8月1日~11日の日程で開催されているパリ五輪の陸上競技。その男子200m決勝が行われ、レツィレ・テボゴ(ボツワナ)が世界歴代5位、アフリカ新記録の19秒46(+0.4)で優勝した。日本勢は鵜澤飛羽(筑波大)がただ1人準決勝に進出。予選で五輪日本人最高タイムの20秒33(+0.1)をマークするなど奮闘した。上山紘輝(住友電工)、陸上最多タイとなる4大会連続出場の飯塚翔太(ミズノ)はいずれも予選で敗退し、敗者復活でも準決勝に進めなかった。2008年北京五輪男子4×100mリレー銀メダリストの高平慎士さん(富士通一般種目ブロック長)に、レースを振り返ったもらった。
◇ ◇ ◇
鵜澤飛羽選手は、初出場の五輪で予選からしっかり走る姿を見て、すごいなと感じました。第一人者のノア・ライルズ選手(米国)らがいるメンバーの中で、末續慎吾さんが東海大2年だった2000年シドニー五輪2次予選で出した20秒37を上回る五輪日本人最高タイム。彼にとって、大きな経験になったのではないでしょうか。
鵜澤選手のレーススタイルとしては前半は抑え気味に入り、得意の後半で一気に突き抜けるというもの。今回は、その後半につなげられる流れを作りつつ前半から行けていたと感じます。
ただ、それでも準決勝では厳しい戦いになりました。前半からついていかないといいけないし、それでも後半を上げないといけない。世界の200mは今、そういう流れです。優勝したレツィレ・テボゴ選手は、これまで決して前半が速いタイプではありませんでした。しかし、決勝はトップで直線に入り、そのまま後半で他を圧倒しています。
そういう意味で、鵜澤選手の課題はやはり前半で、トップスピードを上げること、そのためにフィジカルを上げることが求められるでしょう。五輪の2本で、感覚的な課題を得られたと思います。それは非常に大きなものになるはずなので、ぜひ今後に生かしていってほしいです。
上山紘輝選手、飯塚翔太選手は、予選、敗者復活戦ともに、持ち味を発揮できませんでした。
上山選手は自分の持っている感覚と、実際に走った時の感覚に開きがあったように感じました。本来の前半を“滑る”ように入り、後半しっかり上げていく持ち味が出し切れなかった。頑張らなくていいところで、頑張らざるを得ない状況になり、後半が上がり切りませんでした。
飯塚選手の4大会連続出場は本当に素晴らしいこと。ただ、いずれも準決勝に進めませんでした。本来の“飯塚翔太”の走りを見たかったですし、代表として来ているからには状態がどうあれ結果を残してほしかったという思いがあります。
また、連続出場の裏返しとしては、飯塚選手に代わる選手がいなかったということ。日本の200mにとっては課題と言えるでしょう。
前述したように、テボゴ選手の走りは圧倒的でした。新型コロナウイルス陽性の状態だったライルズ選手が万全でも、簡単に勝てる相手ではなかったでしょう。ウサイン・ボルトさん、米国勢が中心だったスプリントの時代が、大きく動いたと感じています。
2大会連続銀メダルのケネス・ベドナレク選手(米国)、万全でなくとも銅メダルを確保したライルズ選手は、さすがの一言。上位3選手は100mの入りが特別速いわけではなく、100mのスピードを維持できるタイプです。それでも19秒台半ばを出せるということは、日本人選手だって19秒台は現実的な目標にできます。追いかける存在としては申し分ないのではないでしょうか。
テボゴ選手、ベドナレク選手、ライルズ選手はいずれも100mも兼ねています。それを、日本人選手も見習うべきかどうかは、難しいところです。1種目で通用していない現時点では、複数種目へのチャレンジよりも、種目を絞ってその種目で結果を残すことに集中する選択があってもいいのでは、と感じます。
◎高平慎士(たかひら・しんじ)
富士通陸上競技部一般種目ブロック長。五輪に3大会連続(2004年アテネ、08年北京、12年ロンドン)で出場し、北京大会では4×100mリレーで銀メダルに輝いた(3走)。自己ベストは100m10秒20、200m20秒22(日本歴代7位)
RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
Latest articles 最新の記事
2026.07.14
ALTRAからロードランニングモデルTORINの最新作「TORIN 9」が7月17日より発売!
フットウェアブランド「ALTRA(アルトラ) 」は7月14日、ウルトラマラソンから日々のジョギングまで幅広いシーンでランナーを支える、ロードランニングモデルTORINの最新作「TORIN 9(トーリン9) 」を7月17日 […]
2026.07.13
DLロンドン女子3000mに田中希実がエントリー! 男子4×100mリレーには日本チームが出場予定
世界最高峰シリーズのダイヤモンドリーグ(DL)第11戦ロンドン大会のエントリーリストが、7月13日に発表された。 個人では女子3000mに田中希実(豊田自動織機)がただ1人エントリー。今季の田中はDLに2戦出場し、17日 […]
2026.07.13
月刊陸上競技2026年8月号
Contents 別冊付録 滋賀インターハイ 完全ガイド Road to NAGOYA 名古屋アジア大会代表決定 過去最多の総勢86名 後藤大樹、48秒09の衝撃。 To the top 2026 後藤大樹(洛南高2京都 […]
2026.07.13
七種競技スウェク・シューベルトが追い風参考の6449点で優勝 十種競技はソトが自己新V/WA混成ツアー
世界陸連(WA)混成ツアー・ゴールドのヴィエスワフ・チャピエフスキ記念が7月11日と12日の両日、ポーランドのナクウォ・ナト・ノテチョンで開催され、女子七種競技はA.スウェク・シューベルト(ポーランド)が追い風参考の64 […]
2026.07.13
マクローリン・レヴロニ第一子出産! 家族3ショット公開「どんな未来を用意しているのか楽しみ」
女子400mハードル世界記録保持者のシドニー・マクローリン・レブロニ(米国)が7月13日、自身のSNSで第一子女児の誕生を報告した。 「妊娠中の多くのサポートに感謝。神が我々の小さな娘にどんな未来を用意しているのか楽しみ […]
Latest Issue
最新号
2026年8月号 (7月14日発売)
別冊付録 IH観戦ガイド
アジア大会代表一覧