HOME 国内、世界陸上、日本代表
【コラム】やり投金メダリスト・北口榛花 水泳、バドミントン、リレー…高校時代までに培った運動神経と順応力、試合の経験値
【コラム】やり投金メダリスト・北口榛花 水泳、バドミントン、リレー…高校時代までに培った運動神経と順応力、試合の経験値

高校時代から陸上競技を始めた北口。まもなく全国大会を果たすなど才能の片鱗を見せていた

ブダペスト世界選手権の女子やり投で、北口榛花(JAL)が金メダルを獲得した。女子ではオリンピック・世界選手権を通じてマラソン以外で初の快挙。男女投てき種目としてはハンマー投の室伏広治(アテネ五輪、テグ世界選手権)に次いで2人目となる。

179cmと恵まれた体格は北口の特長の一つ。両親ともにバスケットボール経験者で、母は元実業団選手。そうした背景はあるものの、その身体をうまく使うための能力は幼い頃から、高校時代までスポーツ・競技歴が生かされていると北口自身も話したことがある。

北海道・旭川市に育ち、幼い頃からスイミングスクールに通い、特に自由形を得意としていた。小学生なってからは並行してバドミントンも始め、小6の時には団体で全国優勝。後に日本代表になる山口茜とも対戦したことがある。中学では特に競泳に力を入れて全国大会にも出場した。

他にも体操教室や、英会話、塾、ピアノと好奇心旺盛な幼少期を過ごしている。ちなみに、バスケットボールにも挑戦したことがあるが、「母から才能がないと言われました」と笑う。今でも女子バスケットボールをプライベートで観戦するほど大ファンで、やり投を始める前の中学生の頃から今でも、試合では『ENEOSサンフラワーズ』のタオルを愛用している。

女子やり投選手は野球やソフトボール、ドッジボールといった経験者が多い。そうしたなか、北口の特長である肩甲骨の柔軟性、可動域の広さは水泳が影響していると自身も感じている。バドミントンのラケットを振る腕の軌道もやり投に生かされている。

幼い頃から「どんな形でもいいからオリンピックに行きたい」と思い描き、北口にとってオリンピックと言えば競泳の北島康介が真っ先に思い浮かぶそうだ。もちろん、当時はやり投の存在さえ知らない。

地元トップの進学校である旭川東高に進学した頃は競泳で全国大会を目指しながら「研究者にもなりたかった」北口。だが、当時・陸上部の顧問だった松橋昌巳先生から、「陸上をやらないか」と熱心に誘われる。

広告の下にコンテンツが続きます

実は中学時代に同じバドミントン部で同校の陸上部マネージャーになっていた1つ上の先輩が松橋先生に「すごい子がいます」と伝えていたという。松橋先生からの「陸上ならインターハイに行ける」と先輩からの誘いで、「水泳も続けていいのであれば」と、陸上部に入部。実は当時は競泳のクラブには陸上を始めたことを内緒にしており、支部大会での活躍が報道されることになって慌てて報告したという。

1年目からやり投でインターハイに出場し松橋先生の言葉が現実になると、秋には日本ユース選手権で当時・高1歴代2位タイとなる49m31で3位。競泳でなかなか勝てないなか、「これなら日本一になれるかも」と気持ちが傾き、やり投の道を進むと決めた。

投てきだけではなく、走・跳・投とバランス良くトレーニングするのが松橋先生の考え方で、日々のトレーニングはもちろん、100mや4×100mリレー、4×400mリレーにも出場している。2年目のインターハイは短いクロスステップのみで逆転2年生優勝を飾ったが、砲丸投と円盤投でも出場。その際に、松橋先生は男子で砲丸投3連覇、円盤投と2冠、やり投2位に入った石山歩(花園高)を指して「あんな選手を目指しなさい」と北口に声をかけている。

「リレーを走ったり、投てきだけに偏らなかったのが良かったと思っています。松橋先生がいなかったら、やり投をしていなかったし、世界大会にも出られなかった。巡り合わせに感謝しています」

また、大舞台で強さを発揮するのも北口の魅力。緊張はするものの「小学生の時からスポーツをしてきて、規模は違いますが『試合』というものをずっと経験しているので、自分が試合で良いパフォーマンスをするためのルーティンが決まっています。それができれば問題ない」。そして、「勝つときは勝つし、負けるときは負ける」。こうしたメンタリティーも、幼少期からのスポーツ経験が生かされている。

文/向永拓史

ブダペスト世界選手権の女子やり投で、北口榛花(JAL)が金メダルを獲得した。女子ではオリンピック・世界選手権を通じてマラソン以外で初の快挙。男女投てき種目としてはハンマー投の室伏広治(アテネ五輪、テグ世界選手権)に次いで2人目となる。 179cmと恵まれた体格は北口の特長の一つ。両親ともにバスケットボール経験者で、母は元実業団選手。そうした背景はあるものの、その身体をうまく使うための能力は幼い頃から、高校時代までスポーツ・競技歴が生かされていると北口自身も話したことがある。 北海道・旭川市に育ち、幼い頃からスイミングスクールに通い、特に自由形を得意としていた。小学生なってからは並行してバドミントンも始め、小6の時には団体で全国優勝。後に日本代表になる山口茜とも対戦したことがある。中学では特に競泳に力を入れて全国大会にも出場した。 他にも体操教室や、英会話、塾、ピアノと好奇心旺盛な幼少期を過ごしている。ちなみに、バスケットボールにも挑戦したことがあるが、「母から才能がないと言われました」と笑う。今でも女子バスケットボールをプライベートで観戦するほど大ファンで、やり投を始める前の中学生の頃から今でも、試合では『ENEOSサンフラワーズ』のタオルを愛用している。 女子やり投選手は野球やソフトボール、ドッジボールといった経験者が多い。そうしたなか、北口の特長である肩甲骨の柔軟性、可動域の広さは水泳が影響していると自身も感じている。バドミントンのラケットを振る腕の軌道もやり投に生かされている。 幼い頃から「どんな形でもいいからオリンピックに行きたい」と思い描き、北口にとってオリンピックと言えば競泳の北島康介が真っ先に思い浮かぶそうだ。もちろん、当時はやり投の存在さえ知らない。 地元トップの進学校である旭川東高に進学した頃は競泳で全国大会を目指しながら「研究者にもなりたかった」北口。だが、当時・陸上部の顧問だった松橋昌巳先生から、「陸上をやらないか」と熱心に誘われる。 実は中学時代に同じバドミントン部で同校の陸上部マネージャーになっていた1つ上の先輩が松橋先生に「すごい子がいます」と伝えていたという。松橋先生からの「陸上ならインターハイに行ける」と先輩からの誘いで、「水泳も続けていいのであれば」と、陸上部に入部。実は当時は競泳のクラブには陸上を始めたことを内緒にしており、支部大会での活躍が報道されることになって慌てて報告したという。 1年目からやり投でインターハイに出場し松橋先生の言葉が現実になると、秋には日本ユース選手権で当時・高1歴代2位タイとなる49m31で3位。競泳でなかなか勝てないなか、「これなら日本一になれるかも」と気持ちが傾き、やり投の道を進むと決めた。 投てきだけではなく、走・跳・投とバランス良くトレーニングするのが松橋先生の考え方で、日々のトレーニングはもちろん、100mや4×100mリレー、4×400mリレーにも出場している。2年目のインターハイは短いクロスステップのみで逆転2年生優勝を飾ったが、砲丸投と円盤投でも出場。その際に、松橋先生は男子で砲丸投3連覇、円盤投と2冠、やり投2位に入った石山歩(花園高)を指して「あんな選手を目指しなさい」と北口に声をかけている。 「リレーを走ったり、投てきだけに偏らなかったのが良かったと思っています。松橋先生がいなかったら、やり投をしていなかったし、世界大会にも出られなかった。巡り合わせに感謝しています」 また、大舞台で強さを発揮するのも北口の魅力。緊張はするものの「小学生の時からスポーツをしてきて、規模は違いますが『試合』というものをずっと経験しているので、自分が試合で良いパフォーマンスをするためのルーティンが決まっています。それができれば問題ない」。そして、「勝つときは勝つし、負けるときは負ける」。こうしたメンタリティーも、幼少期からのスポーツ経験が生かされている。 文/向永拓史

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2024.12.14

京山・石原万結は5区 神村学園・瀬戸口恋空は2年連続1区 大沢野も長森結愛、黒川志帆が3km区間に/全中駅伝・女子

第32回全国中学駅伝は12月15日、滋賀県の野洲市と湖南市にまたがる希望が丘文化公園で開催される。14日には開会式が行われ、併せて区間エントリーも発表された。 女子は1区、5区が3km、2区から4区までは2kmの5区間1 […]

NEWS 京山はエースの玉川彩人が3区 坂は8分台トリオを前半に配置 鶴ヶ島藤は植松遼がアンカー/全中駅伝・男子

2024.12.14

京山はエースの玉川彩人が3区 坂は8分台トリオを前半に配置 鶴ヶ島藤は植松遼がアンカー/全中駅伝・男子

第32回全国中学駅伝は12月15日、滋賀県の野洲市と湖南市にまたがる希望が丘文化公園で開催される。14日には開会式が行われ、併せて区間エントリーも発表された。 史上初の2年連続男女優勝を目指す京山(岡山)は全中3000m […]

NEWS 第5回大学対校男女混合駅伝の出場校が決定! 大東大、環太平洋大、亜細亜大、早大が初出場!! 2月16日に大阪・長居で開催

2024.12.14

第5回大学対校男女混合駅伝の出場校が決定! 大東大、環太平洋大、亜細亜大、早大が初出場!! 2月16日に大阪・長居で開催

12月12日、関西学連は25年2月16日に開催される第5回全国大学対校男女混合駅伝の出場チームを発表した。 同大会は2021年に大学駅伝では国内初の男女混合レースとして誕生。これまでは「全国招待大学対校男女混合駅伝」とい […]

NEWS ケガから復帰の駒大・佐藤圭汰「インパクトのある走りをしたい」青学大・太田に闘志燃やす 伊藤、山川との3年生トリオが充実

2024.12.13

ケガから復帰の駒大・佐藤圭汰「インパクトのある走りをしたい」青学大・太田に闘志燃やす 伊藤、山川との3年生トリオが充実

第101回箱根駅伝に出場する駒大がオンラインで記者会見を開き、藤田敦史監督、大八木弘明総監督、選手が登壇、報道陣の取材に応じた。 前回、3区区間2位の力走を見せたものの、青学大・太田蒼生(4年)との競り合いに敗れた佐藤圭 […]

NEWS 箱根駅伝V奪還狙う駒大 藤田敦史監督「100回大会の悔しさ晴らしたい」選手層に課題も手応えあり

2024.12.13

箱根駅伝V奪還狙う駒大 藤田敦史監督「100回大会の悔しさ晴らしたい」選手層に課題も手応えあり

第101回箱根駅伝に出場する駒大がオンラインで記者会見を開き、藤田敦史監督、大八木弘明総監督、選手が登壇、報道陣の取材に応じた。 藤田監督は「前回は出雲駅伝、全日本大学駅伝を制した状態で迎え、青山学院に負けて準優勝でした […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2024年12月号 (11月14日発売)

2024年12月号 (11月14日発売)

全日本大学駅伝
第101回箱根駅伝予選会
高校駅伝都道府県大会ハイライト
全日本35㎞競歩高畠大会
佐賀国民スポーツ大会

page top