2025.04.28
今年9月、陸上の世界選手権(世界陸上)が34年ぶりに東京・国立競技場で開催される。今回で20回目の節目を迎える世界陸上。日本で開催されるのは1991年の東京、2007年の大阪を含めて3回目で、これは同一国で最多だ。
これまで数々のスーパースター、名勝負が生まれた世界陸上の各大会の様子を紹介する『世界陸上プレイバック』。1997年にアテネ(ギリシャ)で行われた第6回大会を振り返る。
”鳥人”ブブカが棒高跳で6連覇
1997年の第6回大会は五輪発祥の地であるギリシャのアテネで開催。当初はメキシコシティで開催予定だったが、財政難を理由に開催地が変更となった。
今大会で伝説を作ったのが「鳥人」の異名を持つ男子棒高跳のセルゲイ・ブブカ(ウクライナ)。6m01の大会新記録で第1回大会から不滅の6連覇を達成した。
ソ連時代の1985年に世界で初めて6mを突破。世界記録を35回(屋外17回・室内18回)も更新している。94年に記録した6m14は2014年にルノー・ラヴィレニ(フランス)が6m16をクリアするまで約20年も破られなかった。ちなみに当時は世界記録として公認されていなかった屋内では93年に6m15を成功させている。
ブブカはこの時33歳。前年に行われたアトランタ五輪では両足のアキレス腱を痛めて予選を棄権しており、全盛期は過ぎたと見られていた。
しかし、負け知らずの世界陸上で、またしても勝負強さを発揮する。5m91を2回目で成功させると、マクシム・タラソフ(ロシア)とディーン・スターキー(米国)もこの高さを3回目でクリアした。
次の5m96をブブカはパス。タラソフは一発でクリアしたが、スターキーは1回目を失敗したところでパスをした。
勝負は6m01へともつれ込む。スターキーとタラソフは1回目を失敗。その中でブブカは6m10以上を跳んでいるのではないかと思わせる大跳躍で、一発クリアとなった。
追い詰められたスターキーは2回目も失敗して競技終了。一方のタラソフは2回目をパスして、6m06に挑戦する。ここで成功させてブブカにプレッシャーをかけたいところだったが、2回とも成功させることができず、ブブカの6連覇が決まった。
15年にわたって世界のトップに立ち続けたブブカ。現役晩年はアキレス腱のケガに苦しみ、2年後のセビリア大会は棄権している。2000年で現役から退き、世界陸上で一度も負けることなく選手生活を全うした。
この大会でブレイクしたのが男子100mのモーリス・グリーン(米国)。21歳で出場した前回大会は2次予選で敗退、前年のアトランタ五輪は出場を逃すなどくすぶっていた。
そんな中で環境を変え、ジョン・スミスコーチのいるHSI(ハドソン・スミス・インターナショナル)に加入。そこから一気に力をつけ、ファイナリストまで駆け上がった。
今大会の本命は前回大会とアトランタ五輪を制し、9秒84の世界記録(当時)を持つドノバン・ベイリー(カナダ)。しかし、決勝ではグリーンがスタート直後からリードを奪うと、ベイリーの追い上げを振り切り、大会タイ記録の9秒86で制した。
その後、グリーンは世界陸上で3連覇を達成。2000年のシドニー五輪でも金メダルを獲得するなど、黄金時代を築いた。
現在は男女ともにケニア勢が長距離種目を席巻しているが、女子のケニア人選手で初の金メダリストとなったのが10000mのサリー・バルソシオ。93年の第4回大会で15歳ながら銅メダルに輝いたバルソシオは8500m付近でスパートをかけ、独走で19歳ながら世界の頂点に立った。
女子マラソンで金、銅の殊勲
日本からは男子21選手、女子17選手が出場。金メダル1つ、銅メダル1つを含め、5人の選手が入賞した。
特に活躍が目立ったのが女子長距離種目。マラソンでは鈴木博美(積水化学)が2時間29分48秒で金メダルに輝き、飛瀬貴子(京セラ)も2時間32分18秒で4位入賞を果たした。
鈴木は市船橋高(千葉)時代に小出義雄監督から素質を見出され、インターハイでは3000m2位の実績を持つ。実業団に進んでからも小出監督の指導を受け、2度目のマラソンとなる名古屋国際女子マラソンで日本人トップの2位となり、代表切符を掴んだ。
レース当日は酷暑の厳しいコンディション。前年のアトランタ五輪で金メダルを獲得したファツマ・ロバ(エチオピア)が中間点を前に歩き始め、最終的にリタイアするまさかの展開となった。
その中で鈴木は力強い走りを見せ、27km過ぎから独走。前回覇者のマヌエラ・マシャド(ポルトガル)ら有力選手を置き去りにして、2位のマシャドに1分24秒の大差をつけて優勝した。

女子マラソンでは鈴木博美が金に輝く
女子10000mでは千葉真子(旭化成)が31分41秒93で銅メダルを獲得。世界陸上では女子トラック種目初のメダル獲得となり、世界大会全体でも1928年アムステルダム五輪800m銀メダルの人見絹枝以来、69年ぶりの快挙だった。
6000mで先頭に立つなど積極的なレース運びを見せた千葉。バルソシオが8500m付近で仕掛け、一時は5位に落ちたが、9000m手前で3位に浮上する。その後もペースは落ちることなく、順位をキープ。21歳のホープが快挙を成し遂げた。
さらに5000mでも弘山晴美(資生堂)が15分21秒19で8位入賞。男子は50km競歩の今村文男(富士通)が3時間50分27秒で6位となり、7位だった1991年東京大会以来となる入賞を果たした。
”鳥人”ブブカが棒高跳で6連覇
1997年の第6回大会は五輪発祥の地であるギリシャのアテネで開催。当初はメキシコシティで開催予定だったが、財政難を理由に開催地が変更となった。 今大会で伝説を作ったのが「鳥人」の異名を持つ男子棒高跳のセルゲイ・ブブカ(ウクライナ)。6m01の大会新記録で第1回大会から不滅の6連覇を達成した。 ソ連時代の1985年に世界で初めて6mを突破。世界記録を35回(屋外17回・室内18回)も更新している。94年に記録した6m14は2014年にルノー・ラヴィレニ(フランス)が6m16をクリアするまで約20年も破られなかった。ちなみに当時は世界記録として公認されていなかった屋内では93年に6m15を成功させている。 ブブカはこの時33歳。前年に行われたアトランタ五輪では両足のアキレス腱を痛めて予選を棄権しており、全盛期は過ぎたと見られていた。 しかし、負け知らずの世界陸上で、またしても勝負強さを発揮する。5m91を2回目で成功させると、マクシム・タラソフ(ロシア)とディーン・スターキー(米国)もこの高さを3回目でクリアした。 次の5m96をブブカはパス。タラソフは一発でクリアしたが、スターキーは1回目を失敗したところでパスをした。 勝負は6m01へともつれ込む。スターキーとタラソフは1回目を失敗。その中でブブカは6m10以上を跳んでいるのではないかと思わせる大跳躍で、一発クリアとなった。 追い詰められたスターキーは2回目も失敗して競技終了。一方のタラソフは2回目をパスして、6m06に挑戦する。ここで成功させてブブカにプレッシャーをかけたいところだったが、2回とも成功させることができず、ブブカの6連覇が決まった。 15年にわたって世界のトップに立ち続けたブブカ。現役晩年はアキレス腱のケガに苦しみ、2年後のセビリア大会は棄権している。2000年で現役から退き、世界陸上で一度も負けることなく選手生活を全うした。 この大会でブレイクしたのが男子100mのモーリス・グリーン(米国)。21歳で出場した前回大会は2次予選で敗退、前年のアトランタ五輪は出場を逃すなどくすぶっていた。 そんな中で環境を変え、ジョン・スミスコーチのいるHSI(ハドソン・スミス・インターナショナル)に加入。そこから一気に力をつけ、ファイナリストまで駆け上がった。 今大会の本命は前回大会とアトランタ五輪を制し、9秒84の世界記録(当時)を持つドノバン・ベイリー(カナダ)。しかし、決勝ではグリーンがスタート直後からリードを奪うと、ベイリーの追い上げを振り切り、大会タイ記録の9秒86で制した。 その後、グリーンは世界陸上で3連覇を達成。2000年のシドニー五輪でも金メダルを獲得するなど、黄金時代を築いた。 現在は男女ともにケニア勢が長距離種目を席巻しているが、女子のケニア人選手で初の金メダリストとなったのが10000mのサリー・バルソシオ。93年の第4回大会で15歳ながら銅メダルに輝いたバルソシオは8500m付近でスパートをかけ、独走で19歳ながら世界の頂点に立った。女子マラソンで金、銅の殊勲
日本からは男子21選手、女子17選手が出場。金メダル1つ、銅メダル1つを含め、5人の選手が入賞した。 特に活躍が目立ったのが女子長距離種目。マラソンでは鈴木博美(積水化学)が2時間29分48秒で金メダルに輝き、飛瀬貴子(京セラ)も2時間32分18秒で4位入賞を果たした。 鈴木は市船橋高(千葉)時代に小出義雄監督から素質を見出され、インターハイでは3000m2位の実績を持つ。実業団に進んでからも小出監督の指導を受け、2度目のマラソンとなる名古屋国際女子マラソンで日本人トップの2位となり、代表切符を掴んだ。 レース当日は酷暑の厳しいコンディション。前年のアトランタ五輪で金メダルを獲得したファツマ・ロバ(エチオピア)が中間点を前に歩き始め、最終的にリタイアするまさかの展開となった。 その中で鈴木は力強い走りを見せ、27km過ぎから独走。前回覇者のマヌエラ・マシャド(ポルトガル)ら有力選手を置き去りにして、2位のマシャドに1分24秒の大差をつけて優勝した。 [caption id="attachment_168312" align="alignnone" width="800"]
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