HOME 国内

2024.12.11

「速い選手」「強い選手」「勢いのある選手」の選考を!ロス五輪に向けマラソン代表選考方針示す
「速い選手」「強い選手」「勢いのある選手」の選考を!ロス五輪に向けマラソン代表選考方針示す

日本陸連の高岡寿成シニアディレクター

日本陸連は12月11日、2028年ロサンゼルス五輪のマラソン代表選考の選考方針を明らかにした。

選考競技会としては、2021年東京、24年パリ五輪に向けてと同様に、代表選考レース「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)」、その出場権を懸けた「MGCシリーズ」が採用されることになった。

その採用の経緯について、日本陸連の田﨑博道専務理事は「選考の透明性確保、選手のモチベーション、パフォーマンスレベルの向上に寄与できたのではないか」と高く評価したうえで、「マラソン界のスピードアップは加速の一途。より高いレベルで勝負できる競技力が必要となる」と課題も口にした。

日本陸連強化委員会の高岡寿成シニアディレクターは、MGCシステムを採用した東京、パリと2大会連続で男女ともに入賞者を出している。田﨑専務と同様にそれを評価しつつ、「メダル獲得、さらには複数の入賞を目指したい」とさらなる上を見据える。そこで示された選考方針が次のとおり。

①メダルを狙える記録を持った選手(速い)
②再現性・調整の力ある選手(強い)
③最も勢いのある選手(勢い)

この3つを、MGCおよびMGCシリーズの中で選手たちに求めていくのが、今回の選考方式となる。

広告の下にコンテンツが続きます

まず、過去2回にはなかった部分が「速さ」。ここで新たに組み込まれたのが「MGCファストパス」だ。

男子が「2時間3分59秒」、女子が「2時間16分59秒」と、いずれも日本記録男子(2時間4分56秒、女子2時間18分59秒)を大幅に上回る記録が設定された。

その基準は、至近4つの世界大会のメダリストの自己ベスト、および過去4年の世界リスト(1ヵ国3名)の8位までを平均したタイム、さらにメダル獲得国の状況から割り出したもので、そこから「現実的に選手やコーチが一緒に目指せるところで線を引くことが大切」(高岡ディレクター)との観点から定められた。

MGCシリーズ内でこの記録をクリアした最速選手1名が、2027年3月で代表内定を得る。ただし、ロス五輪参加標準記録を突破していることが条件となる。

近年の五輪マラソン選考は「速い選手」よりも「強い選手」を求められ、その流れでMGCが作られた。しかし、加速度的に進む世界の高速化に対応するため、そして「マラソン界の新たな挑戦をしたい」という思いから生まれた。

そこには「この記録に、多くの選手、指導者が本気で目指してくれれば、日本のマラソンのレベルは必ず上がる」という強化サイドの思いがあり、「それを達成してくれることを期待するが、達成できなくても悲観せず、次の世代の目線を上げることにつながる仕組みになっている」と高岡ディレクターは話す。

「強さ」については、MGCで求めていく。2025年3月の名古屋ウィメンズ以降からスタートするMGCシリーズを経て出場権を勝ち取った選手が2027年秋(予定)に集い、ファストパス設定記録突破者が出た場合は1位、出なかった場合は上位2名が代表に内定する。

そして「勢い」については、MGC後のファイナルチャレンジで求めていく。これまで、ファイナルチャレンジで代表選考の対象となる選手はMGC出場者、MGCシリーズに出た選手などマラソン経験のある選手だったが、今回は初マラソンの選手も対象になる。

そのぶん、ファイナルチャレンジで代表内定への目安となる「ファイナルチャレンジ設定記録」は「その1回で誰もが納得できるような高い記録を設定することを考えている」と高岡ディレクター。その高いハードルをクリアした選手の勢いが、「我々が目標とするところに到達できる」ことにつながるとした。

なお、ファストパス記録、ファイナルチャレンジ設定記録の突破者がいなかった場合は、MGCの3位までが代表に内定することになる。

「速さ」「強さ」「勢い」。三者三様の代表が出そろったとき、日本のマラソンが世界と伍して戦ったかつての時代が復活するかもしれない。

日本陸連は12月11日、2028年ロサンゼルス五輪のマラソン代表選考の選考方針を明らかにした。 選考競技会としては、2021年東京、24年パリ五輪に向けてと同様に、代表選考レース「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)」、その出場権を懸けた「MGCシリーズ」が採用されることになった。 その採用の経緯について、日本陸連の田﨑博道専務理事は「選考の透明性確保、選手のモチベーション、パフォーマンスレベルの向上に寄与できたのではないか」と高く評価したうえで、「マラソン界のスピードアップは加速の一途。より高いレベルで勝負できる競技力が必要となる」と課題も口にした。 日本陸連強化委員会の高岡寿成シニアディレクターは、MGCシステムを採用した東京、パリと2大会連続で男女ともに入賞者を出している。田﨑専務と同様にそれを評価しつつ、「メダル獲得、さらには複数の入賞を目指したい」とさらなる上を見据える。そこで示された選考方針が次のとおり。 ①メダルを狙える記録を持った選手(速い) ②再現性・調整の力ある選手(強い) ③最も勢いのある選手(勢い) この3つを、MGCおよびMGCシリーズの中で選手たちに求めていくのが、今回の選考方式となる。 まず、過去2回にはなかった部分が「速さ」。ここで新たに組み込まれたのが「MGCファストパス」だ。 男子が「2時間3分59秒」、女子が「2時間16分59秒」と、いずれも日本記録男子(2時間4分56秒、女子2時間18分59秒)を大幅に上回る記録が設定された。 その基準は、至近4つの世界大会のメダリストの自己ベスト、および過去4年の世界リスト(1ヵ国3名)の8位までを平均したタイム、さらにメダル獲得国の状況から割り出したもので、そこから「現実的に選手やコーチが一緒に目指せるところで線を引くことが大切」(高岡ディレクター)との観点から定められた。 MGCシリーズ内でこの記録をクリアした最速選手1名が、2027年3月で代表内定を得る。ただし、ロス五輪参加標準記録を突破していることが条件となる。 近年の五輪マラソン選考は「速い選手」よりも「強い選手」を求められ、その流れでMGCが作られた。しかし、加速度的に進む世界の高速化に対応するため、そして「マラソン界の新たな挑戦をしたい」という思いから生まれた。 そこには「この記録に、多くの選手、指導者が本気で目指してくれれば、日本のマラソンのレベルは必ず上がる」という強化サイドの思いがあり、「それを達成してくれることを期待するが、達成できなくても悲観せず、次の世代の目線を上げることにつながる仕組みになっている」と高岡ディレクターは話す。 「強さ」については、MGCで求めていく。2025年3月の名古屋ウィメンズ以降からスタートするMGCシリーズを経て出場権を勝ち取った選手が2027年秋(予定)に集い、ファストパス設定記録突破者が出た場合は1位、出なかった場合は上位2名が代表に内定する。 そして「勢い」については、MGC後のファイナルチャレンジで求めていく。これまで、ファイナルチャレンジで代表選考の対象となる選手はMGC出場者、MGCシリーズに出た選手などマラソン経験のある選手だったが、今回は初マラソンの選手も対象になる。 そのぶん、ファイナルチャレンジで代表内定への目安となる「ファイナルチャレンジ設定記録」は「その1回で誰もが納得できるような高い記録を設定することを考えている」と高岡ディレクター。その高いハードルをクリアした選手の勢いが、「我々が目標とするところに到達できる」ことにつながるとした。 なお、ファストパス記録、ファイナルチャレンジ設定記録の突破者がいなかった場合は、MGCの3位までが代表に内定することになる。 「速さ」「強さ」「勢い」。三者三様の代表が出そろったとき、日本のマラソンが世界と伍して戦ったかつての時代が復活するかもしれない。

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.07.11

【世界陸上プレイバック】―11年テグ―ボルト100mでまさかのフライング失格 室伏広治が大会最年長金メダルの偉業

今年9月、陸上の世界選手権(世界陸上)が34年ぶりに東京・国立競技場で開催される。今回で20回目の節目を迎える世界陸上。日本で開催されるのは1991年の東京、2007年の大阪を含めて3回目で、これは同一国で最多だ。 これ […]

NEWS U16リレー大会の競技時間を再度変更 猛暑予想のため 日本選手権リレーも変更の可能性

2025.07.11

U16リレー大会の競技時間を再度変更 猛暑予想のため 日本選手権リレーも変更の可能性

日本陸連は、7月12、13日に岐阜県で開くU16リレー大会について、競技時間の変更を決めた。 暑熱環境下での競技について日本スポーツ協会の「スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック」に基づいた運営の取り組みを日本陸連。熱中 […]

NEWS 編集部コラム「これが“近畿”」

2025.07.11

編集部コラム「これが“近畿”」

攻め(?)のアンダーハンド リレーコラム?? 毎週金曜日(できる限り!)、月刊陸上競技の編集部員がコラムをアップ! 陸上界への熱い想い、日頃抱いている独り言、取材の裏話、どーでもいいことetc…。 編集スタッフが週替りで […]

NEWS 日本長距離界のホープも絶賛! アシックスのレーシングシューズ「METASPEED」がさらに進化

2025.07.11

日本長距離界のホープも絶賛! アシックスのレーシングシューズ「METASPEED」がさらに進化

アシックスは7月11日、トップアスリート向けの新レーシングシューズ「METASPEED」シリーズの最新作「METASPEED SKY TOKYO」、「METASPEED EDGE TOKYO」、「METASPEED RA […]

NEWS アディダスから爆発的なスピードを生み出すことを目指したスパイク最新モデル「ADIZERO PRIME SP 4」が登場!

2025.07.11

アディダスから爆発的なスピードを生み出すことを目指したスパイク最新モデル「ADIZERO PRIME SP 4」が登場!

アディダス ジャパンは、1秒でも速いベストタイムを目指して走るランナーのためのランニングシリーズ「アディゼロ」より、100mなど短距離のレースで最速のパフォーマンスを発揮することを目指した、陸上用スパイク「ADIZERO […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2025年7月号 (6月13日発売)

2025年7月号 (6月13日発売)

詳報!アジア選手権
日本インカレ
IH都府県大会

page top