2022.12.28
優勝を宣言できるほどのチームに
2019年度に出雲駅伝で学生三大駅伝で初めて優勝を果たし、一躍強豪校へと駆け上がった國學院大だが、選手として優勝の歓喜を味わったのは、今や中西ただ一人になった。
「(中西)大翔は、勝利のDNAをしっかり下級生にうまく引き継ごうとしてくれている。彼の存在は大きい。
選手たちは『優勝』と言っていますが、本当は『優勝』という言葉を簡単に口にしてほしくないんです。でも、彼らを見ていると、建前で口にしているのではなく、本気で狙っているなと感じます。そういうチームになってきました」
前田監督も選手たちの本気を感じ取っている。
「3年前に出雲で優勝して、チームの雰囲気が変わったのを感じました。出雲優勝を起点に、7位や8位では満足できなくなり、シード権を争うチームから、3番以内などの高い目標を掲げるチームになりました。今回の箱根で優勝して、来年度はまた新たなチームを作っていってほしいです」
中西も最高の置き土産をするつもりだ。
下級生に好選手が数多く残っているだけに、今回初優勝を飾ることができれば、國學院大の黄金時代が到来することになりそうだ。
文/和田悟志
ハーフ1時間3分台でもメンバー入りできない選手層に
今季の躍進を支えているのが、中西、伊地知賢造(3年)、平林清澄(2年)、山本歩夢(2年)の“4本柱”であることは間違いない。だが、彼らの力を生かすことができるのも、充実した選手層があってのこと。この点を見落としてはならない。 「上尾シティハーフでは、出雲駅伝、全日本大学駅伝を走っていないメンバーを中心に、箱根駅伝のエントリーメンバー16人入りを懸けて出場しました。出雲、全日本の勢いさながら、しっかり結果で証明してくれました。ここ最近の課題だった中間層の底上げがうまくできているなっていうのが実感できました」(中西) 11月の上尾シティハーフでは、7位に入賞した鶴元太(2年)、1年生の高山豪起、全日本からの連戦となった坂本健悟(4年)が1時間2分台の好記録をマーク。さらに、8人が1時間3分台で走った。 全日本を走ったメンバーに、全日本後の沖縄合宿に参加した上原琉翔、嘉数純平(ともに1年)を加えれば、ゆうに20人を数える。ハーフ1時間3分台で走っても16人に入れないのだから、前田康弘監督が「過去最強の戦力」と口にするのも頷ける。 上尾ハーフで好走し16人に選ばれた1人、2年の木村文哉は一般入試で合格して入部した選手だ。高校時代の5000mの自己ベストは14分42秒10に過ぎないが、ハーフ1時間3分04秒をマークするまでに力をつけた。 もともと育成力に定評のあるチームでもあるが、一般受験組からこんな選手が出てきたことは、チームの勢いを感じさせる。 「結果を出した選手には自分から話しかけてコミュニケーションを取るようにしていますし、自己ベストを出した選手には、学年関係なく、チーム全体で『おめでとう!』って言い合える明るいチームになってきていると思います」(中西) 副主将の伊地知賢造(3年)も現チームについてこのように話す。 「これまでもコミュニケーションが取れていたと思いますが、今年度はさらに学年を超えて仲が良いチームになっているのを感じます。レース前にも『頑張れよ』ってお互いに声を掛け合うケースがすごく多いなと感じています」 幹部としてチームを引っ張ってきた2人の言葉の端々からは、チームの雰囲気の良さが伝わってくる。こうした雰囲気がチーム全体のレベルアップの要因でもあるのだろう。 次のページ 主力が好調&山区間に自信主力が好調&山区間に自信
底上げがうまくいっている上に、主力選手たちも好調だ。 12月4日には、甲佐10マイルロードレースに主力選手が出場。中西が学生トップの8位に入り、日本人学生歴代2位となる46分09秒をマーク。山本も同歴代3位となる46分16秒で走り、力を見せた。 さらに、今季急成長を遂げた4年生の藤本竜が46分33秒、全日本5区区間賞の青木瑠郁(1年)が46分34秒、上原が47分17秒と、いずれも好記録をマークした。駅伝で軸となる選手たちも順調な仕上がりを見せている。 また、前田監督は「山で勝負できる」と自信をのぞかせる。その候補はおそらく、甲佐10マイルに出場しなかった平林、伊地知あたりだろう。いずれも、タフさを備え、ロードを得意としている。一方が2区、もう一方が5区を担うことになるのではないだろうか。 [caption id="attachment_89793" align="alignnone" width="800"]
チームを牽引する主将の中西大翔(中央)と、右が3年生の伊地知賢造、左が平林清澄[/caption]
6区も、過去に好走している島﨑慎愛(4年)がおり、その他にも候補がいるという。
「区間ごとの勝敗で負け越しても、勝った区間で何分稼げるか。山は区間順位以上にタイムを稼げるので、ウチは山でタイムを取らないといけません」
前田監督は山で一気に攻勢を仕掛けるつもりだ。
次のページ 優勝を宣言できるほどのチームに
優勝を宣言できるほどのチームに
2019年度に出雲駅伝で学生三大駅伝で初めて優勝を果たし、一躍強豪校へと駆け上がった國學院大だが、選手として優勝の歓喜を味わったのは、今や中西ただ一人になった。 「(中西)大翔は、勝利のDNAをしっかり下級生にうまく引き継ごうとしてくれている。彼の存在は大きい。 選手たちは『優勝』と言っていますが、本当は『優勝』という言葉を簡単に口にしてほしくないんです。でも、彼らを見ていると、建前で口にしているのではなく、本気で狙っているなと感じます。そういうチームになってきました」 前田監督も選手たちの本気を感じ取っている。 「3年前に出雲で優勝して、チームの雰囲気が変わったのを感じました。出雲優勝を起点に、7位や8位では満足できなくなり、シード権を争うチームから、3番以内などの高い目標を掲げるチームになりました。今回の箱根で優勝して、来年度はまた新たなチームを作っていってほしいです」 中西も最高の置き土産をするつもりだ。 [caption id="attachment_89794" align="alignnone" width="800"]
上尾ハーフで1時間2分15秒で走った鶴元太を先頭に走り込む選手たち[/caption]
下級生に好選手が数多く残っているだけに、今回初優勝を飾ることができれば、國學院大の黄金時代が到来することになりそうだ。
文/和田悟志 RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
2025.11.21
編集部コラム「柔らかい顔に」
-
2025.11.21
-
2025.11.20
-
2025.11.20
2025.11.20
【箱根駅伝2026名鑑】中央大学
2025.11.20
【箱根駅伝2026名鑑】青山学院大学
-
2025.11.20
-
2025.11.20
-
2025.11.16
-
2025.11.20
-
2025.11.20
2025.11.02
青学大が苦戦の中で3位確保!作戦不発も「力がないチームではない」/全日本大学駅伝
-
2025.11.02
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2023.04.01
-
2022.12.20
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2025.11.21
編集部コラム「柔らかい顔に」
攻め(?)のアンダーハンド リレーコラム?? 毎週金曜日(できる限り!)、月刊陸上競技の編集部員がコラムをアップ! 陸上界への熱い想い、日頃抱いている独り言、取材の裏話、どーでもいいことetc…。 編集スタッフが週替りで […]
2025.11.21
「箱根路が育む挑戦」箱根駅伝シンポジウム開催!小山直城「出場した思い強かった」葛西潤「誰かのためにと走った」
第102回箱根駅伝まで約40日となった11月21日、大会の機運を高めるイベント「第102回箱根駅伝シンポジウム」が、都内で開催された。 今回のメインテーマは「世界を駆ける~箱根路が育む挑戦~」。昨年のパリ五輪、9月の東京 […]
2025.11.21
「2強」日本郵政グループ、積水化学がV争いリード しまむら、エディオン、三井住友海上らが隙うかがう/クイーンズ駅伝みどころ
◇第45回全日本実業団対抗女子駅伝(クイーンズ駅伝:11月23日/宮城・松島町文化観光交流館前~弘進ゴムアスリートパーク仙台、6区間42.195km) 第45回全日本実業団対抗女子駅伝(クイーンズ駅伝in宮城)は11月2 […]
Latest Issue
最新号
2025年12月号 (11月14日発売)
EKIDEN REVIEW
全日本大学駅伝
箱根駅伝予選会
高校駅伝&実業団駅伝予選
Follow-up Tokyo 2025