2022.12.23
箱根駅伝Stories
新春の風物詩・箱根駅伝に挑む選手やチームを取り上げる「箱根駅伝Stories」。12月19日から区間エントリーが発表される29日まで、全校の特集記事を掲載していく。
日体大のエース藤本珠輝(4年)がケガで箱根駅伝予選会に出場できないなか、予選会5位通過の原動力になったのが主将の盛本聖也と廣澤優斗という2人の4年生だ。廣澤は9月まで中距離ブロックの主将を務めており、この時が初のハーフマラソン。伝統校の“救世主”となった新戦力は、まだまだ大きなポテンシャルを秘めている。
駅伝ブロックに入るも一度は挫折
駅伝ブロックに合流することになったきっかけは、昨年11月の日体大記録会にさかのぼる。1500mをメインに取り組んでいた廣澤は、オフシーズンの強化の一環として5000mを走り、13分50秒33をマーク。3週間後の同記録会で今度は10000m28分49秒47で走った。
この結果を見て玉城良二駅伝監督に「駅伝ブロックでやってみないか」と声をかけられたが、廣澤は中距離ブロックの新主将就任が決まったばかりで、「4年生の日本インカレまではしっかりと中距離に集中し、主将の責任を全うしたい」と決め、その通りに実行。日本インカレ後から長距離ブロックに合流した。
小学校の6年間は野球をしており、中学に入って仲のいい友達がいるという理由で剣道部へ。中学には陸上部はなく、駅伝大会があるごとにメンバーに呼ばれて走っていた。走ることへの楽しさを感じ、真岡高で陸上部に入部。本格的に陸上を始めた。
高校3年時には北関東大会で3000m障害8位。「けっこう調子が良くて、インターハイはほぼいけるんじゃないかなと思っていたんですが、あと2人で届かず。全国の壁は厚かったですね」と苦笑する。
目立った実績を持っていなかった廣澤には、大学からの勧誘や推薦の話は来ていなかった。教員になりたいという思いがあったため、一般受験で日体大に合格。勉強以外にも軸を持ちたいという気持ちで陸上部の駅伝ブロックにも入部したが、高校3年の11月に県駅伝が終わってからほとんど走っていなかった影響は大きく、練習にまったくついていけなかった。
「箱根駅伝に出るようなチームの練習レベルに対して、3ヵ月間受験勉強で走れなかったブランクはやはり大きかったです」。入部して早々、5月の前半には辞めたくなってしまい、コーチに相談すると「中距離ブロックがあるから、そこで続けてみたらどうだ」とアドバイスをもらい、中距離ブロックで陸上を続けることになった。
駅伝ブロックに入るも一度は挫折
駅伝ブロックに合流することになったきっかけは、昨年11月の日体大記録会にさかのぼる。1500mをメインに取り組んでいた廣澤は、オフシーズンの強化の一環として5000mを走り、13分50秒33をマーク。3週間後の同記録会で今度は10000m28分49秒47で走った。 この結果を見て玉城良二駅伝監督に「駅伝ブロックでやってみないか」と声をかけられたが、廣澤は中距離ブロックの新主将就任が決まったばかりで、「4年生の日本インカレまではしっかりと中距離に集中し、主将の責任を全うしたい」と決め、その通りに実行。日本インカレ後から長距離ブロックに合流した。 小学校の6年間は野球をしており、中学に入って仲のいい友達がいるという理由で剣道部へ。中学には陸上部はなく、駅伝大会があるごとにメンバーに呼ばれて走っていた。走ることへの楽しさを感じ、真岡高で陸上部に入部。本格的に陸上を始めた。 高校3年時には北関東大会で3000m障害8位。「けっこう調子が良くて、インターハイはほぼいけるんじゃないかなと思っていたんですが、あと2人で届かず。全国の壁は厚かったですね」と苦笑する。 目立った実績を持っていなかった廣澤には、大学からの勧誘や推薦の話は来ていなかった。教員になりたいという思いがあったため、一般受験で日体大に合格。勉強以外にも軸を持ちたいという気持ちで陸上部の駅伝ブロックにも入部したが、高校3年の11月に県駅伝が終わってからほとんど走っていなかった影響は大きく、練習にまったくついていけなかった。 「箱根駅伝に出るようなチームの練習レベルに対して、3ヵ月間受験勉強で走れなかったブランクはやはり大きかったです」。入部して早々、5月の前半には辞めたくなってしまい、コーチに相談すると「中距離ブロックがあるから、そこで続けてみたらどうだ」とアドバイスをもらい、中距離ブロックで陸上を続けることになった。 次ページ 予想していなかった13分台、狙って出した28分台予想していなかった13分台、狙って出した28分台
はじめは中距離種目のスピードについていけなかったが、長距離をやっていた分スタミナがあり、「有利に生かせたのでは」と分析する。1500m4分台だった自己ベストは1年時には3分53秒24、2年時には3分47秒26、3年時には3分42秒03と飛躍。3年時には初めて日本インカレにも出場し、決勝で10位だった。 特に3年の夏合宿が終わってからは、自らの実力が伸びてきているのが感じられ、陸上に打ち込めた時期だと振り返る。そしてシーズンが終わり、11月の日体大記録会5000mで出したのが13分50秒33のタイムだった。 予想していなかった13分台は大きな自信になり、「次は10000mに挑戦してみよう」という気持ちにもなった。その挑戦を後押ししてくれたのが、中距離ブロックの石井隆士先生だ。 [caption id="attachment_89498" align="alignnone" width="800"] エースの藤本珠輝とツーショットに収まる廣澤優斗[/caption] 石井先生は大学4年時に日本選手権800m、1500mで優勝、日本インカレ800m、1500m、4×400mリレーで優勝したレジェンド。それだけではなく、年始の箱根駅伝では1区に出走、区間新記録(当時)を樹立したというすさまじい経歴を持っている。 3週間後の日体大記録会で10000mを走るための練習メニューをすべて組んでくれて、廣澤は28分49秒47のタイムをマークした。 その結果を見て、玉城監督からの声がかかった。「駅伝ブロック、中距離ブロックと分かれてはいますが、『日体大陸上競技部』は1つという考え方もあります。適性があれば他のブロックの選手がリレーに出ていっても、駅伝に出ていってもいいと思うのです」(玉城監督) 前述の通り、「主将としてしっかりとその責任を全うしたい」と、石井先生とも相談した上で、9月の日本インカレまでは中距離に集中し、その後に駅伝ブロックに合流したいと伝えた。 次ページ お客さんではなく、4年生として引っ張るお客さんではなく、4年生として引っ張る
廣澤の頭の中に「駅伝」という選択肢が増えたことで、つい自分に集中してしまい周りを見られなくなってしまうこともあった。そんな時はいつも同級生が助けて、支えてくれた。練習では中距離の練習が終わった後にペースランニングを加える姿を見て「廣澤さんが出られるなら自分も挑戦してみたい」と、長い距離が得意な後輩がプラスの練習に加わってくれた。「1人じゃない、というのはすごく心強かったです」。 インカレ前に駅伝ブロックの夏合宿に10日間だけ合流したが、「1年生の時にあきらめた自分が入って、よく思われないのでは?」という不安もあったという。しかし誰もが温かく受け入れてくれた。人生初の30km走は「信じられないほどきつかったです」と笑う。 逆にスピード練習などは余裕を持って取り組め、「まだまだ自分はやれる」と可能性を得られた時間となった。9月の日本インカレでは5000mで8位入賞、1500mは10位。これをもって中距離ブロックを引退し、正式に駅伝ブロックに合流した。 駅伝ブロックの練習は「きつい時もある」と率直に口にする。「でも4年生ですし、お客さん気分でやるのではなく、しっかり引っ張っていこうという意識で取り組んでいます」。10月の箱根駅伝予選会では初ハーフながら1時間3分53秒でチーム2位、総合42位で走り切った。 「チームの中で1番を取りたい、連続出場をしっかり決めたいという意識があったので、きつくなっても走りきれたんだと思います」 [caption id="attachment_89500" align="alignnone" width="800"] 箱根駅伝予選会ではチーム2番目だった廣澤[/caption]多くの人に恵まれ、新しい道へ
最初で最後となる箱根駅伝。「一度はあきらめた駅伝にまた挑戦できるのは、石井先生、玉城監督をはじめいろんな方のご協力のお陰だと思っています。恩返しとしていい走りを見せたい。チームとしては8位以内、シード権確保を目標としているので、それに向けて勢いをつける走りをしたいです」 希望するのは1区で、区間ひとケタ順位が目標だ。自らのスピードを生かせるというのもあるが、「やっぱり注目されるので、そういうところもいいかなと思って」。 卒業後は実業団に進むことも決まった。「まずは10000mの記録を伸ばしていって、日本選手権で入賞したいと思っています」。将来的にはマラソンにチャレンジしたいという気持ちもある。玉城監督も「まだまだ伸びしろも十分」と評価している。さまざまな人の縁とタイミングに導かれて開かれた新しい道。その大きな1歩目として、箱根路での活躍を誓う。 ひろさわ・ゆうと/2000年9月9日生まれ。栃木県真岡市出身。165cm・50kg。栃木・山前中→真岡高。5000m13分50秒33、10000m28分49秒47、ハーフ1時間3分53秒 文/藤井みさ
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