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2024.10.28

「一意専心」立命大が9年ぶり女王の座奪還「キャプテン・村松灯に優勝旗を」結実/全日本大学女子駅伝
「一意専心」立命大が9年ぶり女王の座奪還「キャプテン・村松灯に優勝旗を」結実/全日本大学女子駅伝

24年全日本大学女子駅伝を制した立命大の3区・村松灯(左)と4区・池田悠音

◇第42回全日本大学女子駅伝(10月27日/宮城・弘進ゴムアスリートパーク仙台発着・6区間38.0km)

第42回全日本大学女子駅伝が行われ、女王・名城大の8連覇を阻んだのは、最多10度の優勝回数を誇る関西の名門だった。立命大が2時間3分03秒の大会新記録で、2015年以来となる9年ぶり11回目の頂点に立った。

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「これまでチームを引っ張ってくれた4回生、そして、キャプテンの村松灯さん(4年)にどうしても優勝旗を持ってもらいたいという強い気持ちで、最後の最後まで駆け抜けることができました」

4区を区間3位と力走した池田悠音(1年)の言葉が、今年度の立命大を象徴している。チームスローガンは『一意専心』。4年生を中心に、まさにチーム一丸でタスキをつないだ。

大東大との激しい2位争いで同タイムながら3位に終わった前回、村松灯、太田咲雪(2年)、中地こころ(4年)がそれぞれ1区、2区、4区で区間賞に輝いた。今回はその3人を3区、1区、5区に配置。区間エントリーの戦略もピタリとはまった。

太田は「各校のエース級が1区にそろい、不安がなかったと言えないぐらい緊張しました」と言いながら、終始、先頭集団でレースを進める。トップの大東大・野田真理耶(2年)との区間賞争いは後れを取ったが、2秒差の2位で役割を果たした。

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2区に入った山本釉未(1年)は、走り始めてすぐに大東大を逆転し、その差を徐々に広げた。ルーキーであることを感じさせない堂々たる走りっぷりで、太田が前回マークした区間記録を14秒塗り替え、20秒のアドバンテージを作った。

下級生の奮闘に村松灯も燃えないはずがない。「後輩が私についてきてくれたお陰で、ここまでやってこられた」と感謝の気持ちを胸に、最後の杜の都を疾走した。山本に続く連続区間新で、2位に順位を上げてきた城西大に1分04秒差をつけた。

杉村憲一監督はレース後、「前半からガンガンいって、攻めと粘りの立命館らしい駅伝ができた」と語ったが、〝粘り〟の部分を披露したのが後半区間を担った3人だった。

4区、5区で連続区間賞を獲得した大東大に追い上げられたものの、池田が粘り、中地が粘り、アンカーの土屋舞琴(3年)が粘った。なかでも中地が大東大のエース、サラ・ワンジル(2年)の猛追を振り切り、首位を明け渡さなかったのが大きい。「チームが稼いできてくれた差を絶対に守って、土屋に渡す」という思いは、最上級生としての意地でもあった。

背後には19秒差で大東大が追走しており、立命大は決して安全圏にいたわけではない。しかし、全日本初出場の土屋は「冷静に落ち着いてレースを進めることができました」と前だけを見ていた。区間賞の快走で逆にリードを広げ、歓喜のフィニッシュ。立命大にとって、待ちに待った瞬間だった。

昨年6月からキャプテンを務める村松灯にとって、チーム強化という点で、この1年はうまくいかないことのほうが多かったかもしれない。ただ、「優勝はそう簡単にはいかない」ことは十分に理解していたという。

「チームが思うようにいかない時でも、それは私たちに必要な試練というか、これを乗り越えなかったら日本一にはなれないという気持ちで、全員が前を向いて、駅伝当日の今日が終わった時に『あれがあったから優勝できたんだ』と言えるような日々を過ごそうとやってきました。苦しい状況になっても、誰1人あきらめることなく優勝を目指し続けてきたからこそ、目標を達成できたと思っています」

どんなに暗く長い闇が続いたとしても、開けない夜はない。村松灯や4年生を中心に、チームが一つになった立命大が、そのことを証明して見せた。

文/小野哲史

◇第42回全日本大学女子駅伝(10月27日/宮城・弘進ゴムアスリートパーク仙台発着・6区間38.0km) 第42回全日本大学女子駅伝が行われ、女王・名城大の8連覇を阻んだのは、最多10度の優勝回数を誇る関西の名門だった。立命大が2時間3分03秒の大会新記録で、2015年以来となる9年ぶり11回目の頂点に立った。 「これまでチームを引っ張ってくれた4回生、そして、キャプテンの村松灯さん(4年)にどうしても優勝旗を持ってもらいたいという強い気持ちで、最後の最後まで駆け抜けることができました」 4区を区間3位と力走した池田悠音(1年)の言葉が、今年度の立命大を象徴している。チームスローガンは『一意専心』。4年生を中心に、まさにチーム一丸でタスキをつないだ。 大東大との激しい2位争いで同タイムながら3位に終わった前回、村松灯、太田咲雪(2年)、中地こころ(4年)がそれぞれ1区、2区、4区で区間賞に輝いた。今回はその3人を3区、1区、5区に配置。区間エントリーの戦略もピタリとはまった。 太田は「各校のエース級が1区にそろい、不安がなかったと言えないぐらい緊張しました」と言いながら、終始、先頭集団でレースを進める。トップの大東大・野田真理耶(2年)との区間賞争いは後れを取ったが、2秒差の2位で役割を果たした。 2区に入った山本釉未(1年)は、走り始めてすぐに大東大を逆転し、その差を徐々に広げた。ルーキーであることを感じさせない堂々たる走りっぷりで、太田が前回マークした区間記録を14秒塗り替え、20秒のアドバンテージを作った。 下級生の奮闘に村松灯も燃えないはずがない。「後輩が私についてきてくれたお陰で、ここまでやってこられた」と感謝の気持ちを胸に、最後の杜の都を疾走した。山本に続く連続区間新で、2位に順位を上げてきた城西大に1分04秒差をつけた。 杉村憲一監督はレース後、「前半からガンガンいって、攻めと粘りの立命館らしい駅伝ができた」と語ったが、〝粘り〟の部分を披露したのが後半区間を担った3人だった。 4区、5区で連続区間賞を獲得した大東大に追い上げられたものの、池田が粘り、中地が粘り、アンカーの土屋舞琴(3年)が粘った。なかでも中地が大東大のエース、サラ・ワンジル(2年)の猛追を振り切り、首位を明け渡さなかったのが大きい。「チームが稼いできてくれた差を絶対に守って、土屋に渡す」という思いは、最上級生としての意地でもあった。 背後には19秒差で大東大が追走しており、立命大は決して安全圏にいたわけではない。しかし、全日本初出場の土屋は「冷静に落ち着いてレースを進めることができました」と前だけを見ていた。区間賞の快走で逆にリードを広げ、歓喜のフィニッシュ。立命大にとって、待ちに待った瞬間だった。 昨年6月からキャプテンを務める村松灯にとって、チーム強化という点で、この1年はうまくいかないことのほうが多かったかもしれない。ただ、「優勝はそう簡単にはいかない」ことは十分に理解していたという。 「チームが思うようにいかない時でも、それは私たちに必要な試練というか、これを乗り越えなかったら日本一にはなれないという気持ちで、全員が前を向いて、駅伝当日の今日が終わった時に『あれがあったから優勝できたんだ』と言えるような日々を過ごそうとやってきました。苦しい状況になっても、誰1人あきらめることなく優勝を目指し続けてきたからこそ、目標を達成できたと思っています」 どんなに暗く長い闇が続いたとしても、開けない夜はない。村松灯や4年生を中心に、チームが一つになった立命大が、そのことを証明して見せた。 文/小野哲史

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