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【誌面転載】女子1500m特別対談/田中希実×小林祐梨子

【女子1500m特別対談】田中希実×小林祐梨子

前日本記録保持者が聞く
「新時代の日本新」と未来

9月4日に21歳の誕生日を迎えた田中(右)と前日本記録保持者の小林さん

セイコーゴールデングランプリ2020東京の女子1500m。田中希実(豊田自動織機TC)が目指したものはただ1つ。ずっと大きな目標にしてきた日本記録「4分07秒86」を更新することだった。その記録を2006年から保持していたのが、兵庫県小野市出身の田中にとって、地元の大先輩である小林祐梨子さん(当時・須磨学園高3兵庫)。すでに競技を離れ、現在はテレビ、ラジオのコメンテーターとしてレギュラー番組を持つなど多方面で活躍、3歳の男の子を育てるママでもある。

そんな小林さんは活躍をそばでずっと見守ってきた「のんちゃん(田中の愛称)」が、自らの記録を大幅に破ってくれたことに大喜び。田中にとっても、挑めば挑むほど、大きな壁と感じさせられた記録をついに塗り替え、大きな達成感を得ている。そこで快挙の余韻覚めやらぬ9月上旬、新旧日本記録保持者の対談を企画。小林さんにメインインタビュアー役をお願いし、田中の強さの秘密、素顔を引き出してもらった。

●構成/小川雅生 撮影/弓庭保夫

「記録狙い」だからこそ踏ん張れた

小林 1500mの記録って最後までわからないものだと思うけど、最初の400mの時点で、自分は走っていないのに確信していました(笑)。これはいけるって思うくらいの動きの余裕度はあったよね。「0.01秒更新はやめて~」って思っていて、大幅にサーッと抜いてほしかったので、想像以上の走りに自分のことのようにうれしいです。日本新が出るというのは、いつ確信したの?

田中 残り100mです。ラスト200mくらいで放送が聞こえて、余裕あるかなとは思いました。でも、本当にいけそうって思ったのは最後の100mです。
小林 レース中の通過タイムは気になった?

田中 800m通過は、やっぱり日本記録ペースで行きたいという思いがありました。今までにない速さ、2分11秒か12秒で通過したら、それで日本記録を目指している卜部さん(蘭、積水化学)じゃない限り、そのハイペースに驚いたり、セーブしたりするので、人数を絞れると思っていたんです。

小林 私が日本記録を狙った時は環境も整えられていて、引っ張ってくれる選手につくだけだからストレスはなかった。でも、1人で引っ張って記録を出そうというストレスとプレッシャーは、想像できない。スタートラインに立った時に、やばい、みたいな気持ちはなかった?

田中 当日の朝練習の感触は良くなかったんです。レース展開も、私が日本記録を狙っているというのはみんなわかっていたし、誰も走ったことのないペースで行くから誰も前に出てくれないだろうと考えていました。だから、どうしようっていう緊張がすごくあって。前にも出たくないし、後ろについても記録は出ないし、迷いもすごくありました。でも、祐梨子さんが、私が「記録を気にせずに行こうと思います」って言ったら「それで本当に大丈夫だから」と後押ししてくれたので、そこで張り詰めていたものが一つ取れて、レース前にシューズのことでバタバタして完全に取れました(笑)。

セイコーゴールデングランプリ2020東京の女子1500mで4分05秒27の日本新を樹立した田中

小林 1500mにはラストに止まってしまう恐怖があるものだから、引っ張るのはなかなかできないこと。そこの恐怖はなかった?

田中 反対に、日本選手権みたいに、優勝とか順位狙いの時は、自分がしんどいのか、自分が相手より余裕があるのかということをすごく気にしちゃうし、脚が固まってきたら「ちょっとやばいかも」って不安になっちゃうんです。でも、今回は順位よりタイム。「今まで誰も走ったことのないペースで走ってるからしんどくて当たり前だ」と思えました。800mの2分12秒通過はかなりしんどかったけど、「これだけのペースなんだから」と思ってました。

小林 私が一番きついと感じていたのはラスト300mのバックストレート。振り返ってみて、一番きつかったポイントは?

田中 やっぱり800mあたりですね。そこから1000mを過ぎたあたりでは、あとはラストを上げればいいって思えました。

小林 気持ち的に? 身体的に?

田中 両方です。身体的には、800m通過の時が一番脚が固まっていました。

小林 めちゃくちゃ意外やね。

田中 たぶん、800mを2分12秒で通過できたことで、安心して、ペースを気持ち落としたと思うんです、1000mにかけて。そこでちょっと気持ちと身体にもう1回、余裕を作り直すことができました。

小林 私の記録(4分07秒86)は超えられると思っていたけど、4分05秒は想定内?

田中 いつかはそこくらいまで行けたら、とは思っていました。祐梨子さんがさっき言われたように、0.01秒だけ更新とか、そういうのは私自身もイヤだったので、できれば4分06秒台にはいきたいとは思っていました。

この続きは2020年9月14日発売の『月刊陸上競技10月号』をご覧ください。

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