HOME 国内

2023.06.11

七種競技・山﨑有紀が2年ぶり5度目の頂点「勝たなきゃいけないじゃなく、勝ちたい」800m圧巻の力走/日本選手権混成
七種競技・山﨑有紀が2年ぶり5度目の頂点「勝たなきゃいけないじゃなく、勝ちたい」800m圧巻の力走/日本選手権混成

23年日本選手権七種競技で5度目の頂点に立った山﨑有紀

◇第107回日本選手権・混成競技(6月10、11日/秋田県立中央公園陸上競技場)

第107回日本選手権・混成競技が行われ、日本記録(5975点)を持つ山﨑有紀(スズキ)が5810点で優勝。18年から4連覇に続き、2年ぶり5度目の頂点に立った。

初日を終えて3381点の2位で折り返した山﨑。強い風が吹いた難しいコンディションとなった走幅跳では5m82(+0.8)をマークした。しかし、続く得意のやり投では43m40にとどまる。2番手で最終種目の800mを迎えた。

トップの大玉華鈴(日体大SMG横浜)に差をつけて勝たなければ逆転優勝はない。ここで圧倒的な力を見せたのは日本記録保持者の貫禄か。序盤から突っ込むと、粘る大玉を引き離し、2分14秒41というセカンドベスト。2位の水谷佳歩(中京大院)に約6秒、大玉には約10秒の差をつけてフィニッシュした。

「セカンドベストというのがわかってうれしかったです。2分14秒を出して負けたら仕方がない。その後で優勝を確信して喜びました」

やり投の後には「手が震えた」というほど落ち込んだという。しかし、こうして気持ちを持ち直した。

広告の下にコンテンツが続きます

「勝たなきゃいけないじゃなく、勝ちたい」

800mの前に大学時代から指導を受ける疋田晃久コーチと電話で話し、原点を思い出した。高校時代は全国的に無名だったところから、九州共立大で陸上競技に真摯に向き合うようになって飛躍を遂げた。

「自分より上のレベルの選手に勝ちたいという思いでやってきた。それを忘れていました」。日本選手権を4度勝っても、チャレンジャーであり、守りに入るのではなく、上を目指す。だからこそ800mでも「相手を気にせず自己ベストを目指しました」。

苦しい試合運びだったが、負けたくない理由がもう一つある。あこがれてきた十種競技の中村明彦(スズキ)が今季限りで引退を表明。これが一緒に戦う最後の日本選手権だった。20、21年と男女優勝を果たしてきた2人。初日を終えてその思いを聞くと、思わず目頭を熱くした。

18年から大会4連覇。21年には5975点の日本記録を樹立した。今年2月のアジア室内選手権(五種競技)では銅メダルを獲得している。第一人者として牽引してきたが、「もっともっと、底上げしていかないと。女子の他の種目に負けないように」と、自身の成長とともに、日本の七種競技全体のレベルアップも願っている。

「もし出場できたら、アジア選手権、アジア大会で優勝争いをしたいです」

アジア大会は18年に出場して3位。「海外の試合のほうが楽しめますし、チャレンジャーとして挑めます」。5度目の日本一を引っさげ、再びアジアの頂点に挑戦する。

◇第107回日本選手権・混成競技(6月10、11日/秋田県立中央公園陸上競技場) 第107回日本選手権・混成競技が行われ、日本記録(5975点)を持つ山﨑有紀(スズキ)が5810点で優勝。18年から4連覇に続き、2年ぶり5度目の頂点に立った。 初日を終えて3381点の2位で折り返した山﨑。強い風が吹いた難しいコンディションとなった走幅跳では5m82(+0.8)をマークした。しかし、続く得意のやり投では43m40にとどまる。2番手で最終種目の800mを迎えた。 トップの大玉華鈴(日体大SMG横浜)に差をつけて勝たなければ逆転優勝はない。ここで圧倒的な力を見せたのは日本記録保持者の貫禄か。序盤から突っ込むと、粘る大玉を引き離し、2分14秒41というセカンドベスト。2位の水谷佳歩(中京大院)に約6秒、大玉には約10秒の差をつけてフィニッシュした。 「セカンドベストというのがわかってうれしかったです。2分14秒を出して負けたら仕方がない。その後で優勝を確信して喜びました」 やり投の後には「手が震えた」というほど落ち込んだという。しかし、こうして気持ちを持ち直した。 「勝たなきゃいけないじゃなく、勝ちたい」 800mの前に大学時代から指導を受ける疋田晃久コーチと電話で話し、原点を思い出した。高校時代は全国的に無名だったところから、九州共立大で陸上競技に真摯に向き合うようになって飛躍を遂げた。 「自分より上のレベルの選手に勝ちたいという思いでやってきた。それを忘れていました」。日本選手権を4度勝っても、チャレンジャーであり、守りに入るのではなく、上を目指す。だからこそ800mでも「相手を気にせず自己ベストを目指しました」。 苦しい試合運びだったが、負けたくない理由がもう一つある。あこがれてきた十種競技の中村明彦(スズキ)が今季限りで引退を表明。これが一緒に戦う最後の日本選手権だった。20、21年と男女優勝を果たしてきた2人。初日を終えてその思いを聞くと、思わず目頭を熱くした。 18年から大会4連覇。21年には5975点の日本記録を樹立した。今年2月のアジア室内選手権(五種競技)では銅メダルを獲得している。第一人者として牽引してきたが、「もっともっと、底上げしていかないと。女子の他の種目に負けないように」と、自身の成長とともに、日本の七種競技全体のレベルアップも願っている。 「もし出場できたら、アジア選手権、アジア大会で優勝争いをしたいです」 アジア大会は18年に出場して3位。「海外の試合のほうが楽しめますし、チャレンジャーとして挑めます」。5度目の日本一を引っさげ、再びアジアの頂点に挑戦する。

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.04.30

水戸招待のエントリー発表! 棒高跳に柄澤智哉、山本聖途、諸田実咲ら男女トップ集結 戸邉直人、城山正太郎も出場予定

5月5日に行われる日本グランプリシリーズ第7戦「2025水戸招待陸上」のエントリー選手が発表された。男子棒高跳には東京五輪代表の山本聖途(トヨタ自動車)、江島雅紀(富士通)や世界選手権代表経験のある柄澤智哉(東京陸協)ら […]

NEWS 【連載】上田誠仁コラム雲外蒼天/第56回「昭和100年とスポーツ用具の進化」

2025.04.30

【連載】上田誠仁コラム雲外蒼天/第56回「昭和100年とスポーツ用具の進化」

山梨学大の上田誠仁顧問の月陸Online特別連載コラム。これまでの経験や感じたこと、想いなど、心のままに綴っていただきます! 第56回「昭和100年とスポーツ用具の進化」 昨年は記念大会となる第100回箱根駅伝が開催され […]

NEWS 【高校生FOCUS】男子競歩・山田大智(西脇工高)インターハイで昨夏の雪辱誓う 高校記録更新にも挑戦

2025.04.30

【高校生FOCUS】男子競歩・山田大智(西脇工高)インターハイで昨夏の雪辱誓う 高校記録更新にも挑戦

FOCUS! 高校生INTERVIEW 山田大智 Yamada Daichi 西脇工高3兵庫 2025年シーズンが本格的に始まり、高校陸上界では記録会、競技会が次々と開かれています。その中で好記録も生まれており、男子50 […]

NEWS 5.3静岡国際、パリ五輪代表の坂井隆一郎、200m世界陸上標準突破の水久保漱至らが欠場

2025.04.30

5.3静岡国際、パリ五輪代表の坂井隆一郎、200m世界陸上標準突破の水久保漱至らが欠場

5月3日に行われる静岡国際のエントリーリストが更新され、現時点で欠場届を提出した選手が判明した。 男子100mはパリ五輪代表の坂井隆一郎(大阪ガス)が欠場。坂井は4月13日の出雲陸上で脚を痛め、29日の織田記念の出場も見 […]

NEWS 26年ブダペスト開催の「世界陸上アルティメット選手権」やり投・北口榛花が出場権獲得

2025.04.30

26年ブダペスト開催の「世界陸上アルティメット選手権」やり投・北口榛花が出場権獲得

世界陸連(WA)は4月29日、2026年に新設する「世界陸上アルティメット選手権」の大会500日前を受け、昨年のパリ五輪の金メダリストに出場資格を与えることを発表した。女子やり投で金メダルを獲得した北口榛花(JAL)も含 […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2025年4月号 (3月14日発売)

2025年4月号 (3月14日発売)

東京世界選手権シーズン開幕特集
Re:Tokyo25―東京世界陸上への道―
北口榛花(JAL) 
三浦龍司(SUBARU)
赤松諒一×真野友博
豊田 兼(トヨタ自動車)×高野大樹コーチ
Revenge
泉谷駿介(住友電工)

page top