2023.12.20
兄の思いも背負って走る
あこがれの箱根を目指し、明大に入学。1年生の11月に10000mで28分59秒16をマークする。「思い焦がれて来た箱根を走れるかも」と期待したが、厚い選手層に阻まれメンバー入りは果たせなかった。2年生も、1年間を通して練習も積み、自己記録を更新したが、一歩届かなかった。
箱根本戦でチームは振るわず、1年時は総合11位、2年時は14位。「自分はメンバー入りさえできなかったのに、選ばれた10人でさえも通用しないなんて」。3年時も自身は区間賞を獲得したが総合12位に終わる。『箱根のシード権獲得』という壁の高さを痛感してきた。
明大は1920年の箱根駅伝第1回大会から出場している「オリジナル4」の1つ。第2回大会で総合優勝を遂げるなど、長らく箱根路に歴史を刻んできたが、杉が入学してからはトップ10に入っていない。
最終学年を迎えた。前回の箱根7区で区間賞を取った杉は、「自信となり、自分自身がガラッと変われました」。4月の金栗記念では10000mで4年連続自己新となる28分28秒94をマークすると、5月の関東インカレハーフでは1時間3分10秒で4位入賞。箱根予選会もチーム4番手でゴールすると、続く11月の上尾ハーフでも1時間3分29秒でまとめた。
最後の箱根は児玉真輝(4年)とともに、チームの“核”となり挑む。その中で、杉には確信していることがある。「前回自分が区間賞を取れました。みんなが実力通りの走りをすれば、シード権は決して手の届かないものではないと思います」
箱根にあこがれるきっかけを作ってくれた兄は、神大4年時に5000mで13分58秒77まで自己記録を縮めたが、故障に苦しみ本戦出場は叶わなかった。「今でも『ケガには気をつけろよ』とか『治療院とか困ったら紹介するぞ』とか、気遣ってくれています」。
夢を叶えられなかった兄の思いも背負い、弟は最後の箱根路を駆けるつもりだ。「自分を成長させてくれた大会。中学生の自分に『箱根を夢見て正解だったよ』と胸を張って言えるよう頑張りたいです」。卒業後も競技を続ける杉は、支えてくれた両親や兄へ、感謝の走りを誓う。

2度目の舞台ではチームや自分だけでなく、兄の思いも背負って走る杉彩文海(撮影/荒井寛太)
すぎ・さふみ/2001年8月10日生まれ。福岡県うきは市出身。福岡・吉井中→佐賀・鳥栖工高。5000m14分04秒49、10000m28分28秒94、ハーフ1時間3分10秒
文/荒井寛太
3年目にして初出場、7区で区間賞獲得
「今年もダメかもな」 明大・杉彩文海は1年前、箱根本戦メンバー入りをあきらめかけていた。予選会はチーム11番手。大学に入って3年目の昨シーズンは、調子がなかなか上向いてこなかった。 精神的に苦しい日々が続いたが、昨年11月のMARCH対抗戦10000mに出場すると、28分39秒58をマーク。3年連続の自己新だ。山本佑樹・前駅伝監督から12月中旬、「7区で行くぞ」と告げられた。 「『やっと走れるんだ』という気持ちでした。チームのためとかではなく、念願の箱根に走れるという喜び。走れるだけでありがたいと思いながら本番は臨みました」 6区の堀颯介から12位でタスキをもらうと、シード権内の10位を目指し、前半から飛ばした。「3kmの入りが速すぎる」。山本前監督の心配をよそに杉は走り続けた。「シード権を取るためにはこのペースで行くしかない」。 実は、夢の箱根路を目に焼きつけておこうと思っていた。「来年出られる保証はない。もしかしたらこれで最後になるかもしれない」。3年間苦労し、やっとつかんだ舞台だった。無我夢中で走り続けた結果、区間歴代8位となる1時間2分43秒の快走。同タイムだった葛西潤(創価大/現・旭化成)とともに区間賞を獲得し、チームを10位に押し上げた。 福岡県の南東部、うきは市出身。5歳上の兄・優一郎さんが長距離をやっていた影響で、杉も小学校4年生から地域の陸上教室に通った。お正月は父親がテレビの前を独占。箱根駅伝がお決まりのコンテンツだった。 中学2年生の時、優一郎さんが神奈川大へ進学。箱根を目指し始めていた。杉は自然と興味が湧き、父親の隣で中継をしっかり見るようになった。白熱のレース展開に沿道の声援。地元の福岡県出身の選手も多く活躍していることを知り、あこがれが膨らんだ。 「夢みたいなレースだな」。兄と同じく、杉は箱根を目指すことを決めた。 吉井中3年時、全中に1500mと3000mの2種目で出場。高校は佐賀・鳥栖工高へ進学した。越境だが、直線距離で20km余り。インターハイ路線は1500mと5000mで全国へと進んだ。全国高校駅伝も3年連続で出場(1年時7区7位、2年時7区12位、3年時1区30位)。 「3年間入賞を目指していたので、3年生で1区30位に沈んでしまったことは申し訳なく思いました」。同期には同じ福岡から入学した佐々木亮輔(神大)もいた。苦楽をともにした仲間だ。兄の思いも背負って走る
あこがれの箱根を目指し、明大に入学。1年生の11月に10000mで28分59秒16をマークする。「思い焦がれて来た箱根を走れるかも」と期待したが、厚い選手層に阻まれメンバー入りは果たせなかった。2年生も、1年間を通して練習も積み、自己記録を更新したが、一歩届かなかった。 箱根本戦でチームは振るわず、1年時は総合11位、2年時は14位。「自分はメンバー入りさえできなかったのに、選ばれた10人でさえも通用しないなんて」。3年時も自身は区間賞を獲得したが総合12位に終わる。『箱根のシード権獲得』という壁の高さを痛感してきた。 明大は1920年の箱根駅伝第1回大会から出場している「オリジナル4」の1つ。第2回大会で総合優勝を遂げるなど、長らく箱根路に歴史を刻んできたが、杉が入学してからはトップ10に入っていない。 最終学年を迎えた。前回の箱根7区で区間賞を取った杉は、「自信となり、自分自身がガラッと変われました」。4月の金栗記念では10000mで4年連続自己新となる28分28秒94をマークすると、5月の関東インカレハーフでは1時間3分10秒で4位入賞。箱根予選会もチーム4番手でゴールすると、続く11月の上尾ハーフでも1時間3分29秒でまとめた。 最後の箱根は児玉真輝(4年)とともに、チームの“核”となり挑む。その中で、杉には確信していることがある。「前回自分が区間賞を取れました。みんなが実力通りの走りをすれば、シード権は決して手の届かないものではないと思います」 箱根にあこがれるきっかけを作ってくれた兄は、神大4年時に5000mで13分58秒77まで自己記録を縮めたが、故障に苦しみ本戦出場は叶わなかった。「今でも『ケガには気をつけろよ』とか『治療院とか困ったら紹介するぞ』とか、気遣ってくれています」。 夢を叶えられなかった兄の思いも背負い、弟は最後の箱根路を駆けるつもりだ。「自分を成長させてくれた大会。中学生の自分に『箱根を夢見て正解だったよ』と胸を張って言えるよう頑張りたいです」。卒業後も競技を続ける杉は、支えてくれた両親や兄へ、感謝の走りを誓う。 [caption id="attachment_123703" align="alignnone" width="800"]
2度目の舞台ではチームや自分だけでなく、兄の思いも背負って走る杉彩文海(撮影/荒井寛太)[/caption]
すぎ・さふみ/2001年8月10日生まれ。福岡県うきは市出身。福岡・吉井中→佐賀・鳥栖工高。5000m14分04秒49、10000m28分28秒94、ハーフ1時間3分10秒
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