2020.11.25
お笑い芸人のじゅんいちダビッドソンさんが都内で会見を開き、男子円盤投の安藤夢選手とスポンサー契約したことを発表。芸能人“個人”としてアスリートのスポンサーするのは異例中の異例だ。会見のあと、月刊陸上競技の単独取材で、改めてその経緯を聞いた。
(関連記事はこちら)
――そもそも、2人の交流はいつからですか?
じゅんいちダビッドソン
「年に何度かトークライブをやっているのですが、今年の2月のライブに、元々親交のあったX-TREME X(※安藤が所属するマネジメント会社)の前野宏明さんと一緒に安藤君が来てくれました」
安藤夢「元々、ファンでした! テレビ番組でちょっと風貌の怖い人たちのところに突撃する企画をやっていたのを覚えています」
じゅんいち「そこはR-1ぐらんぷりの決勝とかじゃないんかい!」
安藤「すごく印象に残っていたので! 前野さんとはアスナビ(就職支援)を活用した際に知り合ってマネジメントしていただいています」
じゅんいち「楽屋に来てくれて、前野さんに紹介されました。第一印象は“ゴッツいな”でしたね。このまんま、好青年でニコニコしていて、気が優しくて力持ちって感じ」
安藤「僕にとってはテレビの中の人だったので、こういう機会がないと会うことがなかった人。サポートしていただけで、身が引き締まります」
――そこからどうやってスポンサーに至ったんですか。
じゅんいち「前野さんとはサッカーの日本代表戦を観戦している時にスタンドで知り合ったんです。その前野さんから、『円盤投の選手で、スポンサー企業を探しているんです』と。で、しばらくしてから『胸スポンサーになりませんか? 個人で胸スポンサーになったら世界初ですよ』とうまいこと“営業”されました。“世界初”という言葉に弱いんです。こうして会見をして、本田圭佑さんぽいでしょ?」

会見に臨むじゅんいちダビッドソンさん。本田っぽい??
――その言葉が決め手?
じゅんいち「それもありますが、それだけじゃないです。もちろん、競技特性なども聞いて、自己記録が出る年齢が何歳くらいで、安藤君は20歳でどれくらい投げてって。やっぱり人柄が大きい。自分でコーチを探して米国に行ったのも聞いています。前野さんのことも前からよく知っていましたし、まったく知らない選手だったら(スポンサーに)なっていない。誰でもスポンサーになったわけじゃないですよ」
――ちなみに円盤投のことはご存知でしたか。
じゅんいち「僕は水球をやっていましたが、陸上競技をするのは苦手でした。投てきのイメージとしては僕らの世代ではやっぱりハンマー投の室伏広治さんの印象。この前、初めて円盤を触らせてもらいましたが、こんなものを50mも60mも投げるのか、と。どうやって投げるんだっけ?」
安藤「こうして指にかけて。フリスビーみたいに投げるとか思っている方もいますよね。そうして投げたら手首が壊れます」
じゅんいち「そもそも何で円盤投を始めたの?」
安藤「中学時代はテニス部をしながら砲丸投をやっていました。高校に入ってから、投てき選手としては線が細かったので先生から円盤投を勧められました」

円盤を手にし「こんなのを投げるなんてすごい」とじゅんいちダビッドソンさん
――スポンサー料について公開は難しいと思いますが、契約の形態としては?
じゅんいち「年間いくら、という感じで、パリ五輪まで契約しました」
安藤「今はコロナ禍で、練習場所の確保が難しいので助かります。円盤投は投げる場所がないと厳しく、大学も来年4月まで卒業生は入れません」
じゅんいち「僕は趣味のキャンプをするために山の購入を検討しているので、それが決まったら、円盤投げ放題プランを考えます」
――安藤選手は逆に芸能界への興味というか。
安藤「交友関係もそうですし、いろいろなコラボをしていけて、視野を広げて競技に生かしていければいいなと思っています」
じゅんいち「残念ながら僕はゴールデンのMCをやっているわけではないので、バーター(セット)でというわけにはいきませんが、YouTubeちゃんねる『ちゃんねるダビッドソン』で、何かしら円盤投と絡めてできるといいですね」

安藤はサポートを受けながら2024年のパリ五輪を目指していく
――今後、パリ五輪に向けて活動となります。どんな目標を掲げていますか。
安藤「まだ海外には行けませんが、もう一度、渡米して同じコーチに見てもらおうと思っています。新しい所属先は歯科医院で、トレーナーでもあり歯科医でもある関根陽平先生に、医学的な部分からも見てもらいながら競技力を高めていきたいです」
じゅんいち「やっぱり海外に行くと、新しい指導法がありますよね。サッカーでも、ヨーロッパに行くと、『日本とは全然違うな』って……」
――じゅんいちさん、サッカーやってないですよね?(笑)
じゅんいち「と、いう話をよく聞くんです。選手から(笑)。だから、安藤君もこれから一気に伸びる。これはまさに……伸びしろですね! 正直、65mを目指すといってもどれくらいかは僕にわかりませんが、可能性を秘めていることは確かです。普段は好青年ですが、きっと試合の時は目つきが変わるんですよね。来年は試合でそういう姿を見るのを楽しみにしています」
――安藤選手はこれだけサポートしてもらったら辞められないですね!
安藤「もちろん、辞めたくないんです! パリ五輪という大きな目標に向かって、60m、65mと目指して頑張っていきます!」
じゅんいち「今はまだ僕のほうが一般的な知名度は高いと思うんです。それがパリ五輪に出ることで逆転して、僕のことを引っ張ってほしい。そんな思いがあります」

じゅんいちダビッドソン/芸人、YouTuber、社長。1975年2月4日生まれ。兵庫県尼崎市出身。1997年に芸能界デビュー。サッカーの本田圭佑のモノマネで人気を博し、2015年にR-1ぐらんぷりで優勝した。タレント活動に加え、趣味のキャンプ好きが高じてYouTube「ちゃんえるダビッドソン」を開設し、登録者数12万人を超える。特技はビリヤード。水球の経験を生かし、フィンスイミングマスターズで日本代表となり、ワールドカップマスターズで銀メダルを獲得した。
あんどう・ゆめ/1997年2月3日生まれ。東京都出身。東京高→東海大→さわかみ、今年11月から「みはる歯科・矯正医院」所属。円盤投では高校時代はインターハイで2位。大学2年時にU20世界選手権にも出場、4年時に日本インカレ優勝。1.75kg(U20規格)で58m80のU20日本記録を持つ。一般規格2.0kgのベストは56m40(2018年、学生歴代4位)。
文/向永拓史 写真/船越陽一郎
お笑い芸人のじゅんいちダビッドソンさんが都内で会見を開き、男子円盤投の安藤夢選手とスポンサー契約したことを発表。芸能人“個人”としてアスリートのスポンサーするのは異例中の異例だ。会見のあと、月刊陸上競技の単独取材で、改めてその経緯を聞いた。
(関連記事はこちら)
――そもそも、2人の交流はいつからですか?
じゅんいちダビッドソン
「年に何度かトークライブをやっているのですが、今年の2月のライブに、元々親交のあったX-TREME X(※安藤が所属するマネジメント会社)の前野宏明さんと一緒に安藤君が来てくれました」
安藤夢「元々、ファンでした! テレビ番組でちょっと風貌の怖い人たちのところに突撃する企画をやっていたのを覚えています」
じゅんいち「そこはR-1ぐらんぷりの決勝とかじゃないんかい!」
安藤「すごく印象に残っていたので! 前野さんとはアスナビ(就職支援)を活用した際に知り合ってマネジメントしていただいています」
じゅんいち「楽屋に来てくれて、前野さんに紹介されました。第一印象は“ゴッツいな”でしたね。このまんま、好青年でニコニコしていて、気が優しくて力持ちって感じ」
安藤「僕にとってはテレビの中の人だったので、こういう機会がないと会うことがなかった人。サポートしていただけで、身が引き締まります」
――そこからどうやってスポンサーに至ったんですか。
じゅんいち「前野さんとはサッカーの日本代表戦を観戦している時にスタンドで知り合ったんです。その前野さんから、『円盤投の選手で、スポンサー企業を探しているんです』と。で、しばらくしてから『胸スポンサーになりませんか? 個人で胸スポンサーになったら世界初ですよ』とうまいこと“営業”されました。“世界初”という言葉に弱いんです。こうして会見をして、本田圭佑さんぽいでしょ?」
会見に臨むじゅんいちダビッドソンさん。本田っぽい??
――その言葉が決め手?
じゅんいち「それもありますが、それだけじゃないです。もちろん、競技特性なども聞いて、自己記録が出る年齢が何歳くらいで、安藤君は20歳でどれくらい投げてって。やっぱり人柄が大きい。自分でコーチを探して米国に行ったのも聞いています。前野さんのことも前からよく知っていましたし、まったく知らない選手だったら(スポンサーに)なっていない。誰でもスポンサーになったわけじゃないですよ」
――ちなみに円盤投のことはご存知でしたか。
じゅんいち「僕は水球をやっていましたが、陸上競技をするのは苦手でした。投てきのイメージとしては僕らの世代ではやっぱりハンマー投の室伏広治さんの印象。この前、初めて円盤を触らせてもらいましたが、こんなものを50mも60mも投げるのか、と。どうやって投げるんだっけ?」
安藤「こうして指にかけて。フリスビーみたいに投げるとか思っている方もいますよね。そうして投げたら手首が壊れます」
じゅんいち「そもそも何で円盤投を始めたの?」
安藤「中学時代はテニス部をしながら砲丸投をやっていました。高校に入ってから、投てき選手としては線が細かったので先生から円盤投を勧められました」
円盤を手にし「こんなのを投げるなんてすごい」とじゅんいちダビッドソンさん
――スポンサー料について公開は難しいと思いますが、契約の形態としては?
じゅんいち「年間いくら、という感じで、パリ五輪まで契約しました」
安藤「今はコロナ禍で、練習場所の確保が難しいので助かります。円盤投は投げる場所がないと厳しく、大学も来年4月まで卒業生は入れません」
じゅんいち「僕は趣味のキャンプをするために山の購入を検討しているので、それが決まったら、円盤投げ放題プランを考えます」
――安藤選手は逆に芸能界への興味というか。
安藤「交友関係もそうですし、いろいろなコラボをしていけて、視野を広げて競技に生かしていければいいなと思っています」
じゅんいち「残念ながら僕はゴールデンのMCをやっているわけではないので、バーター(セット)でというわけにはいきませんが、YouTubeちゃんねる『ちゃんねるダビッドソン』で、何かしら円盤投と絡めてできるといいですね」
安藤はサポートを受けながら2024年のパリ五輪を目指していく
――今後、パリ五輪に向けて活動となります。どんな目標を掲げていますか。
安藤「まだ海外には行けませんが、もう一度、渡米して同じコーチに見てもらおうと思っています。新しい所属先は歯科医院で、トレーナーでもあり歯科医でもある関根陽平先生に、医学的な部分からも見てもらいながら競技力を高めていきたいです」
じゅんいち「やっぱり海外に行くと、新しい指導法がありますよね。サッカーでも、ヨーロッパに行くと、『日本とは全然違うな』って……」
――じゅんいちさん、サッカーやってないですよね?(笑)
じゅんいち「と、いう話をよく聞くんです。選手から(笑)。だから、安藤君もこれから一気に伸びる。これはまさに……伸びしろですね! 正直、65mを目指すといってもどれくらいかは僕にわかりませんが、可能性を秘めていることは確かです。普段は好青年ですが、きっと試合の時は目つきが変わるんですよね。来年は試合でそういう姿を見るのを楽しみにしています」
――安藤選手はこれだけサポートしてもらったら辞められないですね!
安藤「もちろん、辞めたくないんです! パリ五輪という大きな目標に向かって、60m、65mと目指して頑張っていきます!」
じゅんいち「今はまだ僕のほうが一般的な知名度は高いと思うんです。それがパリ五輪に出ることで逆転して、僕のことを引っ張ってほしい。そんな思いがあります」
じゅんいちダビッドソン/芸人、YouTuber、社長。1975年2月4日生まれ。兵庫県尼崎市出身。1997年に芸能界デビュー。サッカーの本田圭佑のモノマネで人気を博し、2015年にR-1ぐらんぷりで優勝した。タレント活動に加え、趣味のキャンプ好きが高じてYouTube「ちゃんえるダビッドソン」を開設し、登録者数12万人を超える。特技はビリヤード。水球の経験を生かし、フィンスイミングマスターズで日本代表となり、ワールドカップマスターズで銀メダルを獲得した。
あんどう・ゆめ/1997年2月3日生まれ。東京都出身。東京高→東海大→さわかみ、今年11月から「みはる歯科・矯正医院」所属。円盤投では高校時代はインターハイで2位。大学2年時にU20世界選手権にも出場、4年時に日本インカレ優勝。1.75kg(U20規格)で58m80のU20日本記録を持つ。一般規格2.0kgのベストは56m40(2018年、学生歴代4位)。
文/向永拓史 写真/船越陽一郎 RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
2025.12.17
U20世界選手権の日本代表選考要項を発表!U20世界8位以内など記録重視の選考に
-
2025.12.17
-
2025.12.17
-
2025.12.16
2025.12.14
【大会結果】第33回全国中学校駅伝女子(2025年12月14日)
2025.12.14
【大会結果】第33回全国中学校駅伝男子(2025年12月14日)
2025.12.14
中学駅伝日本一決定戦がいよいよ開催 女子11時10分、男子12時15分スタート/全中駅伝
-
2025.12.14
-
2025.12.14
2025.12.14
【大会結果】第33回全国中学校駅伝女子(2025年12月14日)
2025.12.14
【大会結果】第33回全国中学校駅伝男子(2025年12月14日)
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2023.04.01
-
2022.12.20
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2025.12.17
世界リレー日本代表要項を発表!北京世界選手権のメダル、出場目指して 世界競歩チーム選手権、世界ロードラニング選手権も
日本陸連は12月17日、ボツワナ・ハボローネで26年5月2日~3日に開催される世界リレーの日本代表選考要項を発表した。 2027年北京世界選手権の出場権獲得、および世界選手権でのメダル獲得のため、戦略的に選手団をは編成す […]
2025.12.17
U20世界選手権の日本代表選考要項を発表!U20世界8位以内など記録重視の選考に
日本陸連は12月17日、米国・オレゴンで8月5日~9日に開催されるU20世界選手権の日本代表選考要項を発表した。 世界で活躍できるU20カテゴリートップレベルの競技者を派遣し、金メダル獲得を目指す選手団を編成する方針。参 […]
2025.12.17
26年日本選手権の参加資格発表 参加標準と申込資格記録の2つを採用 アジア大会選考
日本陸連は12月17日、第106回理事会を開き、来年の第110回日本選手権の参加資格について発表した。 今回は「参加標準記録」と「申込資格」の2つの参加資格を設定し、参加標準記録は高く定められている。ターゲットナンバー( […]
2025.12.17
今年度限りでの「引退」を表明した村澤明伸インタビュー【後編】 〝ぬけぬけ病〟に苦しんだ実業団生活、来年度からはチームのコーチに就任
全国高校駅伝や箱根駅伝でヒーローになった村澤明伸(SGホールディングス、34歳)が今年度限りでの「引退」を表明した。実業団では故障に苦しみながら、マラソンにも挑戦。北海道マラソンで優勝して、MGCにも出場した。来年度から […]
Latest Issue
最新号
2026年1月号 (12月12日発売)
箱根駅伝観戦ガイド&全国高校駅伝総展望
大迫傑がマラソン日本新
箱根駅伝「5強」主将インタビュー
クイーンズ駅伝/福岡国際マラソン
〔新旧男子100m高校記録保持者〕桐生祥秀×清水空跳