2025.12.23

初の箱根駅伝となった前回は7区で区間7位だった中大・岡田開成
武者修行で変わった“基準”
中大・岡田開成(2年)にとって第101回箱根駅伝の7区は初の箱根路で、ほろ苦い記憶として刻まれている。
「中学や高校の駅伝とは全然違って、日本の文化を感じられる大会でした」という発見があった以上に、「洛南(京都)の先輩の佐藤圭汰さん(駒大4)と走らせていただいて、手も足も出なかった。力不足を痛感したことがすごく思い出に残っています」と振り返った。
結果は1時間3分07秒で区間7位。ルーキーとすれば悪くない走りにも思える。しかし、1時間0分43秒で従来の区間記録を1分近くも更新して区間賞に輝いた佐藤と比べれば、その差は歴然。そうした選手と渡り合えなければ、箱根を制すことはできない。
ただ、実情を明かせば、岡田は本番2週間前の合宿中に足を捻挫していた。本来は往路を任される予定だったが、調子が上がっていなかったこともあって復路に回ったのだ。岡田は「準備不足で力を出し切れませんでした」と悔やんだ。
だからこそ、2年目のシーズンへ向かう決意は固かった。「佐藤圭汰さんと同じぐらい走れるようになりたいというのと、自分の区間で抜かされてしまったので、次の箱根では自分が逆にゲームチェンジャーになろうと思ってスタートしました」
リベンジを誓う岡田の転機となったのは、2月中旬から3月下旬までの米国での武者修行だった。2月の日本学生ハーフマラソンで1時間1分11秒という好タイムをマークし、長距離へのフォームの手応えをつかんだ岡田は、そのまま米国に飛ぶ。すでに現地入りしていたチームメイトの溜池一太(4年)と合流し、当地で岡田が目の当たりにしたのは、圧倒的な「基準」の違いだった。
「経験を積むというか、レベルの高い選手と練習して意識を変えることや、アメリカで取り入れているトレーニングなどの文化を学んで日本に持ち帰ることが目標でした」と当初の狙いを明かす。ただ、「5000m12分台、10000m26分台を狙うのが当たり前の世界。単純に『当たり前』の基準が全然違うなと感じられたのが大きな収穫でした」と話す。
1ヵ月半ほどの米国滞在で、岡田の意識は劇的に変化した。帰国直後は「調子が崩れてしまって、5月、6月は全然うまくいきませんでした」と振り返るものの、7月の日本選手権5000mでは堂々の決勝進出を果たす。
藤原正和駅伝監督も「アメリカでいろいろなことを学んで、自分の中で咀嚼して帰ってきて、取り組みが変わりました。やっていることと結果がうまく噛み合うようになってきたと思います」と、その成長を認める。
夏合宿では、チームがテーマとした「泥臭く」を体現するべく、徹底的に走り込んだ。「とにかく距離を踏んだり、ただメンタルを鍛えるような、ずっと上りのコースをみんなで走ったり」といったメニューを一度も離脱することなくやり切った。藤原監督が「モチベーションを高くやってくれて、ほとんどの練習で彼が1番で帰ってきている」と評するほどの充実ぶりだった。
初の箱根駅伝となった前回は7区で区間7位だった中大・岡田開成[/caption]
新春の風物詩・第102回箱根駅伝に挑む選手やチームを取り上げる「箱根駅伝Stories」。学生三大駅伝最終決戦に向かうそれぞれの歩みや思いを紹介する。
武者修行で変わった“基準”
中大・岡田開成(2年)にとって第101回箱根駅伝の7区は初の箱根路で、ほろ苦い記憶として刻まれている。 「中学や高校の駅伝とは全然違って、日本の文化を感じられる大会でした」という発見があった以上に、「洛南(京都)の先輩の佐藤圭汰さん(駒大4)と走らせていただいて、手も足も出なかった。力不足を痛感したことがすごく思い出に残っています」と振り返った。 結果は1時間3分07秒で区間7位。ルーキーとすれば悪くない走りにも思える。しかし、1時間0分43秒で従来の区間記録を1分近くも更新して区間賞に輝いた佐藤と比べれば、その差は歴然。そうした選手と渡り合えなければ、箱根を制すことはできない。 ただ、実情を明かせば、岡田は本番2週間前の合宿中に足を捻挫していた。本来は往路を任される予定だったが、調子が上がっていなかったこともあって復路に回ったのだ。岡田は「準備不足で力を出し切れませんでした」と悔やんだ。 だからこそ、2年目のシーズンへ向かう決意は固かった。「佐藤圭汰さんと同じぐらい走れるようになりたいというのと、自分の区間で抜かされてしまったので、次の箱根では自分が逆にゲームチェンジャーになろうと思ってスタートしました」 リベンジを誓う岡田の転機となったのは、2月中旬から3月下旬までの米国での武者修行だった。2月の日本学生ハーフマラソンで1時間1分11秒という好タイムをマークし、長距離へのフォームの手応えをつかんだ岡田は、そのまま米国に飛ぶ。すでに現地入りしていたチームメイトの溜池一太(4年)と合流し、当地で岡田が目の当たりにしたのは、圧倒的な「基準」の違いだった。 「経験を積むというか、レベルの高い選手と練習して意識を変えることや、アメリカで取り入れているトレーニングなどの文化を学んで日本に持ち帰ることが目標でした」と当初の狙いを明かす。ただ、「5000m12分台、10000m26分台を狙うのが当たり前の世界。単純に『当たり前』の基準が全然違うなと感じられたのが大きな収穫でした」と話す。 1ヵ月半ほどの米国滞在で、岡田の意識は劇的に変化した。帰国直後は「調子が崩れてしまって、5月、6月は全然うまくいきませんでした」と振り返るものの、7月の日本選手権5000mでは堂々の決勝進出を果たす。 藤原正和駅伝監督も「アメリカでいろいろなことを学んで、自分の中で咀嚼して帰ってきて、取り組みが変わりました。やっていることと結果がうまく噛み合うようになってきたと思います」と、その成長を認める。 夏合宿では、チームがテーマとした「泥臭く」を体現するべく、徹底的に走り込んだ。「とにかく距離を踏んだり、ただメンタルを鍛えるような、ずっと上りのコースをみんなで走ったり」といったメニューを一度も離脱することなくやり切った。藤原監督が「モチベーションを高くやってくれて、ほとんどの練習で彼が1番で帰ってきている」と評するほどの充実ぶりだった。夏合宿で芽生えた主力の自覚
強力なチームメイトがズラリとそろう中大で、夏合宿期間中のある日、岡田は藤原監督から「来年からはチームを引っ張っていかないといけないんだよ」と言われたという。それにより主力としての自覚が芽生えたという。 自信を胸に臨んだ駅伝シーズン初戦の出雲で、岡田は1区を任された。「区間賞は絶対。最低でもトップと3秒以内でつなぐ」とスローペースの展開にも動じず、ラスト1kmからのスパートという自身の武器を遺憾なく発揮する。 狙い通りに区間賞を獲得し、その名を全国に轟かせた。「初めての全国での区間賞で、だいぶ自信になりました」と表情は明るかった。 だが、試練は続く全日本大学駅伝で訪れる。チームは出雲の10位から立て直して2位と躍進したものの、主力が集まる7区に起用された岡田は区間6位。2位で受けた順位を1つ落とすかたちとなった。 「設定よりも1分10秒遅かったです。最低でも区間3番以内に入らないとエースとは言えないからね、とは彼には伝えました」と藤原監督の評価も厳しかった。それだけ岡田に期待しているからに他ならない。 悔しい思いを胸に秘め、岡田は次の一歩を踏み出した。11月の八王子ロングディスタンスで10000mの日本人学生歴代7位となる27分37秒06をマーク。「中大記録(27分44秒48/吉居駿恭、4年)を出せたらと思っていたので100点です」と大きな自信をつかんだ。 中大が30年ぶり15回目の総合優勝を目指す第102回大会で、岡田が希望するのは4区だ。「ゲームチェンジャーとして、先頭で来たらそのまま流れに乗って、遅れてきても自分で流れを変えるような走りをしたいです」と意気込む。 実際に当日4区を担うのであれば、「60分台、できれば前回の太田蒼生さん(青学大/現・GMOインターネットグループ)の1時間00分24秒を目指したい。チームを優勝に導けるように、そして昨年の悔しさを晴らすために区間賞を目標にがんばりたいです」と力を込めた。 米国で知った世界の基準、夏合宿で培った泥臭さ、そして出雲でつかんだ自信と全日本で味わった屈辱。それらすべてを糧に、この1年でたくましく成長した岡田が、新春の箱根路を力強く駆け抜ける。 [caption id="attachment_194111" align="alignnone" width="800"]
11月の八王子ロングディスタンスでは10000mで中大記録をマークしている[/caption]
文/小野哲史 RECOMMENDED おすすめの記事
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