2025.12.24
出雲の快走が飛躍のきっかけ
國學院大OBで、現在も同大を練習の拠点としている平林清澄(ロジスティード)がその実力を認め、「ほぼ外国人(選手)」と称するのが、野中恒亨(3年)だ。今季の駅伝シーズンを迎えてからの野中は圧巻のパフォーマンスを続けている。
出雲駅伝では留学生が多く起用された3区に登場した。10000m26分台を持ち、パリ五輪や東京世界選手権に米国代表として出場したアイビーリーグ選抜のグラハム・ブランクスもこの区間に起用され、出雲の3区はインターナショナル区間と化していた。
「今年の夏までは『勝ちたい』とか『結果を出したい』という気持ちがありました。しかし、出雲で留学生と戦う時に、『勝ちたいな』とか『勝たなきゃ』って思ってしまうと萎縮してしまうと思ったので、『負けてもいいや』ぐらいに思うようにしました。そのお陰で重圧はなかった。こう考えられるようになったのは、今年の大きい成長の1つだと思います」
必要以上に気負うことなくレースに臨んだことが功を奏したのだろう。野中は留学生と互角に渡り合って区間2位と好走し、5位から2位に押し上げた。なお、ブランクスには並走の後に終盤に突き放し、勝利している。
そして、野中の快走で勢いづいたチームは、4区で先頭に立ち、連覇を果たした。「自分の力がついていて、思ったよりも留学生との差がなかった。留学生にも勝てるのかなって思いました。そこでスイッチが入ったと思います」。野中にとっても、出雲の快走は飛躍のきっかけになった。
全日本は志願した3区。ここでも留学生との対決になった。並走する場面もあった創価大のスティーブン・ムチーニ(3年)を突き放し、出雲で敗れた城西大のヴィクター・キムタイ(4年)の記録も1秒上回り、区間賞を獲得した。
チームは2区を終えて7位と出遅れていたが、野中の快走で2位まで押し上げ、再び優勝争いに加わった。チームは4位に敗れたものの、野中は出雲に続き、見事なゲームチェンジャーぶりを見せた。
そして、11月23日の八王子ロングディスタンスでは、先輩の平林とハイペースを刻み、日本人学生歴代6位となる27分36秒64をマーク。平林が持っていた國學院大記録をも大幅に塗り替えた。同日のMARCH対抗戦でも好記録が続出したが、今季の日本人学生最高はこの時の野中のタイムだ。今や学生トップクラスのランナーと言っていい。
「練習から27分50秒は切るかなと私は見ていたんですが、条件とか設定とか平林とか、いろいろと良い要素も加わって(27分36秒まで)いけた。本人も『まだまだ行ける』っという手応えがあった。それが私は一番大事だと思っています」。前田康弘監督も野中のパフォーマンスをそう高く評価する。
「彼の個人の経験値として、箱根で収まるランナーになってほしくない。日本代表となり、世界を見てほしい」と大きな期待を寄せている。
野中は中学から本格的に陸上を始めた。「たぶん一番才能があるなと思ったのが陸上で、長距離でした」というのが選択した理由だ。静岡・浜松工高に進んだのは「家から1kmと近いから」だったが、そこでめきめきと力をつけていった。
「うまくいかなかった部分もありましたけど、好きなようにやったので、楽しかったです」と高校3年間を振り返る。
そして、野中は1年ごとに目標を立てて、一段ずつ着実にステップを上がってきた。「高校生の時は5000mで1年目14分台、2年14分20秒、3年目で13分台が見えるところというふうにイメージしていました」と話す。
その言葉通りに、高校1年目から14分30秒台をマークし、その才能の片鱗を見せた。そして、その走りが前田監督の目にも止まった。
全日本大学駅伝3区では留学生を抑えて区間賞に輝いた國學院大・野中恒亨[/caption]
新春の風物詩・第102回箱根駅伝に挑む選手やチームを取り上げる「箱根駅伝Stories」。学生三大駅伝最終決戦に向かうそれぞれの歩みや思いを紹介する。出雲の快走が飛躍のきっかけ
國學院大OBで、現在も同大を練習の拠点としている平林清澄(ロジスティード)がその実力を認め、「ほぼ外国人(選手)」と称するのが、野中恒亨(3年)だ。今季の駅伝シーズンを迎えてからの野中は圧巻のパフォーマンスを続けている。出雲駅伝では留学生が多く起用された3区に登場した。10000m26分台を持ち、パリ五輪や東京世界選手権に米国代表として出場したアイビーリーグ選抜のグラハム・ブランクスもこの区間に起用され、出雲の3区はインターナショナル区間と化していた。「今年の夏までは『勝ちたい』とか『結果を出したい』という気持ちがありました。しかし、出雲で留学生と戦う時に、『勝ちたいな』とか『勝たなきゃ』って思ってしまうと萎縮してしまうと思ったので、『負けてもいいや』ぐらいに思うようにしました。そのお陰で重圧はなかった。こう考えられるようになったのは、今年の大きい成長の1つだと思います」必要以上に気負うことなくレースに臨んだことが功を奏したのだろう。野中は留学生と互角に渡り合って区間2位と好走し、5位から2位に押し上げた。なお、ブランクスには並走の後に終盤に突き放し、勝利している。そして、野中の快走で勢いづいたチームは、4区で先頭に立ち、連覇を果たした。「自分の力がついていて、思ったよりも留学生との差がなかった。留学生にも勝てるのかなって思いました。そこでスイッチが入ったと思います」。野中にとっても、出雲の快走は飛躍のきっかけになった。全日本は志願した3区。ここでも留学生との対決になった。並走する場面もあった創価大のスティーブン・ムチーニ(3年)を突き放し、出雲で敗れた城西大のヴィクター・キムタイ(4年)の記録も1秒上回り、区間賞を獲得した。チームは2区を終えて7位と出遅れていたが、野中の快走で2位まで押し上げ、再び優勝争いに加わった。チームは4位に敗れたものの、野中は出雲に続き、見事なゲームチェンジャーぶりを見せた。そして、11月23日の八王子ロングディスタンスでは、先輩の平林とハイペースを刻み、日本人学生歴代6位となる27分36秒64をマーク。平林が持っていた國學院大記録をも大幅に塗り替えた。同日のMARCH対抗戦でも好記録が続出したが、今季の日本人学生最高はこの時の野中のタイムだ。今や学生トップクラスのランナーと言っていい。「練習から27分50秒は切るかなと私は見ていたんですが、条件とか設定とか平林とか、いろいろと良い要素も加わって(27分36秒まで)いけた。本人も『まだまだ行ける』っという手応えがあった。それが私は一番大事だと思っています」。前田康弘監督も野中のパフォーマンスをそう高く評価する。「彼の個人の経験値として、箱根で収まるランナーになってほしくない。日本代表となり、世界を見てほしい」と大きな期待を寄せている。野中は中学から本格的に陸上を始めた。「たぶん一番才能があるなと思ったのが陸上で、長距離でした」というのが選択した理由だ。静岡・浜松工高に進んだのは「家から1kmと近いから」だったが、そこでめきめきと力をつけていった。「うまくいかなかった部分もありましたけど、好きなようにやったので、楽しかったです」と高校3年間を振り返る。そして、野中は1年ごとに目標を立てて、一段ずつ着実にステップを上がってきた。「高校生の時は5000mで1年目14分台、2年14分20秒、3年目で13分台が見えるところというふうにイメージしていました」と話す。その言葉通りに、高校1年目から14分30秒台をマークし、その才能の片鱗を見せた。そして、その走りが前田監督の目にも止まった。進路を決めたのは直感
前田監督は「彼が高校1年の時に日体大競技会で見て、『すごい選手を見つけた』と思いました。当時はまだ薄底シューズでしたが、バネ感がすごかった。バネというのは生まれ持ったものだと思いますので、そのバネ感に惚れました」とそのフォームに可能性を感じた。さらに、「競技の向き合い方も、先生から『本人たちに考えさせて取り組ませている』と聞きましたし、野中と話した時も主張を持っていて、芯がしっかりしているなという印象でした。この子は荒削りだけど、間違いなく将来性は高いとその時に思いました」と当時を振り返る。野中は高3時のインターハイに5000mに出場し決勝に進出しているが、それも、後に飛躍を遂げる萌芽に過ぎなかった。大学進学後、前田監督の読み通りに進化を遂げることになる。野中もまた、大学の進路先を決める際に直感が働いたという。「雰囲気的に僕に合いそうだなと思いました。僕はこの大学が一番伸びるんじゃないかという勘ですね。それに、チームもこれから強くなりそうな雰囲気があったので、その波に乗りたいと思いました」。こうして國學院大への進学を決めた。大学に入ってからの1年ごとのプランは「1年目は箱根メンバーに絡む。2年目は箱根出走。3年目からは区間賞を獲りに行くっていうプランで立てました。そのために、自分にとって必要な10000mやハーフマラソンのタイムを逐一計算しながら年間通してやってきました」と話す。進路を決めるのは直感頼りでも、自身の成長の道筋は綿密な計画のもとに描いていた。そして、実際に想定通りに、いや、想定以上にここまで歩んできた。1年目は出雲、全日本、箱根と出番がなかったが、2年目は、出雲4区、全日本5区でともに区間賞を獲得し、チームの優勝に貢献した。箱根駅伝は、直前にインフルエンザに罹患するトラブルがありながらも、1区6位にまとめている。「環境に慣れて自分のスタイルを見つけられました。(3つの駅伝は)経験値を積むレースだったと思います」と昨季の駅伝を振り返る。そして、今季は主力の1人として活躍を続ける。もちろん今回の箱根では重要な役割を担うことになりそうだ。「野中のところで先頭に立つイメージがあります。それが1区かもしれませんし、2区でも互角に戦えると思っています。3区だったら抜け出したいですし、4区だったら山上りの手前で先頭に立つというイメージもできます」と前田監督は起用のイメージを説明する。「どこでもいける選手だと思っていますので、そういう意味では一つキーになってくる、第102回大会のポイントとなる選手かなというふうに思っています」と指揮官は信頼を寄せている。今季の國學院大は、野中を含め、主将の上原琉翔、青木瑠郁、高山豪起(いずれも4年)、辻原輝(3年)の5人が核となる。その中でも、野中が担う役割は大きそうだ。野中ももちろんその期待に応えるために、「山以外」はどの区間でも行けるように準備を進めてきた。「自分の強さを出すだけだと思っています。前半は突っ込んで突っ込んで、後半は粘って耐えて、チームを勢いづけて、他大には圧力かけてっていう感じの走りができれば、チームとしても良い流れに持っていけます。あとは先輩に任せようかなと思います」 チーム悲願の初優勝へ、箱根でもまた気負うことなく、全力を尽くすつもりだ。[caption id="attachment_194111" align="alignnone" width="800"]
11月の八王子ロングディスタンスでは今季学生トップの27分36秒64で走破している[/caption]文/和田悟志RECOMMENDED おすすめの記事
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