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2024.12.16

100mH田中佑美シーズン振り返り パリ五輪「自分のペースで運べた」26歳の誕生日迎え「今まで通り」
100mH田中佑美シーズン振り返り パリ五輪「自分のペースで運べた」26歳の誕生日迎え「今まで通り」

オンラインで取材に応じた田中佑美(富士通)

女子100mハードルパリ五輪代表の田中佑美(富士通)が12月16日、オンラインで取材会を開き、今季の振り返りと来シーズンに向けた意気込みを語った。

五輪を本格的に狙った初めての経験に、「緊張を強いられるシーズンだった」と言う田中。パリ五輪に出場し、本番では敗者復活ラウンドを日本人でただ1人突破し、準決勝に進んだ。

当時のベスト(12秒85)にはわずか及ばずも、3本しっかり走りきり、12秒9前後をマーク。なにより、「初めての五輪でも自分のペースで試合を運べ、実力を出せたのは成功体験。国内の選考も厳しいので、よいふうに働くと思います」と振り返る。

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パリ五輪の準決勝で隣にいたポーランドの選手のリズム感やスピード感を脳裏に刻み、「追いつけるように、離されないように。そこで感じた技術差を詰めていきたい」と冬季練習に励んでいる。

強みでもある足首の強さを生かしたバネのある走りに加え、より全身で反力を得られるような技術の習得を意識。特に坂トレーニングを以前よりも多く取り入れ、「傾斜があるので、自分の思った(感覚)より速く接地する。地面をキャッチする時間が前で長く取れるので、そこで乗り込んでいきます。走るだけでなく、バウンディングなどもやっています」。

ハードルを跳ぶ回数はこの時期、それほど多くないが、「(ハードル間の)インターバルを8mから7.5mくらいに縮めて、より力感を強く、インターバルを踏みながら回していく感じ」で、よりキレ味鋭い走りを目指す。筋力がつきにくい体質だが、「少しずつ伸びしいます」。大事にしているのは「スプリント、ハードル、フィジカルをバランス良く」磨いていくこと。

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この時期は、「毎年、同じ不安を抱えています」とも。「今の練習でいいのか、もっとやったほうがいいのではないか、間違っているのではないか。そういう不安を抱えて冬季を過ごす。うまくいくかわからないというのが不安です」。

初めてのシニア国際大会となった23年ブダペスト世界選手権から、パリ五輪、そして来年の東京世界選手権と、国際大会が続くなか、「疲弊する」というのも本音だ。

そうしたなかで、モチベーションを保つのに重要なのがオフの取り方。9月でシーズンアウトしてから、2週間ほど休養し、「陸上のことは考えない」。1週間は「ほとんど家から出ませんでした」。以前は冬季練習が始まると友人との外出もほとんどなかったそうだが、昨年の冬季からトレーニング期でもほどよく外出や旅行の予定を入れ、「リフレッシュして練習に向かえる」と、オンとオフの切り替えがうまくいっているようだ。

来年の東京世界選手権は参加標準記録は12秒73。パリ五輪の12秒77からさらに上がっている。9月の全日本実業団対抗で出した田中のベストは12秒83で、あと0.1秒を埋めなければならない。「参加標準記録が12秒6台になるかもしれないと思っていたので、12秒7台で良かった」。

ただ、簡単な数字でないことは十分理解しており、「12秒7台は一つの目標ですが、まずはパリの参加標準記録(12秒77)くらいを目安にしたい。記録は出せる時に出せるだけ出したいですが、ポイントをしっかり獲得していきたい」。ワールドランキングでの出場資格獲得もこれまで通り計画的に進めていく。来年5月のアジア選手権(韓国)も重要になり、そこに向けてインドアシーズンから試合に出場していく構えだ。

取材前日の15日に26歳の誕生日を迎えた田中。「ハードルは先輩方が強いので、いつまでも若手だと思っていましたが、中堅どころになってきました」と笑う。

実際、同学年の選手から「引退」の言葉が出ることも増えてきたそうで、4年後のロス五輪に向けても「いつ引退するのかな、とよぎることもある、現時点ではわかりません」とも。

ただ、「シーズンが終わって、次こういうことしたいな、というのがあるから頑張っていけます。『強くなれる気がする』と思えれば、続けていける」とし、今後も1年ずつ、「課題に向き合っていくのが自分のスタイル。今まで通り、自分にできることを頑張ります」と変わらず進んでいく。

女子100mハードルパリ五輪代表の田中佑美(富士通)が12月16日、オンラインで取材会を開き、今季の振り返りと来シーズンに向けた意気込みを語った。 五輪を本格的に狙った初めての経験に、「緊張を強いられるシーズンだった」と言う田中。パリ五輪に出場し、本番では敗者復活ラウンドを日本人でただ1人突破し、準決勝に進んだ。 当時のベスト(12秒85)にはわずか及ばずも、3本しっかり走りきり、12秒9前後をマーク。なにより、「初めての五輪でも自分のペースで試合を運べ、実力を出せたのは成功体験。国内の選考も厳しいので、よいふうに働くと思います」と振り返る。 パリ五輪の準決勝で隣にいたポーランドの選手のリズム感やスピード感を脳裏に刻み、「追いつけるように、離されないように。そこで感じた技術差を詰めていきたい」と冬季練習に励んでいる。 強みでもある足首の強さを生かしたバネのある走りに加え、より全身で反力を得られるような技術の習得を意識。特に坂トレーニングを以前よりも多く取り入れ、「傾斜があるので、自分の思った(感覚)より速く接地する。地面をキャッチする時間が前で長く取れるので、そこで乗り込んでいきます。走るだけでなく、バウンディングなどもやっています」。 ハードルを跳ぶ回数はこの時期、それほど多くないが、「(ハードル間の)インターバルを8mから7.5mくらいに縮めて、より力感を強く、インターバルを踏みながら回していく感じ」で、よりキレ味鋭い走りを目指す。筋力がつきにくい体質だが、「少しずつ伸びしいます」。大事にしているのは「スプリント、ハードル、フィジカルをバランス良く」磨いていくこと。 この時期は、「毎年、同じ不安を抱えています」とも。「今の練習でいいのか、もっとやったほうがいいのではないか、間違っているのではないか。そういう不安を抱えて冬季を過ごす。うまくいくかわからないというのが不安です」。 初めてのシニア国際大会となった23年ブダペスト世界選手権から、パリ五輪、そして来年の東京世界選手権と、国際大会が続くなか、「疲弊する」というのも本音だ。 そうしたなかで、モチベーションを保つのに重要なのがオフの取り方。9月でシーズンアウトしてから、2週間ほど休養し、「陸上のことは考えない」。1週間は「ほとんど家から出ませんでした」。以前は冬季練習が始まると友人との外出もほとんどなかったそうだが、昨年の冬季からトレーニング期でもほどよく外出や旅行の予定を入れ、「リフレッシュして練習に向かえる」と、オンとオフの切り替えがうまくいっているようだ。 来年の東京世界選手権は参加標準記録は12秒73。パリ五輪の12秒77からさらに上がっている。9月の全日本実業団対抗で出した田中のベストは12秒83で、あと0.1秒を埋めなければならない。「参加標準記録が12秒6台になるかもしれないと思っていたので、12秒7台で良かった」。 ただ、簡単な数字でないことは十分理解しており、「12秒7台は一つの目標ですが、まずはパリの参加標準記録(12秒77)くらいを目安にしたい。記録は出せる時に出せるだけ出したいですが、ポイントをしっかり獲得していきたい」。ワールドランキングでの出場資格獲得もこれまで通り計画的に進めていく。来年5月のアジア選手権(韓国)も重要になり、そこに向けてインドアシーズンから試合に出場していく構えだ。 取材前日の15日に26歳の誕生日を迎えた田中。「ハードルは先輩方が強いので、いつまでも若手だと思っていましたが、中堅どころになってきました」と笑う。 実際、同学年の選手から「引退」の言葉が出ることも増えてきたそうで、4年後のロス五輪に向けても「いつ引退するのかな、とよぎることもある、現時点ではわかりません」とも。 ただ、「シーズンが終わって、次こういうことしたいな、というのがあるから頑張っていけます。『強くなれる気がする』と思えれば、続けていける」とし、今後も1年ずつ、「課題に向き合っていくのが自分のスタイル。今まで通り、自分にできることを頑張ります」と変わらず進んでいく。

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