距離Close-upインタビュー」。5回目は、ルーキーイヤーで全日本大学駅伝4区、箱根駅伝3区と立て続けに区間賞を手にした東海大の石原翔太郎に話を聞いた。

 中学時代は全国的に無名の存在。岡山・倉敷高時代に世代のトップを争う選手へと成長し、大学1年目に突如ブレイク。東海大の未来を担う新2年生は、いかにして実力を磨いてきたのか。

ルーキーイヤーに区間賞2つ

 1年生の活躍が目立った2020年度の学生長距離界において、駅伝で最も輝いたのは東海大の石原翔太郎だろう。全日本は4区で、箱根は3区で区間賞。そのタイムもすばらしかった。

全日本 4区(11.8km)  33.16=区間新
箱 根 3区(21.4km) 1.02.05=区間歴代9位

 コロナ禍のなか、怒涛の1年を終えた石原は、「ここまで走れるとは思いませんでした。多くの経験を積むことができ、次につながる結果になったんじゃないかなと思います」とシーズンを振り返った。

 昨年は5000mで吉居大和(中大)が、3000m障害で三浦龍司(順大)がU20日本記録(※三浦は学生記録も)を樹立するなど、ルーキーの当たり年となった。石原はそんなライバルたちとは異なり、中学時代は全国大会にも出場できないレベルだった。

 兵庫・龍野東中時代は3000mベストが9分09秒54。本人いわく、「中学時代は友達と仲良くやっていた感じです。陸上に詳しくもなく、楽しくやっていました。特に走るのが速かったわけではありません」とのことだった。

 中学の3学年先輩・前田舜平(現・明大)の影響を受けて、岡山の強豪・倉敷高に越境進学する。全国高校駅伝では2年時に6区を区間2位と好走し、チームの日本一に貢献。3年時もエース区間の1区で区間5位と活躍した。

「高校時代は都大路で優勝できたのが一番印象に残っています。3年時も1区(10km)を28分台で走ることができたのはいい思い出ですね。舜平先輩を目標にしていて、5000mでも14分00秒06(前田は14分01秒30)をマークすることができたので、すごく成長できた3年間だったと思います」

岡山・倉敷高3年時の全国高校駅伝1区。左から4人目が石原

 石原が高校2年時の箱根駅伝で東海大が初優勝。「ロードが得意」という“駅伝男”は、「自分も箱根で優勝したい」と東海大に進学した。

 しかし、ルーキーイヤーの前半戦は思うように走ることができなかった。

「自粛期間中も自分は寮に残っていたのですが、なかなかモチベーションが上がりませんでした。練習の質も落ちてしまったんです」

 大学デビュー戦となった7月11日の東海大長距離競技会5000mは14分32秒66と振るわず。一方で吉居と三浦は、7月18日のホクレン・ディスタンスチャレンジ千歳大会でU20日本記録(吉居は5000m13分28秒31、三浦は3000m障害で8分19秒37)を樹立した。脚光を浴びた同学年に対抗心を燃やしたかと思いきや、「彼らは自分にはないスピードを持っている。僕は実力不足の面があったのでライバル意識は持っていなかったです」と冷静に自分を見つめていた。

 大学生活に慣れてきた夏以降は徐々に調子を上げていく。夏合宿もしっかりと走り込み、9月21日の平成国際大秋季長距離競技会5000mでは初の13分台となる13分51秒03をマーク。すると、ここから石原の快進撃が幕を開ける。

「練習もしっかり積めていたので自信はあった」という11月1日の全日本大学駅伝は、4区で区間賞を獲得。順大・塩尻和也(現・富士通)が4年時に樹立した区間記録を32秒も上回る衝撃の駅伝デビューとなった。

「塩尻さんが保持していた区間記録は走る前から狙っていたんです。1km2分52秒がアベレージだったので、それ以上のペースで走ろうと思っていました」

 五輪ランナーである“塩尻越え”を果たしたことで、石原は「東海大のスーパールーキー」と注目を浴びるようになった。

 箱根駅伝に向けては長い距離にも自信を深めていき、夏は一杯いっぱいだった25km走や30km走も余裕を持ってこなせるようになった。特に自信になった練習は「2~3週間前に行った5000m1本」を挙げる。「14分10秒の設定でしたけど、かなり余裕を持ってできましたから」。

 2週間ほど前に3区への出走を言い渡された石原は、「1時間2分台」という目標を設定するが、実際にはそれ以上の走りを見せる。

 3位からトップに立っただけでなく、区間歴代9位の1時間2分05秒で区間賞をゲット。大学の先輩である佐藤悠基(SGホールディングスグループ)が1年時(2006年)にマークした3区の大学記録(1時間2分12秒=当時の区間記録)も上回った。

 レースを振り返り、「自分は下りが好きだったので、3区は自分に適した区間かなと思っていました。先輩から好位置でタスキをもらったので、いい走りができたかなと思います」と自身の走りを総括。後半は苦しい表情を見せたが、「自分は粘り強さが武器なので、我慢することができました。偉大な先輩の記録を超えることができたのはすごくうれしかったです」と自信を深めた。

1月に10000mで自己新

 箱根駅伝後も順調にトレーニングを消化。1月24日の東海大競技会10000mでは自己ベストの28分44秒05をマークした。風が強かったこともあり、「タイムには満足していません」と話すが、狙い通りに学生ハーフの参加標準記録(29分10秒00)を突破。学生ハーフの前には「ユニバーシアード(ワールドユニバーシティゲームズ)に出場したい思いがあるので、学生ハーフは3位以内を狙っていきたいです」と意気込みを口にしていた。

 その学生ハーフでは優勝した鎌田航生(法大)から48秒遅れの17位(1時間3分48秒)。決して納得のできる結果ではなかったものの、強風吹き荒れるなかで先頭集団を牽引するなど、持ち前の積極性が垣間見えた。この“チャレンジ”は次のレースで生かされるはずだ。

 今後はこの春に卒業する塩澤稀夕、名取燎太、西田壮志ら「4年生トリオ」の跡を継ぐチームの絶対的存在としての活躍が期待されている。両角速駅伝監督は、「石原はスピード練習を積んでいくよりは、泥臭い練習を積み重ねていくタイプ。今後は東海大のエースになっていけるような試合設定をしていきたい。三大駅伝やインカレなど学生のレースできちんと戦うことをベースにやらせたいと思っています」と話している。

 エースとしての意識は「現時点でまだそこまで……」と謙虚な新2年生だが、「チームを引っ張っていく立場にはなると思うので、今までよりも高い意識を持って取り組んでいきたい。まずは5000mと10000mで20秒ぐらいは自己ベストを更新できたらいいなと思っています」と新シーズンに向けての意欲を口にした。

 そして将来的には、「(箱根駅伝の)花の2区でしっかりと活躍できるような選手になりたいと思っていますし、チームとしても箱根で勝ちたい。最終的にはマラソンでオリンピックに出場することが目標です。そこに向かって力をつけていきたいです」と世界を見つめている。

 2017年度に出雲駅伝、18年度に箱根駅伝、19年度に全日本大学駅伝を制しながら、20年度は無冠に終わった東海大。新エース候補の石原が再びチームを学生駅伝の頂点へ引き上げる。

◎いしはら・しょうたろう/2002年1月4日生まれ。兵庫県出身。龍野東中→岡山・倉敷高→東海大。自己記録5000m13分51秒03、10000m28分44秒05。昨年11月の全日本大学駅伝4区、今年1月の箱根駅伝3区で区間賞を獲得してブレイクした東海大の新エース候補

文/酒井政人

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